蒼き雷霆ガンヴォルト X MONSTER HUNTER   作:kocolokoro

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蒼い雷霆ガンヴォルトとモンスターハンターの二次創作です。


第十三話 熱砂の狂演

 迫りくる砂塵に飲み込まれれば二本の角の餌食。

 少年は皇神(スメラギ)の二人を脇に抱えながら、砂の大地を蹴る。

 大地を揺らしながら、ディアブロスが少年に迫る。その白い目が、逃げる少年の背中を真っ直ぐに捉えている。

 地面を削る角の音が背後まで迫る。

 乱暴に銅鑼を鳴らしたかのような音が、少年の髪を揺さぶる。照り返った西日と脇に抱えた二人、砂のぬかるみがこぞって少年の脚力を奪い取る。

「GV!」

 崖の上から見ていたきりんが身を乗り出す。飛び降りて助太刀に入ろうとするきりんの袖を篇算者(へんざんしゃ)が掴んだ。

「ここは危険デス!先に避難しましょう!」

「GVを見捨てるなんて薄情なことできないわよ!」

 振り解こうと足掻くきりんを、青年が羽交い締めにする。

「ティガレックスが来るカモしれません」

 篇算者が振り向くと、そこにティガレックスの姿はない。

 再び砂漠の方を振り返る。

 ティガレックスがディアブロスに飛びかかっていた。

 押し倒されるディアブロス、その衝撃で砂塵が舞い、少年を吹き飛ばす。少年は今度こそ耐えられず、脇に抱えた二人を手放した。

 地面に叩きつけられた皇神の二人が首を振って起き上がる。

「何事だ」

 コートの男が、飛び退いたティガレックスを見上げる。

 十七架(となか)が、立ち上がったディアブロスを見上げる。

 護身用に持っていた拳銃を揃って向けるも、怪物にとってはただの玩具でしかない。

 十七架の前にディアブロスの尾甲が振り下ろされる。声にならない悲鳴を上げる十七架を、ディアブロスが後ろ目で睨む。

 コートの男の前にティガレックスの爪が振り下ろされる。冷や汗を垂れ流すコートの男に、ティガレックスが横目で吠える。

 そして、二頭は眼前の敵に狙いを定めた。

 先に動いたのはティガレックス、砂を蹴り上げ飛びかかる。真正面からの一撃をディアブロスが受け止める。薙ぎ払ったディアブロスの角と宙から振り下ろされたティガレックスの爪が(つば)迫り合う。

 押し込まれたディアブロスの右脚が十七架の眼前を横切る。

玉前(たまさき)監査官!」

 コートの男が叫ぶと同時に、少年が駆け出す。

 ディアブロスの脚下でうずくまる十七架の頭上で、角を握ったティガレックスが、余った腕を振り上げている。

 宙でバランスを崩したティガレックス、その隙を見て、ディアブロスが身体を大きく振り回す。

 遠心力で振り回された尾甲、一撃必殺の槌が少年の真横から飛来する。決して目で追うことのできない不可視の一撃に、少年の身体が無意識に飛び込んでいた。

 経験や知恵では決して敵わない、己の勘だけが頼りだ。

 少年の背中を尾甲が通り過ぎる。その風圧で少年は砂漠の大地を何度も転げ回る。

 顔をもたげると、ディアブロスの角に投げ飛ばされたティガレックスの巨体が地面に叩きつけられるところだ。

 地鳴りが起きる。

 威嚇を繰り返すディアブロスを見て、好機とばかりに少年は体勢を立て直し、十七架の元へ走り出す。

 目の前に、尾甲が振り落とされる。

 ディアブロスが少年の方を振り向いた。心臓の鼓動が荒くなる。少年は乾ききった喉を何度も唾で湿らせ、胸を叩いて平静を装う。

 十七架と目が合う。今にも失神してしまいそうな十七架に少年はウィンクで答え、声を張り上げた。

「ボクが相手だ!」

 拳銃(ダートリーダー)を構えながら大きく右に跳ぶ。口笛を鳴らし、精一杯にディアブロスの気を引き寄せる。夕闇に蒼い光を放つ少年をディアブロスが目で追う。視線がぶつかるたびに全身が粟立つ。

 十七架はディアブロスの股下から這いずり出る。恐怖から逃げ出したい、その一心で、十七架は慣れない砂の大地を一心不乱に走り出す。

「あっ」

 ほんの数歩走ったところで、柔らかい砂地に足をとられ転んでしまう。

 砂中から音だけで地上の様子を把握できる地獄耳が、逃げようとするニンゲンの足音を捉えた。

「やめろ!」

 少年に背を向けたディアブロスが狙いを十七架に定める。

 身体を落として足を踏み込み、ねじれた双角を十七架に向ける。まさに突進の構えだ。

 大型トレーラーを有に超える巨体が大地を蹴り上げる。

 そこに、ティガレックスが再び飛びかかる。

「走れ!」

 二頭が争う叫び声に負けず少年が声を張り上げる。スーツに付いた砂を払うことも忘れ、十七架は必死に脚を振るう。

 その後を追いかける少年の前に立ちはだかる二頭の竜は、眼前の敵を排除せんと取っ組み合っている。

 少年は蒼い電気を迸らせ、二頭の竜に突っ込んだ。

 ティガレックスが身体を捻る。

 鋭く横薙ぎされた靭尾、それを電磁結界(カゲロウ)が感知する。咄嗟に屈んだ少年の背を尾が一閃した。

 ティガレックスがディアブロスの頭に爪を叩きつける。寸前で躱したディアブロス、舞い上がった砂の礫を張り巡らせた雷撃鱗で受け流す。

 次こそはとばかりに噛みつこうとするティガレックスに、ディアブロスは角を振るって抗う。地面をこすり砂塵を巻き上げる角、大地を穿つ角が少年に向かって滑り来る。

 少年はゆっくりと息をつく。

 眼前に迫る巨木のような角を前に逃げ場はない。

 一点突破しかない。

「スパークカリバー!」

 少年が伸ばした手から具現化した雷を纏いし聖剣が、ディアブロスの角を打ち砕く。角の破片と共にディアブロスの呪詛の叫びが辺りに飛び散る。砕いた角の向こう側に、十七架の背中が見えた。

 ディアブロスとティガレックス。

 二頭の竜に睨まれながら、少年はその間を駆け抜ける。

「こっちだ!」

 野太い叫び声はコートの男のものだ。

 崖下で手を振る男の背後には洞窟が見える。その狭い入り口では竜は通れない。

 走っていた二人に笑顔が戻る。

 距離にして二百メートル、二頭が争う隙さえあれば、十分に間に合う距離だ。

 少年の背後で咆哮が上がる。

 勝鬨の咆哮の主はティガレックス。角と言う武器を無くしたディアブロスがその足下に倒れ伏す。

「走れ!」

 コートの男が叫ぶと同時に、ティガレックスが走り出す。

 咆哮か、大地を踏む音かも分からない轟音が迫る。竜の歩幅と人間の歩幅との絶対的な差が如実に現れる。絶対強者が鋭い歯を立てて少年に肉薄する。

 


 

「何とかしないと!」

 一部始終を見ていたきりんが、崖の上で声を張り上げる。

 ディアブロスの角を破壊するときに少年は電気を使い果たしてしまった。回復には時間がかかるし、クールタイムの間は身体強化すらままならない。

「何かないの!」

 きりんが篇算者たちを振り返る。

 篇算者は頷きマスクを付けて、ポーチから白い弾薬を取り出す。その弾薬を指先で握りつぶし、滴り落ちた液体を傍の岩肌に擦り付ける。

「うわ!クサッ!」

 悪臭が鼻を突く。

 鼻をつまむきりんの傍らで、篇算者がその弾丸を青年に手渡す。鈍感な青年も息を止めながら、弾丸をスリンガーに詰める。

 異界の地に根付くスカンクのような生き物、エンエンクが放つ強力なフェロモンを染み込ませた誘導弾だ。

「早くココから離れましょう」

 篇算者が遠方に見える坑道の入り口を指さす。しきりに逃げるよう促す篇算者を振り切って、きりんは崖下を覗く。

 スリンガーから誘導弾が射出されるところだ。白い液を宙にまき散らし、少年の背後につくティガレックスに向かって飛翔する。

 ティガレックスは少年を押しつぶすまで後一歩のところまで迫っていた。もはや振り向いて反撃を加える暇すらない。刀身を抜こうと一歩踏み出すも、青年に止められてしまう。

 きりんが青年を見やる。

 青年は自信に満ちた笑顔を浮かべて、崖から離れる。

 ティガレックスが最後の一歩を振り上げる。翼が照り返す夕焼けを一身に受け、鎌を振りかざす死神のような影を作る。

 その頭に誘導弾が着弾した。

「セメンティヴェロ!」

 青年がきりんの肩を掴み、崖から引き離す。きりんは踏ん張って見届けようとするも、青年の力強さに折れて、その場を離れた。

 


 

 鼻先に広がる悪臭に、ティガレックスが咳き込む。

 足を緩めた隙に、少年との距離が離れていく。少年は十七架に追いつくと、その華奢な腕をつかんで走り出す。

「急げ!」

 洞窟の入り口でコートの男が叫ぶ。

 獲物が逃げると気づいたティガレックスが再び駆け出す。

 入り口まで数十メートル、後方のティガレックスが諦める気配はない。少年は十七架を引き寄せ、胸元に抱きかかえる。喚く十七架を無視して、自分の脚に電流を流す。

 ティガレックスの最後の一振りが迫る。

 少年は電流で活性化した脚力で一気に跳躍した。抱きかかえた十七架と共に、洞窟の入り口へ一気に飛び込んだ。

「もっと奥だ!」

 飛び込んできた二人をコートの男が引きずる。

 ドンと言う衝撃音と共に、洞窟の入り口にティガレックスが顔を埋めた。ガチガチと歯を鳴らし、口惜しげに唸り声を上げながら、洞窟の奥に逃げた獲物を睨む。

 執拗に歯を鳴らすティガレックスを前に少年が睨み返す。絶対強者と謳われる生態系の頂点から逃げることができた少年側の勝利だ。

 しばらく洞窟の入り口で威嚇した後、ティガレックスは洞窟の入り口から顔を外し、そのまま跳躍する。獲物を逃がした邪魔者を排除すべく、崖の上をうろつき始める。

 あの悪臭だ、到底忘れられるものではない。

 臭いの主はすぐに見つけた。微動だにしない邪魔者に向かってティガレックスは歯を立てる。

 篇算者が臭いをつけた岩を噛み砕く。

 異界には岩に擬態する竜(バサルモス)がいるし、ティガレックスもその(グラビモス)と何度も対峙してきた。

 岩は動くと言う、異界で刷り込まれた常識がティガレックスを駆り立てる。

 何もない岩をひたすらに噛み砕き続ける。

 憤慨の咆哮が轟いた頃には、すでに星空が広がり始めていた。




小話
 強大な力を前に一方的にやられる絵面もつまらないもので、ガンヴォルト側の技で何とかしてみました。
 人間の攻撃では部位破壊まで、討伐は他モンスターによるものを心がけるようにしています。
 今回はあちこち視点が移るため、描くのがしんどかった……
 漫画向きなのかもしれないと思う今日このごろです。
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