蒼き雷霆ガンヴォルト X MONSTER HUNTER 作:kocolokoro
放送事故が起きた。
タブレットの画面にノイズが走る。
「で?次の手は?」
きりんからの冷ややかな声に、コートの男は呆然と椅子に倒れ込む。皇神の最新技術の結晶をいとも容易く打ち砕いた赤い竜。それを見届けた
「貴方にお聞きしたいのですが」
十七架が
「あの竜を貴方がたの世界に帰すことは可能ですか?」
「ゲートさえ見つケレバ」
「
少年は反皇神組織フェザーの元メンバー、ノワが世話しているアキュラは皇神に指名手配されている人物だ。世界を支配する皇神の人間が、元テロリストの仲間と手を結ぼうとしている。規律違反の気配を感じて止めようとするコートの男に、「黙りなさい」とピシャリと拒絶する。
十七架がコートの男に、ある画面を見せる。
皇神グループの株価グラフだ。
次々と売りに出され、株価がすでに暴落を起こしている。崩落を止めるには新たな起爆剤が必要だ。コートの男の頭の回転は速く、すぐに打開策を提案する。
「皇神の総力を挙げて竜を討伐する。そうすれば、株価の下落も止まるはず……」
「かつての七宝剣が全員復活したとしても、あの竜を御することは難しい。違いますか?」
コートの男は声を詰まらせ、うなだれる。
皇神が抱えていた異能力者の戦闘集団、七宝剣。皇神で考えられ得る最強の戦力である彼らも、巨大な竜の前では同じく人の子でしかない。それに、七宝剣は少年の手で壊滅している。ない袖は振れないし、死者の肉体を蘇らせる技術はない。
ため息をつくコートの男を横目に、十七架は端末を動かして青年の前に動画を流す。
「これは……」
横から覗き込んでいた少年が声を上げる。
航空ドローンからのカメラ映像だ。時間は昨日の夜、場所は発電所バベル。あちこちで炎を上げる発電所の中、落ち着きなく辺りを見渡す青年の後ろ姿があった。
「ウェ?」
画面に流れる自分の姿に、青年は「俺だ、俺だ」と言わんばかりにはしゃいでいる。盗人のようにコソコソと動く姿が、不法侵入で警察に捕まっても文句が言えない姿であることは、青年の頭からすっかり抜け落ちているようだ。
「もともと、発電所をフェザーが襲撃すると言うタレコミがありましてね。発電所の異変を受けて、諜報部隊が偵察機を送ったわけですが」
端末の画面に不意にノイズが入り、動画が終わる。眉をひそめる青年の前で端末を動かし、十七架は新しい動画を再生した。
「原始人がフェザーにいると聞いたことがありません。諜報部隊は即座にフェザーとは無関係と判断しましたが、この原始人を調査する面倒な依頼をよこしてくれやがりまして」
画面の前を緑の竜が横切る。
「ライゼクス……」と呟く篇算者に、「あの竜をそう呼ぶのですか」と十七架が答える。
「本来はあなたを拷問して、正体を探るのが私のミッションでした。ですが、たった今、事情が変わりました」
十七架が立ち上がり、篇算者に向き直って頭を下げた。
「竜を引き取って頂けないでしょうか」
「ちょっと待った」
少年が疑いの目を向ける。
「もう一頭の竜の話がない。発電所に転がっていただろ」
「黒い鳥のことかね?」
答えたのはコートの男だ。
「あの遺体は、マスコミに嗅ぎつけられる前に、皇神が回収した。今は生物研究所で調べているところだ」
仏頂面で睨む十七架に、「報告が遅れてすまない」とコートの男は粛々と謝る。バケモノが首都のド真ん中に現れたと聞けば、国民の間に不安が走る。それを不満にすり替えようと世論を誘導する反皇神組織を牽制した形だ。
「納得いただけましたか?ガンヴォルト」
皇神の思惑も含めての確認だ。
頷きながらも、少年の目には猜疑心が満ちている。皇神の十七架と少年の間に重い緊張が走る。
「実際、どうするのよ?何か手がかりはあるの?」
沈黙を打ち破ったのはきりんだ。きりんの言葉に、篇算者が顎を押さえながら言葉を紡ぐ。
「あのゲートのことは大団長が良く調べていマシタ。大団長がいれば、何か分かるカモしれません」
「大団長?」
聞き慣れない職業にきりんが尋ねる。
「ゲートをくぐる前は一緒ダッタのですが、こちらの世界に来た時にバラバラになってしまって」
「オッケー、その人を捜そう。特徴は?」
きりんが指を鳴らし、篇算者を指さす。篇算者は青年と目を合わせ頷くと、少年を指さした。「え?」と戸惑う少年を余所に、青年が急にドラミングを始め、力こぶを何度も作って見せる。
「ゴリラみたいなGV?」
ケタケタ笑うきりんに、苦笑いするオウカと少年。
「地球上のたった一人の人間を探すのは骨が折れるぞ」
そこにコートの男が現実を突きつける。
はぐれてしまったとは言うが、大団長が篇算者たちと同じ地球に降り立った確証はどこにもない。同じ地球に流れ着いたとしても、六十億人から一人を、ましてや国籍すらない異界人を見つけ出すのは至難の業だ。
「デデ砂漠にいます」
ノワがポツリと呟いた。憂いを覗かせるノワに、「それはどこの情報?」と十七架が訝しむ。
「私の口からは言えません」
「アキュラか……」
咄嗟に少年が呟く。ノワは黙して視線をそらす。
主を皇神に引き合わせる危険を冒した。ノワは誰に向けてでもなく、胸元で静かに十字を描いた。
その沈黙は信ずるに値した。
十七架は手を叩き、発破をかけんと声を張り上げる。
「プライベートジェットを手配します。皆様のパスポートと身分証明書も明日までに用意させます」
粛々と決まるスケジュールに皆が浮足立つ。十七架はすでにコートの男に指示を飛ばし、きりんは太刀の手入れに勤しみ、篇算者は青年に通訳を始め、ノワは帰路に着こうとしている。
「オウカはここに残ってくれないかな?」
一人手持ち無沙汰なオウカに少年が声をかける。
「GV」
また置いていかれる。
オウカは抵抗しようとするも、すぐに引っ込める。言葉すら通じない怪物相手には無力だし、少年の足手まといになるだけと理解しているからだ。
「頼みがあるんだ。オウカを預かってくれないかな?」
「ええ」
すでに少年は話を進めている。
皇神に居所を知られたオウカを一人にするのは危険と判断したのか、ノワにオウカの身柄を保護するよう依頼している。
そこに、オウカの意思はない。
今までもそうだったし、これからもそうだろう。
オウカは逃げるようにリビングを飛び出した。
小話
異世界転生を描く上で、言語の問題は避けられない。
そこは懐の広いモンハン世界。映画の設定で乗り越えようと思い立ったものの、今度は作者自身が乗り越えられない事態に……
モンハンの世界の言語も方言があり、外伝のストーリーズは本編と微妙に違うのも厄介でした。
頭を悩ませた末に、モンハン語は一部オリジナル翻訳にしています。
こういう考証は有識者の方がいれば楽なんですがね……