そうさく部!〜天才と出逢ったので、ゲームを作ろうと思う〜   作:藍間道逸

1 / 7
 どうも藍間です。
 この度は手に取って頂きありがとうございます。
 楽しんでいただければ幸いです。では。


第一話「運命との出会い。」

 

 

「この後どーするー?」

「同じクラスではなかったけど、隣ならまぁたえだな」

「お前、部活どこはいるかきめてるの?」

 

 がちゃがちゃ。わいわいと。

 どこもかしこも喧騒で埋まる廊下を抜け、僕は目的の場所を探して校内をぐるぐると周る。

 

「――くそ、どこにあんだよ。広過ぎんだろぉこの学校!」

 

 4月6日。

 入学式が終わり、各々のクラスでの挨拶が終わった昼下がり。

 中学からの連れと廊下で話すもの、新しく出会えたクラスメートと交流を深めるもの、その角でちっちゃく縮こまっているもの、三者三様、多種多様に所狭しと時間を忘れて楽しんでいる。

 

「あ、すいませーん。通りまーす」

 

 そんな中。

 僕はは早々にクラスを抜け出して廊下をずんどこと進んでいた。

 

「……図書室は、2階か」

 

 なにも、友だちが出来なかったわけではない。

 話しかける勇気が無いわけでも、話しかけられる愛嬌が欠落しているわけでも勿論ない……とは思う。

 が、しかし。

 今はそれよりも優先すべきことがある。

 

「……で、主人公は校門を潜って……それでその後……」

 

 ぶつぶつと、呪詛のようなものを呟きながら歩く姿は変人にでも見えたのか、何もせずともみんな前をあけてくれる。

 しかし、今はちょうどいいし、自分への評価を気にしている場合でも無い。

 こうしている間にも刻一刻も、僕の脳みそから溢れでてしまっているからだ

 

「早く、早くしないと……折角浮かんだ僕のネタを早く文字にしないとぉぉぉおおお!」

 

 そんな、情けない叫び声をあげたのは他の誰でも無い僕こと――相上扉であり、かつしがない物書きでもある。

 

 ――図書室に入り、急いで席に座ってタブレットを立ち上げる。

 

「よし……ん?」

 

 ――その時、1枚の紙がひらり足先に触れる。

 

 そして。

 

 ――僕は、その足元に落ちた紙を拾い上げる。

 

「――え?」

 

 そんな僕が、運命と出会ったのは入学式が終わった図書室であった。

 運命なんて信じてない。

 神さまなんて居たところで何もしてくれはしない。

 そんな自他共に認める捻くれた考えを持っている僕が、鮮明に運命を意識した。

 

 ――その紙には1人の女の子と、レンガ造りの街並みが描かれていた。

 

 音が、聞こえた。

 愉快なマリンバを叩く音、軽快に跳ねるピアノ、厳かに流れるコントラバス。

 

「え……あ」

 

 文章にならんとする無数の文字たちが、頭の中で渦を巻いては形にならずに消えていく。

 でも確かに、理想は見えた。

 そしてその夢は、

 

「いつまで見てるの。早く返して」

 

 僕の手から無情にも取り去られた、1枚の紙と共に消えた。

 先まで脳内を占めていたネタはもはや忘却の彼方にやられてしまったが、今はそんなのどうでもいい。

 あまりの理不尽に僕は、憤慨した。

 

「か、返してください!」

「な……っ。か、返してって何!?それ私が描いた子なんですけど!」

 

 ダン、という地面を蹴る音。

 気づけば、知らない女子が僕を見下ろしていた。

 

「あ」

 

 そこでようやく我にかえる。

 興奮が冷めるどころが、肝まで冷えた。

 一体自分は、何をしているのか、と。

 そして、何事もなかったかのように相手の顔を見ながら、ちょん、と机に置く。

 

「…………」

「…………や、やぁ?」

 

 すると再びバン!と机が叩かれた。

 怖い。

 

「無かったことになるわけないでしょ!?」

「ですよねぇ〜」

「な、なんなのよあなたは……」

 

 ピキ、と今確実に青筋が額に浮かんだのが見えた。

 おかしい。

 僕としてはユーモアと最大限の申し訳なさと共に返したつもりではあったが、どうやらダメだったらしい。

 僕はいつも人を怒らせてしまう。

 そんなつもりはないのに。

 

 しかし、いつまでも怒られていては話が進まないので僕は気持ちを切り替える。

 反省と後悔と、有り余る興奮と共に彼女を視界に映す。

 

「な、何よ」

 

 よく見ると、かなりの美人さんだ。

 ハーフアップにした濡羽色の綺麗な髪の毛。

 スッと通った鼻筋に勝気な目尻。

 小さな顔に浮かぶ海のような瞳。

 一切の着崩しのない制服から彼女の気難しい性格が伺える。

 ……まるで物語のヒロインだな。

 なんてどうでもいい感想は、胃の中で酸と共に溶かす。

 

「これ、あなたが描いたんですか?」

「……だったら何よ、笑いものにでもするつもり?」

 

「笑いものに?誰が?何を?」

「貴方が、この絵を意外に今どんな対象があるのか教えて欲しいものね」

「はは、面白いこといんですねあなたも」

 

 僕が、この絵を?

 てんでおかしいことを言う女の子に僕は思わず失笑する。

 そんなことするわけがないし、できないと言うのに一体何を。

 と、笑っていたら目の前の女子が明らかに不機嫌になっていくのがわかって咳払いをして正す。

 

 僕の目的は決して彼女を怒らせることではないし、そのために彼女にはこれ以上不機嫌になってもらいたくないし、何より僕を嫌いになってもらっては困る。

 

「提案があります」

「嫌よ」

 

「提案が、あります」

「……なによ」

 

 どうやら押しには弱いらしい。

 これはいいことを知れた。

 そんな思いと共に、僕は一世一代の告白のセリフを急いで脳内で構築する。

 必要なのは素敵で、狡猾で、思わず頷いてしまうようなそんな告白だ。

 

「……あ、まず自己紹介ですね」

「そんなのいいわよ、要件は何?」

「僕、相上扉って言います。今日入学式を終えた高校1年生です」

 

「……あなたのその両側についてる耳は飾りかしら?」

「……?」

 

 ブチ、という音がした気がした。

 きっと気のせいだ。

 彼女はゆっくりと目を閉じて、大きく深呼吸をする。

 次いで、ゆっくりと目を開いた。

 どうやら、落ち着きを取り戻してくれたらしい。

 

「……ふぅ。七条綾瀬よ。ちなみに2年」

「七条先輩?」

「好きに呼びなさい」

 

「あやせたん?」

「殺すわよ?」

 

 全然好きにじゃない……とそう思いながらも流石に人が不快なことをするべきではないので、僭越ながら七条先輩と呼ばせていただくことにした。

 

 意味もなく制服を正す。

 柄にもなく、緊張している。

 喉はカラカラだし、指先は小刻みに震えている。

 告白というのはこんなにも怖いものなのか、と新しい発見をした。

 そして意を決して、七条先輩の目を見て右手を差し出す。

 

「七条先輩」

「……何よ」

「あなたの書くイラストに惚れました。僕とゲームを作ってください」

 

 ――しん、と空気が張り詰めた。

 

 誰もいない図書室。

 息を飲む音すら鼓膜に響いてきて、心臓は早鐘を打ってどうにかなってしまうそう。

 そんな、僕の一世一代の大告白は

 

「いや………は?え、ゲーム?」

「はい」

「え、いやよそんなの。何を言ってるのよあなた?」

 

 そんな、なんとも微妙な断られ方をしたのであった。

 

 

 これは、この出来事は、まだ桜も散らない暖かな春のこと。

 4月6日の入学式当日の出来事であった。

 僕はこの日、運命に出会ったんだ。

 




 勢いとノリと性癖だけで書き出した作品になります。
 展開や最後などなんとなくしか思い浮かんでいませんが、衝動に駆られてしましました。
 相上くんと七条さんが許してくれれば、続きを書いていこうと思います。

 Ps.読んでいただきありがとうございます。よければ感想や評価の方を頂けるとやる気が……でます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。