そうさく部!〜天才と出逢ったので、ゲームを作ろうと思う〜   作:藍間道逸

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第二話「部活を作った。先輩を勧誘した。」

 

 

 ――キーンコーンカーンコーン

 

 4限目の終了を知らせる鐘の音。

 一時の授業からの解放に、教室は思い出したように賑やかさを取り戻す。

 

「おーい、とびらぁ〜一緒に飯……」

 

 そしてそれは、僕も例外ではなく……どころが誰よりも真っ先に机からのスタートダッシュを決めていた。

 

「……って、もういねぇし」

 

 ちらっと後ろを見れば、僕を見つけた友人が僕を誘っていた。

 僕は片手ですまん、ハンドサインを送る。

 

「悪ぃタツ!用事できた!」

「おーう!いつものか?惨敗報告だけ期待してるぜー……ってもう聞いてねぇし」

 

 惨敗報告?

 ほざけ、僕が持ち帰ってくるのは勝利宣言のみだ。

 ……と。

 開けた教室の扉をそのままに、僕は廊下を走る。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……あ、いた」

 

 階段を1段登って反対側、今ちょうど屋上への階段に足をかけてる先輩の背中を見つける。

 そして、今日も今日とて僕は同じセリフ繰り返す。

 

「先輩!!!」

「………うげ」

 

 少し嫌そうな顔をされたのはきっと気のせいだと信じたい。

 身に覚えしかないが、それは今は無視してポケットに入れておいた紙を先輩に見せる。

 

「見てください、これ」

「それは……入部届?あなた、部活入ってたの?」

「いえ、作りました!」

 

 一体、僕は何かおかしなことは言っただろうか、先輩は僅かに目を開いて、すぐにこめかみを手で押さえる。

 

「頭痛ですか?」

「えぇ、あなたのその相変わらずの行動力にはもはや尊敬の念すら抱くわ」

 

「それは、ありがとうございます?」

「そして今、それが恐怖と少しの不快に変わったわ」

「そんな!?」

 

 酷い。

 一体僕が、どれほどの労力をかけて部活を作ったと思っているのか。

 しかしそれは先輩にとってはどうでもいいことらしい。

 それはそうだ。

 そして何より、これを渡してくれた先生も同じような顔をしていた。

 

「……ちなみに部活の名前は?」

「ん〜どうしましょうね、先生からは『とりあえず部員を集めてこい、話はそれからだ』と言われただけなので、決めてないんですよね」

 

「そりゃあそうでしょうね」

「なので先輩、お昼でも食べながら決めましょう?」

 

 この間、ずっと階段で立ち話だったので、時間がもったいないと僕は先輩の横を通って階段を上がる。

 この学校は比較的長めに昼休憩がとられているものの、わざわざ屋上で食べるとなると移動時間もあるため、そんなにのんびりはしてられない。

 

「ちょ、ちょちょ、なんで私があなたの部活の名前を決めなきゃいけなわいけ!?」

 

 奥上の扉を開ければ気持ちのいい風が体を通る。

 そしてそのままベンチに向かおうとして、後ろをついてきた先輩に、手を握られ止められる。

 ……少しドキッとしたのは内緒だ。

 僕はあくまで平静を装って先輩の方を見る。

 

「なんでって、僕と先輩の部活ですからね。僕1人で決めるのはあれかな、と思ったんですけど」

 

 部員定数は最低3人らしく、本当はもう1人誘わないといけないのだが、都合の悪いことは心に閉じ込めておく。

 僕は嘘は嫌いだ。

 そしてこれは本当のことを言ってないだけ、と心中で言い訳を展開する。

 

「勝手に決めないでくれる?何度も言うけど、私はあなたの部活に入るつもりもないし、あなたとゲームを作るつもりもないのだけれど」

「何度も言いますが、だからそれは困るんですよ!」

 

 はぁ、とため息と共に屋上のベンチに腰掛ける先輩。

 その横に僕も腰掛ける。

 

「……あなたが困ろうが私の知ったこっちゃないし、それにイラストなんてこんだけ人数いるなら他に書ける人もいるわよ。それこそ、美術部とか漫画部とか行けばいるんじゃないかしら?」

「そりゃあ行きましたよ?先輩が駄々をこねるから仕方なく、確かにみんなうまかったです」

 

「だ……はぁ、もういいわ。じゃあその子でいいじゃない。別にゲームのイラスト制作なんて私じゃなくてもいいでしょう?」

「僕は、先輩の描くキャラがいいんです」

 

 これはお世辞ではなく、本心だ。

 嘘でも偽りでもなく、僕の全てだ。

 確かに美術部にいる人たちも、漫画部にいる子たちもみんなすごく上手かった。

 だけど。

 どうしても、先輩の絵がいつも過ったのだ。

 

「先輩の絵を見た時、感動したんです。シナリオが、確かに頭に流れたんです。キャラが勝手に動き出したんです。わかります?これ凄いことなんですよ」

「そ、そんなこと……」

「あります!」

 

「で、でも私の絵なんて、誰かに習ったわけでもないし、勉強してるわけでもないし、見よう見まねで好きなように描いてただけだし、」

 

 先輩の言葉に絶句する。

 誰にも習わずに、勉強もせずに、あの絵を?

 拳を僅かに握りしめた。

 

「やっぱり、天才だ」

「え?」

「天才なんですよ先輩は!絵の上手い下手なんて微細なところなんて書いてけば先輩ならなんとかなります……だから先輩、僕とゲームを作ってください!」

 

 思うところは、確かにある。

 けれど今は、そんなこと気にしている場合じゃない。

 僕は今、一刻も早くこの理想を形にしたい。

 創作には賞味期限があるのだ。それが切れたらもう2度と同じものはかけない。

 

「……」「……」

 

 刹那の間無言が僕たちの間を埋めた。

 先輩はお弁当箱を開ける手を止め、僕を見ていた。

 僕も真っ直ぐに先輩をみる。

 互いの瞳に互いが映る。

 

「……ありがとう」

「え?」

「……正直、私の絵をそこまで評価してくれるのは素直に嬉しいわ」

 

 初めて聞いた、先輩からの感謝。

 驚いて、今度は僕が目を丸くする。

 

「なら」

「でも、それとこれとは話が別よ。何度でもいうわ、私はゲームは作らない。」

 

 今までよりもキッパリと言われた拒絶宣言。

 それはいつもより心に深く刺さった。

 

 ――10回目。

 僕が先輩を誘って断られた回数だ。

 

「そんな……」

 

 そして今日も、どうやら惨敗に終わったらしい。

 

 

「で?何をあなたはさも当たり前かのように私の横で弁当を広げているのかしら?」

「え?」

 

「え?」

 

 え?




 どうも藍間です。
 読んでいただきありがとうございます!
 よければ感想や評価の方を頂けるとやる気が……でます。
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