そうさく部!〜天才と出逢ったので、ゲームを作ろうと思う〜   作:藍間道逸

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第六話「朝、先輩を待ち伏せる」

◆

 

「あ……呆れた」

 

 ようやく明るくなったなぁ、くらいの早朝。

 校門で待っていれば10分とたたず目的の人は現れた。

 その右手を頭に当てて。

 

「おはようございます。先輩、朝早いんですね」

「それより早いあなたに言われるのはお門違いな気もするけどね」

 

 僕の横を素通りする先輩。

 僕も体を翻して、先輩の横を続く。

 

「いえいえ、僕はいつもチャイムギリギリ滑り込みアウトですよ」

「アウトじゃダメじゃない」

 

 まだ早朝の6時半だと言うのに学校の正面玄関はしっかりと開く。

 僕の通う学校は私立ということもあって24時間体制で警備員がいる。

 だから夜は遅くまで空いてるし、朝は早くから開くというのは聞いていたが、こんなにも早くから開いてるとは思わず少し驚いた。

 

「なんか今日は優しいですね」

「……朝が苦手なだけよ」

「低血圧ですか?」

「そうよ。分かってるならもう少し声のボリュームを落としてくれる?」

 

 本当に辛そうに喋る先輩に僕は言われた通り声を落としてしゃべる。

 ひそひそと、内緒話をするくらいだろうかと先輩に顔を近づけて。

 

「どうっすか?こんくらいでいいですか?」

 

 しかし、それがお気に召さなかったのか先輩は僕を野菜でも見るような目で見て

 

「前言撤回するわ。あなたの場合は文字量を減らしてくれるかしら?

 あとついでにその両極端な性格」

 

 そう言った。

 酷い。

 

◇

 

 朝ということもあってか校内にはまだ人気はなく、また、先ほど暗に黙れと言われたこともあって廊下には2人分の足音だけが響いていた。

 そして、僕はそのまま先輩の後ろに続き、着いたのは2階の図書室だった。

 

「すご。図書室も空いてるんですね」

「えぇ、良いわよね。私が朝早くからくる理由の1つよ」

 

 そう言って先輩は慣れた手つきで図書室の電気をつけて、空調のスイッチを入れた。

 

「勝手につけていいんですか?」

「えぇ、許可は貰ってるわ。」

「へぇ〜、じゃあ結構前々からこんな朝から使ってるんですね」

「私ももう2年生だもの。そりゃあね」

 

 そこがお気に入りの席なのか、中庭に面した4人がけの左奥に座る。

 僕はといえば、それならばとその対面に座る。

 

「え、1年の最初から使ってるんですか?」

「……?えぇそうだけど、何か変?」

 

 変、ではある。

 それにふと、昨日タツと話した友人についての話題が脳裏をよぎったが、藪を突いて蛇を出したくはないので、そっと胸にしまった。

「……」「……」

 バックから色々とペンやら紙を取り出していく先輩。

 それを観察する僕。

 その際、ふと目が合った。

 

「な、何よ」

 

 困惑する先輩。

 そりゃあここまで視線を感じたら居心地も悪いだろう。

 しかし僕としても、話題の切り出す瞬間を探してだけであって、そしておあつらえ向きに作られた間にここだと話題を振った。

 

「お願い、があるんですけど」

「……」

 

 露骨に嫌な顔をする先輩。

 酷い。まだ何も言っていないのに。

 そして、案の定先輩は何やら勘違いをしていた。

 

「何度も言うけど、あなたの誘いは乗れないわ。ゲームを作るなら1人で作りなさい、1人で無理なら他を当たりなさい。私は無理。話はおしまい。」

 

 矢継ぎ早にそう言い切る先輩に僕は首を横に振る。

 

「あ、いや今日はゲーム制作のお誘いじゃないです」

「え?」

 

 そう言い放つ僕に、先輩はきょとんと目を瞬かせた。

 可愛い。こんな表情もできるんだ、なんて雑念はすぐに掃いて捨てる。

 

「やっと諦めたの?」

「いや、それは勿論諦めてないですけど」

「あ、そう」

 

 現状に思考が追いついていないのか、先輩は一拍おいて僕に問うた。

 

「じゃあ、一体私に何のようかしら?」

 

 時間はまだ7時にもなってない。図書室にはもちろん、誰もいない。

 そんな中先輩は、訝しげに僕を見て

 

「これを、読んでみてください」

 

 僕は、そんな先輩に昨日作り上げた物語ーーその冒頭を先輩に渡した。

 

◇

 

「なに、これ」

 

 渡されたA4サイズの茶封筒を恐る恐ると言った手つきで開ける先輩。

 その様子を見て、僕はドキドキと胸が跳ねるのを感じる。

 

「これは……何?」

 

 そして中から20枚ばかりの用紙を取り出して尚もその答えに困る先輩に僕はガクッと膝が折れる。

 

「そのぉ〜、一応小説です。冒頭だけですけど」

「小説?」

「はい」

 

 ふぅ〜んとペラペラと紙をめくる先輩。

 悪気がないのは分かっているのだろうが、本当に心臓に悪い。

 

「これ、読んでいいの?」

「え、えぇまぁ、はい。そのために書いていたまだあるものですし」

「あなたが作りたいゲームのシナリオ?」

「あ、はい」

 

 トントン、と紙を揃える先輩。

 そしてそのまま封筒にしまうのかと思ったら、先輩は目の前で世にも恐ろしいことをしだした。

 

「え、ちょちょ、ちょ!」

「……何よ」

「よ、読むんですか?」

「あなたが読んでいいって言ったんじゃない」

「そ、そりゃあ言いましたけど……」

 

 それは今までの仕返しか何かだろうか。

 そう思って先輩の顔を見るも、不思議そうな表情を浮かべているだけで悪気はなさそう。

 それが余計怖かった。

 

「読んじゃだめなの?」

「いや、読んでは欲しいですけど」

「そ。それなら黙ってなさい。大丈夫、私読むのがは早いから20pくらいなら30分あれば終わるわ」

 

 そう言う問題ではない……のだが先輩はそう宣言して、手元に目を落とし読み始めてしまった。

 

 そうして、それからきっちり30分。

 僕は居た堪れなさと気恥ずかしさと、なんだかよくわからないこしょぐったい感覚と共にを過ごすそとになったのだ。

 

◆

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