導かれし魔剣戦士   作:神鳥ガルーダ

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プロローグ
神々の思惑


 勇者ダイが大魔王バーンを倒して約二年が過ぎた。

 彼の消息は未だ掴めていない。

 しかし、彼が生きているのは間違いない。

 だから、彼が帰ってくるまでこの地上の平和を守る事を彼らは誓っていた。

 そんな中、アバンの使徒の長兄であるヒュンケルは、竜の騎士親子(バランとダイ)に忠誠を誓う竜騎衆・陸戦騎ラーハルトと共に旅を続けていた。

 そして、パプニカ三賢者のエイミも想い人(ヒュンケル)の後を追う様に付いて来ていた。

 

 ☆★☆

 

 夜になり、ヒュンケルとラーハルトは夜営の準備を済ませ、焚き火の前に座り込んでいた。

 

ラーハルト

「やはり……ダイ様は見つからないな…」

 

ヒュンケル

「ただ歩き回っているだけでは見つからんだろうさ…」

 

ラーハルト

「やはり地上には居られないのだろうか?」

 

ヒュンケル

「生きているのは確実だが……ロン・ベルクの推測した通り、魔界かそれとも天界にいるのかも知れん…」

 

 彼らの旅の目的の一つは、行方不明のダイの捜索であった。

 彼ら以外の仲間達は、それぞれ大切な仕事がある。

 ダイを想うパフニカ王女レオナは、即位して女王となり、パフニカ王国を治めなければならなかったし、ダイの一番の親友であるポップは、大魔導士としてパプニカ王国に仕え、女王となったレオナの相談役を務めており、マァムはメルルと共にそんなポップを支えていた。

 無論、彼の師であるマトリフの様に側近たちに苛められることもない。

 先のマトリフの件を知ったレオナが、そんな事を許さないからだ。

 彼らの師であるアバンは故郷カール王国に戻り、フローラ女王と結婚し、カール王国の国王となっていた。

 先代の勇者であり、当代の勇者の師匠としての名声とカリスマ性を持って、フローラと共にカール王国再建に尽力していた。

 獣王クロコダイン、空手ねずみチウ、兵士(ポーン)ヒムや他の獣王遊撃隊の面々は、ダイの育った地であるデルムリン島に身を寄せており、時々、相互理解の為にデルムリン島には人間たちが訪れ交流を深めているらしい。

 北の勇者と呼ばれるノヴァは、先の大戦で、両腕に深手を負った魔界最高の名工ロン・ベルクに弟子入りし、彼の代わりに彼の武器『星皇剣』を完成させる為に、鍛冶屋としての修行に従事している。

 他の皆はこの様な事情があるので、ダイの捜索が可能なのはヒュンケルとラーハルトのみという事になっていた。

 ヒュンケルは、かつてパフニカ王国を一度滅ぼした身の為、如何に改心したとはいえ、一部のパフニカの重臣や役人たちに警戒されている。

 レオナやパフニカ三賢者であるアポロとマリン、そしてヒュンケルを愛するエイミやバダック等は、ヒュンケルを信頼しているが、すべてのパプニカの人間がヒュンケルを信頼しているわけではないのだ。

 ラーハルトは、そもそも人間を憎んでおり、親同然のバランの遺言と忠誠を捧げるダイが人間を守っているのでそれに従っているに過ぎない。

 ラーハルトにとって気を許せる人間は、互いの死を見取った戦友(とも)であるヒュンケルと親友(ダイ)に対する献身に対し尊敬を抱かせたポップ―――この二人はラーハルトの過去の悲劇を我が事の様に涙した事に関しても感じ入っている―――達、アバンの使徒くらいである。

 

 

 

 

 

 そこらに自生している果物や木の実などを採りに行っていたエイミも戻り、携帯していた干し肉などで夕食をとったヒュンケル達は、交代で睡眠をとろうとした時、異変が起こった。

 

エイミ

「ヒュンケル…あれを見て…!」

 

 上空に三つの光の玉が発生していた。

 

ヒュンケル

「な…何だ、あの光は?」

 

ラーハルト

「それぞれの光の中に何か居るぞ!?」

 

 中央の光の玉には竜の、左右の光の玉には人型のシルエットが浮かんでいた……いや、どうやら右側のシルエットは人間ではなく魔族の様だ。

 

ヒュンケル

「くっ……何という神々しさと威圧感だ…。ただの竜や魔族…ましてや人間に放てるモノではないぞ…!?」

 

ラーハルト

「ま……まさか…!?」

 

 大魔王バーン亡き今、これ程の力を発する者と云えば、魔界に封印されている冥竜王ヴェルザーを除けば神々しかいない。

 その時、三つの光の玉が凄まじい閃光を放ち、ラーハルトとエイミは余りのまぶしさに眼を覆った。

 閃光が治まり、二人が眼を開けると……その場にいる筈のヒュンケルの姿が無かった。

 

エイミ

「ヒュンケル!?」

 

ラーハルト

「バ…バカな…ヒュンケルが…消えた……!?」

 

 ☆★☆

 

 天界……三神の間。

 ここは、この世界を司る神々……竜の神、魔族の神、人間の神が一同に会する場所である。

 

竜の神

「済まぬな人間の神よ……我が盟友の頼みを聞き届けてくれて…」

 

魔族の神

「しかし何故、あの者なのだ?」

 

人間の神

「正直、私は彼をこれ以上戦いに駆り出したくはなかった。彼は先の大魔王との戦いで傷付きすぎた……何故、マスタードラゴン殿は彼を指名したのだ?」

 

竜の神

「それは我にも解らん。しかし、マスタードラゴン殿が是非にもあの者を切望してな……彼の頼みは無碍には出来んよ」

 

人間の神

「確かに…あのヒュンケルと申す者は人間の中では最強の戦士……今となってはポップと申す者と共に竜の騎士(ダイ)に次ぐ実力者だ……マスタードラゴン殿の世界で彼に対抗できる者など……封じられている地獄の帝王(エスターク)くらいではないか?」

 

魔族の神

「それどころか、精霊ルビス殿の世界の大魔王ゾーマ、竜王、破壊神シドー以外相手になるまい……ラーハルトやヒムと申す者たちもだが……な」

 

竜の神

「…そんな彼らを圧倒し、我らの世界を脅かした大魔王バーンは、本当に規格外だな…」

 

 同じ大魔王の称号を持つとはいえ、ゾーマなどバーンと比べると遥かに劣る。

 それどころか竜王やシドー、エスタークもバーンには遠く及ばない。

 

魔族の神

「他の世界と違い、この世界は我ら三柱の神によって司られている為、他の世界よりも『神の力』は強力な筈なのだが……」

 

人間の神

「彼奴は、それすらも上回りおったからな……」

 

竜の神

「そして、当代の(ドラゴン)の騎士は、その大魔王(バーン)すらも上回った…」

 

魔族の神

「歴代の竜の騎士にはない魂の力を持って見事に…な」

 

 本来、一代限りの竜の騎士に子供を作らせるという苦肉の策は、見事成功し、自分達を凌駕した大魔王を打倒する事に成功した。

 

人間の神

「話がそれたな…」

 

魔族の神

「うむ。あの者をマスタードラゴン殿の世界に送った事…果たして吉と出るか凶と出るか…」

 

竜の神

「もはや、我々神でも予想が付かぬ……な」

 

 こうして、アバンの使徒の長兄ヒュンケルの新たなる物語が始まった。

 神々の思惑により、ヒュンケルにどの様な運命が待ち受けると云うのであろうか?

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