導かれし魔剣戦士   作:神鳥ガルーダ

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謎の戦士デスピサロ

 ヒュンケルとアリーナ一行は、遂にエンドールに到着した。

 

アリーナ

「ここがエンドール……憧れの武術大会が行われている国!」

 

ブライ

「まずは、国王陛下に御拝謁せねばなりませぬな。我がサントハイムとエンドールは同盟国ですからな」

 

クリフト

「既に、サントハイムから姫様が訪れる事は、伝えられております」

 

ヒュンケル

「では、俺が宿をとっておくから、お前たちは王に拝謁して来い」

 

アリーナ

「えっ!?ヒュンケルはいかないの?」

 

ヒュンケル

「ああ。特に王と会う必要性はないだろう」

 

クリフト

「では、ヒュンケル殿は武術大会に出場されないのですか?」

 

ヒュンケル

「見世物の大会にはあまり興味がないんでな。それにアリーナ以外の参加者は、大会で名を売り、あわよくば王国に仕官しようという者が殆どだろう。俺はこの国に仕える気はさらさらない」

 

ブライ

「下手にヒュンケル殿の強さを知れば、エンドール王はヒュンケル殿をとりたてようとなされるかも知れませんな」

 

ヒュンケル

「俺が仕えたいと思う国は、2つしかありません」

 

 それは、師であるアバンが王となったカール王国と、自分の罪を許し正義の為に戦う道を指し示したレオナが女王を務めるパプニカ王国だけ……。

 しかし、カールはともかくパプニカに仕官する事は出来ない。

 女王や三賢者はともかく、他の重臣達がヒュンケルを警戒しているからである。

 どれだけ償っても、ヒュンケルがパプニカを一度滅ぼした事実は消えはしない。

 クロコダインが憧憬を抱いた様に、確かに人間は素晴らしい……が、バランが失望した様に人間は愚かしくもある。

 怪物(モンスター)を含め、最も矛盾を内包している生命体が『人間』という種なのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 宿を取ったヒュンケルは、アリーナ達が王に拝謁している間、酒場にいた。

 どの様な世界であれ、酒場とは情報を収集するには打ってつけの場所である。

 特に今は、武術大会を観戦する為、世界中から人が集まっているので、特に…。

 

???

「よう、兄ちゃん…1人かい?」

 

ヒュンケル

「いや、人を待っている…」

 

???

「そうかい……俺の名はスコット。兄ちゃんも武術大会の参加希望者かい?」

 

ヒュンケル

「いや、参加希望者の旅の連れだ」

 

スコット

「へぇ~…アンタほどの人が武術大会に参加しないとはね」

 

 このスコットという男も、それなりの実力者のようだ。

 最も、先に出会ったライアンという戦士よりは、遥かに劣るが……。

 

ヒュンケル

「アンタも武術大会に?」

 

スコット

「いや、俺は元々このエンドールで傭兵を生業にしている戦士でな……仕官には興味がないから、武術大会には参加しない」

 

ヒュンケル

「仕官……やはり、ほとんどの者はそれが目当てか」

 

スコット

「ああ。ここ最近、このエンドール周辺でも魔物が多く出没しているからな。国王はそれを対抗する為に強い者を集めているらしい……だが…」

 

ヒュンケル

「……!?」

 

 

 

 

 

 

ブライ

「まったく、この国のアホ……もとい国王陛下には呆れ返るわ!優勝者に姫君と結婚させるなどと軽はずみにも程があるわ!!」

 

 アリーナは、エンドール王とモニカ姫から、武術大会で優勝してくれる様、依頼された。

 最近の状況を鑑み、強い者を集める為に武術大会を開いたのはいいが、調子に乗って優勝者には娘であるモニカ姫と結婚させると言ってしまい、後になって後悔しており、同性であるアリーナが優勝すれば、結婚する事は出来ないので、丸く収まるとの事。

 

アリーナ

「ヒュンケルが参加しない以上、優勝は私に決まりなんだから、モニカ姫も望まない相手と結婚せずに済むってモノよ!」

 

ヒュンケル

「ほう、デスピサロという男が優勝間違い無しと噂になっているが……勝つ自信が在るのか?」

 

 ヒュンケルは先ほどのスコットから聞いた事が引っかかっていた。

 デスピサロ。

 人とは思えぬ程の強さで現在ただ1人、5人抜きを果たしている。

 ハンサムな顔立ちと、圧倒的強さで彼に憧れを抱く者が多数いる……しかし、デスピサロは対戦相手を全員殺しているので、恐れられてもいる。

 武術大会は勝ち抜き戦で、5人抜きを果たした2人によって決勝戦が行われる事になっている。

 つまり、既に5人抜きを達成したデスピサロは決勝進出が決まっており、もう1人の勝ち抜き者が決まれば、そのまま決勝戦となる。

 

アリーナ

「勿論よ。デスピサロは間違っているわ。試合は殺し合いじゃないわ!私がその事を思い知らせてあげるわ!!」

 

 戦いである以上、試合中に死者が出てしまう可能性があるのは確か……しかし、最初から殺す事を前提にするのは間違っている。

 それがアリーナの主張である。

 

ヒュンケル

「それ以前に、国の戦力増強が目的の武術大会で対戦相手を殺していては、意味がないな」

 

 ヒュンケルも先ほどスコットに連れられ、大会を覗いて見た。

 デスピサロは既に5人抜きを決めており、決勝戦の出場が決定しているが、それでも毎日の様に試合に出ている。

 そして毎回、対戦相手を殺しているのである。

 

ヒュンケル

(あれではまるで……強い戦士を間引いている様にしか見えん)

 

 そして何よりも問題なのが……デスピサロの実力はアリーナよりも遥かに上である点である。

 今戦えば、間違いなくアリーナが敗北する。

 そして、他の対戦相手の様にその命を絶たれる可能性が高い。

 その時は……。

 ヒュンケルはある決意を固めていた。

 

 

 

 

 

 翌日、武術大会に出場する為、コロシアムに向かうアリーナ達だったが、突如ヒュンケルが違う方向に歩き出した。

 

クリフト

「ヒュンケル殿!?」

 

ヒュンケル

「先に行け!」

 

 そのままヒュンケルは、アリーナ達から離れていった。

 

アリーナ

「どうしたのかしら?」

 

ブライ

「はて?」

 

クリフト

「気になりますが、もうすぐ時間です。ヒュンケル殿の言われた通り、先に行きましょう」

 

 

 

 

 

 アリーナ達とコロシアムに向かう途中、ヒュンケルはある男の影を見つけた。

 昨日から感じるその男から発せられるモノが気になり、アリーナ達から離れ、その男を尾行する事にした。

 ヒュンケルもかつては魔王軍六大団長の1人。

 元の世界での仲間である占い師のメルル程ではなくても、悪しき者の気配にはそれなりに敏感であった。

 そして、ヒュンケルは目撃した。

 その男―――デスピサロが、魔物と共にいる姿を……。

 自分と同じく怪物に育てられ、怪物に対し差別意識のないダイや、マァムを慕う空手ねずみのチウの様な存在を知っているので、人と怪物が一緒にいても、ヒュンケル自身は気にしない。

 しかし……デスピサロに付き従っている魔物は明らかに……野にいる怪物とは違う雰囲気をかもし出していた。

 

魔物

「…………」

 

デスピサロ

「…………」

 

 距離が離れているのと、小声で話しているので、会話の内容はいまいち聞きとれないが、何かを企んでいる様だ。

 

デスピサロ

「誰だ!」

 

 どうやら隠れて自分達を窺っている事に気付いたデスピサロは、ヒュンケルに対し『閃熱呪文(ギラ)』を撃ってきた。

 ヒュンケルはそれを飛び上がって難なく躱すと、デスピサロの正面に着地した。

 

デスピサロ

「人間……見たな!」

 

 ヒュンケルがそれに答えようとすると、デスピサロは剣を抜き放った。

 

デスピサロ

「問答無用!死ね!!」

 

 デスピサロの合図に回りに潜んでいたと思われる魔物達が一斉にヒュンケルに襲いかかってきた。

 しかし……。

 

デスピサロ

「何だと!?」

 

 5分と経たない内に、全員ヒュンケルに斬り伏せられた。

 襲ってきた魔物達は、このエンドール地方に生息している者達ではなく、すべてデスピサロ直属の魔物達であった。

 

魔物

「デスピサロ様!?」

 

デスピサロ

「まさか、これ程の人間がいるとはな……貴様、武術大会の参加者か?」

 

ヒュンケル

「…いいや」

 

デスピサロ

「…そうか……強い者すべてが参加するわけではない……か」

 

 デスピサロは先ほど抜いた剣を構えると、ヒュンケルに向かって斬りかかった。

 ヒュンケルも、それを迎えるべく剣を振るう。

 2人の体が交差する。

 そして……ヒュンケルの頬に一筋の傷が出来ていた。

 

デスピサロ

「フフフ…本当に人間にしてはやるな…」

 

 デスピサロは、自分が与えた傷を見ながら、不敵な笑みを向けた。

 

ヒュンケル

「……そんな減らず口が叩けるとは、浅かったか?」

 

デスピサロ

「…何…っどういう…!?」

 

 ヒュンケルの言葉の意味を問い質そうとしたその時、デスピサロの胸部に激痛が走った。

 

デスピサロ

「ぐおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 なんと、デスピサロの胸部から血が吹き出していた。

 さきほど交差した時のデスピサロの剣はヒュンケルの頬を掠めた程度だったが、ヒュンケルの剣はデスピサロの胸を斬り裂いていたのだ。

 

デスピサロ

「ば…馬鹿な!?」

 

 斬られた事に気付かなかったデスピサロは、明らかに動揺していた。

 その為、ヒュンケルの追撃に気付くのが遅れた。

 直前に気付き、なんとか体を捻って躱すも、肩を斬られた。

 もし、気付くのがあと一瞬遅ければ、デスピサロの首は、胴からさよならしていただろう。

 

魔物

「デスピサロ様!」

 

デスピサロ

「人間……貴様、名前は?」

 

ヒュンケル

「……ヒュンケル」

 

デスピサロ

「そうか……今日の所は私の負けだ。私はこれからするべき事があるので退くが…覚えているがよいヒュンケル。この屈辱は必ず晴らす!」

 

 デスピサロは、そう言い捨てると部下と共に『瞬間移動呪文(ルーラ)』で、去って行った。

 

ヒュンケル

「デスピサロ……やはり今のアリーナではまず勝ち目がなかったな」

 

 今回の戦いは、ヒュンケルが圧倒したが、それはデスピサロがヒュンケルを侮っていたのが原因だ。

 そうでなければ頬の傷だけでは済まなかっただろう。

 ブランクがあり、大魔宮(バーンパレス)突入時より弱体化している今のヒュンケルでは……だが。

 デスピサロの実力は六大団長を上回り、昇格(プロモーション)前のヒムと同レベルといった所である。

 アリーナには悪いが、ここでデスピサロを退けられて良かったといえよう。

 もし、今回の事がなく、大会でアリーナと対決していれば、間違いなくアリーナは負けていた。

 その時、デスピサロがアリーナを殺そうとしたら、ルール違反を承知で試合に割り込むつもりだったのだから…。

 

ヒュンケル

「それにしても、奴のするべき事とは一体…?」

 

 後にヒュンケルは後悔する事になる。

 今ここで、デスピサロを討てなかった事を…。

 

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