導かれし魔剣戦士   作:神鳥ガルーダ

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武術大会

 ヒュンケルがデスピサロと対峙していた頃、アリーナは控え室で試合に備えていた。

 控え室にある道具屋で、自分にびったりの武器『鉄の爪』を購入し、念の為に薬草も買い込んでいた。

 

アリーナ

「備えあれば憂い無し…って奴ね」

 

ブライ

「姫様にしては慎重ですな」

 

アリーナ

「自信はあるけど油断はしないわ。優勝するつもりなんだから、僅かの油断でそれを逃すのは悔しいじゃない。最後にそんな情けない姿をヒュンケルに見られたくないし…」

 

 と、ここでアリーナの顔に翳りが浮かんだ。

 昨夜、ヒュンケルと話した事を思い出したからだ。

 

 

 

 

 

アリーナ

「えっ!?ここで別れる?」

 

ヒュンケル

「ああ。このエンドールは世界一の大国。いろいろな人が集まる国だ。闇雲に世界を回っても手掛かりが見つかるとも思えんのでな。しばらくはこの国を拠点として、情報を集めたい」

 

 ヒュンケルの目的は、元の世界に帰る方法を探す事。

 今までアリーナ達と共に旅をして来たのは、異世界に跳ばされ右も左も解らない状況だったからに過ぎない。

 しかし、異世界に帰る方法などそう容易く見つかる物でもない事も理解している。

 だからこそ、拠点と呼べる場所が必要であり、世界一の大国であるこのエンドールならば、色々な情報が集まるだろう。

 それに…。

 

ヒュンケル

「それに、いつまでも武者修行の旅に俺が同行するのは逆効果だろう…」

 

アリーナ

「そ…それは…」

 

 今までの旅では、怪物(モンスター)の不意打ちには常に背後を守ってくれていたヒュンケルによって防がれていた。

 これが普通の旅ならば、それでも良いが『武者修行』の旅において、それでは駄目だ。

 実力が違いすぎるヒュンケルに守られる事で、無意識の内に依存し始めている事はアリーナも自覚していた。

 

アリーナ

「そうね。ヒュンケルに追いつく為には、いつまでもヒュンケルに頼っていちゃ駄目だよね」

 

 アリーナは自分に言い聞かせる様に呟いた。

 

 

 

 

 

 

 頭では理解している。

 しかし、感情が拒否していた。

 ヒュンケルと別れたくない。

 これからも一緒にいたい。

 そんな感情が、次々と溢れてくる。

 でも、それと同時にヒュンケルと対等の強さを身に付けたいとも思っている。

 ヒュンケルの横に立つに相応しい強さ、ヒュンケルと背中を任せ合える存在になりたい。

 アリーナは、自覚した。

 自分がヒュンケルにどの様な想いを抱いている事を……。

 だからこそ…。

 

アリーナ

「ヒュンケルに無様な姿は見せられない。いつまでもヒュンケルに頼るような女が、ヒュンケルに相応しいなんて思えない。強くなって今度再会する時にヒュンケルに相応しい存在になる為に…」

 

 ★☆★

 

 デスピサロとの戦いの後、ヒュンケルは急いでコロシアムに向かった。

 アリーナがもう1人の連れがいる事を兵士達に伝えてくれていた様で、ヒュンケルは誰にも咎められる事なく、試合場に辿り付いた。

 

ブライ

「おお。ヒュンケル殿」

 

クリフト

「遅いですよ、もう姫様は4人抜きしていますよ」

 

 ヒュンケルが到着する前にアリーナは、武闘家のミスターハン、クロスボウの使い手ラゴス、魔法の使い手(なぜかバニー姿)ビビアン、重厚な鎧戦士サイモンを次々と倒し、遂に決勝戦までリーチをかけていた。

 

進行役

「次の対戦相手は、ベロリンマンです」

 

 勝ち抜き戦最後の相手は……なんと、長い舌を毛むくじゃらの魔物であった。

 

クリフト

「何故…怪物(モンスター)が…?」

 

ヒュンケル

「さあな……しかし、もし仮にアイツが優勝したら、姫君と結婚する事になるのか?」

 

ブライ

「いくら何でも怪物を王とするわけにいかんでしょう……と、言う事はあやつが優勝しても、ここの姫の結婚話なかった事になるのぅ」

 

 

 

 

 

 試合開始と同時になんとベロリンマンが分身し、4体に増えた。

 

アリーナ

「な…何なのよコイツ!?」

 

 アリーナは驚きながらも、右から二番目のベロリンマンに鉄の爪を振るった……が、スルリとすり抜けてしまった。

 

アリーナ

「コイツじゃないの!?キャア―――ッ!!」

 

 空振ったと同時にベロリンマンが吐き出した火の玉の直撃を受け、アリーナはその場に倒れこんだ。

 

クリフト

「姫様!」

 

アリーナ

「だ…大丈夫よ…」

 

 立ち上がったアリーナは、再びベロリンマンが分身するのを見て舌打ちした。

 

アリーナ

「今度こそ…!」

 

 しかし、またも攻撃したのは本体ではなく、空振りした後、ベロリンマンに殴り飛ばされた。

 

アリーナ

「本物がわからなければ、どうしようもないじゃない……どうすれば…」

 

 流石のアリーナも相手に翻弄され、為す術がなかった。

 

ヒュンケル

「アリーナ!目に頼るな!!」

 

アリーナ

「目に頼るな……!?」

 

ヒュンケル

「相手はただ分身しているだけだ。目で見るのではなく感じ取れ!!」

 

アリーナ

「目で見るのではなく…感じる…!?」

 

 目で見たら惑わされる、耳で音を聞き分け様にも観客の歓声によってそれも困難な今の状況で、感じ取れとはどうすればいいのか…。

 

アリーナ

「…そういえば!?」

 

 

 

 

 

 

 あれは、エンドールに来る前にクリフトと一緒にヒュンケルに稽古つけてもらった時の事。

 クリフトとヒュンケルが模擬戦をしていた時、クリフトはヒュンケルに『幻惑呪文(マヌーサ)』をかけた。

 『幻惑呪文』で惑わされたヒュンケルに、クリフトは後ろから攻撃を仕掛けたが、ヒュンケルの裏拳を顔面にくらい、鼻血を出しながらその場に蹲った。

 

ヒュンケル

「心眼を頼りにすれば『幻惑呪文』などに惑わされる事はない…覚えておけクリフト。そこいらの怪物ならともかく一流の戦士に対しては『幻惑呪文』など何の役にも立たん事を…」

 

 

 

 

 

アリーナ

「私に出来るかどうかわからないけど…」

 

 やるだけの事はやって見ようと目を閉じた。

 

アリーナ

「……後にいるのは、クリフト、ブライ、そしてヒュンケル……そして私達を囲む様にあるのは観客たち……」

 

 アリーナも城から飛び出して、これまで数多くの怪物達と戦闘を繰り返してきた。

 その戦いの中で、相手の気配を探れるまで感覚を鋭く出来る様になっていたのだ。

 そして、自分に対し敵意を向けている気配を察知した。

 

アリーナ

「タァァァァァァァァァァ!!」

 

 目を開いたアリーナは、その気配に向かって必殺のキックを放った。

 

ベロリンマン

「グギャァァァァァァァ!!」

 

 見事な会心の一撃が、ベロリンマンの顔面にヒットし、ベロリンマンはその場で倒れこんだ。

 

進行役

「アリーナ姫さま 5人勝ちぬき!」

 

 こうしてアリーナの決勝進出が決定した。

 

 ★☆★

 

エンドール王

「アリーナ姫よ、よくぞ勝ち抜いた!さあ!これより、いよいよ決勝戦じゃ!デスピサロをこれへ!」

 

 しかし、デスピサロは一向に姿を見せなかった。

 兵士達が探しにいったが、デスピサロは姿をどこにもいなかった。

 

エンドール王

「いない者は仕方あるまい!武術大会はアリーナ姫の優勝じゃ!」

 

 優勝の宣言と同時に観客達の大歓声が響き渡った。

 

クリフト

「姫様。優勝おめでとうございます!」

 

ブライ

「姫様!やりましたな!」

 

 クリフトは感激の涙を流しながら、ブライも武術大会に出場する事にぶつぶつ言っていたにも係らず、今は素直に祝福していた。

 アリーナはヒュンケルの方に視線を向けた。

 ヒュンケルも自分の優勝を喜んでくれている…と、思ったがヒュンケルは何やら考え事をしているかの様に、対戦相手側の入場門を見つめていた。

 

ヒュンケル

(やはり、奴は何らかの目的を果たす為、武術大会を放り出したのか……奴の言っていた『するべき事』とは一体…!?」

 

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