導かれし魔剣戦士   作:神鳥ガルーダ

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癒えた体

ヒュンケル

「……こ…これは一体!?」

 

 気が付けばヒュンケルは広い平原に立っていた。

 ついさっきまで洞窟の前で夜営していたのに、空は明るく居る場所が変わっている。

 あの光に包まれ、別の場所に転移させられた様だった。

 

ヒュンケル

「……それにしても…あれが『神々』なのか?何の目的で俺を……」

 

 何故、世界を治める神々が自分の前に現れたのか?

 そして、ここは何処なのか?

 ヒュンケルが考えてようとした時、周囲から怪物(モンスター)の気配を感じた。

 どうやら一匹ではなく、複数いる様だ。

 

ヒュンケル

「な…何だ、あの怪物は?」

 

 現れた怪物は、牛と鳥を合わせた様な姿をしており、ヒュンケルが見たことがない種族だった。

 周知の通り、ヒュンケルは元・魔王軍六団長の一人、不死騎団長。

 不死(アンデット)系の怪物達を率いていたとはいえ、他の軍団を構成している怪物達も熟知している。 

 そして、親友のクロコダインが率いた百獣魔団は、動植物系の怪物の集まりだが、この様な怪物は存在していなかった。

 ならば、魔界の怪物なのだろうか?

 流石のヒュンケルも魔界の怪物全てを把握している訳ではない。

 全知全能と云われる大魔王バーンですら、広大な魔界全ての怪物を把握していたか定かではないのだから…。

 

 ☆★☆

 

 牛と鳥の怪物…『暴れ牛鳥』はヒュンケルの前に出るといきなり突進してきた。

 この怪物の特徴は、牛の体躯を利用した体当たりで、まともに喰らえば強靭な戦士ですら致命傷を負うとされる。

 ヒュンケルはその攻撃をジャンプして躱し、剣を抜いてその脳天に斬撃を打ち込んだ。

 斬撃は、見事に暴れ牛鳥を真っ二つし両断した。

 

ヒュンケル

「…な…何ッ!?」

 

 ヒュンケルは、自らの体のに調子に驚いた。

 とても体が軽く、痛みもなかったからだ。

 ヒュンケルは、先の大魔宮(バーンパレス)でのヒムとの死闘、そしてその後に奇襲してきたマキシマムの超金属(オリハルコン)軍団との戦いで回復不能の深刻なダメージを負っていた。

 回復呪文(ベホマ)ですらも完治させるのが不可能だった筈のヒュンケルの体が完全に癒えていたのだ。

 

ヒュンケル

「……一体、どうなっているんだ…?」

 

 自らに起こった奇妙な出来事……。

 だが次の瞬間、ヒュンケルにある感情が湧き上がってきていた。

 それは…『歓喜』。

 

ヒュンケル

「フフフ……ハァーハッハッハッ!」

 

 ヒュンケルは、先の戦いで傷付いた事を後悔してはいない。

 結果、二度と戦えない体になったが、最後の最後まで戦い、そしてヒムを救えた…。

 この事自体に後悔はなかった。

 ラーハルトの言うとおり、戦闘マシーンになりきれない自分は、ある意味戦士失格なのかも知れない。

 それでも、やはり戦いの中で生きてきたヒュンケルにとって、戦闘力を喪った事で、物足りなさを感じていたのだ。

 だが、今は違う。

 理由は解らないが、今、自分の体は完治した。

 多少のブランクは感じるが、そんなモノはいつでも取り戻せる。

 何度も言うが、傷付いた事に後悔はない。

 しかし、五体満足な体のありがたさは、この二年で痛いほど理解していた。

 魔王の邪悪の意思が無くなった事により、怪物達は穏やかになったが、『魔のサソリ』の様に元々、凶悪な怪物も多く存在している。

 そんな怪物と遭遇した時、ラーハルトの後ろで戦いを見ているだけの自分が情けなかった。

 

ヒュンケル

「……!?」

 

 その時、ヒュンケルは気付いた。

 目の前の怪物は、確かに見たことが無い種族の怪物だが……生来、凶暴な怪物なのだろうか?

 中には戦闘中にも関らず、眠っている奴もいる。

 ヒュンケルは、魔法が使えないので睡眠呪文(ラリホー)は使えないし、始めから眠っていた。

 そんな怪物が、魔王の邪悪な意思無くして、人間を……しかも確実に自分達よりも強い相手に襲い掛かってくるのか?

 答えは…否だ。

 動物系のモンスターは獣である故に、魔王の邪悪な意思に操られでもしない限り、本能的に自分よりも強い者と敵対はしない。

 中には『メタルスライム』や『はぐれメタル』など邪悪な意思に操られながらも、直ぐに逃げる怪物も存在するが……。

 先ほどの突進だが、並の人間ならば致命的なダメージを受けるだろうが、ヒュンケルには通用しない。

 ヒュンケルは、体は細身だがそれなりに力はある。

 少なくともクロコダイン級以上のパワーでもない限り、力負けする事はない。

 現に、ヒュンケルは竜騎将バラン配下の竜騎衆一の剛力を誇る海戦騎ボラホーンの渾身の一撃を、片手で受け止めている。

 ボラホーンのパワーに比べれば、種族の中で最弱の暴れ牛鳥程度の突進など、児戯にも等しい。

 つまり、それ程の力量差があるのに、目の前の暴れ牛鳥は逃げようともせず、眠っている者を除き全員、ヒュンケルに向かって来て、叩っ斬られていた。

 

ヒュンケル

「……今、考えても仕方が無いか……。今はとにかくラーハルト達と合流しなければならないが……ここは何処なのだろう?」

 

 ヒュンケルは、未だ自分が異世界に送られた事に気付いていなかった。

 

 ☆★☆

 

天空人A

「御体は大丈夫でしょうか?マスタードラゴン様」

 

マスタードラゴン

「うむ。問題はない…少し疲れたがな」

 

天空人B

「今の弱まった御力で、再起不能なダメージを完全に癒す等……御体にさわりますぞ!」

 

マスタードラゴン

「何…このくらいは大丈夫だ。それにあの者の体を癒さねば、三神に頭を下げてまで借り受けた意味があるまい…」

 

天空人A

「しかし何故、あの男なのですかな?」

 

天空人B

「ポップとかいう魔法使いの少年でもよかったのでは?」

 

マスタードラゴン

「確かに……あの戦いで最も成長したのはポップと申す少年だが、私が『導かれし者』に相応しいと思うのは、彼よりもヒュンケルの方なのだ」

 

天空人A・B

「「……!?」」

 

マスタードラゴン

「……何れは解ろう。『魔法使い』では無く『戦士』を選んだ理由がな……」

 




次回、

第一章 お転婆姫の冒険

パックアップデータ消失の為、1から書き直します。
その為、暁での投稿時と内容が変わると思います。
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