導かれし魔剣戦士   作:神鳥ガルーダ

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圧倒的実力

 フレノール南の洞窟。

 うっそうとした森の中にその口を開ける小さな洞窟で、争いの元となる『黄金の腕輪』が封印されている。

 その洞窟に足を踏み入れたヒュンケルとアリーナ一行は、攫われた偽姫を救う為にその『黄金の腕輪』を求めて奥深くへと入っていった。

 歩を進める度に目に付く人骨。

 

ヒュンケル

「……恐らく封印された宝を求めてこの洞窟に入り、怪物(モンスター)の餌食となった者たちの成れの果てだろう…」

 

ブライ

「我らも、彼奴らの二の舞にならない様に注意せねば……」

 

クリフト

「御体は大丈夫ですか……姫様?」

 

アリーナ

「ええ。普通に歩くくらいなら問題はないわ…」

 

 『暗黒闘気』によって傷付いた体を気遣うクリフトに、アリーナは笑顔で応えた。

 

ヒュンケル

「クリフトとブライ殿はとりあえず背後から来る敵のみに気をつけてくれ」

 

クリフト

「背後からのみ…ですか?」

 

ヒュンケル

「ああ。まったく警戒しなくていいとは言わないが……正面からの敵は余り気にしなくていい」

 

 等と話していると進行先から複数の蝙蝠の群れが襲い掛かってきた。

 この洞窟に棲息する怪物の一種『吸血蝙蝠』である。

 アリーナたちが身構え応戦しようとしたとき、ヒュンケルが鋼の剣を抜刀……。

 その時に発生した剣圧によって、吸血蝙蝠達は真っ二つになっていた。

 

「行くぞ!」

 

 唖然としたアリーナ達を一瞥するとヒュンケルは歩を進め、アリーナ達は慌てて後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

アリーナ

「す……凄い…」

 

クリフト

「な……なんという人なんでしょう…」

 

ブライ

「ま……まさかこれほどとは…」

 

 洞窟の奥に進む度にアリーナ達はヒュンケルの実力に圧倒された。

 この洞窟に棲息する怪物である『ベビーマジシャン』、『お化け茸』、『暴れ牛鳥』、『メラゴースト』、『テベロ』、『ラリホービートル』、『鬼小僧』、『鶏冠(とさか)蛇』、『吸血蝙蝠』が次々と襲い掛かってくるが、まったく苦も無く屠っていた。

 時々、ヒュンケルが正面からの敵に対処している間に、背後から襲い掛かってくる敵もいたが、アリーナ――無理をするな……と言われたが結局、参加している――達が応戦している間に、正面の敵を片付け、すぐさま背後の敵に対応してしまうのだ。

 

ブライ

「公務で他の国を訪れた際、その国の軍事教練などを拝見させてもらった事もありますが……あれほどの手垂れにはお目にかかったことがない…強力な王宮戦士を擁するバトランドにもあれほどの戦士がいるかどうか……」

 

アリーナ

「…………」

 

 アリーナはブライの言葉を聞きながらヒュンケルに魅入っていた。

 そして、世界の広さを実感した。

 城で兵士たち相手に組み手などを行っていたが、自分の国の兵士にはあれほどの手垂れはいない…。

 誰もアリーナに勝てる者はいなかった。

 最初は、姫である自分に対し本気になれないからだと思っていたが、実際は下手に手加減すると自分の身が大怪我をしていまうので兵士達は割と本気でアリーナの相手をしていたのだ。

 だからこそ武者修行の旅に出たのだが……。

 

アリーナ

「あのヒュンケルに出会えた事だけでも、武者修行の旅に出て良かったわ」

 

 今の自分ではどう足掻いてもヒュンケルには勝てない。

 正直、ヒュンケルの動きを追うのでやっとだ。

 にも拘らず、ヒュンケルの方はまだまだ余力を残している様子だ。

 つまりアリーナが追えない程の実力を見せながら、ヒュンケルは実力の全てを見せていないという事になる。

 だが、アリーナが気になっているのはヒュンケルの強さだけではない。

 ヒュンケルの澄んだ瞳に映る哀しげで淋しそうな色……。

 きっと彼は何か重い物を背負っているのではないか……。

 この時から、アリーナにとってヒュンケルは気になる存在となった……。

 

 ☆★☆

 

 洞窟B2Fの奥。紋章が彫られた床の上に置かれた宝箱の中に、『黄金の腕輪』が眠っていた。

 

クリフト

「これが、黄金の腕輪…」

 

ブライ

「苦労して手に入れた物が悪党共の手に渡ると考えると腹立たしいですな……」

 

アリーナ

「……そう?ヒュンケルのお陰で結構楽だったじゃない…」

 

ヒュンケル

(…やはり解せないな……この洞窟に巣食う怪物達は外の奴等よりは強いのも居たが……それでもあの2人からすれば苦にもならん筈……洞窟に充満する聖なる力も『破邪呪文(マホカトール)』には遠く及ばない…。なのに何故…奴等は自分達で取りに来なかった?)

 

 宝箱から『黄金の腕輪』を取り出し、常備している『ふくろ』にしまっているアリーナ達を見ながら、ヒュンケルは考えていた。

 

アリーナ

「…どうしたのヒュンケル?」

 

ヒュンケル

「いえ、何でもありません。それでは戻るとしましょう」

 

アリーナ

「ねぇ……私と話す時はいちいち丁寧じゃなくてもいいよ…」

 

ヒュンケル

「ですが…」

 

アリーナ

「ううん。むしろ普通に話してほしいの……」

 

 アリーナが上目遣いでヒュンケルを見る。

 

ヒュンケル

「…わかった。これでいいか姫」

 

アリーナ

「…『姫』じゃなくて、呼び捨てでいいよ」

 

ヒュンケル

「……アリーナ…」

 

アリーナ

「…うん」

 

クリフト

「……姫様!?」

 

ブライ

「……いけません!」

 

 アリーナの発言に慌てて静止をかける従者2人。

 

アリーナ

「さあ、早くフレノールに戻りましょうヒュンケル!」

 

 アリーナは2人を無視してヒュンケルの手を取って、来た道を戻り始めた。

 『暗黒闘気』による傷はまだ癒えていないのに、なかなかタフな姫君であった。

 

クリフト

「姫様~~~~~~~!!」

 

ブライ

「まったく……御自分の身分を御考え下され……」

 

 ☆★☆

 

 約束の時刻となり、ヒュンケルとアリーナ達は村の墓地に来ていた。

 

覆面男

「どうやら約束のブツは持ってきた様だな。早くこっちへよこしな!」

 

 例の黒ずくめの男たちを引き連れた覆面男に『黄金の腕輪』を手渡そうとヒュンケルが近付くと、覆面男がそれを止めた。

 

覆面男

「待ちな!それ以上近付かずこっちに投げてよこせ!もし妙な真似をすると姫様の命はないぜ!」

 

 覆面男だけなら、ヒュンケルだけで対処できるが黒ずくめの男達はそうはいかない。

 先日の戦闘を見る限り、実力的にはヒュンケルの方が上なのだが、それでも簡単に無力化できる相手ではない。

 黒ずくめの男たちと戦っている間に、偽姫に危害を加えてくるだろう。

 ヒュンケルはやむを得ず、『黄金の腕輪』を覆面男の方に投げ渡した。

 

覆面男

「確かに受け取ったぜ……じゃあ、姫様は返してやるよ、では先生方……行きましょう」

 

 覆面男は、偽姫をヒュンケルの方に押し出すと黒ずくめの男たちを促して逃げようとした……が…。

 

黒ずくめの男A

「……キィーヒッヒッヒッヒ!もはや貴様には用はないわ……死ね…火炎呪文(メラゾーマ)!!」

 

覆面男

「なっ…て…てめぇ…ぐぎゃああ――――っ!!」

 

 黒ずくめの男が放った『火炎呪文(メラゾーマ)』によって、覆面男は焼き殺されてしまった。

 

偽姫

「ヒッ……ヒィィィ―――!!」

 

 人が焼け死ぬ光景を目の当たりにし、偽姫はその場で失神した。

 

アリーナ

「あなた……どういうつもり!!」

 

クリフト

「なんと……むごい事を…」

 

ブライ

「…仲間を裏切り、焼き殺すとは……外道めが…」

 

 黒ずくめの男の行動を見て、不快感を示すアリーナ達。

 

黒ずくめの男A

「キィーヒッヒッヒッ…仲間じゃと…我等が人間如きを仲間にするはずがあるまい…」

 

 そう言うと、黒ずくめの男達は被っていたフードを脱いだ。

 その容貌は確かに人間に近いが、人間ではなかった。

 そして、ヒュンケルからすれば……片方の男は見慣れた男だった。

 ヒュンケル達『アバンの使徒』が戦った相手の中で、最も卑怯で卑劣で、尊敬とは対極の感情を抱かせた男。

 

ヒュンケル

「貴様…生きていたのか!妖魔司教ザボエラ!!」

 

???

「…ザボエラじゃと……あんな奴と一緒にするな!!」

 

ヒュンケル

「何ッ!」

 

???

「儂の名はデボエラ……妖魔主教デボエラじゃ!」

 

ヒュンケル

「……妖魔主教デボエラだと!?」

 

 ザボエラと瓜二つといって良い容姿の男…デボエラが嫌悪の表情で言い返してきた。

 

???

「まあ、似ているのも無理はない。こやつとザボエラは従兄弟同士だからな…」

 

ヒュンケル

「ザボエラの従兄弟だと!」

 

デボエラ

「……それにしてもザボエラを知っておるとは……なるほど…どうやら貴様は我らと同様、この世界の住人ではないようじゃな…」

 

ヒュンケル

「どういうことだ!?」

 

デボエラ

「この世界は、我らの居た世界と別の世界……すなわち異世界だということじゃ!」

 

 デボエラの返答に、ヒュンケルは目を見開いた。

 

 




 デボエラの称号を妖魔主教としたのは、こいつがザボエラの従兄弟で、妖魔力もザボエラと同格なので、こういう称号を付けました。
 主教とは、カトリック教会の司教に相当する役職で、東方正教会やカトリック教会とプロテスタントの中間として位置付け、中道を辞任する聖公会での呼び方です。
 プロテスタントの呼び方である監督にしようかと思いましたが、妖魔監督……なんか微妙なので……。
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