導かれし魔剣戦士   作:神鳥ガルーダ

7 / 16
砂漠のバザーへ

 フレノールを後にしたヒュンケルとアリーナ達は南に向かっていた。

 目指すは砂漠で行われているバザーである。

 先の偽姫誘拐騒動の事もあるので、まだブライは旅を続ける事に難色を示していたが、アリーナはまったく聞く耳を持たず旅を続けるのだった。

 

ブライ

「まったく、姫様には王女としての自覚という物がないんじゃから…」

 

クリフト

「まあまあブライ様。ヒュンケル殿の存在が姫様の好奇心を更に膨らませてしまったんですよ……何せ異世界の人間で、姫様ですらまったく歯が立たない達人なんですから…」

 

ブライ

「まったく……厄介な御人と知り合ってしまったわ……トホホ…」

 

 前を歩いているヒュンケルとアリーナを見ながら、ブライはため息を吐いていた。

 

 

 

 

 

 

 南の洞窟を越え、砂漠に足を踏み入れたその時、アリーナ達は怪物(モンスター)の群れに襲われた。

 砂漠に棲息するミミズ『サンドマスター』3匹と二足歩行のドラゴン『コドラ』が1匹。

 応戦する為、ヒュンケルが鋼の剣を抜こうとするとアリーナがそれを押しとどめた。

 

ヒュンケル

「アリーナ!?」

 

アリーナ

「ヒュンケルは手を出さないでくれる」

 

ヒュンケル

「何ッ…どういうことだ…!?」

 

アリーナ

「ヒュンケルが戦うと、あっという間に終わってしまうから……私の修行にならないのよ…」

 

 アリーナは物見遊山ではなく、武者修行の為に旅に出てきたのだ。

 そうでなければ、御供をクリフトとブライだけにせず、護衛部隊を引き連れてきただろう。

 本当はクリフトとブライすら連れず、一人で旅をする予定だったくらいだし……。

 

ヒュンケル

「…そうか……ならば、俺は手を出さず下がっていよう…」

 

 ヒュンケルも納得し、引き下がる。

 実戦に勝る修行はない。

 ヒュンケルはその典型的な例を知っている。

 弟弟子のポップがそうだ。

 アバンと共にいたころのポップは、1年間修行したにも拘らず、甘えん坊な性格が災いし、全然目が出なかった。

 初めて会った当初、ヒュンケルにとってポップは雑魚……とまでは言わないが、ダイのおまけ程度の認識だった。

 しかし、アバンがハドラーに敗れ、ダイと共に魔王軍と戦っているうちに、着実に実力を付けていき、最終決戦において、ポップはヒュンケルでも勝てるかどうか解らないほどの魔法使いに成長したのだ。

 

アリーナ

「ありがとうヒュンケル。いくわよブライ!クリフト!」

 

ブライ、クリフト

「「はっ!!」」

 

 

 

 

 

 砂中から遅い来るサンドマスターを屠りながら、アリーナはコドラに向かって行った。

 コドラはドラゴンの一種であり、この砂漠に棲息する怪物達の中ではそれなりに手強い。

 通常の攻撃はともかく、ときおり放つ痛恨の一撃を喰らえば、並の戦士などは一撃で即死してしまう。

 そして巨体でありながら、この砂漠に棲息する怪物の中では素早い。

 それに砂漠ということもあり、砂に足を取られアリーナも自慢の素早さを生かすことができていないが、コドラの足は砂の上でも平地の様に動ける為、素早さはアリーナを上回っていた。

 

ブライ

「姫様…!」

 

クリフト

「危ない!!」

 

 砂に足が取られるため、自慢のキックもいつものキレがない。

 

ヒュンケル

「ブライ殿……こういう時は敵の最も得意とする武器を潰すことです……」

 

クリフト

「敵の最も得意とする武器……ですか?」

 

ブライ

「コドラの武器……そうか。姫様、援護いたしますぞ…氷系呪文(ヒャド)!」

 

 ブライの『氷系呪文(ヒャド)』がコドラの足を氷らせ、動きを止める。

 そう、素早く動く敵ならば、その足を潰せばいいのだ。

 

アリーナ

「はあぁぁぁぁぁ!」

 

 アリーナのキックが見事コドラの顎に決まり、コドラはその場に倒れこんだ。

 

ブライ

「ヒュンケル殿、助言(アドバイス)忝い」

 

クリフト

「よろしいのですか?姫様は手を出すなとおっしゃってましたのに……」

 

ブライ

「ヒュンケル殿が出したのは手ではなく口じゃ。熟練者からの助言を聞き、それを糧とするのも修行じゃ」

 

クリフト

「おや、ブライ様。姫様の武者修行をお認めになられたのですか?」

 

ブライ

「本心を言えば直ぐにでも城に戻っていただきたいのじゃが……まったく、一国の姫君ともあろう御方が…ブツブツ…」

 

ヒュンケル

「姫君だからといって、おしとやかでなければならない……というわけではあるまい」

 

 ブライの嘆きにヒュンケルが異を唱える。

 

ヒュンケル

「俺の知人である姫君は、アリーナに負けないくらいお転婆姫だったらしいが……今では女王として立派に国を治めておられる」

 

 言いたい事はずけずけと包み隠さず口に出し、物怖じせず活動的で他人の恋愛事情に興味津々で首を突っ込みたがる俗っぽいところもあるが、魔王軍の侵攻により父王が行方不明になったときは、それが逆にカリスマ性となり、配下と共に国を支え、勇猛果敢な姫君として各国にその名を轟かせと、前大戦においての名を馳せたカール王国のフローラ王妃と並び称される存在となっている。

 有事の際には、蝶よ花よと愛でられる姫よりも、レオナやアリーナの様な行動的な姫の方が求められるのかもしれない。

 

アリーナ

「ヒュンケル……砂漠のバザーが見えてきたわよ」

 

 戦闘中は気付かなかったが、どうやら目的地に近付いていた様だ。

 

ヒュンケル

「…ほう、あれが砂漠のバザーか?」

 

アリーナ

「そう。フレノールで聞いた話じゃけっこう賑わいをみせているようよ…」

 

 やはりアリーナも女の子……ショッピングに胸を躍らせているようだ。

 

アリーナ

「いい武器が買えればいいな……防具はいいの……ちょっと強力な武器があれば…」

 

ヒュンケル

「…………(汗)」

 

 普通の女の子とベクトルは違うようだが……。

 

クリフト

「…ひ……姫様……(涙)」

 

ブライ

「…どこで育て方を間違えたんじゃろうか?(涙)」

 

 うきうきと心弾ませているアリーナと、それに呆れ気味なヒュンケル達はバザー会場に向かった。

 そこで、とんでもない凶報が待ち受けているとも知らず……。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。