バグで好感度8000%になったスペシャルウィークは愛されすぎて毎日が修羅場です   作:スペペペペ

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4話「キミと、もう一度会いたかったんだ」

 ついこの間まで何の変哲のない風景さえもきらきらして見えていたのに、今はどんより色褪せて燻っているような気がする。何はなくともこれ一本あれば自分は元気になれる、とさえ信じていた大好物のはちみーも何だかどろどろしているだけのように思えて美味しくない。

 

 気分転換に走りに精を出してみてもタイムはちっともよくならないし、いつもなら寧ろ心地よくすら思える全力疾走と一緒に流れる汗が、ベタベタするだけで気持ち悪い。じゃあゲームをしよう、と近場のゲームセンターを荒らし回って殆どのアーケードゲームのハイスコアを『ワガハイちゃん』だらけにしても達成感を感じることはなかった。

 

 何をやってもつまらない。

 

 トウカイテイオーは心にぽっかりと大きな穴が空いたかのようだった。何がご機嫌な日々だ、キミが居ないせいでボクは毎日が不機嫌な日々だよ――とテイオーは独り言ちて、今日も今日とてふらりとウマーベラスレボリューションに向かい倦怠感と苛立ちをぶつけるようにプレイする。

 

半端()ねぇ、さすがランキングNo.1のワガハイちゃんだぜ……あれが日本で一番のウマレボプレイヤーか……」

 

「ワガハイちゃんなら近い内に俺達ウマレボプレイヤーの夢――凱旋門モード『うまぴょい伝説』の完全攻略(パーフェクト)を達成してくれるかも知れねえな」

 

「でもあの子、あんなに上手に踊ってるのに……なんだか辛そうに見えるわね……」

 

 外野が(うるさ)い、気が散る、黙って欲しい――ああ、ほらミスった。

 

 内心で舌打ちしテイオーはリカバリーに躍起になるも結局ミスが重なってスコアは散々である。自分のハイスコアどころか1年前のご機嫌な日々のスコアも超えられていない。きっと今日は駄目な日だ。いや、ここ最近はずっと駄目な日ではあるけれど――今日はもう止めよう、とテイオーは最後にウマレボのランキングを確認して、やはり動いていないご機嫌な日々のスコアの眺めなら小さくため息を吐いた。

 

 ――ここ半年間ほどずっと、テイオーはそんな調子だったものだから、さすがに家族や友人達は心配になって「何かあったの?」と親身になって聞き出そうとするもテイオーは「……ちょっとね」と濁すばかりである。

 

 テイオー自身、なぜこれほどまでに顔も知らなければ本名も知らない、どんなダンスを踊ってプレイするのかもわからない、『ご機嫌な日々』というユーザーネームとスコアしか認識できないような相手に執着しているのかよくわかっていないのだ。

 

 勿論、ご機嫌な日々は人生で初めてライバルと呼べるような存在で、ここまで互角に勝負を繰り広げた初めての相手だったからというのは、あるのだが。

 

「――ねぇ、キミは」

 

 今、どこにいるの? ふわふわのベッドに寝転がりながら、テイオーは何かを掴むように手を伸ばすも――やはりそこにあったのは虚空だけだった。

 

 

 ………

 

 

 その日、テイオーがトレセン学園の最寄りにあるゲームセンターに寄ったのは本当に偶然である。

 

 ふと、トレセン学園に行って憧れのウマ娘であるシンボリルドルフとお話がしたい、慰めて貰いたい、元気をわけて欲しい――と思い立って近くまでは来たのだが、よくよく考えればいくらテイオーが将来有望なウマ娘でもアポイントメントも無しに学園に通して貰えるわけもないし、忍び込むという手段も脳裏をよぎったけれどバレたら結構な大問題だ。

 

 そもそも――『無敵』の一欠片もないこんな落ち込み切った『トウカイテイオー』をシンボリルドルフに見せられるのか? と思うと――結局、テイオーは学園に行くのはやめて、せめてゲームセンター巡りをしよう、とその場所へ足を運んだのである。

 

 ――入店して、すぐにテイオーは違和感に気づく。結構な一等地なのに、人がまばらにしか居ないのだ。しかしガヤガヤと喧騒はするし、はてどうなっているのかと周囲を見回すと、とある一角に人だかりが出来ていた。何かイベントでもやっているのだろうか? 気になって近くに寄って見れば――そこには沢山のギャラリーの熱い視線を受けながらウマレボをプレイする黒鹿毛のウマ娘がいた。

 

(へぇ、うまいじゃん)

 

 やっているのは難易度的には上から2番目のG1モードだったけれど、そのプレイはウマレボNo.1プレイヤーであるワガハイちゃんことトウカイテイオーからしても悪いポイントが見当たらない、いっそ完璧かつド派手なダンスで感心してしまう程だ。

 

 しばらく眺めて、曲が終わりスコアが表示されれば、9万9999点――パーフェクトである。見守っていたギャラリーから拍手と歓声が上がって、テイオーも気分が沈んでいなければ拍手でそのプレイを称えていたかも知れないが、しかしだ。彼女は上手かった、とてつもなくうまかったけれど――()()()()()()()()()()()()()()()()()? とも思う。

 

 上手いプレイヤーにギャラリーが生まれるのは別段珍しいことではないけれど、店の中の殆どの客が集まっているような状況はあまりにも不可思議で、彼女は何かアイドル的な、知名度のあるウマ娘なのだろうか。なぜか彼女が無性に気になって――テイオーはいつの間にか、彼女の横の空いていたウマレボに乗り出していた。

 

「ねぇ、キミ。凱旋門モードやるなら、ボクと勝負しない?」

 

 ――彼女はそれに了承し、それからとんとん拍子に事は進んで、テイオーはICカードにプレイヤー情報を読み込ませながらこのギャラリーの輪を生み出した相手を改めて眺める。

 

 目つきは結構鋭いけれどしかしキツすぎるというわけでもなく、顔の作り自体は愛らしいのに独自の雰囲気があって、ミステリアス――という言葉がよく似合うだろう。

 

 一言でまとめると、クールビューティーを絵に描いたようなとても綺麗なウマ娘だった。

 

(ふーん……なんかめっちゃモテそう。まっ会長には負けるけどねー)

 

 どこまでも会長至上主義のテイオーである。そしてプレイヤー情報の読み込みが完了し、テイオーのプレイヤーネームに『ワガハイちゃん』が表示されれば――。

 

「ワガハイちゃん!? えっ本物なの!?」

 

「やっぱりあの子がそうだったのか!? ウマレボNo.1プレイヤーじゃねえか!」

 

「は? かわいい」

 

 当初はいきなり乱入してきた小柄なウマ娘にどういう反応をしていいのか動揺していたギャラリーも、ざわっと一層ボルテージが跳ね上がってざわめき出す。長くゲーセンユーザーに愛されるウマレボである、それのトッププレイヤーとなればその注目度は高く、どうやらここでもワガハイちゃんの名前は有名だったようだ。

 

(……うるさいなー)

 

 ちらっと周りを見据え、テイオーはいつもの習慣でICカードを読み込ませたのを後悔した。目立つことは嫌いではない――というか以前なら間違いなく目立つのが大好きだったし、いっそ地球上の皆にキラキラ輝くボクを見て元気になって欲しいといった願望すらあった程だが、今はあまりそういう気持ちにはなれないのだ。これだけのギャラリーである、ある程度は騒がしいのは承知で乗り込んだが、これ以上喧しくなるとプレイに支障が出かねないじゃないか。

 

 ――ふと、ギャラリーはひたすら盛り上がっているのに反して、隣からは全くレスポンスがない。どうしたのだろうか、と訝しんで彼女を見れば何故だか真顔で固まっていた。

 

「どうしたの? ボクがワガハイちゃんだって知って驚いた?」

 

「……まあ、概ね。失礼ですけど、ちょっと私が想像してたワガハイちゃんとは違ってたので」

 

「あー……最近よく言われるかな。もっと元気で明るい子だと思った、って……実際、少し前まではそんな感じだったんだけどね……1年前くらいにさ、ウマレボのライバルがいたんだよ、ボクに。でもその子、ウマレボ辞めちゃったみたいでさ」

 

 ……あれ? なんでボク、初対面の相手にそんなこと話してるんだろう?

 

 ご機嫌な日々との身の上話なんて、今まで誰にもしたことなんてなかったのに。久しぶりにウマレボ上級者っぽいプレイヤーと出会って、自分でもわからないくらい気分が高揚していたのだろうか。もしくは彼女がクールな見た目に反して、何故だがとても親しみやすさや居心地の良さを感じる不思議なウマ娘だから? よくわからないが、それでもまあいいか、とテイオーは話を続けた。

 

「それからなんだかさ、みんなみーーーんな、つまんなくなっちゃって……」

 

「――ウマレボも、つまらないですか?」

 

「……今は、あんまり面白くないかな。今日は、邪魔なギャラリーも多いし。それでもパーフェクトは目指すけどね……そろそろ始めよっか」

 

 ウマレボのモードセレクトも完了し、バトルモードが起動する。とはいっても、ゲームの開始タイミングを合わせるだけで、バトル要素はスコアを比べ合うくらいしかないのだが。

 

 ゲーム開始のカウントダウンが始まって、テイオーは準備運動がてら軽くフルフルと手足を揺らす。隣の彼女も息を整えて、リズムに合わせて小さく揺らしながら――テイオーに向けて、小さく呟いた。

 

「実は私、久しぶりにウマレボやったんですけど、やっぱり楽しいです。だからワガハイちゃんにもウマレボ――楽しんで欲しい、ライバルだから」

 

「……ライバル?」

 

『うーーーー (うまだっち) うーーー(うまぴょい うまぴょい) うーー(すきだっち) うーー(うまぽい) うまうまうみゃうにゃ 321 Fight!』

 

 二台の筐体のスピーカーから発せられる爆音のうまぴょい伝説のファンファーレとイントレと共に、画面の中で激しく踊り狂うようなアバター、滝のように流れる楽譜。

 

『おひさまぱっぱか快晴レース(はいっ) ちょこちょこなにげに(そーわっ So What) 第一第二第三しーごー(だんだんだんだん出番が近づき) めんたまギラギラ出走でーす(はいっ!) 今日もめちゃめちゃはちゃめちゃだっ(ちゃー!) がち追い込み(糖質カット) コメくいてー(でもやせたーい!)』

 

 それを難なくノーミスでクリアしていく二人のウマ娘の姿に、ギャラリーは内から次々と湧き上がる何かを必死に抑える。集中している二人の邪魔をしてはいけないから。

 

『あのこは(ワッフォー) そのこは(ベイゴー) どいつもこいつも あらら(リバンドー) 泣かないで(はいっ) 拭くんぢゃねー(おいっ) あかちん塗っても(なおらないっ) (はーっ?) 今日の勝利の女神は あたしだけにチュゥする 虹のかなたへゆこう 風を切って 大地けって きみのなかに 光ともす(どーきどきどきどきどきどきどきどき)』

 

(難しいのはここからだ――!)

 

 サビパートに入る手前でテイオーは顔をしかめて、さらに気合を入れた。ここまでは振り付けも楽譜も同じで、記憶していればどうにでもなる。しかしここからはそれらがアルゴリズム生成されすべてがランダム、詰まる所初見プレイとほぼほぼ同義。体力、集中力、動体視力、勘、気合――それら全部を総動員しなければ99万9999点なんて夢のまた夢だ。

 

『きみの愛バが! ずきゅんどきゅん走り出しー(ふっふー) ばきゅんぶきゅん かけてーゆーくーよー こんなーレースーはー はーじめてー(321 Fight!!)』

 

 辛うじて、ではあった。それでもテイオーと隣の彼女にミスはない。

 

(行ける――今日、なんだかボク……すっごく調子がいい!)

 

 身体が動く。頭が冴える。いつもと違って、今日はとても上手い――いや、寧ろ自分に匹敵するようなウマレボプレイヤーに引っ張られているからだろうか? いずれにしても、テイオーは予感がした。今日こそ、パーフェクトを出せるかも知れないと。

 

『ずきゅんどきゅん 胸が鳴り(ふっふー) ばきゅんぶきゅん だいすーきーだーよー 今日もーかなでーるー はぴはぴだーりん321 Go Fight うぴうぴはにー321(うーーFight!!)

 

 完璧だ――()()()()()。しかし凱旋門モードの恐ろしさはまだ続く。G1モードでは曲が歌詞の一番で終わるけれど、凱旋門モードは()()なのだから。故にこそ長い歴史を持つウマレボであっても、凱旋門モードの最難関曲うまぴょい伝説は誰もパーフェクトを出したことのない魔境なのだ。

 

(次のサビまでランダムにはならない、ここで一息入れないとね)

 

 サビのランダムパートが終わったあとの間奏は比較的振り付けも楽譜も楽になる。テイオーは当然、隣のウマ娘も少しは張り詰めた緊張を解くだろうと視線を動かすと――信じられない物を見た。

 

「みなさん! どうぞ声を出していきましょう! 前も後ろも! ぜひ盛り上がってーーーー!」

 

 くるりと180度反転し、()()()()()()()()()()()()ギャラリーに向かってコールを飛ばすその姿を。

 

(えぇー!? ()()()!? 凱旋門モード中に!? しかもなんでギャラリー煽ってんの……!?)

 

 ウマレボ界にはフリーというプレイスタイルが存在する。ウマレボのモーションセンサーは少し特殊で、後ろ向きで踊っても()()()に振り付けをこなせばきっちり成功の判定が出るのだ。それを利用して振り向いたり回転したり、自由度の高い魅せプレイをするのがフリーである。

 

 しかしこれがまたただでさえ難しいウマレボの難易度を更に上昇させる。本来の振り付けをいくら記憶していたって左右逆で踊るのは簡単にできることではないし、足元のマスに関してはさらに上下左右逆である。頭がこんがらがるなんて話ではない。普通なら、一番低い難易度(メイクデビューモード)など低難易度でやることなのだ。

 

 それでも彼女は、神業のような技量で完璧にプレイしている。テイオーとて()()()()()()()()、少なくともパーフェクトを狙う凱旋門モード中にとてもじゃないがやりたいことではない。

 

 そして彼女のそのプレイとコールを聞いた瞬間、今まで抑えていたものを開放させるように――ギャラリーは()()()

 

『(うまぴょい うまぴょい) うーー(オイっ) うーー(オイオイっ) すったかたったったったったった』

 

「「「「3・2・1! Fight!!」」」」

 

 とてつもない熱量を醸し出しながら、ギャラリーが曲に合わせて合いの手を入れ始めたではないか。

 

(う、うるさ――いけど……これ、なんか……)

 

 とても統率が取れている合いの手とは言いがたかった。何せ全員コールの練習をしたわけでもない、たまたまゲームセンターに集まっただけの客である。それでも、それでも――全身全霊、一生懸命にテイオーと隣の彼女に向かって声を上げるギャラリーの声に……。

 

(たの、しい――)

 

 テイオーの冷めた心が、熱くなるような気がした。再びくるりと回ってフリーをやめた隣の彼女は、そんなテイオーを見て優しい視線を向け、小さく笑顔を浮かべる。

 

『今日のステージの女神は あたしだけにギュッとする 虹の彼方へゆこう 汗をぬぐい 涙ふいて きみのなかで 闇を照らす』

 

「「「「すーきすきすきすきすきすきすきしゅぎ! きみの愛バが!」」」」

 

 もはやゲームセンターではなくライブ会場もかくや、と言った馬鹿騒ぎ状態だ。誰も彼もが我を忘れるかのように曲に合わせて声を出す。

 

 もうランダムパートが始まる。いつもだったら集中したいから声を出さないで欲しいと思っただろう。気が散るから黙って欲しいと思ったことだろう。だけど今は、それでも今は。

 

『ずきゅんどきゅん走り出し』

 

「「「「ふっふー!」」」」

 

(もっと大きな声をだして……!)

 

『ばきゅんぶきゅん かけてーゆーくーよー こんなーおもーいはー はーじめて』

 

「「「「3・2・1! Fight!!!」」」」

 

(もっと力強く声だして――!!)

 

 どれだけ調子がよくここまでこれたとしても、やはりこのサビパートのランダムは鬼門である。間違える時は間違える、ミスをする時はミスをする。何十回何百回何千回プレイしたってそれは変わらない――と思っていたのに、今はミスを恐れる気持ちが一切ない。今のボクならなんでもできる、とテイオーはビリビリと肌を揺らすような声に押されて突き進む。

 

 二人のウマ娘はただひたすらにパーフェクトでスコアを刻む。いくらウマ娘でも体力だって消耗するだろう、集中力だって途切れるだろう。しかし彼女達は――大量の汗を流しながらも、笑顔で踊り続けていた。

 

『さぁーもりあがってまいりましたー!(フーー) まーだまだまだまだまだまだまだー』

 

「みんなー! ありがとー! でももっとボク達を応援して! もっともっと声出して! みんなで行こう! 最後までーーーーーー!!!」

 

 ここまでノーミスでこれるのも早々にない。普段なら絶対に失敗したくない場面。しかし、そんなことはどうでもいいと言わぬばかりにテイオーもまた()()()()でギャラリーに向けて声を投げた。

 

 楽しい。楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい――!

 

 テイオーの目に映る世界のすべてがキラキラしてる。そうだった、ダンスゲームは楽しいんだ。キメキメに決めて、カッコかわいく、しゅたっ、きゃぴ☆、ぶいっと――気持ちよくて楽しくて、無敵で素敵な唯一無二の素敵な遊び。

 

 そして誰かの応援はうるさい物なんかじゃない。誰かの声援は不要な物なんかじゃない。ボク達ウマ娘のパワーを無限に引き上げてくれる絶対唯一のエネルギー。

 

「ずきゅんどきゅん走り出しー!」

 

「ばきゅんぶきゅんかけてーゆーくーよー!」

 

 いつの間にか、テイオーと隣の彼女まで歌いだしていた。抑えきれない衝動に身を任せ、渦巻くような熱の中に身を委ねるように。

 

 

 

 そして、ついに――。

 

 

 

「ぜぇ、ぜぇ……」

 

「はぁ、はぁ……」

 

 流石に疲れ果て、二人はぐったりと座り込む。しかしその顔にあったのは、とても楽しそうな笑みだけだった。

 

「うああああああああ!!!!」

 

幻想(ゆめ)じゃねえよな――!? ついにやりやがった!」

 

99万9999点(パーフェクト)達成だ! しかもダブル!」

 

 画面に表示されたハイスコアを見て感極まって泣く者や、たまたま隣り合っただけの見ず知らずの相手と抱きあい喜びを分かち合う者、震える手つきで動画を取る者など色んな人達がいた。少なくともその場にいた全員に共通していたのは、途方もない感動を二人のウマ娘から貰ったというただ一つの事実だった。

 

「――パーフェクト、出せましたね」

 

「ぜぇぜぇ、ふひぃ。そだね……はーーー楽しかった……」

 

 無論、凱旋門モードのパーフェクトはテイオーにとっても目指しているものではあった。誰も抜けない記録を作って、自分を置いてどこかへ行ってしまったご機嫌な日々がいつか、自分のスコアを見て悔しい思いをすればいいんだ、と。

 

 でも、そんなことはもうどうでもよかった。ただただ今は、この達成感と充実感、そして幸せな空気を味わっていたい。

 

「あのさ……ありがとね」

 

 テイオーは頬を染めて、ちょっと照れくさそうに笑いながら隣のウマ娘に礼を言う。彼女のお陰で、何もかもを忘れるように熱中して、ウマレボを楽しむことが出来た。楽しみ方を思いだせた。例えもう、ご機嫌な日々が帰ってこなくても、寂しくはあるがきっと大丈夫、とテイオーは確信する。

 

 だってボクは――無敵のテイオー様なのだから!

 

「――いえ、私もありがとうございます。ワガハイちゃんとリアルで一緒に踊れて、楽しかった」

 

「えへへー! そうだろそうだろー! ボクと一緒にウマレボが出来てコーエーに思わなきゃね!」

 

「でも私、ワガハイちゃんに謝らなきゃいけないことがあって……」

 

 そういって少しだけ俯く彼女。はて、彼女からは与えられた恩はあっても謝られることなんて一つもない。一体何のことやら――首を傾げるテイオーの手をそっと握って、彼女は言った。

 

「ウマレボ、いきなり辞めてごめんね。そこまで意識して貰えてるって、思わなかったんだ」

 

「……」

 

「――うまぴょい伝説はもうスコア勝負できなくなっちゃったから――次は、何の曲で勝負する? ワガハイちゃん」

 

「………………もしか、して。キミって」

 

 そもそもだ。自分に負けないどころか勝るような神がかり的な腕前を持ったウマレボプレイヤーなんて、日本にどれほどいるのだろう。

 

 彼女は久しぶりにウマレボをプレイしたと言っていて、ライバルだからウマレボを楽しんで貰いたいという、その口ぶりはまるで――。

 

「ご機嫌な日々?」

 

「うん。()()()()

 

 

 

 ――その瞬間、トウカイテイオーの絆ゲージが壊れた(すべては繋がった)

 

 

 

「――バカ、バカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカァ!!!!! ボクは、ボクは! ボクはボクは!! ボクはずっと!!!!」

 

 4話「キミと、もう一度会いたかったんだ」 おわり




尚、この世界における最終的な『三大』超々重馬場ヤンデレウマ娘化する一人はトウカイテイオーである。
※この三大とはもっともやべーヤンデレ化したウマ娘の意であり他のウマ娘も大体やばい。

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