転生したらカラスだった件   作:めろんムーン

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ヴェルドラ日記の章:1
ヴェルドラ日記0


 

 やあ、我だ。

 世に4体のみ存在する"竜種"が1体、"暴風竜"ヴェルドラである。

 

 何?知っているだと?まあ、当然であるな!クァーーーーハハハハハハハハ!!

 

 この世界最強の存在たる"竜種"をしらぬものやど、異世界からやって来たもの以外は存在せんであろうな!!

 

 

 

 とはいえ、そんな我も今は囚われの身。

 かつては無敵を誇り、気の向くまま暴れておった我も、あの美しき"勇者"の『無限牢獄』によって、永き間身動きすら出来ぬよう封じられておるのだ。

 

 まぁ、悔しくないと言えば嘘になるが、あの者を憎んでいるわけではない。むしろ、あの"勇者"のおかげで、我は人という存在に興味を抱いたのだ。

 

 ここを出られた暁には、もう一度あの者と会い、戦ってみたいと……いや、違うな。ただ、少しでもいいからあやつと語らい、そして人という存在を学びたいと我は考えるようになった。

 

 しかし残念ながら、それは叶わぬ望みであろう。人間の寿命は短い……たとえ、"勇者"であろうともな。

 

 だから我は、ここに封じられるままに、ひっそりと大人しく反省しておったという訳よ。

 

 だがしかし、300年というのは長すぎる。

 この日々が終わるのは、今も『無限牢獄』から漏れ出ている我の魔素が尽き、消滅を迎える時──早くてあと100年ほど先の話だ。

 

 "竜種"である我は、滅びたとしてもいずれ世界のどこかに"転生"を果たすからな。自我や記憶の殆どを失うことにはなるが、解放されるにはその時を待つしかない。むしろ、それが楽しみでさえあったわ。

 

 

 

 そんな我に、その日は突然やって来た。

 いつもと変わらぬ静寂に満ちた空間の中、洞窟の奥からヒョコヒョコとこちらに寄ってくる気配。

 その者は、我の魔素に満たされて並の生物では生きることもできぬはずのこの空間に、何の苦も見せずに入って来たのだ。

 

 

 

 この洞窟は存外広く、我の魔素溜まりから魔物たちが発生することは知っていた。しかしそれは、この我の封印されている空間と外につながる洞窟を隔てる、大扉の向こう側での話だ。

 我の周囲は魔素濃度が高すぎる故、魔物が生まれるどころの話ではないのだろう。

 いったいどのような存在が生まれ、我が前にやってくるのか。我はとても気になったのだ。 

 

 そう思い、その存在を一目見て、我は気がついた。

 

 

 

 ()()()である、と。

 

 

 

 瞬間、ぞわりと嫌な感覚がする。これは、そう、数千年は前……我が兄でありこの世界の創造主であるヴェルダナーヴァが生み出した各生き物の始まりの存在たち、その1柱を思い出したが故であろう。

 

 あの者は恐ろしく強かった。兄上に『裁定者』として任命され、世界のバランスを破壊した者を始末するためにやってくる、死神のような鳥。

 

 我も4、5回は滅ぼされ、恐怖を刻まれたものよ……姉上たちほどではないが……

 

あの者の真の姿は、巨大なカラスであったな……と、我の魂から記憶を引っ張り出した。

 

 

 

 

 だが、封印されてから300年経って初めての存在、しかも動物型の魔物である。知性がある可能性は極めて高い。

 三百年ぶりに他者と話すことが出来そうだ、とワクワクする気持ちで恐怖を抑えつつ、我はそのカラスを観察した。

 

 そのカラスは、この空間に存在する水晶の前に立ち、自分の姿を確認しているようだった。

 普通は、そんなことをする魔物はいない。この時点で、高度な知性を持っていると証明したようなものだった。

 

 確実に意思疎通ができると確信した我は、我慢できずにこの者に念話で話しかけることにしたのだった。

 

(聞こえるか、小さき物よ)

 

 そう話しかけると、そのカラスは確かに反応した。

 

「カァ??(誰ですか?)」

 

(む?ああ、声は不要だ。心の声で会話できよう)

 

(……わかりました。あなたは?)

 

 やはり知性があるようだ。

 

 ここで、我の悪戯心がすこし疼いた。

 

(ふむ、そうだな……ゆっくり振り返ると良いぞ)

 

(…わかりました)

 

 そうして、カラスがゆーっくりと振り返ると……

 

(ド、ドラゴン!?)

 

 ククク、驚いたようだな!!

 

 

 

(いかにも!我が名は暴風竜ヴェルドラ!!)

 

(この世に4体のみ存在する竜種が1体である!!クァーーーーハハハハ!!)

 

 これで、このカラスも我が威容にひれ伏すであろう!

 

 そう、思ったのだが……

 

(よかった、いてくれて……)

 

 帰ってきたのは、安堵であった。

 

(む?我がいてくれてよかった、だと?)

 

(ああ、なんでもないです……うん。原作開始後とか極端に開始前とかだと、ね)

 

(ゲンサク?なんだそれは)

 

 聞いたことのない言葉だ。

 

(ああいえ、ほんとになんでもないんで……大丈夫……大丈夫……)

 

(まぁよい。なぜお前は我の場所まで辿り着いたのだ?話してみるが良い)

 

 そう促し、我はこの者との会話を楽しむことにしたのであった。

 

 

 

 (ほう、お前、転生者か。稀な生まれ方をしたものだな。異世界からの転生者は我の知る限り事例はないぞ)

 

 話を聞くと、このカラスはなんと、異世界からの転生者であることが判明した。

 "転生者"というだけならこの世界でも存在が確認されているが、異世界からとは珍しい。

 

 しかし、そうなると話題は増えるぞ?何といっても、ここで生まれた無知なる魔物ではなく、異世界の知識を持っておるのだからな!

 

(そうなんですか……)

 

(転生者はこちらの世界に渡るとき、望んだ能力を得るらしい。お前は何か持っていないのか?)

 

 まずは軽く、この者の現状を確認させていくことが優先であろうな。それに、異世界からの転生者がどのような力を持つのかは、我も興味があった。なんといっても、あの"勇者"も異世界人であったようだからな!

 

 そうして話を聞くと、なんとこの者はユニークスキルを3つも持つと言う。そして、その内訳までも我に教えたのだ。

 なかなか便利なスキルを持っており、さらには我の知らない能力も2つ持っておった。

 この者は、なかなか強くなりそうである。

 

 安易に我に教えるのもどうかと思ったが、我とこの者は今は一蓮托生。(注、勝手に思っているだけ)

 素直に聞いておき、後で注意を行うことにしたのであった。

 

 ともかく我は、切望していた話し相手を手に入れた。

 

 

 

 その後もいろいろ話した。元は人間というので、鳥になったことについてそれとなく触れてみたが、もう受け入れておるようであった。

 姿形が自由自在の我と違い、普通の存在は自らの体が変わることに少なからず抵抗があるはずだが……なかなか豪のものであるようだ。

 

 そうこう話していると、カラスはこれからのことについて考え始めた!

 

(むっ!?待て待て)

 

(ん?)

 

(お前、生まれたばかりであろう。我がこの世界について教えてやろうではないか)

 

 決して、決してせっかくできた話し相手であるカラスに行ってほしくないわけではないぞ?

 この者はこの世界のことを何も知らんからな。心優しき我が、この世界のことを教えてやろうということだ!

 

 むっ、何か変な感じがカラスから……?

 

 

 

(いま変なこと考えなかったか?)

 

(いいえーなにもー)

 

(……まぁよい。ここで我と語り合っていけ)

 

(はいはーい)

 

 

 

 

 

 このカラスと出会ってか1月以上が過ぎた。この者、我がみている範囲で何も食べていないのだが、問題ないのであろうか……?そう考えたら、

 

(不思議とお腹が減らないんだよね!)

 

 とのこと。曰く、魔素を食べておるらしい。

 動物系の魔物であるのに、不思議なものだ。

 

 そういえば、動物系の魔物の中には人化ができる種がおったな?

 もしや、できるのではないか?人化。

 

 我は人間に興味があるので、そう考えた。魔物が人化した姿でも、前世が人間ならそれは人間であろう、という考えだ。

 

 すると、カラスは人化は無理で、さらに獲得には進化が必要ではないかと言い出した。

 

(ほう、進化とな……進化、進化か。名付けでもすればするやもしれぬな)

 

 名付けというのは、魔物にとっては一種の契約のようなものである。親子に見立て、名を与えたものが力も分け与えるのだ。これにより、名付け親から加護を与えることで、名付けられた側は力を得る。

 

 しかし、力を分け与えると名付け親は力を削られ、弱くなってしまうのだ。我のようなこの世の上位存在でも、そんなに簡単にはせぬのだよ。

 

 そういうと、カラスは流入量を制限するなどと抜かしはじめた。

 そんなことができるのならば、名付けはとっくに普通の行為になっておるわ!

 

 そう叫びたい気分であったが、しかし。我がユニークスキル『究明者』と、カラスのユニークスキル『嚮導者』の演算では可能である、と出ている。

 ユニークスキル二つがあれば、可能ということか?ううむ、わからぬ。

 

 名前の交換なども候補として上がったが、とりあえずしてみたほうが良いのではないか?我はそう考えた。やってみて、ダメだったらその時はその時なのだ。

 

 それに、失敗しても我の消滅を早めることができる。我にとってはメリットしかない。

 

 

 

 そう思ったが、カラスは慎重派であったようだ。まぁ、無理にやるものでもあるまい。我もまだ名前を考えてはおらぬしな。

 

 ふむ、名前……リムル、いやこれはこの者には合わぬような気がする。

 ミリム……は兄の一粒種であったか?

 み、ミルス……は怒らせた吸血鬼だったような気がするな。

 

 あと我の知っているものといえば……姉上たちとダグリュールか?いや、あやつや姉上たちの名前から連想するのは違うであろうな。やめておこう。

 

 ふむ、ならば……さ、さり……サリアなんてどうであろうか?我ながら、なかなか良い名前であるような気がするぞ?

 

 この者に名前をつける時は、『サリア』にしようと心に決めた我であった。

 

 

 

 その後、カラスのユニークスキルの研究にも付き合ったりしたのだが。

 

 この者、どれだけ首に対する執念があるのだ……心から望んだ能力を得るユニークスキルで、これほどまでに首に執着するなど聞いたこともないぞ?

 

 

 

 ……そういえば、『裁定者』も首を狙って攻撃してきていたような気がする。

 

 もしやカラスは首に攻撃するものなのであろうか……?

 

 

 

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