転生したらカラスだった件   作:めろんムーン

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ヴェルドラ日記1-3

 

 

 

 ドワーフ王国から追放され、森の住処へ帰ってきたリムルたちを出迎えたのは、大量に増えたゴブリンたちとサリアであった。

 

 む?なぜ追放されてきたのか、だと?

 

 リムルはカイジンというドワーフに協力し、仲間に引き入れることに成功したのだが……胡散臭いベスターいう大臣とやらが、リムルに喧嘩を売ったのだ。

 カイジンが恩人であるリムルを侮辱したベスターを殴り飛ばしたことで、裁判となってしまったのよ。

 

 裁判で出てきたのはドワーフ王、ガゼル・ドワルゴ。人種とは思えぬほどの強さであり、我の前に立つ程度の資格はあるであろう猛者であったわ。

 それを前にリムルはふんぞり返り、あろうことかガゼルの読心系スキルを利用して心理戦を仕掛け、油断ならぬ相手だと認識させたのだ。

 自律型の能力、『大賢者』をうまく使ってガゼルを翻弄したのよ。何も考えておらぬように見えてリムルは凄まじく狡猾であり、自律型ですら自由に操っているというわけだ!

 

 

 

 さて、そんなリムルだったが……

 

「──で、武装国家ドワルゴンへ行ったリムルさんは、裁判にかけられて追放されて来たと」

 

「はい、すいません……」

 

 サリアに詰められていた。

 ……まぁ、サリアもそこまで怒ってはいないようだ。

 どうやら、リムルの能天気さ……いや、身勝手さか?それに注意を促しておるようだ。リムルは傲岸不遜であるからな。それが悪い方向に繋がらぬよう、警告しておるのであろう。

 

 そのようなことを傍目に見ながら、我は聖典(マンガ)を読んでいたのだが……

 

 グオォォォォォォォォオーーーー!?!?!?

 

 唐突に大量の魔素(エネルギー)を奪われ、急いで外を見てみればリムルがまた大量の名付けを行っておった。

 前回はそれで失敗し、しかも今回は前回よりも人数の多い500人。やはり本物の馬鹿ではないのかと、我もつい頭を抱えてしまったわ!

 急いで魔素(エネルギー)の流出を止めようとしたのだが……

 

《告。回復可能な魔素(エネルギー)量の算出に成功しました。規定の数値までは安全である為、協力を要請します》

 

 リムルの能力(スキル)、『大賢者』が我に話しかけてきよったのだ!『無限牢獄』に囚われておる、この我に!

 どうやったらそんな真似ができるのか、我ですら少しもわからん……

 

《解。“世界の言葉”を利用する事で、意思の伝達を可能としました》

 

 デタラメであろうが!?

 ……いや、我がリムルの情報を読み解けるように干渉を行った事で、情報共有は円滑しておった。ならばこそ、情報として意思を伝える事も可能、という訳か。

 さすがはリムル。我がリムルのことを見て、思考を読んでおることに気がついておったという訳か!

 

 さて、話しかけてきておるのはリムルの能力(スキル)である『大賢者』のようだ。最初は我から存在を隠そうとしていたようだが、サリアがリムルにスキルを共有するよう言ったときに、リムルから「盟友に共有する」という指令を受けたらしい。

 つまり、サリアのおかげという訳だ。

 

 さて……さっきは聞き流しておったが、規定の数値までは安全だと言ったな?

 

《解。前回の経験で採取したデータにより、安全率を計上しております。また、個体名:サリアに名付けした時の観測データを元に、効率化を進めています。最大魔素量の減少を防ぎつつ使用可能な魔素量は、推定で──》

 

 まさか、前回どころかサリアの名付け時のデータまで取っておるとは……用心深いというか、ちゃっかりしてると言おうか……

 まあよい。リムルの能力(スキル)であり、サリアも信用しているようである『大賢者』ならば問題ないであろうよ。

 

 こうして魔素(エネルギー)を貸し出す約束をした我であったが、『大賢者』の言った通り、我の魔素(エネルギー)は大きく消費されたものの完全に回復することに成功したのよ。その代わり、リムルは2日程度の低位活動状態(スリープモード)になったがな。

 

 

 

 名付けも終わり、住人の数が大幅に増えたことで、リムルたちは引越しをしたようだ。名付けられたゴブリンたちがホブゴブリンに進化していたことで、思った以上に作業が進んでおる。

 そんな中、配下の魔物たちにここはまかせろと言われ、リムルとサリアは散歩をしておる。

 

 おっ、リムルとサリアが何かを発見したようだぞ?

 あれは……人間か?

 4人の冒険者が巨大妖蟻の集団に追われておるわ。

 

 む?サリアが先行して行ったな。サクッと全ての蟻の首を刈りおったわ。

 サリアが向かって行った先には、3人組の冒険者組と蟻に立ち向かおうとしておった一人の女。

 仮面をつけたこの女……強いな。あのドワーフ王ガゼルにも匹敵するぞ?

 しかし、サリアはその力を使わせたくはないようだ。サリアの言動から察するに、なにやら代償がありそうだということを見抜いたらしい。

 リムルや『大賢者』すら気がついておらんようだが、本当なのであろうか?

 我はあくまでリムルを通して外を見ておるゆえ、解析鑑定をあの女にかけることはできんが……サリアの解析鑑定は、よほど優れておるらしい。

 

 

 

 その後、リムルとサリアはこの冒険者たちを村に招き、食事を奢った。鉄板の上で焼いておった肉はとても美味そうであったな……

 

 その後、この仮面の女の冒険者……シズと名乗った女とリムルたちは話した。

 どうやらこの女、リムルやサリアと同じ世界の住人だったらしい。

 リムルやサリアと違い、その身のままでこちらにやってきた“異世界人”なのだという。

 それも、召喚されてやってきた、と。しかも、召喚には大儀式などの様々な条件が必要となるのが普通だったはずだが、この女は特定の個人に召喚されたというのだ。

 この女を召喚したのは、この世界の頂点の一角──魔王レオン・クロムウェルだという。

 

 魔王というのは、世界の強者たちの中でも一握りの称号よ。名乗るには他の魔王に認められる必要もあり、容易になれるものではない。

 我とよく喧嘩した巨人や、女吸血鬼、姉上の気に入っている赤髪の悪魔や我が兄の一粒種。

 一部は我ら竜種とも戦えるような出鱈目な存在、それが魔王なのだ。

 

 ……だが、我はレオン・クロムウェルなど知らぬ。おそらく新参者なのだろう。あやつらに比べれば特に脅威ではないと思うがな!

 クァーーーーハハハハ!!

 

 さて、そんなことを考えておるうちに、リムルは仕事ができてしまったらしい。サリアとシズは散歩を続けるようだ。

 どうやらサリアはシズに稽古をつけてもらうようであったが……リムルよ、なぜそのシーンを我に見せぬ。

 稽古姿は美しいと今我が読んでいるこの聖典(マンガ)にも書いてあるというのに!

 ……まぁよい。早く仕事を終わらせ、サリアの元へ戻るのだ!

 

 

 

 

 

 結局リムルの仕事が終わったのは、夕方になってからだった。夕飯の準備が終わり、二人を呼んできてくれと言われ、そのままサリアとシズの元までやってきたリムル。

 そこにいたのは、大きく汗をかき、その黒い翼を艶やかに濡らし、肩で息をするサリアだったのだ!

 おお……美しい。幼い姿でこれほどの色気をもつのならば、大人になればどうなってしまうのか……

 もしかすれば、何者かがサリアに魅入られるやもしれぬな。サリアは我が守ってやらなければ。

 

 そんなことを考えていると、何やらシズが苦しそうに抑えた。この気配は、激しく燃える熱き火──炎系の上位精霊の気配であるな。

 驚く程の同調率。しかしシズは、精霊の力を拒絶しておるのか……?必死に押さえ込もうとしておるようだ。

 

 異常を察し、シズの仲間の3人組の冒険者がやって来たようだ。

 そして、その中の一人がシズは『イフリート』を宿している、といいおった。

 イフリートか、人間どもからすれば脅威よな。

 確か人間共は、災厄級(カラミティ)やら特A級やらという危険度の区分けを行っておったか?

 上位魔人をも凌ぐ強さ、今のリムルでも多少は手こずるのではあるまいか?

 まぁ、サリアならば『断頭処刑』であっさりと勝ててしまうだろうがな。

 え、我?

 我をそんな小者と一緒にされては困るぞ。

 我こそは天災級(カタストロフ)と称される、最大の脅威。或いは特S級と区分される、最強の存在なのだからな。

 

 

 

 

 

 戦いが始まった。

 流石は炎系の最上位精霊であるイフリートだ。見事なまでに自由自在に、その権能たる炎を操っておる。

 だが驚くべきは、3人の冒険者達だな。1発1発が火炎大魔球に匹敵するイフリートの炎撃を、曲がりなりにも耐えておるわ。

 3人組は問題ないと把握したリムルとサリアは攻勢に出ることにしたようだ。

 

 まずリムルが行ったのは『水刃』だが、良い判断とは言えぬ。精霊は精神生命体なので、『物理攻撃無効』なのだ。

 

 そう考えるのとサリアが同じことに思い至ったのは同時だったようで、リムルに忠告しておった。

 その忠告と同時に、サリアはイフリートに駆け出した。何か策があるのであろうか?

 

 サリアが走り始めると同時に、イフリートが分裂する。あれは、『分身体』だな。

 なかなか厄介よ。実力を少し落とした存在とはいえ、大きな脅威となるであろうからな。

 

水氷大魔槍(アイシクルランス)!!」

 

 サリアに近づこうとした分身体が、唐突に1体弾け飛んだ。女冒険者の魔法のようだ。

 威力こそ低く、例え数百発命中させてもイフリート本体を倒せはしないであろうが、なかなか勇気ある行動よな。

 そう我が感心しておると、リムルは女冒険者……エレンと言ったか?の魔法を自分から受けに行ったのだ。

 何を考えておるのだ、コヤツは──と思ったら、次の瞬間にリムルは──

 

水氷大散弾(アイシクルショット)!」

 

 と叫んで、水氷大魔槍(アイシクルランス)の乱れ撃ちを行ったのだ。これには我も唖然とした。リムルは魔法など使えなかったはずなので、たった今習得したことになる。

 

 しかし、さらに唖然とすることが起きたのだ。

 

「ごめんねシズさん!」

 

 サリアが手に持っていた木剣で、イフリートを打ち据え始めたのだ。

 通常の魔法よりもさらに高位の技術──『 魔法剣《エンチャント:マジックソード》』を、見本なしで行いおった。

 

 サリアの持つ木剣は何度も何度もイフリートを打ちのめした。

 途中から、目に見えて動きが洗練されたが……あれは、なんだったのだろうか?

 イフリートがサリアに叩きのめされ怯んでいるうちに、リムルはイフリートの後ろについており、捕食を行ったのだった──

 

 

 

 リムルのユニークスキル『捕食者』によって、イフリートも我と同じ空間にやって来た。本当は隔離する予定だったようだが、我が思念を送り『大賢者』に頼み呼び寄せたのだ。

 

「暴……風……竜──」

 

 我が声をかけると、イフリートはとても驚いておった。

 さてさて、それではイフリートには、この『胃袋』中での遊び相手になってもらうとしよう。

 

 

 

 それにしても、リムルもサリアも出鱈目すぎるわ。

 リムルもサリアも、共に持っているのは演算特化の能力(スキル)。我の『究明者(シリタガリ)』をも上回る、自律型の能力(スキル)だが……まさか、ここまでとはな。

 

 リムルのスキルは我の封印を解く為にリソースを割いておるのに、一瞬で水氷大魔槍(アイシクルランス)を解析して自分のものとしたのだ。

 何でも喰らうユニークスキル『捕食者』と、取り込んだものを解析して自分のものとする『大賢者』……あれ?それって……

 リムルって、とんでもなく相性のいいユニークスキルを、同時に所持しておるのではないか!?

 その相乗効果は計り知れず、我でさえもう底が読めぬ。

 

 そして、サリアのスキルはリムルの気が付かなかったシズの力に気がついたことから、リムル以上の演算能力があるのではないか?

 もしくは、我の封印を解くのにリソースを割いている『大賢者』の本来の力と互角、というのならば話は通るであろうが……

 そして、おそらくは『法則操作』の力により見ていない力でも、『嚮導者』の演算能力に任せ実現できてしまう可能性がある。実際に、『 魔法剣《エンチャント:マジックソード》』を成功させたことからも、これはわかるであろう。

 さらに、即死攻撃である『執行者』を突破しなければ、戦いの土俵にすら立てぬ。戦いの面においては、リムルよりも理不尽であるかもしれぬな。

 竜種に『執行者』が効くかはわからぬが……魂への攻撃であった場合、我にすら効く可能性は十分にある。あんなに可愛らしいというのに、末恐ろしいやつよ。

 

 

 

 我がイフリートと遊んでおる間に、リムルとサリアはシズと別れを済ませたようだ。しかも目を離した隙に、リムルは人間の姿になれるようになっておった。

 サリアは……悲しんではおったようだが、少しすればまたいつもの通り元気になっておった。安心である。

 

 我もリムルのように人間の姿をとり、一緒に遊びたいものだ。我は精神生命体なので、どのような姿にもなれるのだが……今まで試したことがないからな。上手くいくかどうか、少し不安がある。

 

 まあ、それもリムルとサリアに任せるとしよう。

 

 このとんでもないスライムとカラスは、我が思っていた以上に面白い存在たちだ。きっとなんとかしてくれるであろうからな!

 

 

 




りのさんからファンアートをいただきました!

【挿絵表示】


色使いがとても素敵です!
スキルを使っている感じがとても出ていて、とってもかっこいいです!!
ファンアート、ありがとうございます!

次回からはまた本編更新になりますね。投稿間隔が空いてしまいますが、首を長くして待っていただければ嬉しいです!
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