『フェーズ1開始』
『ミッション開始。ルビコン解放戦線が有する拠点を破壊する。砲台は大威力だが懐に潜り込めば脆い。正面から付き合うな、621、617』
『リョウカイ』
『リョウカイ』
短く文を返して、突撃する。パルスシールドが無いので無茶苦茶な突撃は愚の骨頂。機動兵器の真価たる、戦闘機動で蹂躙しにかかった。
戦闘ヘリが起動するより早く、それに体当たりして引き潰していく。
『フェーズ2、完了。フェーズ3』
片や既に敵の外周部に取りついている。621のターニッシュドは鋭く、優美な機動にて敵のミサイルの群れの旋回半径の内側に入り込みつつも、時折“踊る”かのようにステップを踏んで、射線を掻い潜っている。
ACの装甲は決して厚くはない。大型砲台の直撃を食らえば大破は免れないだろうに、大型砲台が放つプラズマビームをあろうことか紙一重で、装甲表面が沸騰する程の距離で受けつつも、ほとんど真っすぐ突っ込んでいったかと思えば、行きがけの駄賃でMTにミサイルを降らせ、踏み台にしつつ、右に左に銃口を向けてはライフルで仕留めていく。
まさに鎧袖一触。
そこに617が参戦するのだから敵からすれば堪ったものではない。
『う、うわあぁああああ!?』
『二機のACだと!? この動きは……』
『応戦しろ、ACを呼べ!』
『通信は妨害した。応援は来ない』
無情にもハンドラー・ウォルターの支援が入る。通信妨害されているのか、応援はこないらしい。
砲台が爆発する。かと思えば、MTが蜂の巣にされて崩れ落ちる。
まさに猟犬。駆け巡りながら、敵を捌いていく様は、予定調和染みていた。
617も食らいついていくが、それでも621の動きに圧倒される。この強さ、どこから出てくるものか。死んだ感覚が研ぎ澄まされていく。好奇心と言う死んでいる筈の感情が呼び覚まされていく。
動きに追従はできなくても、真似事ならば可能である。もっとも中距離戦闘を好んでいる(ように見えるが実際にはMTにブレードをぶち込むこともしているので一概には言えない)であろう621と、至近距離の戦闘を好む617では、どうしても真似できる限界があった。
放たれるミサイルの射線を見切って突進すれば、急激な偏向により回避する。引き寄せて回避。基本であるが、その動きは極端に体力を消耗する。強化人間とて人間だ。消耗することもあるのだ。
敵砲台の高熱源反応をCOMが検出。警報が鳴る
一歩先には既にブースターを偏向させ、青白い奔流を掠めるようにいなす。
『正面から行くなと言ったが……』
ハンドラー・ウォルターが言う。呆れた様子だったが、しっかりと回避している様を見て安堵のため息を漏らしている。
発砲。チャージングに入っていた砲台の砲塔正面を捉え、これに損害を与えつつ跳躍していくと、ミサイルをノーロックでばら撒いて爆撃を敢行する。
砲台が爆発し、逃げ惑うMT部隊だけが残されたが。
『報酬金が入る。逃がすな』
と指示が飛んでくれば逃がす理由もない。
断末魔の悲鳴を上げて崩れ落ちるMTを尻目に、最大速力を発揮して逃げていくヘリや、車両などをミサイルで食いつくしていく。数分とかからず、ほとんどの敵は始末されていた。
『ツヨイ』
『ソウカナ』
ごく短い会話。その強さに、機動の鋭さに、617は酷く感銘を受けていた。
『ドコデ ベンキョウ シタ?』
『ワカラナイ』
抜けている会話であろう。強化人間相手にどこで勉強したなどと問いかけるのは。
だがこれは別におかしなことではない。記憶も言語野も怪しい人間同士を会話させるというのは、そういうことだ。単語もごくごく簡単なもので、単語だけ並べられていることも珍しくはない。
少しの間会話していると、ハンドラー・ウォルターが通信してきた。
『敵の壊滅を確認した。ミッションは完了だ。話は、話せる時にしていい。そうすればいつか普通に会話できるようになるかもしれない』
優しい声だった。まるでそれは猟犬をあやす、飼い主のように。
大型ヘリが接近してきた。二機はそれを見上げて、暫し、待つのであった。