妖精の尻尾の悪魔の守銭奴 作:魔導士ギルド【ヴィーナスフィスト】
ロキ編です。
「お金がない………グス」
「ハートフィリアのお嬢様とは思えない発言だな」
「そりゃ、家のお金は一銭も持ってきてないからね!! 高額の仕事へ行ってもナツやグレイがいろんなもの壊しちゃうし、ゼニスがギルドのための費用天引きーとか言って報酬額減らされちゃうしさ……」
「しゃーないだろ、うちは普段から赤字な上、今回はさらに赤字の上乗せされてるからな……せめて修理費だけでもファントムに請求できたらよかったんだが、ギルド解散しちゃったからできないし……」
「あーん、このままじゃ今月の家賃払えないよぉぉ」
「おいおい、俺への仲介マージンはいつになったら払えるんだ?」
「う………それはちょっと………」
ルーシィは言い淀んでいると、ミラジェーンがオニバスの街の【シェラザード劇団 魔法演出サポーター募集】という仕事を紹介した。
「あ、悪い、俺は今回一緒に行けねーわ。そろそろ財政管理の仕事しなきゃならんから」
「そう……わかったわ、あたしとナツとグレイとエルザとハッピーで行ってくるわね!」
こうして、最強チームは俺を除いたメンバーでオニバスの街へ向かった。
……。
…………。
………………。
俺以外の最強チームは劇団の仕事からなかなか帰ってこなかったが、かなり疲れて帰ってきて、今度は鳳仙花村の賊退治の依頼へ行った。俺はまた留守番にした。
(たしかナツたちの行ったこの仕事先って、ロキもこの辺のゴロツキ魔導士の捕獲依頼に行ったっけ?)
そんな事を考えた翌日。ナツとグレイはボロボロになって帰ってきた。
「依頼先の賊ってそこまで強かったのか?」
「ううん、仕事終わったあとの宿で枕投げしてケガしたらしいの」
「枕投げって……」
一緒にいかなくて良かった………てかどうやったら枕投げであそこまでのケガするんだよ……
「「ルーシィ!! 勝ったのはオレだよなぁ!!」」
「うるさい」
ルーシィがナツとグレイのふたりを一蹴した。
……エルザ以外にこの2人を止められるやつがいたとは……
というかなんでルーシィはこんなに機嫌が悪いんだ?
「どうした? 今回の報酬でも家賃に足りなくて家追い出されそうなのか?」
「違うわよ!!」
違うのか? ならなんで………
「ごめん……やつあたりだった……今回の仕事後にロキといろいろあって……」
ロキと? そんなふうに思ってると………
「ねぇ、ロキ来てる?」
「ロキは?」
「ひどいわロキってば」
「なによあんたたち」
「アンタこそ」
「ロキ〜〜、どこ〜〜」
ざわざわと町の女達がロキを訪ねて来た。なんだ? ロキのやつ、また慰謝料の支払先が増えたのか?
「はいは~い、ロキへの慰謝料請求の話なら俺が聞きますよ〜」
「「「なによあんた、黙ってて」」」
「はい黙ります」
圧倒された。……どうやらその手の話ではないらしい。
「昨日の夜、突然別れようって」
「キーーー!! 悔しいけど私もよ」
「私も」
「アタイも」
なんだと? 星霊魔導士以外には手当たり次第のロキが突然別れ話? ついに慰謝料の支払いが限界を迎えたのか?
「なんでこんなこと言い出すのよ!!」
「さ、さぁ?」
「まさか本命が現れたの!?」
「いや……」
「誰!!? このギルドにいるの!!?」
相手にしているミラジェーンがかわいそうになるな。助け舟を出すか……
「あ〜、多分君達の他の娘との慰謝料がもう払えなくなったんじゃ……」
「「「だからあんたは黙れ」」」
「はい黙ります」
駄目だった……俺とルーシィはそんなふうに見ていると……
「ルーシィ〜、助けて〜」
ミラジェーンは何故かルーシィに助けを求めた。
「何、あの女〜〜」
「ちょっとかわいいじゃない……」
「胸デカ」
「まさかロキの本命って………」
女達はルーシィをターゲットにしてロキの事を問い詰めようと追いかけ、ルーシィは逃げていった。
………………。
…………。
……。
その日の夜、ロキがギルドを出ていった。
町中をギルドのみんなでロキの捜索を行う。
(いろいろな女への慰謝料キチンと払ってもらわなくちゃならないんだ。やめてもらっちゃ困るぞ、ロキ!)
俺もそんな建前を思いながらロキを探すとルーシィとあった。
「あっ! ゼニス、ちょうどよかった! あなたに1つ聞きたいことがあるの!」
「あ? 今はロキの捜索が最優先だろ?」
「ロキを探す手がかりになるかもしれないの!」
なんだと? それをなんで俺に聞く? ルーシィは質問してくる。
「前にクローバーの街で
は? カレン・リリカ? なんでそんなことを………あっ、同じ星霊魔導士だから気になったのか?
「えっとな……たしか3年くらい前にボブ(♂)さんに頼まれてペガサスで財政管理の仕事手伝う事になったんだが、そのときにカレンの奴が金を借りたいって俺に借金したんだよ……でも仕事先で死んじゃったからその借金をボブ(♂)さんに立て替えてもらおうかと思ってたんだが、いつもはぐらかされてな……ちゃんとそうなるように証文も作ったのに……」
「その時、カレンさんが契約してた星霊についてはなにか知らない?」
「えっと……たしかカレンは黄道十二門の鍵を2本持ってて、1本は死んだ仕事先の敵に奪われたって聞いたけど……もう1本は行方不明らしい……ボブ(♂)さんいわく、なんかその星霊とはケンカしていたらしくて……」
「ありがとう!! 多分、ロキはあそこだ!!」
そう言ってルーシィは駆け出していった。俺もあとを追うことにした。
そしてたどり着いた先は滝のある崖。そこには1つのお墓があった。
そして、その墓の前にロキがいた。
「みんな探してるよ」
「さっさとギルドに戻れ」
「ルーシィ!! ゼニス!!」
「カレンのお墓でしょ? ここって」
カレンの墓? つまり……
「ロキが言ってた前に酷い目にあったって言う星霊魔導士ってカレンの事だったのか? あいつはルーシィの前じゃ言い難いが星霊魔導士としては最低の部類だったし、一緒くたにするのは良くな……」
「いいえ、ゼニス。ちょっと違うわ」
ちょっと違う? 何が違うんだ?
「星霊魔導士カレン・リリカ。ロキの
オーナー? ロキは人間だし所有者なんて……奴隷じゃあるまいし……いや、待てよ……
「星霊ロキ。ううん……本当の名は獅子宮のレオ」
「なっ!?」
ロキが星霊!!? いや、ロキは俺と同様に人間とは違った感じがしてはいたが、まさか星霊だったなんて……
「………よく気づいたね。僕が星霊だって」
「マジか……」
「あたしもたくさんの星霊と契約してる星霊魔導士だからね。ゼニスの話から真実にたどり着いた」
俺の話って……行方不明のケンカ中の星霊の話か? たったそれだけで真実にたどり着くなんて……
「でも……もっと早く気づくべきだったんだよね」
ルーシィいわく、星霊は本来は鍵の所有者が死ねば契約が解除され次の所有者が現れるまで星霊界に戻されるらしい。
「ん? ならなんでロキは人間界にいるんだ? ギルドに入ってもう3年近くたっているよな?」
「そうだね。僕はもう3年こっちにいる」
「3年て……!!! 1年でもありえないのに」
ルーシィいわく、人間が星霊界では生きられないのと同じで星霊も人間界では長く生きられないらしい。
「ああ……もう限界だよ……まったく力がでないんだ……」
「いや、だったら星霊界に戻ればいいんじゃ……まさか戻れないのか?」
「ああ、
「永久……追放?」
「なにをしたんだよ……」
「これは僕の罪だ。この【死】だって受け入れられる」
ロキはハッキリと告げた。
「僕は裏切り者の星霊だ。
殺した……だと……
「星霊とは不仲だって聞いてはいたが、そこまでやったのか……」
「3年前の話さ」
ロキは話し出す。カレンは男癖か悪く、簡単に男との約束を破り、金遣いも荒い性格でその上、所有してる星霊【白羊宮のアリエス】に酷いことをしていたらしい。
時には自分の代わりに男の相手をさせたり。おつかいや掃除させたり、仕事先では自分を守る盾にしたり、八つ当たりに痛めつけたりもしたらしい。
ロキはそんなカレンの仕打ちに頭にきてカレンに自分とアリエスの契約を解除するように言って、そのままボイコットまがいのことをしてカレンに星霊召喚をできないようにしたらしい……
「なるほど……カレンの奴が俺に金を借りたときはまさにロキのボイコット中だったわけか……」
「カレンもゼニスに借金をしていたんだね……知らなかったとはいえ、返せなくてゴメン」
「ああ、できればまとめて返してほしいね」
ロキは俺の発言を無視して話を続けた。
「三ヶ月が経った頃、マスターボブ(♂)からカレンが死んだことを聞いた。なんでも星霊を呼べないのに無理矢理仕事を受けて仕事先で死んだそうだ」
「その時に敵に奪われたのがアリエスの鍵って事か」
そこまでロキが話すともう立つのも辛いようにロキは倒れる。
「カレンは僕のせいで他の星霊を呼び出せなかった。そんな状態で仕事に行って命を落とした。僕が殺したのとかわらない。あの日を境に星霊界に帰れなくなった。星霊界も主人の命令に背いた星霊を拒否してる」
ロキの腕が半透明になっていく……消えていくのか!?
「あきらめないでロキ!! あんたは星霊界にさえ帰れたら生命力を回復できるのよ!!」
「そうなのか!? でもロキ自身にはゲートを通れない……ならバルゴでも呼んで連れて帰ってもらえば!!」
「無理だよ……別の星霊とであっても僕は星霊界に帰ることはできない」
ルーシィはなんとかして星霊界への扉を開こうとするが無反応……いや、ルーシィの魔力がロキと同化している!?
「やめてくれ、このままじゃ君まで一緒に消えてしまう!! これ以上僕に罪を与えないでくれーーーーっ!!!」
「何が罪よ!!! そんなのが星霊界のルールならあたしが変えてやるんだから!!!」
ルーシィがそう叫ぶと、あたりの空気が、水が、空間が引き裂くようにねじまがり、巨大な巨人?のような立派なヒゲの大男?が現れた。
「ま……まさか……そんな……星霊王!!!」
星霊王!!? まさか星霊界のトップか!?
「古き友、人間との盟約において我ら…鍵を持つ者ヲ殺める事を禁ズル。直接ではないにせよ、間接にこれを行ったレオ、貴様は星霊界に帰ることを禁ズル。古き友よ、その“法”だけは変えられぬ」
まさかさっきのルーシィの発言にトップ自ら出てきたのか!?
(だがチャンスでもある。ここで王の許しを得られればロキを救える。ルーシィ、うまく説得してくれ)
「3年も苦しんだのよ!! 仲間の為に! アリエスの為に仕方なかったことじゃないの!!」
「余も古い友の願いには胸を痛めるが……」
「古い友達なんかじゃない!! 今!! 目の前にいる友達の事言ってんのよ!! ちゃんと聞きなさい!!! ヒゲオヤジ!!!! これは不幸な事故でしょ!! ロキに何の罪があるって言うのよ!!! 無罪以外は認めないんだからねっ!!!」
王様をヒゲオヤジ扱いはどうかと思うが、概ねルーシィの意見に賛成だ。これは不幸な事故、もしくは所有者の自業自得だ。ロキには罪はない。
「もういい、ルーシィ!!僕は誰かに許してもらいたいんじゃない!!罪を償いたいんだ!!このまま消えたいんだ!!」
「そんなのダメ――――――!!!!!」
ルーシィが立ち上がり叫んだ瞬間。
彼女の背後に沢山の星霊が現れた。
「罪なんかじゃない!!仲間を想う気持ちは罪なんかじゃない!!!」
(一度にこんなに星霊を……)
しかし、その星霊達はすぐに消えてしまった。
「あたしの友だち……も皆同じ気持ち。あんたも星霊ならロキやアリエスの気持ちわかるでしょ!!」
「なんて無茶なことを!! 一瞬とはいえ死ぬ可能性だってあるんだぞ!」
星霊王はそんなルーシィの姿を見て言う。
「古き友にそこまで言われては、間違っているのは“法”かもしれぬな。同胞アリエスの為に罪を犯したレオ……そのレオを救おうとする古き友……その美しき絆に免じ、この件を『例外』とし、レオ……貴様に星霊界への帰還を許可スル」
おおっ!! 許可がおりた!! ルーシィは星霊王にウインクをして星霊王も「ニカッ」と笑い言う。
「免罪だ……星の導きに感謝せよ」
しかし、ロキはまだ納得がいっていないのか……
「待ってください……僕は……」
「それでも罪を償いたいと願うならば……その友の力となって生きていく事を命ずる。それだけの価値がある友であろう……命をかけて守るがよい」
星霊王は話は終わりだと言わんばかりに消えていく………そしてロキの後ろには扉が現れる……おそらく星霊界への扉だろう……ロキはそこへ吸い込まれてゆき、ルーシィの手にはロキ……いや、獅子宮の金の鍵が残った。
こうして、ロキの騒動は終結した。
ロキって女達への慰謝料とかどうしていたんでしょう?
星霊に戻っても自分で払っていたのでしょうか?
次回、多少のオリジナル