万丈目サンダーの姪っ子   作:交響魔人

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叔父と姪の交流

 雷姫は、やや遅めに起床した。

 手短に身支度を済ませ、リビングへ赴く。

 

 

「遅かったな。」

「叔父上。おはようございます…?」

 

 

 ふと雷姫は気づく。どうやらテレビ電話のようだ。

 

 

『ら、雷姫!無事か!』

「庄司叔父上。はい、大丈夫です。」

 

 雷姫は普段、万丈目準を叔父上と呼んでいるが、庄司と準が居る時はこうやって呼び分けている。

 一度、庄司を『叔父上』、準を『叔父貴』と呼んだところ万丈目準が不快感を示したので、それ以降呼んだことはない。

 

『…そう、か。準。お前の意見は分かった。だが…兄者を倒すほどの相手に雷姫が勝てるとは。』

「勝たせます。庄司兄さん。庄司兄さん達の言うとおり、俺が戦うのが確実で最も早い」

『なら!』

「だけど、それは相手も承知。だから俺ではなく雷姫を狙っている。四六時中ずっと傍に居れば安全だが、それでは長作兄さん達を助けられず、事件も解決に向かわない。」

『…分かった。雷姫も来たなら、俺から伝える事がある。』

 

 真剣な顔立ちの庄司を前に、二人は姿勢を正す。

 

 

『連中の狙いは、万丈目グループそのものの乗っ取りだ。兄者の次は準。その準を倒すために人質として狙っているのが雷姫、俺はそう見ている。』

「待ってくれ、連中が庄司兄さんを狙うかもしれないじゃないか!」

『兄者と俺が続けて倒れたら、万丈目グループそのものが崩壊する可能性がある。それを恐れての事だろう。俺ではなく雷姫を二度も狙った事から明らか。乗っ取るまでは存在してもらわねば困るという事だ。』

 

 忌々しい、という感情を隠そうともしない庄司。

 

『準、雷姫を守ってくれ。だが時には休むことも大事だ。』

「わかりました。庄司兄さん。」

 

 自分の双肩に万丈目グループの未来がかかっている、という事実を認識し雷姫の表情が強張る。

 その横顔を見た準は、今日一日しっかり休ませようと決心した。

 

 

 

 

 

 

 朝食にしては遅く、昼食にしては早すぎる時間。

 だが、朝はカフェオレとクロワッサンで済ませた万丈目準の胃は空腹を訴えていた。

 

 万丈目グループの系列店には、飲食店もある。

 その一つに準は雷姫と共に訪れたのだが…。

 

 

「なっ、お前達!」

 

 そこに、見知った顔が二人居た。

 

 

「やぁ、万丈目君。」

「…また会えるとは。」

 

 

 一人は藤原 優介。ダークネスの事件を引き起こしたデュエル・アカデミアの天才。

 もう一人は橘 一角。ノース出身であり、ジェネックス大会にて死神のドローパワーに頼った男。

 

 

「一体どうしてここに?」

「僕は調査に来たところだ。闇のゲームが行われているとなれば、放ってはおけない。」

「俺は軟禁からようやく解放されたところだ…。ところでその子は妹さんか?」

 

「いいや、姪だ。」

「「姪っ?!」」

 

 異口同音に素っ頓狂な声を上げる二人を前に、万丈目は何だかむず痒い思いをする。

 

 

「雷姫、先に食事をとっておいてくれ。俺は事情を話してから合流する。」

「わかりました。」

 

 

 叔父の知り合いという事もあり、丁寧に一礼すると雷姫は歩き出す。

 少しの仕草から生まれと育ちの良さがうかがえる言動に、藤原と橘は目を丸くする。

 

「…さて。一体どうなっているんだい?」

「実は…。」

 

 

 

 

 叔父と知り合いが話し合っている最中、雷姫は遅めの朝食と早めの昼食を兼ねた食事を取る。

 棒棒鶏サラダ、バジル餃子1人前にレモン汁をかけてペロリと平らげる。

 

 

「万丈目グループの株価が低下しているのに大規模な買い付けが起きていない。個人投資家が少し買いあさったぐらいだ。俺としては底値を待っているのでは?とも思うのだが、庄司兄さんは。」

 

 

 割と大事な話をしているはずなのだが、見るからに名家のお嬢様然とした少女がコーンたっぷり炒飯と味噌ラーメンを交互に食べ始めたのがどうにも気になって仕方ない。

 

 

「俺達は良くも悪くも派手にやり過ぎたからな…。本校とノース校の代表試合を枠を買い取って生放送。しかも明らかに俺の敗北という所で中継を切ったのが不味かった。デュエルアカデミア買収話は、相手が海馬瀬人という事で負けてもあまりダメージは無かったんだが。」

 

 

 ニラレバとエビチリに取り掛かり、続けて運ばれてきた麻婆豆腐にも手を付けている。

 グツグツと煮えたぎり、ここまで匂いが漂ってくるどう見ても激辛なソレを上品に食べていく姿を、藤原とオネストの主従と橘は唖然と見守る。

 

 腰は細めなのに、一体全体どこに入っていくのか。

 

 

 

 

「橘。軟禁されていたというが、一体何があったんだ?」

「あ、ああ。俺はデュエリストとして雇いたいというから来たんだ。まぁ、色々怪しかった。」

「何?」

「依頼主はモニター越しで変声機まで使って、『シミュレーション部屋で、仮想敵を倒せ』と言ってきたんだ。」

「ほぅほぅ。」

「対戦相手のデッキが、竜魔人キングドラグーン軸の【宝石ドラゴン】に、真紅眼の黒竜が入ったデッキだった。」

 

 デュエルモンスターズにおいて実物のカードは高価だ。

 だが、デュエルシミュレーションであればデータに過ぎないため、神のカードを除くすべてのカードを使える。

 

 

「それって、今回の事件を起こしている連中の施設じゃあ!」

「おそらく。だが、場所は分からない。何せ目隠しされた上に方向感覚が分からなくなるようグルグル回された上に、酔い止めと睡眠薬をのまされて車に乗せられたから…。」

 

 そうは言ったが、これは万丈目にとって大きな手がかりだ。

 

「…ところで、このデッキに見覚えはあるか?」

 

 渡されたデッキをざっと見た橘は思わず声を上げる。

 

「あっ!俺が組んだデッキだ!」

「キサマか!お前が組んだデッキで襲われたんだぞ!」

「お、俺は、『この部屋のカードを好きに使って、仮想敵に勝てるデッキを組め』と言われて組んだ。まさかそんな事に使われるなんて、思ってもみなかった。本当に申し訳ない。」

 

 傍らからのぞき込んだ藤原優介は困惑の色を隠せない。

 

「…これは一体。ドラゴン族へのメタデッキのようだけど。そもそも真紅眼の黒竜は?」

「いや、相手が真紅眼の黒竜を使うなら、真紅眼の黒竜を奪ってレッドアイズ・ブラックメタルドラゴンに進化させればびっくりするだろうなって。」

「そりゃあびっくりするだろうけど。」

 

 

 この分校の後輩は何というデッキを組むのか。

 藤原は親友の顔を思い浮かべる。

 アイツならレッドアイズ・ブラックメタルドラゴンを【真紅眼】に対するメタカード的な感じで使われた日には怒るより感心するだろう。

 

 

「それで、軟禁状態からどうやって脱出したんだ?」

「いや、もう用済みだと言われて…。約束の報酬も結局無しだった。」

「まぁ、最初から払うつもりは無かったようだな。」

 

 

 新たな情報を得て、万丈目は考える。

 

「万丈目君。この一件。僕は力になりたい。」

 

 藤原優介は意気込みを見せる。

 万丈目との繋がりはさほどない。だが、親友の亮と吹雪の後輩であり、何より闇のゲームで人の魂を弄ぶ輩を放置する気にはなれない。

 

 

「連中の狙いが万丈目グループの乗っ取りであり、俺を倒すために雷姫の身柄を確保しようとしている。そんな状況でデュエリストの護衛が付いたら襲撃を止めるだろう。時間は連中に有利だ。長作兄さん達に異常は出ていないが…意識不明で身動きできない状況が続けば体力も筋力も衰える。」

 

 

 雷姫は鶏肉の中華ちまきと、海鮮ちまきを開封。

 笹の匂いともち米の香りが周囲に漂う。

 

「君のお兄さん達を苦しめている闇のゲームによる罰ゲーム。それがどういう代物か、僕達なら突き止められる。」

「…お願いします。藤原先輩。」

 

 

「…そういう事なら万丈目。気を付けた方がいい。俺はシミュレーション部屋に入り浸っていたが気になるデュエリストが居た。」

「何だ?」

「新たに発表されたシンクロ・モンスター。それの使い手だ。」

「シンクロ召喚、か…。」

 

 チューナーと非チューナーを並べて行う特殊な召喚法。

 

 

「今のうちにレクチャーしておいた方がいいと思うぞ。」

「それにしても。まだ数が少ないシンクロ・モンスターを使う奴が居るなんて。」

「名前は知らないが、金髪で美人な外国人だったな。」

「そうなのかい?」

「まぁ、指輪をしていたからもう結婚しているみたいだけど。」

 

 

 その頃になって、雷姫の食事は終わりを迎えつつあった。

 

 

「お嬢様。新作の杏仁烏龍でございます。飲む杏仁スイーツです。」

「ありがとう。」

 

 出された飲み物をゆっくりと飲み干し、一息つく。

 

 

「…ここの支払いは俺が持つ。」

「別にいいのに。」

「そうでもしないと気が済まない。それでは。」

 

 

 万丈目が姪を連れて退出するのを見送った後、藤原と橘は食事をすることにした。だが。

 

 

「…和・洋・中の中で、特に洋食に力を入れているとネットに書いてあるが。」

「橘君。彼女があれだけ食べている以上、中華は相当質が高いぞ?」

「万丈目グループは彼女の食事光景を撮影して、そのままCMで使えばいいのに。」

「あれを放送したら、もう嫁にはいけないだろうね。」

 

 

 

 

 

 

 それから2時間後。

 両親が入院している病院。

 藤原が万丈目長作議員に起きた闇のゲームによる罰ゲームについて、オネストと共に見定めている間。

 

 

 

 

「雷姫。お前に新たな召喚法について教えて置く。シンクロ召喚だ。」

「シンクロ召喚?」

「チューナーと、チューナー以外のモンスターのレベルの合計と同じモンスターを、エクストラデッキから特殊なモンスターを呼び出す方法だ。」

「チューナー…。」

「まだあまり出回っていない。基本的にステータスは低めのカードが多い。」

 

 手渡された二枚のチューナーを雷姫は見つめる。

 

「共闘するランドスターの剣士、ジェネクス・コントローラー…。チューナーでも効果モンスターと通常モンスターが存在する。」

「そういう事だ。これは非常に画期的な召喚法だ。いいか?」

 

 万丈目準は机に数枚のカードを場に置く。

 

「手札のバスター・ブレイダーを場に出すためには、何が必要だ?」

「レベル7なので、2体のリリース要員が必要です。」

「そうだ。だが通常召喚は1ターンに1度。手札の切り込み隊長を通常召喚。ここでモンスター効果を発動。共闘するランドスターの剣士を場に出す。次のターンを凌げば、この二体をリリースしてバスター・ブレイダーのアドバンス召喚が出来るな。」

「はい。」

「だが、シンクロ召喚は違う。モンスターが場に揃った時点で、この二体のモンスターを墓地に送る事でエクストラデッキから大地の騎士ガイアナイトを場に出せる。」

「攻撃力2600が、1ターン早く出せる…。」

「デュエルの流れは高速化が進むだろう。それまで見向きもされなかった思わぬカードが活躍するようになるかもしれない。その一方で、活躍の場が減るカードも出てくるだろう。そもそも今までは、最上級モンスターをアドバンス召喚をするなら二体のリリース要員を揃え、召喚権を残し、さらに最上級モンスターを引き当てないといけなかった。だがこれからは。」

「チューナーと非チューナーが並べば強力なモンスターを出せる…。」

「というわけで、俺からこのカードを渡しておこう。」

 

 

 渡されたチューナーを見た雷姫は眼を丸くする。

 

「叔父上、これは…!」

「それと、この二枚のシンクロ・モンスターと最近手に入れたこいつらも渡しておく。」

 

 低ステータスのカードだが、そこに記されたテキストを雷姫は熟読する。

 それらのカードをデッキに組み込み、何枚か外して雷姫は真剣な目で告げる。

 

「…叔父上。デュエルの相手をお願いしても?」

「当然だ。」

 

 

 

 

「「デュエルッ!!」」

 

 

サンダー ライフ4000

手5 フィールド 

    魔法・罠 

雷姫 ライフ4000

手5 フィールド 

    魔法・罠 

 

 

「先攻は俺だ。ドロー!モンスターをセット、カードを1枚伏せてターンエンド!」

 

 

サンダー ライフ4000

手4 フィールド セットモンスター

    魔法・罠 伏せ1

雷姫 ライフ4000

手5 フィールド 

    魔法・罠 

 

 

「私のターン、ドロー!魔法カード、召喚師のスキル!デッキから上級通常モンスターを手札に加える。私はチューナーモンスター、ラブラドライドラゴンを手札に加える!魔法カード、古のルールを発動!手札の上級通常モンスターを特殊召喚!現れろ、チューナーモンスター、ラブラドライドラゴン!」

 

 守備力2400の通常モンスター。新たなる宝石ドラゴンの一種であり、美しい輝きを放つ。

 パラレルレア仕様では無いが、その美しさは他の宝石ドラゴンと比べても見劣りはしない。

 

「私は、シンクロ・フュージョニストを召喚!」

 

 続いて現れたのは、万丈目準が渡したカード。

 融合のイラストに描かれている謎のオレンジ色の魔法使い族。

 

「レベル2の闇属性シンクロ・フュージョニストに、レベル6のラブラドライドラゴンをチューニング!闇と切り裂き現れろ!ダークエンド・ドラゴン!」

 

 まがまがしい闇の竜が光の輪から出現し、咆哮を上げる!

 

「ふっ。」

「ここでシンクロ召喚のために墓地送りとなったシンクロ・フュージョニストのモンスター効果発動!デッキから融合を手札に加える!魔法カード、融合を発動!」

「来るか!」

「私は、ロード・オブ・ドラゴン-ドラゴンの支配者-と融合呪印生物-「闇」を融合!融合召喚!竜魔人キングドラグーン!」

「一ターンで、攻撃力2600と2400のモンスターを並べてきたか。」

「ここで、ダークエンド・ドラゴンのモンスター効果発動!攻撃力と守備力を500ポイント下げる事で、相手モンスターを墓地へ送る!」

 

 

 ダークエンド・ドラゴンが闇を吐き出すと、万丈目準の壁モンスターが闇に飲まれて消える。

 

「おジャマ・ブルーが墓地へ送られたが、戦闘破壊では無いから効果は発動しないな…。」

「勝たせてもらいます、叔父上!ダークエンド・ドラゴンでダイレクトアタック!」

「リバースカードオープン!速攻魔法、スケープゴート!4体の羊トークンを守備表示で特殊召喚!」

「?!なら、そのまま攻撃!」

 

 一体の羊トークンを蹴散らすダークエンド・ドラゴン。

 

「竜魔人キングドラグーンで、もう一体の羊トークンを攻撃!トワイライトバーン!」

 

 またしても蹴散らされる羊トークン。

 だが、まだ2体残っている。

 

「さて、どうする?」

「…ターンエンドです。」

 

 

 

サンダー ライフ4000

手4 フィールド 羊トークン 羊トークン

    魔法・罠 

雷姫 ライフ4000

手1 フィールド 竜魔人キングドラグーン ダークエンド・ドラゴン

    魔法・罠 

 

 

「俺のターン、ドロー!俺はチューナーモンスター、ジェネクス・コントローラーを召喚!」

「チューナー!?」

「さぁ行くぞ、俺はレベル1の獣族である羊トークン2体に、レベル3の闇属性、ジェネクス・コントローラーをチューニング!」

「待ってください、叔父上!」

 

 そこに待ったをかけられ、万丈目準とジェネクス・コントローラーの動きも止まる。

 

「何だ?」

「シンクロ召喚は、チューナーとチューナー以外のモンスターを『墓地に送って』特殊召喚する特殊な召喚法ですよね?」

「そうだな。」

「ですが、トークンは場から墓地へ送ると消滅します。『墓地に送れない』以上、シンクロ召喚に使えないのでは?」

「いいや。シンクロ素材として使用したモンスターが墓地以外へ送られる時でも、シンクロ召喚を行う事は可能!さぁ、行くぞ!」

 

 その言葉を受け、ジェネクス・コントローラーが3つの光の輪へ変貌。

 その中を二体の羊トークンが潜り抜ける!

 

「これがオレ様の新たな力!シンクロ召喚!いでよ、氷結のフィッツジェラルド!」

 

 凄まじい冷気を纏った氷の悪魔が現れ、二体のドラゴンの前に立ちはだかる!

 

 

「攻撃力2500?!」

「バトルだ、やれ、氷結のフィッツジェラルド!ダークエンド・ドラゴンを攻撃!ブリザード・ストライク!」

「ダークエンド・ドラゴンっ!」ライフ4000から3600

「俺はこれでターンエンドだ。」

 

 

サンダー ライフ4000

手4 フィールド 氷結のフィッツジェラルド

    魔法・罠 

雷姫 ライフ3600

手1 フィールド 竜魔人キングドラグーン 

    魔法・罠 

 

 

「私のターン、ドロー!魔法カード、貪欲な壺を発動!墓地からダークエンド・ドラゴン、シンクロ・フュージョニスト、ロード・オブ・ドラゴン-ドラゴンの支配者-、融合呪印生物-「闇」、ラブラドライドラゴンの5体をデッキに戻して、シャッフル。」

 

 デッキを取り出し、入念にシャッフルする雷姫を万丈目準は真剣な目で見つめる。

 

「そして、デッキから二枚ドロー!」

 

 引いたカードを見た雷姫は笑みを浮かべる。

 

「竜魔人キングドラグーンの効果発動!手札のドラゴン族モンスターを特殊召喚!現れろ、チューナーモンスター、ラブラドライドラゴン!」

「何っ?!」

 

 万丈目準は驚いた。なぜなら、雷姫に渡したラブラドライドラゴンは1枚だけ。

 それを貪欲な壺でデッキに戻した後、引き当ててのけた。こんな芸当が出来るデュエリストは、万丈目準が知る限りでも五指に収まる。

 

 デュエリストとしての才覚は皆無とは言わないが、それほど高いと万丈目準は思っていない。

 これは、両親を取り戻したいという想いの強さが成しえているのだろう。

 

 

「私はクリア・エフェクターを召喚!レベル2の光属性、クリア・エフェクターに、レベル6のラブラドライドラゴンをチューニング!」

 

 再び6つの光の輪となるラブラドライドラゴン。その中をクリア・エフェクターが潜る。

 

「シンクロ召喚!光を纏いて現れろ!ライトエンド・ドラゴン!ここで、クリア・エフェクターの効果発動!シンクロ召喚のために墓地送りとなった時、カードを1枚ドローする!」

「そして、ライトエンド・ドラゴンはカードの効果では破壊されなくなった。」

「バトル!ライトエンド・ドラゴンで、氷結のフィッツジェラルドを攻撃!ここでライトエンド・ドラゴンの効果発動!攻撃力と守備力を500ポイント下げて、相手モンスターの攻撃力と守備力を1500ポイント下げる!」

「ライトエンド・ドラゴンの攻撃力は2100まで下がるが、氷結のフィッツジェラルドも攻撃力1000までダウンするな…ぐっ」ライフ4000から2900

「竜魔人キングドラグーンで」

「待った。ここで俺は氷結のフィッツジェラルドの効果発動。戦闘破壊されたとき、俺の場にモンスターが居ない時に発動!手札を1枚捨てることで墓地から守備表示で特殊召喚出来る。」

 

 再び現れる氷結のフィッツジェラルド。

 

「守備力2500…。」

「ここで墓地へ送られたおジャマジックの効果発動。俺はおジャマ三兄弟を手札に加える。」

「これでは、ライトエンド・ドラゴンで戦闘破壊出来るのはあと一回…。ターンエンド。」

 

 

サンダー ライフ2900

手6 フィールド 氷結のフィッツジェラルド

    魔法・罠 

雷姫 ライフ3600

手2 フィールド 竜魔人キングドラグーン ライトエンドドラゴン

    魔法・罠 

 

 

「俺のターン、ドロー!フィールド魔法、おジャマ・カントリーを発動!俺はおジャマ・ブラックを召喚!」

「これで、場のモンスターの攻撃力と守備力が入れ替わる…。竜魔人キングドラグーンの攻撃力が1100に。

「さらに俺は手札のおジャマ・イエローを墓地に送り、フィールド魔法、おジャマ・カントリーの効果発動!墓地からおジャマ・イエローを復活!装備魔法、団結の力を氷結のフィッツジェラルドに装備!」

「場には3体のモンスター、氷結のフィッツジェラルドの攻撃力が2400ポイントアップして4900?!」

「バトル!氷結のフィッツジェラルドで竜魔人キングドラグーンを攻撃!ブリザード・ストライク!」

「きゃああああああああっ!」ライフ0

 

 

 

 ライフが尽きた雷姫は膝から崩れ落ちそうになるも、気合で持ち直す。

 

「…ありがとうございました。」

「さて、もっとデッキを調整するぞ。このままでは足りない。」

 

 

「良いデュエルだった。」

 

 気がつくと、藤原優介が病室から出ていた。

 

「藤原先輩。兄さん達は。」

「魂だけ抜き取られてカードに封印されている。カードの所持者を闇のゲームで倒せば呪縛から解放されるはずだ。」

 

 

「だったら、私が勝てば」

「そう、解決だ。だが、今のままでは厳しいだろうね。」

 

 手厳しい事だが、自分が勝てば両親が戻ってくる。

 犯人グループは相応の規模の施設を保持している。それが車の圏内にある以上、ある程度絞れる。

 

 

 

 

 

 

 同時刻。

 

「彼は一体…?」

 

 二世議員は、他の男たちが連れてきた若者を怪訝な顔で見つめる。

 

「万丈目雷姫を倒すためにデュエリストを集めていると聞いた。」

「故に我々も推薦させてもらったというわけだ。」

 

 

 あまり冴えない男を見て、二世議員は内心ため息をつく。

 

「では、実力を見せてもらいます。おい、彼女を連れて来い。」

 

 

 部下が呼びに行って数分後、現れたのは若い女だった。フワフワの金髪と太めの眉。

 やや小柄で肉付きが良いが、腰が細いため太っている印象は無い。

 

 

「?!元プロデュエリストの、イリーナ・スティード?!」

「それは旧姓だ。今は。」

 

 イリーナは左手の指輪を見せつける。

 

「イリーナ・アトラスだ。お前は?」

「セルジオ。デュエリストだ。」

 

 

「それでは、君の実力を見せてもらうとしよう。」

 

 

 そう言われたセルジオはデュエルディスクを構える。

 だが、起動から準備が早かったのはイリーナの方だった。

 

 

「先攻は」

「実力を図るため、先攻はセルジオからだ。」

 

 

「「デュエルッ!!」」

 

 

セルジオ ライフ4000

手5 フィールド 

    魔法・罠 

イリーナ ライフ4000

手5 フィールド 

    魔法・罠 

 

 

「私の先攻、ドロー!よし、一撃必殺侍を召喚!さらに永続魔法、セカンド・チャンスを発動!カードを1枚伏せ、フィールド魔法、歯車街を発動!ターンエンド!」

 

 

セルジオ ライフ4000

手2 フィールド 一撃必殺侍

    魔法・罠 セカンドチャンス 伏せ1 歯車街

イリーナ ライフ4000

手5 フィールド 

    魔法・罠 

 

 

 セルジオのターンが終わったが、周りのギャラリーが騒ぎ始める。

 

「お、おい。大丈夫なのかね?攻撃力1200はさほど高い数値では無いんだろう?」

「いいえ。この一撃必殺侍はダメージ計算前にコイントスを行い、当たれば相手モンスターを効果で破壊出来ます!」

 

 

「だ、だが。確率は50%ではないか。」

「ご心配は無用。私の永続魔法、セカンド・チャンスはコイントスを1ターンに1度やり直す事が出来ます。」

「やり直すという事は…。確率は75%で相手モンスターを破壊出来るという事か!」

 

 説明を聞き、周りの老人たちはやや安心する。

 そんな彼らを、冷たい眼でイリーナ・アトラスは見渡す。さほど、デュエルに対する造詣は深くないようだ。

 

 

「私のターン、ドロー!フィールド魔法、魔法都市エンディミオンを発動!」

「なに?!フィールド魔法を発動…?」

 

 そのプレイングにセルジオは訝しむ。

 

「さっさと効果を処理しろ。そのカードを使う以上、入っているのだろう?古代の機械モンスターが。」

「あ。ああ!新たなフィールド魔法が発動されたことで、私のフィールド魔法、歯車街は破壊される!だが破壊された歯車街の効果発動!デッキ・手札・墓地から古代の機械モンスターを特殊召喚!現れろ、古代の機械騎士!」

「…古代の機械巨竜はともかく、せめて古代の機械合成獣ぐらいは用意できなかったのか。」

 

 

 フィールドが歯車の街から、魔法都市へと変貌する中。

 歯車の残骸が集まり、騎士を形作る!

 

 

「あ、あれは一体…?フィールド魔法の効果とか言っていたが。」

「どうやら、破壊されることで効果が発動するようだが。にも拘わらず、フィールド魔法をわざわざ破壊したとなるが。」

「それはつまりミスをしたという事か?」

 

 

 ため息をつきたい気持ちを抑え、イリーナは手札のモンスターを場に出す。

 

 

「さらに手札からジェスター・コンフィの効果発動!このカードを手札から攻撃表示で特殊召喚!」

「攻撃力0を…?」

「装備魔法、ワンダー・ワンドをジェスター・コンフィに装備。装備モンスターの攻撃力を500ポイントアップさせる。さらにフィールド魔法、魔法都市エンディミオンの効果発動!」

「何?」

「魔法カードが発動するたびに魔力カウンターが置かれる。」

 

 魔法カードが発動した事で、エンディミオンに1つ目の魔力カウンターが置かれる。

 

「一体、何を狙っている?」

「私はワンダー・ワンドのもう一つの効果を発動!装備モンスターとこのカードを墓地に送って、カードを2枚ドロー!二体目のジェスター・コンフィを特殊召喚!ワンダー・ワンドを装備!」

 

 魔法カードが発動した事で、エンディミオンに2つ目の魔力カウンターが置かれる。

 

 

「ジェスター・コンフィとワンダー・ワンドを墓地に送り、二枚ドロー!魔法カード、悪夢再び!」

「それは確か、墓地の守備力0の闇属性モンスターを2枚まで手札に戻すカード。」

 

 魔法カードが発動した事で、エンディミオンに3つ目の魔力カウンターが置かれる。

 

 

「私は墓地のジェスター・コンフィ2枚を手札に戻す!ジェスター・コンフィを特殊召喚!3枚目のワンダー・ワンドを装備!」

 

 魔法カードが発動した事で、エンディミオンに4つ目の魔力カウンターが置かれる。

 

 

 

「ワンダー・ワンドを装備したジェスター・コンフィを墓地に送って2枚ドロー!私はマジカル・コンダクターを通常召喚!魔法カード、闇の誘惑を発動!カードを2枚ドローして、手札の闇属性モンスターを除外する。ジェスター・コンフィを除外!」

 

 魔法カードが発動した事で、エンディミオンに5つ目の魔力カウンターが置かれる。

 

「マジカル・コンダクターの効果発動!魔法カードが発動するたび、2つの魔力カウンターが乗る!マジカル・コンダクターの効果発動!魔力カウンターを2つ取り除き、手札からチューナーモンスター、ナイトエンド・ソーサラーを特殊召喚!」

「チューナー…!」

「レベル4の魔法使い族マジカル・コンダクターに、レベル2のナイトエンド・ソーサラーをチューニング!」

 

 

 光が環となり、その中をマジカル・コンダクターが通り抜ける!

 

「魔力蓄えし魔術師よ。我が呼びかけに応じ、その力を示せ!シンクロ召喚!マジック・テンペスター!」

 

 

 マジカル・コンダクターが新たな杖と力を得たような姿に変貌する!

 

 

「マジック・テンペスターの効果発動!シンクロ召喚成功時、魔力カウンターを1つ置く!私は魔力掌握を発動!魔法都市エンディミオンに6つ目の魔力カウンターを置き、さらにデッキから二枚目の魔力掌握を手札に加える。」

 

 

 魔法カードが発動した事で、エンディミオンに7つ目の魔力カウンターが置かれる。

 

 

「馬鹿な、1ターンでエンディミオンの魔力カウンターを7つも…。」

「そ、そんなに意外な事なのかね?」

「はい。エンディミオンには神聖魔導王エンディミオンという魔力カウンターを6つ取り除く事で、特殊召喚出来るモンスターがあります。」

「つ、つまり狙いはそのカードを出す事ということかね?」

「おそらく。」

 

 

 的外れな事を言っているセルジオと、周りの老人に対し、イリーナは酷薄な笑みを浮かべる。

 

 

「私はここでマジック・テンペスターの効果発動!場の魔力カウンターをすべて取り除き、相手に取り除いた数×500ポイントのダメージを与える!」

「魔力カウンターは8つ、4000のダメージだと!うわああああああ!」ライフ0

 

 

 1ターンでライフを削り切ったイリーナを、周りのギャラリーは呆然と見つめる。

 

「…見事だ。これなら万丈目一族の小娘など。」

「今回はただ運が良かっただけ、この程度ではデュエルとは呼べない。実戦に向けて今一度練り上げる。」

「手厳しいな。」

「報酬はいつもの口座に振り込んでおいて貰うぞ。」

「わかった。約束しよう。」

 

 

 

 イリーナと二世議員が立ち去った後、老人達はあえぐ。

 

「な、何という事だ。」

「この役立たずめ!まるで相手にならなかったではないか!」

「す、すみません、すみません!」

「我々に恥をかかせおって!」

 

 

 周りから罵倒されながら、セルジオは必死に謝罪する。

 




 というわけで、シンクロ召喚の導入でした。
 セルジオはサティスファクションタウンで登場したキャラクターです。
 もう一人、オリキャラが登場しました。傲慢でありながらもデュエルに関しては真摯に向き合う、結婚して姓が「アトラス」になった女性…。
 一体誰の母親なのでしょうか。

 遊星の母親はともかく、彼の母親に言及したのはこの作品が最初ですかね?
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