新一のいとこですけど......   作:ヤヤヤンヤ

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バイバイ前世

 

 

2024年の6月。大学からのバイトでへとへとだった私は自炊なんてする気も起きず、コンビニでカップ麺とか色々買って新発売のアイスを食べながら帰宅していた。そのまま帰宅できたらよかったが、あと数分でアパートに着くところで背中に強い衝撃を受けた。刺されていた。

いやー、最近不審者が出てるって大家さん言っていたのすっかり忘れてましたね。

刺された直後は、痛いより驚きが勝って何が起きたのかわかっていなかった。刺された衝撃で前に転倒し痛みで動けなかった。けれどそいつは何度も何度も刺してきた。流石に腹が立ちましたよ。そんなに刺さなくても死ぬっつーの。死ぬ前に不審者の顔でも拝んでやろうと振り返ろうとしたが、あえなく出血死でぽっくり逝ったのが前世の私。

 

 

 

 

 

そして今世の私、工藤誉(くどうほまれ)が生まれました。

皆さんもうお分かりだと思いますが、私はいわゆる転生者として新たな人生を歩むことになったようです。そしてどんな世界に転生したのか、ですが。

 

『か、怪盗KIDです!!怪盗KIDが現れました!!!』

 

昔懐かしアナログテレビに映るのは、興奮した様子の女性アナウンサーとその後ろで夜空を優雅に飛ぶ白い何か。

 

皆さんの予想通りです。

私が転生したのは「名探偵コナン」の世界でした。

 

ほぼ週1で人が亡くなる某死神少年が主人公の世界。ここで阿鼻叫喚するのが通例だが、私は別にいつか訪れるだろう自分の死に泣き喚いたりしない。なぜなら私は主人公の血縁者だから。

 

ありとあらゆる二次創作を読み漁っていた私は、多くの世界線で主人公の関係者は多少危険な目に遭えど、死ぬことはない。そう結論づけた。ちなみに私は主人公の従姉という立ち位置で転生している。私の母が工藤優作の姉なのです。バッチリ血縁。でも主人公と知り合っていなければ危険なのでは?と思われるだろうが、現在主人公はまだ生まれていない。工藤優作氏、優作さんは藤峰有希子氏、有希ちゃんと恋人だが、まだ有希ちゃんは高校生なので結婚はしていない。

 

 

ここで突然ですが、今世の私工藤誉齢5歳の生まれてから今に至るまでをお話します。

 

オギャー!と産まれた私は、病院の新生児室のベッドに寝かされる直前には自分の意識が赤ん坊の身体に宿っていることを理解できていた。オギャーしか言えないとバカでも気づきます。しかし、頭で理解していても身体は思うように動かず、ジタバタするのみで自分の意思を伝えられずぐずって泣いてばかりだった。二次創作に書かれていた精神年齢が身体に引きづられる、というのはこういう事なのかと身を持って体験できた。まあ体験できたから嬉しいわけではないが。

新生児室から母親と思われる女性の病室に運ばれ、お乳をごくごく飲んでいると、見舞い客として優作さん(高校生バージョン)が来たのでこの世界がどこなのかを察した。赤ん坊にも丁寧に自己紹介をしてくれたのに驚きで泣いてしまい申し訳ない……。

 

退院日になり病院から自宅に運ばれると、タワマンと呼ばれるすげーたけーマンションが母の自宅だった。タワマンって高層階用のエレベーターがあったり、大家さんではなくコンシェルジュがいるんですね。前世貧乏大学生の私では知らない世界でした。勿論自宅の中もバカ広かったです。しかし母が言うには、ここは別荘で本宅は子供が安全に生活するには物が多すぎるため、私がある程度大きくなるまではここで暮らすらしい。流石お金持ち。お金持ちには別荘所有が必須条件なのかな。そして母は片親だった。しかし、病院にいた時点で私の父親は現れなかったのでそうではないかと思っていた。母は(実子贔屓無しでも)大変美人なので、恋愛関係でトラブルに巻き込まれることが多く(勝手に彼女にされたり、浮気・不倫相手に間違われたり)、自分に色目を使ってくる人に嫌気がさしたため、種だけ貰ったそうです……。自分の子供を産みたいという願望はあったので、できるだけ顔が良い男性を選び、……た、種だけ貰い、姿をくらまし私を妊娠・出産したと教えてくれた。自分の母とはいえ、アグレッシブすぎて驚きよりも世の中にはこんなに強い女性がいるんだと感動した。ママすごい!と言えば母はえへへ〜と照れていた。

 

「アタシは誉と仕事に溺れて生活したいんだ。旦那なんていう赤の他人に構ってやれないのさ」

 

と母は眩しい笑顔で言っていた。

 

そんなアグレッシブな母に育てられスクスクと育っていた私は3歳のとき重い決断をした。母は私を妊娠する以前は、凄腕ファッションデザイナーとして世界を股にかけていたが、私を産んでから私との生活を優先してくれていた。そのため1日の大半を私の世話に費やし、デザイナーの仕事は夜中にするという寝る間がほとんど無い生活を送っていました。私の前では何でもないように振る舞うが、笑顔に疲労感が見え始めていた。このままでは母が倒れてしまうと思った私は母に仕事に戻ってとお願いした。

 

「まま。わたしいつものままもすごくすきだけど、おしごとしているときのままもとーってもすきなの」

「誉……」

「だから、ままもままのすきなようにしてほしい。さみしいけど、わたし、ままのことおうえんするから…!」

「ぼ、ぼま゙れ゙ぇぇぇ!!あ゙り゙がどぉぉぉ!!!!!」

 

母の涙でびしょ濡れになりながら自分の思いが伝われと強く抱きしめると、さらに涙でびしょびしょになったのはいい思い出。私は応援すると言いましたが3歳の子供を長期的に預けるとなるとどこがいいのか、若干不安でした。しかし母は私を預かってくれる人に検討をつけていたようで、タワマンからまた別のタワマンへ向かうとそこは優作さん(大学生バージョン)の自宅でした。母が私を預かってほしいと頼むと優作さんはなぜか快くOKしてくれた。タワマンと言えど男子大学生が住む家、カップラーメンやスナック菓子、ペットボトル飲料がダイニングテーブルに広がっている+小説家なので作品に関連する資料や本なども至る所に散らかっていて、お世辞にもキレイとは言えない状況だった。「少し散らかっててね」と言っていたけれど実際はだいぶ散らかってたよ。

 

あまりの散らかりようにブチギレた母が優作さんのお尻を蹴りながら片付けさせること約1時間。1時間のサスペンスドラマがちょうど終わったのとほぼ同時に、下のごみ置き場からへとへとの優作さんが家に戻ってきたから覚えてる。見違えるほどキレイになったお家が私の第二の家になりました。

 

「誉乃姉さんのスパルタ加減は相変わらずだな。誉、君のお母さん本当はあんなに怖いんだぞ」

 

工藤誉乃(くどうほの)が私の母の名前だ。

 

「んふふ、でもままがおこるのはゆうさくさんがあんなにちらかしてたからじゃない?」

「ちぇ、君は私の味方ではないのか」

「ゆうさくさんにはわるいけど、いちばんはままだからね」

 

私の自室となる居住スペースが生成された優作さん宅に私の私物を運び終えた数日後には、母はイギリスに旅立った。なんとなんと本宅はイギリスにあり、3年以上放置した我が家の掃除と手入れに戻るためだと当時言っていました。まさか海外が拠点だったとは……。流石お金持ち。母には月に1回手紙をお互い書くこと、年に1回は日本に戻って来ることを約束した。最初は月1で戻ってくると言われたけれど、仕事に支障が出ると思い年1にしてと言った。空港では笑顔で登場ゲートに入る母を見送った後、寂しくて優作さんの肩を借りちょっぴり泣いてしまった。

 

優作さんとの生活は、母から「アイツはすぐにダラける。監視するように!」と指令が出ていたので1日のタイムスケジュールを作り、これにほぼ沿うように頑張っている。食事面では、私はまだ子供用の包丁でも持つことができなかったので母手作りの子供でも作れる簡単な料理レシピを見せながら、料理がてんで駄目だった優作さんでも作れるよう厳しく指導した。前世で培った自炊スキルが役立ってよかった。生卵を電子レンジに入れたときは冷や汗をかきました…。優作さんも鍛錬を積み、今では基本的な料理はレシピを見なくても作れるようになってくれた。先生冥利に尽きます。

 

そして優作さんが締切間近(厳密には違うけど)になると自室に籠るため、その期間だけは家政婦さんを雇っている。大学生とはいえ、連載を抱える作家の優作さんは食事も摂らず執筆活動を続けるため、必然的に私も食事が無い状態になる。掃除や洗濯はなんとか頑張ってできてもまだ料理はできない。そこで「実家で雇っていた家政婦を呼ぼうか」となんともお金持ちな発言を流せず、詳しく聞くと、母と優作さんの両親つまり私の祖父母は優作さんが小さい頃離婚し、母親の方に私の母と優作さんが、父親の方には母の弟で優作さんの双子のお兄さんが引き取られた。元々住んでいた家には母親側の家族が住んでいたけれど子供2人が大きくなり、一人暮らしを始めたので大きな家に1人でいるのも悲しいと祖母は小さな家に引越し犬を飼って暮らしているそう。

 

大きな家で生活していた際に住み込みで家政婦さんを雇っていたけれど、祖母の引越しに合わせて家政婦さんも仕事を辞めて地元に戻っていた。その事を思い出した優作さんは駄目元で家政婦として雇えないかと考えていたらしい。優作さんは善は急げと、その人の連絡先を祖母に聞き、連絡を取ると住み込みは無理だが月に何度か通うことは可能だそうで、家政婦さんが来る日を締切に間に合うように自室に籠る「お籠もりデー」として、お仕事を依頼することになった。家政婦さんは柴山緑さんという方で全身から優しさが溢れる人だ。緑さんの作る肉じゃが美味しすぎて、なんとか自分でも作れるようになろうと目でレシピを盗んでいた。でも目分量って難しい……。お醤油が鍋1周だったり1周半だったりまちまちなのにいつも美味しい。まだまだ先は長い。練習あるのみですね!!

 

3歳から約1年半優作さんと暮らしていると時たまお客さんがやって来ることもありました。まず1人目。

 

「こんにちはお嬢さん。私は黒羽盗一、優作の兄、そして君の叔父にあたる者だ」

 

皆さん、私は2024年6月に死んだとお話ししましたが、その年の4月公開の名探偵コナンを見るために数回は映画館に足を運びました。そこで工藤優作には双子の兄弟がいたこと、黒羽盗一が生きていたことがわかりましたね。作中で2人は兄弟として会っている描写が無かったと記憶していますが、当時普通にお宅訪問して来て手からバラを出す手品をされると驚きすぎて何もいえなかった。

 

「」

「優作、誉が固まってしまったよ」

「はは、兄さんが手品を披露したから驚いているんだよ」

「ぁ、えと…、く、くどうほまれです、よ、よろしくおねがいしましゅ!」

「ふっ…。あぁ、よろしく頼むよ」

 

ラスボス的存在の2人がここにいるなんて、最初は信じられなかった。2人は祖父母が離婚後、小学生だった私の母は「盗一と遊びたい!」とまだ小さい優作さんを連れて子供だけで祖父の家に突撃していたらしい。電車で3時間はかかる道のりだったそう……。母って子供の頃からアグレッシブだったんだ…。姉弟3人は仲が良く、不定期だけれど3人で買い物や旅行にも行っていたらしい。思ったより仲良しだった。

 

「今日は誉の顔を見たくてね。仕事を抜け出して来たんだ」

「んふふ、とういちさんはわるいこだね」

「悪い子か、確かに私は悪い子だな」

「あぁ、兄さんは悪い子、だね」

「?」

 

冗談で言った悪い子という言葉に肯定されたため首を傾げていると優作さんが「兄さんは怪盗KIDだからさ」と平然と言っていて、私はまた驚きで固まる。この世界線の2人は怪盗KID(盗一さん)vs探偵(優作さん)をゲームのように楽しみながら宝石の攻守を行っているそうです……。

 

「ふたりともわるいこだあ…」

「はは!私も悪い子か」

「誉にはまだ難しいかな」

 

大人になっても理解できないと思います。

仕事を抜け出して来たのは本当のことらしく、ちょっとお話ししたら盗一さんはすぐに帰ってしまった。盗一さんの他にも来るお客さんはいて、あ、編集さんは別です。それは藤峰有希子さん。私は有希ちゃんと呼んでいる。ある日優作さんが真面目な顔で家に帰ってきたと思ったら花柄のワンピースを着た有希ちゃんを連れて来てた。

 

「ただいま誉、」

「こ、こんにちは!」

「み、みせいねん、いんこう…」

 

あまりにも可愛い有希ちゃんが中学生くらいに見えた私はそう呟いてしまいました。あとから優作さんに怒られた。でも事前に連絡しない優作さんも悪いと思う!あと未成年淫行には変わりない。その後、何故か正座する2人に私も正座した方がいいのか?とリビングに正座で向かい合う。

 

「……、交際しているんだ」

「わ、私っ、優作さんを愛してるんですっ!」

「……おめでとう、ございます?」

 

私がそう言った後の2人の表情がパーッと明るくなったことは多分ずっと忘れない。2人で同じ顔してた。よかったぁと安心する2人になぜ4歳ちょっとの自分にそんな事を言ったのか聞くと、

 

「だって誉はこの家の大黒柱だからね」

「誉ちゃんの許可が欲しかったの!」

「えぇ……」

 

いやいや優作さんが家主だよね?

無事?私からの交際の許可が降りた2人はスキャンダルにならないよう、もっぱらお家デートしている。有希ちゃんは優作さんの料理スキルに大変驚いていたので、指導した甲斐があったというものです。有希ちゃんはというと、当時高校生ながら緑さんレベルの腕前でした。負けた感がする。でも「ほーちゃんに花嫁修行してほしいの!」と言われたので掃除洗濯は姑の如く厳しい目でジャッジしている。言われたときは花嫁修行って何をすればいいかわからなかったので、母に手紙で聞くと「誉が今見てるドラマの姑の演技をしなよ」と書かれていたため、お昼に放送されている「私と夫とあの人〜許されない関係〜」という昼ドラに出てくる姑の演技の真似をしていた。

 

「ちょっとゆきちゃんさん!ここにほこりがたまっているわよ!どういうことなの!」

「すみませんほーちゃんまま!直ぐに拭き直します!」

 

こんな感じで良いのかな?有希ちゃんとの花嫁修行を時々優作さんがビデオカメラで撮ってるけど、なんでだろ?

 

長くなったがこんな生活を今の私は送っている。そして今テレビでは怪盗KIDが宝石を持って何人もの警察に追われている。

 

「優ちゃん早く帰って来ないかしら〜」

 

今日は怪盗KIDの犯行日なので優作さんは警察に協力してほしいと頼まれてテレビに映っている場所に行っている。そのため1人になる私は有希ちゃんと一緒にテレビを見ながらバリボリと煎餅を食べています。有希ちゃんただの煎餅でも様になっててすごい、流石大女優……。

 

「んー、もうちょっとかかるとおもうよ」

「えー。優作ってばホント謎解きが好きよね!ほーちゃんは優作が帰って来なくて寂しくないの?」

「……ほんとうはさみしいけど、ゆうさくさんおしごとがんばってるからおうえんするの」

「ほーちゃん…!健気でかわいいわ〜!!」

「んぎゅっ」

 

有希ちゃんには言えないけれど、盗一さんも応援してるよ。盗一さんは最近遊びに来れないほどに多忙みたいで、一方的に手紙を出して近況を伝えている。4,5通に1回の頻度で盗一さんから伝書鳩を使って返事が送られてくる。おしゃれだよね。伝書鳩用で鳥の餌やブラッシングなどのお手入れ道具を買うようにもなった。長い道のりを飛んでくれたお礼としてちょっと高級な餌をあげています。

 

「ゆきちゃんもおしごとがんばってるでしょ?」

「勿論!お芝居とっても楽しいのよ。最近は黒羽先生に変装術もご指導いただいてて、早く完璧に変装できるようになりたいわ〜」

「つかれたらきゅうけい、だいじだよ」

「ありがとう!優しいほーちゃんも大好きよ〜!」

「んみゅっ」

 

いつも抱きしめられるけど有希ちゃんいい匂いだから全然ウェルカムです(夏以外)。さっきの会話の通り、有希ちゃんは盗一さんの元で変装術を学び始めた。一度一緒にいかない?と連れて行ってもらい、久しぶりに会う盗一さんとこちらははじめましてのシャロン・ビンヤードさんに、はじめましてのご挨拶をしてお稽古を見させてもらった。若かりしベルモットさん、とーっても美人さんでした。流石ハリウッドで活躍する大女優さん。いい匂いもしていた。

 

お稽古を見ていると、フェイスマスクで変装できることは理解しても、どうして声まで変えられるのかわからない。どういう仕組みなんだろうと興味津々でお稽古を見ているといつの間にか終了時間で、目で技術を盗むには高度すぎました……。盗一さんに今日はありがとうございましたとお礼を言った後、シャロンさんにもお礼を言おうと近づく。ベルモットさんって子供が嫌いだと思っていたけれど、目線を合わせるためにしゃがんでくれて優しい人だと感じた。

 

「しゃろんさん、きょうはありがとうございました」

「No problem. 気にしないで。私は何もしていないわ」

「それでもおけいこのじゃましちゃったから」

「気遣いができる良い子ね」

 

シャロンさんが頭を撫でてくれる。微笑みながら私を撫でるシャロンさんになぜか寂しさを覚え、また会いたいと思ってしまった。このまま別れると一生会えないかもしれないとなぜか思った。

 

「……あのね、しゃろんさん、またあえる…?」

「さあ?運次第ね」

「そっか…、じゃあおほしさまに、しゃろんさんにまたあえますようにって、まいにちおねがいするね!」

「ふっ…。叶うといいわね、kitty」

 

あとから有希ちゃんに聞いたんですが、ハリウッド女優をナンパしてるようにしか見えなかったそうです……。い、勢いとはいえ恥ずかしすぎる!!帰宅中「私にはそんなこと言ってくれなかったー!!」と有希ちゃんが拗ねてしまい、大変だったとだけお話ししておきます。でもぷりぷり怒る有希ちゃんもかわいかった。ちなみに母への手紙にシャロンさんと話したことや有希ちゃんが拗ねてしまったことを書いていたら、「誉の愛は私が占める割合が1番だから気にしない!」とマウントのようなことが書かれていた。確かに。実際そうです。

 

 

タイムスケジュールにお星様へお願いをするが追加されて数ヶ月。テレビを前に煎餅を頬張っていた日から1か月。

 

なんとシャロンさんからお茶に誘われました!映画の撮影で中々スケジュールが開けられなかったけれどやっと撮影が終わり日本に遊びに来るらしく誘われてしまった…!お星様にお願いした甲斐があったね。有希ちゃんに連れられ高級だと一目でわかるホテルで美女2人とアフタヌーンティーを楽しんだ。眼福でした……。勿論、お食事も美味しかった。そしてシャロンさんとも手紙を出し合う仲になりました!断られると思いながらも当たって砕けろ精神でお願いするとOKしてくれた。シャロンさんの活動拠点はアメリカなので国際郵便でお手紙のやり取りをしている。優作さんの協力+英和辞典で拙い英語ながらも手紙を出すと、いい匂いのするおしゃれな封筒とおしゃれな便箋でお返事が届き、内容も簡単な英語で書いてくれていたので英和辞典で頑張って翻訳している。しかし、まだ辞典を手放せるほどの英語スキルは身についていません……。

 

「ゆうさくさん、ここがわからない…」

「見せてごらん。once in blue moomか、誉はどう訳したんだい?」

「えっとね、あおいつきがいっかいみられるってやくしたけど、でもちがうきがするの」

「惜しいね。青い月なんて見たことがないだろう。だからonce in blue moom は、めったにないという意味になるんだ」

「じゃあここはまんがをめったにみないよっていってる?」

「そうだね」

 

ちなみにonce in blue moonは慣用句だそうです。むずかちい。こんな風に優作さんに助けを求めることがたびたびある。優作さんありがとうございます。優作さんは大学卒業後、執筆活動や怪盗KID関連以外に事件捜査の協力で忙しくしてる。本業は小説家なのでお籠りデーの時はお断りしているけれど、それ以外の日に警視庁に赴く日が増えた。朝早く夜遅く帰宅する日が1週間も続いた日に寂しさが積りに積もって、泣いて行くのを止めてしまうこともあった。

 

「ふぅぅ、ひっく、ゆうさくさんおうちにいてぇ…!!」

「ほ、誉!?」

 

見送ろうとしてけれど、このままの生活が続くと優作さんとの時間が無くなってしまうと怖くなって引き留めてしまった。

 

「ど、どうしたんだい?どこか痛いのかい?」

「うぅぅだっこぉ…!だっこしてぇ…!!」

 

顔から出る汁を全部垂れ流しながら優作さんに抱っこを求めて、困惑状態の優作さんに「おしごといかないでぇ」と言い続け、泣きすぎて疲れ果て優作さんに抱かれたまま気絶した。今考えてもやばかいやつだ。急に意識が無くなった私に、優作さんは気が動転し病院に突撃したそうです。お恥ずかしい。ご迷惑をおかけしました。でも有希ちゃんも寂しそうにしていて、お仕事が大切とはいえ有希ちゃん第一に行動してほしかった。だからあの時の羞恥は受け入れようと思います。そして号泣だだこね事件から優作さんはいわゆる安楽椅子探偵として活動しているみたい。

 

「有希子と誉よりも大切なものなど無いからね」

 

と優作さんは言っていた。私のこと実子だと思ってる?

でもごめんなさい。私はママの子供なので!母と私は相思相愛なんです。いつの間に教えたのか、母も号泣だだこね事件を知っていて「誉の号泣処女が優作に取られた!!!」と書いてありました。あの、皆さん、号泣処女ってどういう意味ですか…?優作さんは母にも絞られたようで、怪盗KID案件以外は家にいてくれるようになりました。優作さんと有希ちゃんのラブラブをお家で見る時間が増えて嬉しい。そして私は出不精が加速し、お家にあるぶ厚い本や母が贈ってくれる絵本を読み漁るという引きこもり生活を送っている。そういえば生まれてからほとんど外で遊ばず家で遊んでばかりだったので、事件に遭遇したことがない。生活圏が米花町ではないことも一因かもしれないけど。

 

しかし本日「ほーちゃん日光浴びなさい!!」としびれを切らした有希ちゃんにピクニックに連れ出されてしまいました。勿論優作さんも一緒に。

 

「ゆきちゃんバレないの?」

 

ピクニック会場の公園まで車で行く中、黒髪のショートヘアのウィッグを被っただけの有希ちゃんは顔を見られてしまえばはっきり藤峰有希子とわかるくらいの軽い変装をしている。

 

「ふっふっふ、安心してほーちゃん。これくらいの変装でも誰も気づかないのよ」

「まさかこんなところにいないだろう、という認知バイアスが働いてしまい気づけないのさ」

「にんちばいあす……。あたまのはたらきってこと?」

「すごいわほーちゃん!優作の話がわかるなんて天才ね!」

「えへへ~」

 

有希ちゃん褒め上手なんだから~。

 

さて、公園に着くまでの間お話をしてもいいですか?つい先日優作さんのプロポーズが成功し婚約関係となった2人。またしても婚約の許しを求められた私は勿論だと強く頷き、許可制の意味があるのかなとあの時と同じように頭をひねってた。出会ってからずっとラブラブな2人がさらにラブラブになり嬉しく思う今日この頃。私に関してでは、優作さん宅に居候してからいつの間にか2年が経ち、来年は小学校に入学する齢になりました。白百合学園という小・中・高エスカレーター式の女子高に入学予定です。世間では実家がお金持ち+賢くなければ入学できないお嬢様養成学校と噂されているようで、私は別に公立小学校でよかったけど母の強い懇願により小学校受験が決まりました。受験は9月初旬にぱぱーっと終わらせました。元大学生の私にすれば小学校受験なんておちゃのこさいさいだったよ。えっへん!合格発表は12月なので気長に待とうと思いまーす。

 

そして車を走らせ30分ほどで公園に着いた。ハロウィン前なので目と口用の穴をくり抜かれたかぼちゃやおばけのイラストがそこかしこにある。ほどなくして芝生のエリアで有希ちゃんお手製(私もちょっとお手伝いしました)のお弁当を広げておいしいおいしい食べた後、のんびり日向ぼっこをしていたらいつの間にか寝ていたようで目覚めると自室だった。しかも真っ暗。

 

「ぅぅ…みんなでおさんぽしたかったぁ」

 

ふて寝から起き上がり水を飲むため自室を出る。

 

「起きたかい」

 

リビングで優作さんが本を読んでいた。時計を見ると22時すぎ。これから挽回もできません。絶望です。

 

「ゆうさくさん、ゆきちゃんいっちゃったぁ?」

「あぁ、1時間前に出たよ」

「めんぼくない……」

「ぶふっ…!」

 

有希ちゃんは撮影があるので夜には帰ると言っていたのに……。行ってらっしゃいしたかった。冷蔵庫から水の入った私用のピンク色のマグカップを見つけ取り出しごくごくと水を飲み干す。

 

「んくっ……ぷはぁ」

「いい飲みっぷりだ」

「んふふ。ゆうさくさんコーヒーおかわりいる?」

「じゃあお願いしようかな」

 

ポットでお湯が沸く前にドリッパー、ペーパーフィルターをセットして挽いた豆を準備しておく。お湯が沸くと火傷しないよう気をつけながらまずドリッパーにお湯を注ぎ、豆を小さじ一杯分入れ再びお湯を注ぐ。ある程度お湯が無くなればおいしいコーヒーの完成です。最後の一滴までカップに入れると逆に苦くなってしまうので注意!そしてこぼさないよう慎重に運びテーブルに置く。

 

「ありがとう。火傷しなかったかい」

「うん、だいじょうぶだよ」

 

優作さんはあつあつのコーヒーを平然と飲みながら突然、引っ越しを計画していると話してくれた。有希ちゃんが高校を卒業したらになるけれどお家を建てようと考えているみたいです。

 

「じゃあ、ばいばいになるね……」

 

2年もお世話になったんだから、笑顔でありがとうと言い。

 

「何を言ってるんだい?君も一緒に暮らすんだよ」

「ふぇ?」

「有希子も私も誉が大好きなんだ。まだ誉乃姉さんには渡せないね」

 

渡せないって…、やっぱり実子だと思ってるよね?違うから。姪だよ?

でも私も家族の一員として数えてくれるのは嬉しい。今はまだ土地選びの段階でどんな家にしたいか希望をどんどん言ってくれとのことなので、書斎を作ってほしいとだけ伝えた。

 

「それだけかい?シンデレラ城のような豪邸にしてと言ってくれると思ったんだがね」

 

でも原作の邸宅になるんだし、お家に対しての希望も特になかったので。

 

「シンデレラじょうはさすがにおおきいよ……」

「そうかい?」

「そうだよ」

 

それからはハロウィンパーティの衣装を決めるために着せ替え人形になったり、パーティ当日は黒猫のコスプレをしたり、引越し先の土地選びを任されそうになるのを全力で断ったり、毎日楽しく過ごしていると白百合学園の合格発表日になっていた。

 

結果は合格でした。母には手紙ではなく優作さんの携帯を借りて合格したことを伝えると喜んでくれてた。でも翌日に帰国するなんて予想しないじゃん。行動早すぎだよママ……。母は入学手続きのために無理やり休みをもぎ取り、ひと月は日本に滞在できるらしい。採寸してから1週間で制服やら教科書やらが届くと、母と有希ちゃんは制服のかわいさにきゃっきゃっしてました。白百合学園の制服は白地に金で線が引かれたブレザー、黒の膝丈スカート、夏用はブラウスに黒のジャンパースカートを着るみたいです。そして赤色のリボンを首元につけるが、小・中・高の区別のため銅・銀・金のリボンタイを付ける必要がある。見るからにお嬢様感漂う制服でしたね。

 

「誉にはこの制服を着てほしかったんだ」

 

白百合学園は母の母校でなんとしてもこの制服を私に着せたかったと言っていた。確かに私は母の血を色濃く引いている+血縁上の父が外国人らしく、工藤新一系の顔面でありながらも欧米の雰囲気を感じられるとっっっても美少女だから似合ってる。流石ママの娘!顔も知らない父もまあまあイケメンだったらしいから一応感謝はしておく。

 

「ほーちゃんこっち向いて~!」

「いいよー」

 

有希ちゃんが携帯のカメラで撮ってくれているのでポーズをとる。

 

「きゃー!!かわいい~!」

「誉こっちにも目線を!」

「はーい」

「くっ、かわいい…!!!優作撮っているか!?」

「ばっちりだよ」

 

母は一眼レフカメラで連写、優作さんはビデオカメラで撮影してくれてる。撮影会は夏服バージョンを撮るまで続きました。改めて考えると小学生って何すればいいんだろう?白百合学園のパンフレットを読むと、国語算数などの普通の授業の他にも、生け花やお茶といった落ち着いた授業や日本舞踊や社交ダンスなどお嬢様版体育のような授業もあるらしい。少女漫画とかであるハンカチ投げて、決闘ですわ!みたいなことあるのかな。当事者にはなりたくないけど、見てみたい気もする。




主人公の設定
(前世)
孤児院出身の貧乏大学生。
大学は奨学金で行き、生活費を稼ぐためにバイト掛け持ちしていた。
子供のときはテレビを独占できなかったから名探偵コナンはみんな知ってるくらいの知識しかなかったが、大学生になり急にハマり、アニメと映画を履修している最中だった。
刺してきた不審者は呪い死ね、それか苦しみながら死ねと思っている。

(今世)
世界的ファッションデザイナー工藤誉乃の1人娘として生まれる。
誉乃は純日本人だが血縁上の父親はロシア人であるため若干色素が薄い。父親は碌でもない男だったと誉乃から聞かされているため会いたいと思っていない。
生活費を心配しない生活のため、ほぼ毎日本の虫状態で引きこもり。
美少女だが上記のように1日中家で過ごすので、誘拐や不審者など犯罪に巻き込まれない。
白百合学園入学後は、工藤夫妻が極秘にボディガードを雇っている。(ちなみにボディガードは誉乃が知人に紹介された人物)
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