新一のいとこですけど......   作:ヤヤヤンヤ

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エッホエッホ!救済しなきゃ!

 

新くんがやっと蘭ちゃんと付き合いだして早1か月弱。幼馴染から恋人にチェンジしたにも関わらず、イチャイチャしていない模様……。これは由々しき事態である。

 

「いちゃいちゃ……」

「人間は自身だけでなく他人が育む愛にも一喜一憂するんだね。不思議な生き物だ」

「」

 

きゅ、急に現れるなぁ……!

1か月前のようにテレビの映像が切り替わり、黒い背景にNOAH’S ARKという白い文字が浮かんでいる。

新くんが学校でよかった。2度もはぐらかすなんて私には無理。

 

「やあ!僕はノアズアーク!悪い人工知能じゃないよ!」

「う、うん」

「……なんだ、君には通じないのか」

「え、何」

 

もしや合言葉的なやつ?

 

「いや気にしないで!諸伏景光の情報漏洩を企む人物がわかったんだ!」

 

!!!

 

「誰だったの?」

 

多分警察の中の裏切り者とかかな。

 

「黒幕はアメリカ合衆国の中央情報局、所謂CIAだ」

「しーあいえー?……ちょ、ちょっと待って!CIAって、あのCIA!?」

「君が何処のCIAを指しているのかはわからないが、君達レベルでCIAを表すなら自国の利益を最優先にする組織、と言えば伝わるかな?」

「……ウン」

 

い、いやあああ!!国家権力が相手だなんて!!無理だ!!!警察も国家権力だけど、自国と他国じゃ私に掛かる責任の重さが全然違う!!!

 

「ノ、ノアズアークヨクブジダッタネ…」

「僕も自分の身は大切だからさ、ダミーのプログラムを侵入させたら見事に食いついてくれたんだ!」

 

……あれ?CIAって意外とセキュリティ甘いのかな?単にノアズアークのプログラムがすごいのか。

 

「話を戻そう。黒幕はCIA捜査官のジョン・カーテリア、年齢は35歳、性別は男、現在離婚調停中だよ。ジョン・カーテリアは諸伏景光を組織に売り、黒の組織に取り入ろうとしているのさ!」

「な、なんてベタな……」

 

日本警察がCIAに変わっただけで概ね私が想像していた通りだったかぁ。でもCIAの捜査官一人で日本警察の潜入捜査官を特定なんてできるのかな。…………。

 

「他にも協力者がいるんだよね」

「その通り!警視庁公安部城沢稔警部補がもう1人の黒幕さ!彼は諸伏景光の連絡役を務めていて、ジョン・カーテリアと同様の目的を持っているんだ。彼らは互いに協力関係を結んでいるがジョン・カーテリアは城沢稔も処分しようと考えている。人間は業が深いとは思っていたけれど、これほどとはねー!」

 

ノアズアーク楽しんでるなー。

 

「その2人の通話記録とかある?」

「勿論!通話記録やメール、生活圏とそれぞれの仕事場の監視カメラ映像、その他諸々、彼らの行動は筒抜けさ!」

 

……この子が味方で本当によかったと思う。

 

「それ全部警察に流そうと思ってる。あ、時期は考えるよ。諸伏さんを保護できたらまた考えるつもり」

「了解!そうそう、諸伏景光が売られる日程もわかったよ。12月7日!その1週間前に城沢稔と諸伏景光が会うんだってさ」

「なんで1週間も間を開けるんだろ」

「接触当日に計画を決行すれば、公安部が情報漏洩したとすぐに気づくだろう?普通1週間もあれば証拠隠滅し放題だよ!」

「なるほど…。じゃあ当日は諸伏さんを私の家に誘導してほしi「おぉぉぉ!!!!!まるでスパイ映画だね!君の自宅兼アトリエに誘導すればいいんだよね?任せてよ!僕を誰だと思ってるんだい?地球一いや宇宙一の最強人工知能ノアズアークだよ!監視カメラに映った諸伏景光を偽装するなんてこともできるんだから!!!」…………うんまかせた」

 

ものすごいやるきだ……。

 

そしてノアズアークはそれじゃあバイバーイ!!!と勢いよく去っていった。

 

――――――――――――――――――――

 

12月7日深夜。

警視庁公安部に所属する諸伏景光は黒の組織に潜入していた。

 

「はぁ、はぁ……」

 

しかし諸伏が潜入捜査官であるという情報が何処からか漏洩したため組織から追われていた。体感は何時間にも感じるほど諸伏は走り続けていた。もうほとんど足の感覚がなかったが、足を止めることは許されない。

 

「あー、その道は止めた方がいい」

「ッッ!」

 

突然自身の携帯から子供の声が流れる。

諸伏は薄暗い小道に入ろうとしたが足を止める。

 

「その先の大通りに行って」

「……」

「死にたくなかったら僕に従いなよ」

 

子供の言葉にドキリとする。何者かわからないが死ぬよりマシだと、同じく潜入捜査官の幼馴染を思い浮かべ大通りへ足を進める。

 

「うんうん、良い判断だ。ここからは僕の案内に従ってね!」

「……」

 

諸伏は子供の声に従い走っていると組織の人間の気配が無くなっていた。高級住宅や高層マンションが多く建つ地域まで来ていた事に気づく。

 

「……どこまで行くんだ」

「もうすぐ到着だよ」

 

もうすぐと言うが、目の前には高層マンションがあるだけ。公安部の仲間がどこかに隠れているのだろうか。

 

「ここだよ。さあ入って入って」

「……ここにか」

「ほら早く入らないと捕まるよ~」

 

覚悟を決めマンションの中に入るが、案の定オートロックタイプのマンションだったが部屋番号を聞く前に自動ドアが開く。入口を抜けエレベーターホールに向かうと1つのエレベーターの扉が開いていた。

 

「そこのエレベーターに乗ってよ」

 

罠に誘い込まれているようだが、ここまで組織の人間が追ってきているとも思えないため素直にエレベーターに乗る。またしても階数のボタンを押さずに最上階のボタンが光りエレベーターが動き出す。諸伏は念の為に懐の拳銃を取り出す。

 

「銃は懐に戻した方がいいと思うよ?」

「……お前は一体何者だ」

「僕は僕だ。それ以外の何者でもない」

 

子供は自身の正体を話すつもりはないらしい。

ものの数分で最上階まで到着し、扉が開く。

しかし諸伏は扉の前に小柄の女性らしき人影が見えたため、拳銃を構えて隙をつくろうとエレベーターから突貫する。

 

「グッ!?」

 

エレベーターの中から勢いよく出たが、目の前の人間にぶつかる前に自身の右側から強い衝撃が襲い、受け身を取れず床に頭を打ち付けてしまう。

 

「陣さん!?」

 

女性の声が聞こえ、誰かが諸伏に駆け寄る。

諸伏は床に頭を打ったためか視界が霞んで何も見えていなかった。

 

「諸伏さん大丈夫ですか!?」

「……俺が蹴ってなきゃテメェ拘束されてたな」

「えぇぇぇ!!?い、いやでも蹴りはダメですよ!!」

 

女性の他に男性もいるようだ。

もしや組織の仲間かとも思ったが殺気や敵意は感じられない。

 

痛みと疲労で上手く頭も働かず、身体を動かせなかった諸伏だったが、突然抱えられマンションの一室に運ばれていく。

 

乱暴にソファに落とされ、されるがままに女性から手当を受けているとゆっくりと視界の霞が晴れてきて男女の顔が認識できるようになった。

 

「!?」

「あ、痛かったですか?でも消毒は必要なので我慢してくださいね」

 

女性に頬の傷を手当されていたが、男性の顔を認識するとすぐさま女性を自身の後ろに回し安全のため距離を取る。

 

「元気が有り余ってるようだな、ネズミ」

「ジン……!!」

 

自身の潜入していた組織の重要人物が目の前にいる。拳銃を構えようと懐に手を入れるが、そこには何もない。恐らく運ばれている際に取られたのだろう。

 

諸伏はこの男からどう逃げようか頭を巡らせる。

 

「あ、あの、諸伏さん?」

「……君も組織の構成員なのかい」

 

後ろで庇っていた女性はこの男と親しげに話していたが、一般人のようなこの女性ももしや……。

 

「そしき?あ!違います違います!!私工藤誉です!」

「工藤…」

 

彼女の名前は記憶にあった。

8年前海水浴で出会った少女と同じ名前だった。

 

「ちょ、陣さん!陣さんが説明してください!」

「メンドーだ」

「面倒って……。あの!諸伏さん一旦離してもらえませんか!」

 

諸伏も彼女が本当に工藤誉なのか確かめたい、そして目の前の男が組織のジンと同一人物だと思えなかったため、女性を庇っていた手を離す。

 

その際警戒していた男の髪が足までかかる長髪ではなく肩までの長さであることに今更気づいた。

 

――――――――――――――――――――

 

「ふう……。えっと、改めまして、お久しぶりです諸伏さん。工藤優作の姪の工藤誉です」

「あぁ、久しぶり、だね」

「そして、あそこの人が黒澤陣、私の異母兄です」

「異母兄……!?」

 

わかるわかる。困惑しますよね。

 

「陣さんは諸伏さんが潜入していた組織の人なんですが、本当は違うんです。これ話していいんですよね?」

「好きにしろ」

 

えぇ……。

なんでそんなに尊大なの。陣さん赤いベロア生地の椅子と態度のせいで王様ぽいよ。その椅子押入れに片付けとけばよかった……。って違う違う。今は諸伏さんでしょ!

未だ困惑している諸伏さんには申し訳ないけれど、話を進める。

 

「陣さんは陸上自衛隊秘密情報部隊所属で階級は……」

「3佐」

「だ、そうです。混乱していると思うんですけど、ご理解お願いします」

「………、その組織は何をしてるんだ…」

「えっとぉ……」

 

陣さんに視線を移す。

 

「ハァ……」

 

そんな呆れなくてもいいんじゃ…、だって私無理やり連れて行かれて、マスターとお話して、ライフル撃っただけですから!?何も具体的な説明聞いてないですから!?

 

「密偵、潜入、暗殺、テメェら警察が大っぴらに出来ねぇ事してるってだけだ」

 

自分達も大っぴらに出来ないじゃん。組織名も秘密って言葉入ってるし。秘密情報部隊って名前が、大っぴらにするなよって言ってるようなもんだよね。うんうん。

 

「…………君も、なのかい?」

 

諸伏さんがやけに暗い表情で私を見る。

 

「はい。私も一応所属しています。階級は二尉です」

 

桜小路さんはそう言ってた気がする…!

 

「君も暗殺を、」

「い、いえ!!!私は臨時隊員なので!!人を殺した事は一度もありません!!!」

 

そう言うと諸伏さんがあからさまにほっとする。

や、やっぱり警察的にはそこら辺気になるよね……。

 

「あ、あのぉ、は、話を進めていいですか…?」

「あぁ。俺もどうして陸自の人間が俺を助けたのか知りたい」

 

そうだよね。

ふう……、よし、ここからは真面目モードだ。

 

「スコッチ…いや諸伏だったか?お前を組織から逃したのは上からの指示じゃねぇ。コイツの単独行動だ」

「はい、そうです」

 

陣さんの言葉に深く頷く。

 

「……君は何処から俺の情報を見たんだ」

「まずある人からCIAと警視庁公安部の捜査官達が利害関係を結んでいるという情報を貰いました」

「ある人っていうのは僕のことだよ!」

 

ノアズアークの声が壁に嵌め込み式のテレビから流れる。

 

「その声……。一体誰なんだ、子供なのか」

「すみません、個人を特定するような情報はお教え出来かねます」

「………」

「……話を戻します。諸伏さんが潜入捜査官とバレたのはCIAのジョン・カーテリア捜査官、警視庁公安部城沢稔警部補両名による仕業です」

「し、城沢!?待ってくれ、城沢さんは俺の連絡係だぞ!!?」

「はい。城沢稔は組織の構成員と繋がりがあると確認が取れています」

「そんな…………」

「テメェはお仲間に売られたってこった。ハッ、お粗末な脚本だ」

「ッッ!!!」

 

諸伏さんが拳を強く握り締める。

自分が信頼していた人に裏切られるなんて最悪だよ……。

 

「ですので、警視庁に戻られるのは危険だと思います」

「じゃあどうすれば良いんだ!?俺が抜けたら、ゼロは、ゼロは一人になるっ……!!」

「落ち着いてください。警視庁ではなく警察庁にコンタクトを取ります。諸伏さんの所属を秘密情報部隊に移動して頂けるよう交渉します」

「な……、ど、どうして」

「今回の情報漏洩を調査したところ、警視庁公安部の潜入捜査官とその連絡係の情報がCIAのハッカーにより抜き出された形跡が発見できました」

「それ以外にも色々抜かれてたんだよー」

「警視庁のセキュリティ面を改善しなければまた同様の事件が起こる可能性は非常に高いです。……ここまで理解して頂けますか?」

 

で、そのCIAのハッカーがジョン・カーテリアだったんですねー。いやー点と点って繋がるんですねぇ。ジョン・カーテリアは日本の警察の弱みを探ろうとしていて、その時に諸伏さん達の事を知ったみたい。

 

「あ、あぁ」

「ありがとうございます。諸伏さんの身柄を預からせて頂くのは、警察との中継役と警察に対しての人質にさせるためです」

「人質……、俺を拘束しても上は切り捨てるだけだぞ」

「その点は承知しています。目の前にしてお伝えするのは申し訳ないのですが、諸伏さんではなく、諸伏さんが持つ情報を人質にします」

「情報……、…!!」

「諸伏さんの他にもう1人潜入捜査官がいらっしゃいますよね?先ほど諸伏さんが仰っていたゼロさんです。ゼロさんは特に優秀な方だとお聞きしました。警察庁がこちらの要求を飲まない場合、黒澤三佐にゼロさんの殺害を命じます」

「止めろ!!!」

 

諸伏さんが私を睨みつける。

………………私だってこんな事言いたくなかった。

 

「………最悪の場合は、です。交渉は成功させます。ですから、諸伏さんにゼロさんのバックアップをお願いしたいんです」

「……どういう事だ」

「貴方が潜入していた黒の組織ですが、もってあと2,3年だそうです」

「な、」

「調査したんだがなぁボスなんてとっくの昔に死んでる可能性が高ぇんだよ。No.2がひーひー言いながら俺らを動かしてるのが現状だ、サツは知らねぇようだがな。俺らみてぇなネズミが何人入り込んでるかわかるか?これが結構いんだよ。ネズミが徒党組んで貪り喰えばすぐ潰れるくれぇボロい荒屋だ」

 

この人はちょいちょいポエムっぽく言わないと脳がバグるのか?潜入してる時のジンニキに人格侵されてない?大丈夫??

 

「ゼロさんにはそのネズミのリーダーを、諸伏さんにはそのバックアップをして頂こうと考えています。その為に黒の組織以外のテロ組織や、日本警察以外の潜入捜査官の情報を諸伏さんにだけお教えします」

 

組織を潰すなら秘密情報部隊は表立って動けないから警察を矢面に立たせることにした。他国に部隊のことがバレたら大変って言葉じゃ済まされないだろうし……。そして諸伏さんにしか情報を伝えないことで、警察が諸伏さんを処分させないようにできる!!我ながらいいアイデアでは!?

 

「ゼロをリーダーに置く理由はわかる。でも俺を選ぶ理由は無いだろ…?」

「?、諸伏さんあってのゼロさんですよね?」

 

だってニコイチじゃん。風見さんもいるけど、やっぱり幼馴染みには勝てないよね。諸伏さんが目を見開く。ん?私変なこと言った?

 

「フッ」

「?」

 

……なんで陣さん鼻で笑った?椅子から引きずり下ろすぞ?その無駄に長い足三つ編みみたいに織り込んでやろうか?こっちは緊張で心臓はち切れそうなんだぞ!?

 

「きみは……」

「勿論機密情報ですのでタダでお教えは出来ません。ですが今よりも実力を伸ばすことができるのは確かです」

 

が、頑張って成長させますよ。え、えぇっと……スキルアップとか!!スキルアップ大事だしね!うんうん!

 

「………それでも警視庁へ連れて行けと言われればそうしますが、ご理解頂けましたか……?」

「…………………………………あぁ」

 

………………へ?

 

「その提案乗るよ」

「や、やったぁ……!!」

 

よ゙がっ゙たぁ゙ぁ゙ぁ゙……!!

緊張した!!!!睨まれたとき泣くかと思った!!!

 

「じんさぁぁん……!!」

「参謀殿の勝利に乾杯」

「ここでのむなよぉぉ……!」

 

しかもそれ隠してたお高めのロゼじゃんかぁ!!

私も飲むぅぅ!!!

 

「ははっ、やっぱり誉ちゃんだ」

 

陣さんからワインを取り戻そうと取っ組み合いしていたら背後から諸伏さんの笑い声が聞こえてきた。

 

「?」

「あの頃から変わってないね」

「えぇ!?か、変わってますよ!もう23なんですよ!」

 

お、大人っぽいって言われるんだぞ。

今は緊張が解けて変なテンションになってるだけだから。

 

「って諸伏さんお風呂入りましょう!そんな格好でいるの嫌ですよね!案内します!」

 

諸伏さんをドナドナと浴室に案内する。あ、下着。服は…、通販サイトで間違って買ったメンズサイズの上下セットのジャージがあったはずだからあれを着せよう。下着はコンビニに買いに行くか。

 

「陣さんコンビニ行くけど何か入ります?」

「つまみ」

「……」

 

甘い系ばっかり買ってきてやる。バタピーなんて絶対買うもんか。

 

ここのタワマンはなぜか途中階層にコンビニがある。普通1階に併設されてるけど、これが意外に助かってるんだよねぇ。多分タワマン住人専用コンビニってやつだな。コンビニで下着とご飯もの、飲み物、お菓子を買って帰宅する。

 

「ただいまぁ」

 

パンパンのビニール袋を2つドンッドンッとリビングのテーブルに置く。

 

「はあ、重かった。陣さん、諸伏さんどこですか?」

「まだ風呂だ」

「え、もう30分くらい経ってるのに」

「心身疲労ってやつだろ。潜入明けは心と身体のギャップを感じるそうだ」

「なるほど……」

「おいテメェ、俺のバタピーはどこだ」

 

帰って来てすぐさまビニール袋を漁っていた陣さんが鬼の形相で睨んでくる。そんなに睨んでも怖くありませーん。

 

「私のロゼちゃんを飲んだ人には買ってませーん」

「チッ」

 

諸伏さんには気づかないフリをするのが一番いいだろう。浴室に下着を置いた後買ってきた物を整理してご飯ものを温めていると、10分ほど経ってから諸伏さんが上がってきた。

 

「おかえりなさーい。下着のサイズ大丈夫でしたか?」

「大丈夫だよ。買いに行ってくれたんだろ?ごめんな」

 

お風呂に入ったからか先ほどまでの疲労感が若干無くなった気がする。

 

「気にしないでください、って髪!ドライヤーしましょ!ここ座ってください」

 

ドタドタと浴室からドライヤーを持ってくる。タオルを被ったまま棒立ちの諸伏さんを床のカーペットに座らせて髪を乾かし始める。なんか諸伏さんって、弟気質が滲み出てるよね。構いたくなる。年上の男性に弟みを感じるなんて……。

 

「よし。じゃあご飯食べながらお話し合いしましょう。キッチンにコンビニで買ってきた弁当とか置いてるので選んでてください」

「あ、ありがとう」

 

洗面所にドライヤーを戻そうとして、ふと男性用カミソリを買い忘れたことを思い出す。髭剃りないと不便だよねって思ったのにぃ!コンビニとかスーパーでは忘れてるのに家に帰ってきて思い出すの本当にやめてほしい。……必要そうならまた買いに行けばいいか。

 

浴室からリビングに戻ると、相変わらず陣さんはフカフカの椅子に座って優雅にテレビを見てる。あ!私のあたりめ!また盗られた!あの男には優しさが備わってないの!?

 

「……陣さぁん」

「有難く頂いてるぜ」

「……」

 

ジト目で睨む。もう知らん。

諸伏さんはというと私達を見ながらもぐもぐと弁当を食べている。緊張状態でなくなったと言えどこの状況で平然と食べてるなんて適応力すごすぎ。

 

「それで、話し合いって何するんだ?」

「現状をお伝えしようかと」

「モグモグ…、現状って、警察の動きか」

「警察と組織についてです。現在スコッチは焼死体として発見されています」

「んぐっ!?」

「あ、お水どうぞ」

 

諸伏さんに水を渡すと勢いよく飲み出し、飲み込んだ後ゴホゴホと数回咳き込んでいたため話を止める。

 

「ゴホッ……し、死体って」

「語弊がありましたね。諸伏さんのクローンが焼死体として発見されてます」

「く、くろーん?」

「陣さんが任務で出会った方なんですけど、趣味で色々なクローンを作っているんです……」

「そ、それって違法行為だろ!?」

 

仰る通りで……

 

「バレなきゃ犯罪じゃねぇんだよ」

「」

 

諸伏さんが形容しがたいすごい表情してる!?呆れてるのか怒ってるのかわかんない!ど、どっちもかな。

陣さんは仮にも警察官を前にそんな事が言えるなんて神経が図太いすぎる。

 

「ソイツが面白そうつってコイツに一体やった」

「諸伏さんのDNAを基にしたクローンなので、DNA鑑定で偽物だとバレる可能性は絶対にないそうです」

 

オーバーテクノロジーすぎるよねぇ。吾郎さん生きる時代間違えてるよ。

(※吾郎については後書きで紹介)

 

「お、俺のDNAってどこからそんなの……」

「君、公園のゴミ箱に空の弁当箱捨てていただろ?あの人意気揚々とゴミ箱から取り出してたよー?人間って理性的な生き物でも知的探究心は止められないんだね!」

「!?、すみませんすみませんすみませんすみません…!!!」

 

ノアズアークの話を聞いて床に頭を埋める勢いで土下座する。吾郎さん入手ルートは秘密とか言ってたのに!これがバレないために秘密とかいってたのか!!

 

「い、いや、そのおかげで助けられたんだし、うん…、大丈夫、大丈夫……」

「はい…、あの、それでですね、陣さんがクローンを焼いている途中でライさんが現れたそうです」

「ちなみにライはFBI捜査官の赤井秀一だよー」

「は、」

「組織の末端構成員の宮野明美に好意を持たせ組織加入を強請ったみたいだよ」

 

めっちゃバラすじゃん……。そんなに色々話したら諸伏さん情報過多で頭パンクしちゃうよ。

 

「ライさんのすぐ後にバーボンさんも来たそうです」

「!」

「陣さんはバーボンさんに焼死体の処理をお願いしたそうなので、多分警察では焼死体が諸伏さん本人か検死されてると思います」

「そうか……」

「そして、今公安がバタバタしている間に私達は諸伏さんを別人として生活するための基盤を整えます!」

「べ、別人?」

「はい。諸伏さんが生きていると知られないように全くの別人になってもらいます!戸籍はすでに用意してあります。ただ住む場所なんですが、私の知人の阿笠博士という人の家で住み込みの家政婦兼用心棒として生活してください」

 

実は、博士が最近外出すると誰かに連けられているようなんじゃと話していたので、用心棒とか雇ってみる?と聞いたら求人サイトに応募しかけてた。流石に止めたよ。数日おきに爆発事故が起こる家の用心棒とかパンピーには無理だろうし。

 

「阿笠って、警備部がお世話になってる人だろ?」

「はい、一応簡易的な面接はありますけど即日採用だと思います」

「おい、顔はどうする。ソイツのまんまじゃねぇだろうな」

 

陣さんがロゼを丸々一本飲み終えて顔が赤くなってる。この人なんでこの話にだけ興味持ってるんだろう。変装したいのかな。

 

「それについては……、諸伏さん髪染めませんか?」

 

髪色変えて、髭を無くして、眼鏡とかかけただけでも別人って思われないかな。昔優作さんが認知バイアスがどうたらこうたらって話してた気がする。

特殊メイクが手取り早いし、有希ちゃんに頼めば教えてくれそうだけど巻き込みたくないし。

 

「そうだな、良いと思う」

「じゃあドラッグストアでヘアカラー剤とカミソリ買ってきますね」

「あぁ…」

 

諸伏さん眠そう。気づけば朝の5時を回っていた。そりゃ眠くもなるよね。私は昨日お昼寝してたから大丈夫。

 

「諸伏さん寝てませんよね?そっちの部屋寝室なので寝てください」

「大丈夫大丈夫。床借りていいかな、ここで寝るよ」

「……、わかりました。せめてソファで寝てください、床はダメです」

 

寝室にタオルケットを取りに行けば陣さんが寝ていた。……この人何しにここに来てたんだろう。テレビ見て酒飲んで人んちのベッドで寝てるだけじゃん。いや戸籍とか用意してくれたけどさ、それはそれこれはこれじゃん。仕事できてもベッド無断で使う人間はどうかと思うよ。

 

リビングに戻り諸伏さんにタオルケットを渡して、陣さんがそのままにしていた瓶やらつまみの残りを仕方なく片付けていると寝息が聞こえて来た。諸伏さんを起こさないように慎重に動いてなんとか外に出る。

 

…………諸伏景光救済できたけど、これってすごいことじゃない…!?ジワジワと嬉しさがこみ上げる。でも私の力じゃなくてほぼノアズアークの功績って思うと、あの子野放しにしたままでいいのかな……。でもあれダメこれダメって縛って何しでかすかわからないし、もうこのまま自由にさせておこう。触らぬ神に祟りなしだ。

新くんには昨夜、急ぎの案件が出やがったので別荘に行ってくる……と悲壮感を出しながら伝えたのでヘトヘトの状態で朝帰りをしても怪しまれていないと思う。なはず。多分。

 

 

 





ここまでお読みいただきありがとうございました~!
気づいたらクローンとかいう単語が出てきてました。おかしいな、この小説ってコナンだよな?
今年の映画の情報解禁されましたねー!!念願の長野県警メイン!!!去年の予告見ただけで大号泣してました。
絶対何が何でも観に行きます。
そしてサブスクで続々過去の劇場版が見れるようになって来たので急いで原作の時代に追いついて、劇場版に誉さんを登場させたいと思います!!


今回吾郎さんという名前が出て来たと思うんですが、下に吾郎さんと誉さんの出会いを書きましたのでお読みください。






諸伏さんを救出する3日前、陣さんから急に呼び出された。あと3日で諸伏さんを命の危機から救わなければいけないというプレッシャーで押し潰されそうというのに!何で東都水族館に来なきゃいけないんだ!!しかも1人で!

「入口前のベンチに座ってろ、ねぇ…」

家族連れやらカップルやらが建物の中に入っていくが私はベンチに座って待機。せめて中に入って時間潰したいんだけどな。携帯を弄っていると目の前に影が落ちる。

「ん?……っ!?」

顔を上げると至近距離に女性の顔があった。驚いて身体をのけ反る。めっちゃド美人。10人中20人振り向くレベルの爆美女が目の前にいた。しかも服装が身体のラインが目立つタイプのワンピースなので周りの男性がチラチラとこの人を盗み見ている。

「貴女、工藤誉ちゃん?」
「え、は、はい」
「ジンちゃんから聞いてる?」
「あ、陣さんのお知り合いですか?」
「そうそう、私ジンちゃんのお知り合い。じゃあ行きましょ」
「え、ちょっ!」

急に手を引かれてどこかへ連れて行かれる。な、名前聞いてない……。ていうか水族館とは真反対の駐車場に歩いて行くんだけど。

「あ、あの水族館に行かないんですか!?」
「水族館に行きたいの?」
「ぅおっ」

急に止まった。

「いや、水族館で待ち合わせしていたので水族館に入らないのかなぁと」
「ここの駐車場に車停めたかったから。それだけよ」
「ア、ソウデスカ」

…………癖強い感じだ。再び手を引かれて恐らく女性の乗ってきた車の前で歩みが止まる。これアメ車ってやつだ。乗ってと言われ助手席に座る。ハンドルの横にレバーが付いてる!マニュアル車だ!かっこいい!!

「出発しんこーよ」

車を走らせ1時間弱。風景が街並みからフェンスやトタン板で覆われた森になった。フェンス状の門扉一面に私有地立入禁止や危険地帯と書かれた看板がいくつも吊るされている所で車が止まった。道中で女性から溝口クリスティーナと自己紹介があった。でも吾郎って呼んでって言われたんだけど、吾郎要素は一体どこから…?

「ちょっと待ってて」
「はい」

ご、吾郎さん……が速度メーターの前に置いていた端末を操作すると門扉が自動で開く。そして車は中を走っていくと小さなプレハブ小屋がぽつんと立っていた。プレハブの横に車を停めると吾郎さんがエンジンを切る。

「着いた。中を紹介するから入ってちょうだい」

車を降りてプレハブ小屋に入るとアルミ製のよく見るロッカーが2つあるだけ。

「ここに何かあるんですか?」
「えぇ。ほら行くわよ」

吾郎さんがロッカーの縁の部分を軽く押すとロッカーとロッカーの間がそれぞれ左右に開いてエレベーターの中のような空間が現れる。

「え?な、え、んん??」
「さあ入って」

背中を押されてエレベーター?の中に入るとロッカー風の扉が閉まる。吾郎さんが上と下の2つしかないボタンのうち下を押すとエレベーターが動き出す。

「これロッカーみたいなエレベーター。どう?面白いでしょ」
「面白い、というか……よく思いつきましたね。あのロッカー本物かと思いました」
「本物も何もあれは普通のロッカーよ。指紋認証部分を触らないとこのエレベーターは作動しない様に設計してるの」
「…………」

なんか吾郎さんって阿笠博士みたいな人だな。突拍子もないこと考えつく人じゃないと天才科学者にはなれないんだろうか。ガコンッと故障かと思うほどの音がした後に扉が開く。

「…………マッドサイエンティストじゃん」

エレベーターを降りるとそこには……!!

人間や猿、犬、などなど色々な種類の生物が何かの液体で満たされた水槽の中に入れられていた。水槽は1つ2つだけでなく20個ほど置かれている。左右に10個ずつ置かれているため水槽の間の空間が道のように見える。

「本物の動物じゃあないわよ。私が受精卵から制作した人造生物、クローンちゃんズよ」
「……」
「……何その顔、驚いてるの?」
「ここまで倫理観の欠片も無い所業を見ているのに、恐怖を感じない自分に驚いてます」

なんだろう……、秘密情報部隊とか言う組織でお腹いっぱいなのに、マッドサイエンティストまで登場してもう世界がパンクしないか心配しちゃうよ。カロリー高いよ?地球大丈夫かな……。

「ふふっ!やはりホマレちゃんは面白いわね。貴女の作戦ジンちゃんから聞いたわよ。私も一枚噛ませなさい!」

アニメで見るような赤いボタンが付いたスイッチをどこからか取り出した吾郎さんがボタンを押すと床から新しい水槽が出てくる。その水槽の中にも男性が入っていて椅子に固定されている。この顔って……。

「この子は諸伏景光のDNAを増幅させて人工的に作成した諸伏・クローン・景光ちゃんよ」
「」
「大変だったのよ。彼ってば尾行しようにもすぐに気づかれるし、やっとの思いでDNA手に入れたんだから」

吾郎さん、ノーベル賞に絶対に出せないけど発表すればすぐにノーベル賞受賞できるよ。

「この子ホマレちゃんにあげる」
「え、い、要りませんけど!?」
「だーめ。あげるって言ったらあげるの」
「じゃ、じゃあ陣さんに渡してください!!」
「…………そう。要らないのね」

あからさまに表情が無になった。やばい気がする。

「そ、そんな!!要ります!要ります!う、うわーこれで、作戦がスムーズに進むぞー……!吾郎さんに感謝感激ですー……!!」
「うふふ!!そう?そうかしら?そんなに喜んでくれるなんて嬉しいわ!」

よ、よし、リアクション的に大丈夫そう。

こわかった……!!急に真顔で目のハイライトが無くなったの怖すぎだよぉ(泣)

その後機械や研究内容の紹介をすると言われたけれど午後に予定があると嘘をつきなんとか地上に帰還できた。水槽の中に目が数えきれないほどある生物がいたなんて私は知らない、見てないよ、全く見てないからぁ……!!!
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