新一のいとこですけど......   作:ヤヤヤンヤ

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ゴールデンアップル

 

諸伏さん救済から数か月。季節は冬から春に変わり、伊達さんもノアズアークときなこのおかげで無事救済することができた。

 

またしてもノアズアークに頼み伊達さんの携帯のGPSを辿ってもらい、2月7日の早朝に伊達さんがいる建物の周辺をきなこを連れて散歩をしていた。そしてGPSが動き出すと、きなこにこの道の先にいるスーツの男性に飛びかかってと言ってリードを放した。きなこが走って行った数秒後に私も走り出し、大型犬の散歩中誤ってリードを外してしまい大型犬が逃げた風を装う。4、5分全速力で走っていると前方できなこが男性2人組にじゃれているのを見つけてその子うちの子ですー!!と焦ったように2人に近づいた。きなこは高木刑事にのしかかり顔をベロベロ舐めていたので、すみません!すみません!と言いながらリードを引っ張りきなこを止めようとしていたが、車道を2トントラックが猛スピードで走り抜け電柱にもの凄い勢いで衝突し、そのはずみでクラクションがビーッッッと鳴り続けていた。

 

あまりの出来事に放心状態の私を尻目にワタルブラザーズは2トントラックの方に走っていってしまい、きなこも大きな音で怖がっていたのでそそくさとその場を後にした。

 

あれから伊達さんとは会う事もないだろうと考えていたけれど、事故の約1週間後ポアロで再会した。爆処コンビと一緒に来ていて、あの時大丈夫だったかと聞かれ私もきなこも時間が経てばケロッとしていたと話した。

 

これで4人の救済に成功したことになるけれど、ノアズアークがいなければ完遂できなかったと言っても過言ではない!!ノアズアーク様様です。

 

そして私が1人バタバタと救済やら仕事やらをしている間に新くんは帝丹高校へ入学していた。いや三者面談で帝丹高校に入学したいとは聞いていたけどあっという間に卒業式と入学式が終わり、気づけば原作が始まるまであと1年。悲しいことに新くんは中学生の頃から徐々に事件遭遇率が増え続けている。でも犯人がわかっても刑事さんに伝えて、自分はなるべく目立たないように動いていると本人は言っていた。

 

しかし、新くんが高校生探偵と自称しなくても高校の子達がうちの高校には名探偵がいるって広めてるらしい……。園子ちゃんが入学してまだ3週間ほどで女子生徒から告白が後を絶たないと言っていた。蘭ちゃんはというと仮にも彼氏が他の女子から告白されていても、全く、これっぽっちも気にしてませんでした。新一って昔から人気だよねー、と言いながらケーキを美味しそうに食べてました。これが正妻の余裕なのでしょうか。独り身の心に痛いほど染みる。沁みるではなく染みる。

 

そして原作1年前というと、原作でも人気の事件が起こっている。その一つとしてニューヨークの事件。

 

今アメリカにいる工藤夫妻から今度のゴールデンウィークにニューヨーク遊びに来ないかと連絡があった。優作さんが協力する部分のシーン撮影が終わり、猛烈に暇らしい。多分舞台で殺人が起こるやつだよね。新くんと蘭ちゃんがベルモッドにシルバーブレッドとエンジェルとして認定されるあの話。コナンファンとしてビルの壁になってあの光景を1秒たりとも見逃さずにいたいと思うけど2人を危険な目に合わせたくないと思っている自分もいて、蘭ちゃんを誘うか誘わないか悩んでいた。

 

しかし良いか悪いか蘭ちゃんはゴールデンウィークは毛利家で旅行に行くので、アメリカには行けないと言われてしまった。

 

え、こ、これ、どうなる???蘭ちゃんいないと飛行機の事件も車から身を乗り出すあのシーンもベルモッドを助けるあのシーンも無くなるじゃん……。いや蘭ちゃんは全く悪くない、私が厄介コナンファンなだけだし。改変がどうなるんだろうと今から不安でしかない。夜も6時間しか眠れない。本当は8時間寝たいのに。ゴールデンウィークまであと1週間もない事実を忘れたい……。

 

そして話は変わり、諸伏さんについて。

諸伏さんは博士の家で家政婦兼用心棒として生活している。髪を明るめの茶髪にして、髭も剃らせ、黒縁の眼鏡をかければ、あぁら不思議!その辺にいる普通のちょっと体格のいい大学生に見えるではありませんか~!(諸伏さん知る人だったらすぐわかりそうだけど……)いやそんな訳ないと思うじゃないですか。髭を剃ったら8,9年前に会った時と顔変わってなかった……。大学生に見えるなら大学生にしてしまえ!と東都大学外国語学部4年生の山田緑22歳を作りあげた。

 

山田緑は4年生になり特に就きたい企業もないが大学院に行くまで熱中できる物もなく、流れで就活していた。ある日雑誌に掲載されていた阿笠博士のインタビューを読み興味を惹かれたため、後日博士が出演する講演会に参加し、博士の発明に対する考えや理念を聞いた山田は家政婦でも雑用係でもいいから、尊敬する阿笠博士の役に立ちたい!!と長文の手紙を博士に送った。ちょうどその頃博士も警察に依頼されていた発明品の量産で多忙だったため表向きはインターンシップとして住み込みで山田を雇った。というシナリオである。

 

「やっぱり我ながら良い設定だと思います!」

「確かに、新一君にも怪しまれないとは思わなかったよ」

 

今日は諸伏さんとスイーツ作りをしていた。ひとまず生活環境に慣れるために普通に家政婦として働いてもらっていた。諸伏さんは元々料理が好きだったらしく、博士の家に来てからは料理のモチベーションが高まり色々なジャンルの料理を作ってみているそう。この前お昼をごちそうしてもらったら、ここは料亭かな?って勘違いするほどに美味しい和食が出てきてお料理スキルが高い私でも流石に負けを認めてしまうほどの腕前でした。こんなに美味しい料理を毎日食べている博士の体重が心配だったけど、諸伏さんは栄養バランスや総カロリーに気をつかっているそうで逆に体重が減ったと博士が大喜びしていた。

今日も粗方の家事を終えて暇そうにしていた諸伏さんを、クロカンブッシュを作りませんかとお誘いして家に来てもらった。一人でクロカンブッシュ作るの大変で今まで尻込みしていたけど、今日は強い味方がいる!!今はもう飾り付けも写真撮影も終えて消費を始めている。きなこがヨダレ垂らしてこっちを見てるけど、ごめんねあげられないんだよ~。

 

「でも男を家にあげるなんて、よく新一君がOKしたね」

 

新くんには事前に山田さんを家に呼ぶと伝えてあり、全然いいぜとのこと。最初諸伏さんを山田緑として紹介した時は警戒心MAXだったけど、諸伏さんがシャーロックホームズを知っているとわかると懐き度が急上昇してた……。いつか悪いシャーロキアンに誘拐されないかお姉ちゃんは心配です。

 

「新くんシャーロキアンには甘いんで」

「いや、実は俺もそんなに根っからのシャーロックホームズ愛読者ってわけではないんだ」

「あれそうなんですか?」

「ゼロに警察官になるなら探偵と協力することもあるだろうから探偵目線も学んでおけって言われたんだ。確かその時、課題図書の一つにバスカヴィル家の犬があって丁度良いやって読んだんだよ」

「バスカヴィル……そのお宅の名前何度も聞いたとこあります」

 

うちの男性陣は聞いてもいないのにシャーロックホームズについて教えてくれるから。興味無さすぎてその手の話になったら勝手に相槌うてるようになった。こんなスキル身についても嬉しくないよ。

 

「ははっ、まあ興味無いとそうなるよな」

「布教も度を越さなければいいんですけどね~」

 

うちの書斎は推理もの以外に少女漫画やら恋愛小説やらライトノベルを並べているからジャンルがバラバラで面白いんだよな。優作さんが真剣な顔で異世界転生もの(表紙にかわいい女の子が描かれいる)読んでて爆笑したもん。

 

「あ、そうだ。お伝えし忘れてたんですけど、明日警視庁に行ってきます」

 

交渉を長引かせても良いことないし、早いとこ公安部に恩を着せようと思った。

絶対断られると思ったけどまあ一旦頼んでみるかって花パパに警視庁の公安部にアポを取りたいと伝えたら……

 

「あぁ田中さんから聞いていたよ、私から伝えておこう。誉ちゃん頑張っているようだね」

 

って…………

私の知る田中さんはマスターのことだろうし、そ、そこ繋がるんだ!?と驚きと困惑と色々で一瞬意識無くなった。

 

「!、そうか。1人で行くつもりか?」

「はい、諸伏さんには電話で繋ぎます」

 

ノアズアークに城沢稔が情報漏洩した証拠を公安部に送ってもらったので、城沢稔は既に逮捕されている。ちなみにCIAの人はいつの間にか組織の構成員に殺されていた。まあ自業自得だよね。

 

「ノアズアークが警視庁のセキュリティ脆弱すぎて笑えるよ~って言ってたので、出向かれない方がいいと思います」

「彼から見ればどのシステムも脆弱だと思うだろうな……」

「私、ノアズアークと博士と吾郎さんなら世界大戦が起こっても生き残ると思います……」

「はは……、そういえば昨日も飛行装置を作ってたな。頭に装着して飛ぶらしいよ」

「え。ま、まさかタケ○プター……?」

「あぁ、確かそんな名前だった気がする」

「」

 

隣家に人類の英知が集結してるよぉ……!!

吾郎さんと博士を知り合わせたの間違いだったかなぁ。でもお互いに自分の知識を理解できる人間に初めて会ったぽくて感動してたし、接触禁止とか言ったら本当に世界が終わりそう……。

 

「それで、俺は何をすれば良いんだ」

「公安の方々に生きていると証明してください。音声だけなので方法は限られますけど、お願いします」

「了解」

 

そして話を終えて2人でクロカンブッシュ3段タワーを無事完食した。カスタードクリーム以外にもシューに入れていたので味変もできて大変美味しゅうございました。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

翌日、警視庁に着いて早々にスーツの男性に囲まれました。み、みんな!私の目の前に裕也がいるよ……!!裕也いい感じに顔怖いね!公安務まってるよ!!ギリギリ20代の裕也だ!確かに20代の肌ツヤかも!?

 

以前高校生の頃来た時と同様に受付に行こうとした所に裕也を含む公安部の人達が5人も現れた。警視庁に入ってから見張られてたんだろうな。工藤誉さんですかと塩対応裕也に問われて、はいと返事をすれば着いて来なさいと背の高い男性に囲まれてドナドナとどこかまで歩かされている。裕也が誰かと電話してるだけで他の人は終始無言。人の気配が全くしないフロアを歩いていると、ドアの前で裕也が止まる。

 

「失礼します。対象を連れてきました」

 

裕也がドアを開けて先に入れと視線を促す。

 

「失礼します」

 

………………………………おるやん。

 

多分本来は会議室として使われている部屋に金髪で褐色でグレースーツ姿の男性が窓辺で外を見ていた。

かえりたい。ここ警視庁やん。警察庁に帰ってください。なんで9年でそんなラスボスみたいなオーラ出せるん?修行したん?(エセ関西弁)

 

「久しぶりだね工藤さん」

「お久しぶりです」

 

なんかバーボンぽい雰囲気なんですけど。変な話するなら即刻撃つぞ的な圧を感じる。しかも前に降谷さん、後ろに裕也。逃げないけど、絶対逃げないけど!逃げられないようにしてる。お出迎えも5人もいたし、そんなに危ない人に見えます?私空手の成績全然ですけど?ほとんど基礎練しかさせてもらえなかった人ですけど?うぅぅおなかいたい。もう早く終わらせよ……。

 

「ふぅ……、単刀直入に言いますね。以前警視庁公安部に所属していた諸伏景光氏の身柄を拘束しています」

「……」

「貴方方公安が回収した諸伏景光の焼死体はこちらが用意した偽物です。DNAも本人のものをベースに複製しているのでDNA鑑定しても見破れません。今から諸伏さんに電話をします。あ、通信とか電波とか辿れないようにしてますので探知は無駄ですよ」

 

捲し立ててすぐさま電話をかける。諸伏さんはこうなる事を予想していたのかワンコールで繋がった。

 

「もしもし?」

『お疲れ様、無理だったか?』

「はい、今から変わるのでよろしくお願いします」

『わかった』

 

降谷さんに近づく……のは怖かったので後ろの裕也に携帯を手渡す。

 

「どうぞ、諸伏さんと繋がってます」

「………」

『風見さん?』

「!!」

 

裕也は恐る恐る携帯を持ち上げ諸伏さんと話し出す。私は降谷さんの方に向き直す。

 

「私は諸伏さんを警視庁に戻すつもりはありません」

 

まあ実は諸伏さんは鬼籍ってことで警視庁に所属していない事になっていて、既に秘密情報部隊に所属していて諸伏景光三尉として働いている。降谷さんには言わないけど。

 

「何故だ」

「今回諸伏さんが潜入バレしたのはCIAのハッカーによって警視庁の情報が抜かれたためです。セキュリティシステムが改善されない限り諸伏さんは渡せません」

「どうしてそこまで諸伏景光に固執する」

 

だってご飯美味しいし!!

 

「諸伏さんが持つ情報、そしてスナイパーとしての腕を見込んでいます。警察は潜入捜査官1人に割いている時間は無さそうですから、こちらも有能な人材を確保したいだけです」

「黒の組織の情報が欲しいのか」

「いいえ。降谷さん、貴方の情報です」

「……そうか、俺も人質ということか」

 

なんでそんな目をギラギラさせるんですか!(泣)

 

「はい。私が提示する条件を飲まないのでしたら、貴方と貴方の上司を消すまでです」

「……、条件とは」

「2つあります。1つはセキュリティの改善、もう1つは警察庁が保管する全世界の潜入捜査官の情報を全て渡してください」

 

警視庁のセキュリティが改善されなかった時のために潜入捜査官の情報を奪っておこうと考えた。キュラソー対策と組織壊滅作戦の時に役立つと思ってのことだ。まあ無理だと思うから後でノアズアークに偽のデータと置き換えてもらうつもり。

 

「なっ!?」

 

通話を終えたのか裕也が困惑の声を上げる。

 

「自分が何を言っているか理解しているのか」

「勿論です」

「無理だ、諦めてくれ。機密事項をそう簡単に渡すわけにはいかない。セキュリティシステムの方は何とかしよう」

「そうですか。では私から話すことはもうありませんのでこれで失礼します」

 

会議室を出ようと後ろを振り返ると裕也がドアの前で立ち塞がる。……はぁ、やっぱりこうなるか。

 

「出たいんですが」

「君の要求ばかりでは不公平だろう。こちらの質問に答えてから退出しても良いはずだ」

「何が聞きたいのでしょうか」

「何者なのか。君に何が遭ってどうして組織についてまで知っているのか」

「お答えできかねます。……いえ、1年後にはわかるかもしれません」

 

安室さんになってポアロでアルバイトするでしょ。ポアロなら1番何でも知ってる人がすぐ近くにいるし、聞こうと思えば簡単に答えてくれるはずだ。

 

「1年後に何かあるのか」

「これ以上はお答えできません」

「…………退出してくれ」

「失礼します」

 

帰りは他の公安部の人はおらず裕也1人だけだった。

エレベーターを降りてもうすぐでエントランスという所で裕也が立ち止まる。

 

「……諸伏を救ってくれてありがとう」

「いえ、私は少し手を貸しただけなので…」

「そうか……。では失礼」

 

裕也は返事をする前にもと来た道を帰ってしまう。

 

「ファイト…!」

 

裕也の背中を見ながら呟く。これ公されないようにね!!

 

受付に入館証を返して外に出てぐーっと伸びをする。

あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙つかれた。今日は酒でも飲まなきゃやってられない。1時間も滞在していないのに疲労感がすごい。多分公安の人達に尾行されると思うけど、面倒だからそのまま気づかないフリする。もう知らない。みんなアタシに着いてきな…!

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

「……おい、……ちゃん……きろ、……ほーちゃん!」

「ふぁっ」

 

やばヨダレ垂れてた。

 

ラスボス降谷零との交渉から1週間。遂にゴールデンウィークがやってきた。新くんに起こされるとジョン・F・ケネディ空港に到着していた。13時間の空の旅をほぼ寝て過ごしてしまった……。機内で見たい映画もあったのに……。しょぼしょぼと項垂れながらロビーで有希ちゃんを待つ。

 

「ったく、機内食も殆ど食わずに寝てたな」

「……そういえばお腹空いてるわ」

「はぁ、殺人事件があったってのに暢気すぎだろ」

「さつじん?」

 

新くんに話を聞くと、原作同様機内で殺人事件が起こっていたらしい……。うそ、全然気づかなかった。新くんブラのワイヤー気づけたのかな。普段私の洗濯物も干してるから知ってるか。私ってば事件解決に貢献しちゃってたか…!

 

「新くんまた解決したの?」

「いや、俺が見た時はもうあの2人が解決してた」

「あの2人?」

 

誰だ?

 

「俺達だよ〜」

「うわっ」

 

耳元で囁かれて後ろを振り向くと私服姿の萩原さんとその後ろに松田さんがいた。何で!?

 

「萩原さんと松田さん!?」

「よっ!」

「よう」

「ど、どうも。お2人も旅行ですか?」

「そうそう!運の良い事にゴールデンウィークに連休が取れちゃってさ〜。羽を伸ばしに来たってわけよ」

「まあ出鼻は挫かれたがな」

 

あぁ……何という運命力。神様はどんなイレギュラーを起こすつもりなのか……。そっか、プレイボーイの萩原さんならブラのワイヤーの事知ってるか。納得しちゃったわ。

 

「そう言うお前らもニューヨーク観光か?」

「そんな感じです。この子の親がロスにいるので遊びに来たんです」

「はあ…、金持ちは違うねぇ」

 

「新ちゃーーん!!ほーちゃーーん!!!」

 

「うぐっ」

 

また後ろから衝撃が来たんですけど。

 

「んもぅ!!遅かったじゃなぁい!!待ちくたびれたのよ〜!!」

「有希ちゃん、予告無しのハグはびっくりするっていつも言ってるでしょ」

「だぁって〜!!久しぶりのほーちゃんなのよぉ!」

 

そんなに強く抱きしめられると身動き取れないんだけど。あ、ちょっと、匂い嗅がないで。仕方ないから有希ちゃんの背に腕を回す。

 

「ふ、藤峰有希子……」

「マジかよ……」

「母さん、開演時間」

「あら大変!!新ちゃん今何時!?」

「17時24分」

「もうそんな時間!?2人とも急ぐわよ〜!」

 

爆処コンビにさよならも告げられないまま有希ちゃんに手を引かれてジャガーに乗せられて出発する。ドナドナにも程がある。ブロードウェイに向かっている途中橋を通っていると反対車線に何台もパトカーがもうスピードで走って行くのが見えた。

 

「なんかパトカー多くない?」

「通り魔だろ。若い女性ばかり狙うヤツらしいぜ」

「あーニュースで見た見た。白髪の日系人でロングヘアの女性の髪を切って持ち去るんでしょ。キモすぎだよね」

「大丈夫よ、その男が出没するのは深夜0時すぎ。それまでにホテルに戻っていればなぁにも問題ないわよん」

 

いいえ、このままだと21時くらいに出会います。ていうかもうすぐ出会います。

 

サマータイムを読んでいたのか警察に追われることもなく、普通に車に揺られてブロードウェイに到着した。

 

「あ!いたいた」

 

有希ちゃんの視線の先に傘をさしながらこっちに向かって手を掲げる女性がいた。…………シャロン・ヴィンヤード。

お久しぶりのベルモットさん。有希ちゃんはシャロンさんが立っている前に車を停めた。

 

「Hi!シャロン久しぶり〜!」

「Hi、有希子。Kittyも元気そうね」

「お久しぶりですシャロンさん」

「えぇ」

 

二言、三言話した後、劇場に入る。

劇場の中には今日の舞台を観に来た人でごった返していて、大女優シャロン・ヴィンヤードとナイトバロニスを見つけると所かしこで黄色い悲鳴が上がる。

 

「I have to thank God!!Oh my goodness!!」

 

一際大きくそんな声が聞こえた。

 

「フッ……神様なんているのかしら」

 

シャロンさんがそう呟いた言葉は私以外に聞こえていたのかな。

 

…………やっぱり私がこの人のエンジェルになれるわけないよね。通り魔に変装したシャロンさんが手すりから落ちそうになっても、私は手を伸ばせるだろうか。この人が大勢を殺してきた黒の組織の一員だと知っている私に、自分の身を顧みずに助けられるだろうか。…………陣さぁん、どうすればいいのぉ。

 

「ほーちゃん?大丈夫か?」

「ごめんお腹空きすぎて限界かも〜。あそこのカフェで軽食食べてていいかな」

「仕方ねぇな、母さん達には言っとくから行ってこいよ」

「ありがとー」

 

人に波を避けて劇場を出る。劇場の目の前の古そうなカフェに入りホットサンドとカフェラテを頼む。

 

「はぁ…、生き返る……」

 

ただハムとチーズをパンで挟んで焼いただけなのにすごく美味しい。開演まであと30分弱。今頃舞台に出る俳優達と舞台袖を巡ってるはずだ。犯人の女優、助かるといいけど。

 

もぐもぐとホットサンドを食べ終えると新くんから戻ってこいとLIMEが入る。急いで支払いを済ませて劇場に戻り貰っていたチケットに書かれた座席に向かう。

 

「あ!ほーちゃんどこ行ってたのよぉ!!」

「お待たせ〜」

「具合は?」

「ホットサンド食べてきたから大丈夫!シャロンさんは?」

「外せない用事ができちゃったんだってぇ、シャロンったら勿体無いわよね〜」

 

組織の任務だな。話しているとホールが暗くなっていきオーケストラの演奏が始まる。

 

「見よ!哀れな人間達よ!我が名はミカエル!」

 

物語は進み、貧乏貴族が本当は大天使ミカエルだったとわかる。舞台上ではスモークが焚かれる。……もうすぐだ。客席までスモークが流れてきて視界が遮られる。ごめんなさいと心の中でミカエル役の俳優に謝罪をする。貴方が死ぬとわかっているのに私は貴方を見殺しにする。

 

そして一瞬だが斜め右方向から赤いレーザー光が見えた。新くんが前方に身を乗り出したから新くんもあの光を見たんだろう。俳優がワイヤーで吊り上げられある程度の高さで止まる。

 

「イヤァァァァァ!!!!!!!!!」

 

舞台の女性達から悲鳴が上がる。観客も男性俳優が死んでいることに気づき始め次々に悲鳴が上がり出す。男性の着ている白いローブにどんどん血が染みていくのがここからでもわかる。私は無意識に腹部の傷跡を服の上から握りしめていた。周りは阿鼻叫喚。観客は出入口に向かって走っていく。

 

「はぁ、はぁ、はぁ」

 

あれ、呼吸が上手くできない。

 

「ほーちゃん抱えるぞ。母さん車!」

「えぇ。ほーちゃん大丈夫だからね」

「し、くん、ごめ、」

「いいから、喋るな」

 

新くんに横抱きにされ車に乗せられる。有希ちゃん駄目だよ、戻って。ホテルに行ったらシャロンさんに会えなくなっちゃう。流れが変わっちゃうよ。

 

「はあ、はあ、」

「大きく息を吸うんだ。……そう、ゆっくり吐いて、」

「すぅぅぅ……、はぁぁ……、すぅぅぅ……、はぁぁ……、すぅぅぅ……、はぁぁ……」

 

何回か繰り返すと視界がクリアになってきた。

 

「よし、呼吸戻った」

「うん、大丈夫、2人ともごめんね…」

「ほーちゃんが謝ることじゃないわよぉ!あんな事になるだなんて誰も思わないもの!」

「うん……」

 

そのままなすすべなくホテルに到着した。ホテルに着くと優作さんがいた。ど、どうしようこれじゃあホテルを抜け出せない。優作さんに話す?いや、それは絶対にダメ。優作さんに話せば必然的に全て話すことになって、盗一さんを助けるために銃で撃たれたなんて知られたら……。危険な事をするなとか言われて誓約書書かされて身動き取れなくなりそう。

 

「さあ早くベッドで休みなさい」

 

優作さんに促され、新くんに横抱きされたままベッドに優しく置かれる。

 

「寝てれば大丈夫だから、3人ともご飯食べてきなよ」

「生憎とこの大雨だ、今夜はルームサービスを取るとしよう」

「ほーちゃん顔色がとっても悪いわよ、大丈夫?」

「寒いんじゃねぇか?暖房入れるな」

 

みんながやさしいぃぃぃ……!!!違うんです!!部屋を抜け出すにはどうすればいいか考えてるだけなんですぅ!!

 

結局ホテルから抜け出せずに眠ってしまい翌日を迎えた。

朝のニュースで通り魔の遺体が発見されたというニュースが報道された。これで、よかった、のかな……。新くんが危険な目に遭わずに済んだことは喜べるけど、これからの事を考えると……。

 

昨日の事件はというと、警察の現場検証によりあっさり犯人が捕まったそう。レーザー光が見えた2階席から空の薬莢が見つかってもいつ使用したかなんて調べれば簡単にわかるだろうし、奈落の被害者に拳銃を撃てるのなんて大鏡の下に倒れていたあの女優しか考えられないし、地元警察お手柄です。

 

「新くん野生のリス見に行こう!」

「なんでだよ。リスなんてどこででも見られるだろ」

「ノンノン!飼い慣らされたリスと野生のリスは全く違うんだよ!?」

「わかったわかった。ついて行きゃ良いんだろ」

「やったー!」

「はいはーい!!私も行きたーい!」

「へーへー」

 

ノリノリの有希ちゃんと乗り気ではない新くんを連れて、セントラルパークに来た。優作さんは鋭意執筆中。

なぜリスを見に来たのか、今度の絵本のテーマをリスにしようか考えているからだ。ちょっと歩けば木の根元にリスがいる。何枚も写真を撮ったり、大雑把にスケッチしたり、野生のリスの資料を集める。

 

「あら、まるで写真のようね」

 

スケッチブックをベンチに置いて写真を撮っていると、シャロンさんがベンチに座りスケッチブックをパラパラと捲っていた。

 

「ねぇkitty, 貴女によく似た男を知っているの」

「男……って父親ですか!?シャロンさん私の父親知ってるんですね!?」

「いいえ、生憎だけど貴女の父親は知らないわ。…………ジン、この言葉を聞いて貴女何を連想するかしら」

「じん、ですか?えっと、仁っていう名前のドラマを思い浮かべました。以前日本で放送されていたんです。……あの、これって心理テストか何かですか?」

「……。そうね、心理テストよ」

「やっぱり!何がわかるんですか?」

「進む道が光かそうでないか、かしら。それじゃあこれから取材だから。スケッチ楽しんで」

「はい!さよなら〜」

 

シャロンさんを見送り、スケッチブックやカメラを片付ける。

……………………あっぶねぇ…!!!!!!

し、心臓が口から飛び出るかと思ったぁぁぁ!!(泣)

ジンってお酒ありますよね〜とか、私の兄が陣って名前なんですよ〜とか、馬鹿正直に言ってたら頭に銃弾撃ち込まれていたかも……。もし黒の組織や陣さんについて聞かれたらどう答えるかシミュレーションしておいてよかったぁ。鎌をかけてきたってことは私と陣さんが繋がっていると誰かに聞いたのかな。でもどこから……。陣さんに直接聞くのが手っ取り早いはずだ。疑われているならシャロンさんを探そうと夜に出歩くのは止めておいた方がいいのでは?今夜用事が無い事をシャロンさんが知らないとは限らない。出歩く用事も無いのに人気のない路地裏に女1人でいたとしたらさらに怪しまれるのでは?

うん、止めておこう。命大事、シャロンさん改めてベルモットには別の宝物を見つけてもらうってことで。

 

はい、解決。私は何も知らない米花町市民。ゴールデンウィークに楽しくニューヨークを観光しているだけ。今の私は野生のリスを追うリス専門カメラマンです。




お読みいただきありがとうございました!!
話が色々飛んでしまいました.....。

降谷さんとお話し合いした後公安がずっと尾行していたんですが、諸伏さんは尾行に気づいているので1ヶ月ほど博士の家から全く外出しない生活を送っていました。公安が撤収してからは普通にスーパーとか買い物行ってます。
ニューヨークで萩原さんと松田さんは普通に観光してたので、事件があった事は知りません。
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