新一のいとこですけど......   作:ヤヤヤンヤ

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夏から冬までぱーっと進みます。


その微笑みと冬の冷たさが嫌いになった

 

「ぇ……車が……」

「ほーちゃんどうしたの?」

 

有希ちゃんに車が海に落ちていると言おうとした瞬間に、車が海に叩きつけられ轟音が響く。すぐ後に至る所から悲鳴があがる。

 

「うそ……」

「有希子、警察に通報を」

「わ、わかったわ」

「騒ぎが大きくなる前に花君は海の家に戻りなさい。誉は新一と蘭君を連れて花君と一緒に行きなさい。いいね?」

「わかりました」

「うん、わかった…」

 

震える手で新くんと蘭ちゃんの手を握り海の家に向かう。車に乗ってた人大丈夫かな。た、助かるかな。海の家に着き花ちゃんがオーナーさんに事情を話すとここにいて大丈夫だと言われたため、テーブル席に座る。

 

「誉、大丈夫?」

「うん、ちょっと落ち着いたかな」

「無理しないで、まだ手が震えているわよ」

「ほまれちゃんだいじょうぶだよ」

 

花ちゃんと蘭ちゃんが手を握ってくれる。深呼吸をゆっくり数回するとだいぶマシになった。

 

「2人ともありがとう」

「やっぱりおれもいく!とうさんばっかりずるい!」

 

新くんが椅子から降りて駆けだそうとしたが素早く腕を掴む。

 

「ダメ。ダメだよ新くん」

「なんで!?おれもすいりしたい!」

「新くん」

 

新くんの前に屈み目線を合わせる。目の前で起こった事故に新くんは目をギラギラさせていた。そんな目をしてはいけないんだよ。人が、……死んでるかもしれないんだから。

 

「これは遊びじゃないんだよ。警察が捜査する事故なの」

「わかってるよ!」

「全然わかってない。新くんや私みたいな子供が出しゃばっていいことじゃない。これは大人が、ううん、捜査権を持っている警察だけが動くことができるの」

「じゃ、じゃあとうさんは?とうさんもそうさけんなんてもってないでしょ!」

「優作さんは警察から正式に捜査の協力をお願いされた、立派な関係者だよ。もう一度言うね、今起きている事故は新くんみたいな子供が出しゃばって、現場をかき乱すなんて絶対してはいけないんだよ」

「!……ぅぅ」

 

新くんは私の言葉を聞いて泣いてしまった。自分でも7歳の子供に言いすぎだと思うけれど、線引きをしていないと大きくなって推理ショーをしでかす。アニメや漫画では楽しんでいたけれど、もし今世で推理ショーされて自分や他人の秘密なんて暴かれたくないし。

 

「だからここで待っておこうね。わかった?」

「……」

 

抱きしめると新くんも背中に手を回してくれる。ここで嫌だと言わないということは、わかってくれたはずだ。

 

「ごめんね、強く言い過ぎたね。泣かないで」

「ひっく、…………ぎゅってしてて」

「うん。ぎゅってしとくよ」

 

新くんを抱っこしたまま椅子に座りなおす。重くなったね。背中を優しく叩いていると気づけば新くんは寝ていた。

 

「しんいちねちゃった?」

「うん。ごめんね蘭ちゃん、びっくりしたでしょ?」

「だいじょうぶだよ」

「ありがとう。蘭ちゃんは優しいね」

 

テーブルを挟んでいるので撫でられない。悔しい!蘭ちゃんを撫でさせろぉ…!

 

「……ねえ、蘭ちゃん。貴女誉に言いたいことがあるのではないかしら?」

「!」

 

は、花ちゃん急にどうした。でも花ちゃんの勘は99.9%当たるからなあ。当たらないのはお弁当の中身くらい。重箱のお弁当がデフォルト。

 

「蘭ちゃん安心しなさい。誉が必ず解決してくれるわ」

「プレッシャーがすごいな…。蘭ちゃんこんな時でいいなら話聞こうか?」

 

もごもごと口を動かす蘭ちゃん。海の家には着いたばかりは人が多かったけれど、野次馬に行ったのか人がまばらになっているから聞き耳をたてられることは無いはず。

 

「あ、あのね、おかあさんたち、…………べつべつにすむっていってるの」

「あー…」

「離婚、ということかしら」

「うん……、おとうさんがそういってた」

 

遂に来たか。最近になって喧嘩が増え、しかも喧嘩中に離婚だと叫んでいるそう。子供の前で喧嘩してるのか…。でも本当に離婚する気はないはずだ。だって小五郎さんと英理さんラブラブだし。おおかた英理さんの仕事が軌道に乗って忙しくなり始めて、家と弁護士事務所との行き来が大変だから事務所に近いところに一人暮らししたいって話だろう。喧嘩がヒートアップしすぎて離婚するなんて口走ってるんだな。

 

「蘭ちゃんはお父さんとお母さんに仲良くしてほしいよね」

「うん。でも、おかあさんおしごとたいへんそうだし……」

「誉何か思いついたのね」

「うん。あのね蘭ちゃん。3人で仲良く暮らすためには蘭ちゃんに我慢してもらうことになるんだけど、それでもいい?」

「わたし、がまんできるよ…!」

「よし。それじゃあ続きは蘭ちゃん家で話そうか。小五郎さんと英理さんに伝えたいことがあるんだ」

「わかった!」

 

小五郎さんは何かと気にかけてくれるから、代わりじゃないけど毛利家の別居を長期化しない方向にできるように説得したい。それから30分ほどずっと海の家で過ごしていた。花ちゃんがお手伝いしている姿を眺めたり、オーナーにサービスで貰ったかき氷を食べたりして優作さんと有希ちゃんが来るのを待っていたが、なかなか来ない。やっぱり車内にいた人亡くなってたのかな……。

 

「みんなおまたせ~」

 

噂をすればなんとやら、有希ちゃんが来た。

 

「あら?新ちゃん寝てるの?」

「うん、疲れたみたい」

 

泣いて寝てしまったことは内緒にしておこう。

 

「有希ちゃんもおつかれ。実況見分ってやつ終わったんだね」

「それがね~、事故じゃなくて事件だったの!」

 

有希ちゃんの説明では、私達が海の家に行ってすぐ降谷さんともう1人男性が車内にいた男性を救助したけれど男性は亡くなっていた。でも男性は時計店強盗の犯人で車に乗っていたはずのもう1人を探し出し、無事捕まえたそう。

 

「優作かっこよかったのよ〜!もう1人の強盗犯が時計をつけた女性だってすぐにわかったの!しかもビーチサンダルを買ってたってことも見抜いたんだから〜!」

「有希ちゃん、優作さんの推理はすごいけど人が亡くなってるんだから騒がないの」

「んぅ…?」

「新くん起きちゃったよ」

 

30分も寝ていたからまだ完全には目が覚めていないみたい。まだ寝てていいよと背中をポンポン叩く。

 

「それで、優作さんは?有希ちゃんだけ来たの?」

「事件はパパっと解決したわよ?優作は降谷くんとピエロくんとおしゃべりしてたから放ってきちゃった」

「ピエロくん…?新くんが言ってた人のこと?」

「そう!イケメンだったわ〜。金髪ハーフイケメンもいいけど、黒髪ハーフイケメンもいいわよね〜♡」

 

ピエロで黒髪ハーフのイケメン……?

ん?なんか頭の隅で引っかかったような……。海、車、強盗……

 

「んー?」

「どうしたのほーちゃん?」

「…ピエロの人って名前わかる?私知ってるかも」

「えー!!本当!?た、たしか、あかいしゅういちって名前だったわ!うそうそ〜!ほーちゃんにあんなイケメンの知り合いがいたなんて〜!!」

 

さざなみだ。な、なるほど、ピエロのお兄さんって赤井秀一氏だったわ。車の事故に驚いて気づかなかったなあ…。確かに原作軸から10年前、有希ちゃんはピンクの水着、時計店強盗が乗っていた車が海に転落する、どう考えてもさざ波の魔法使いだ。いやでも降谷さんや諸伏さん、優作さんは出ていなかった。こ、これが支部でも見た原作では存在していないキャラがいることで起こるイレギュラーってやつ~!?いや、こんな面白がってどうするんだ工藤誉。あやうく事件に遭遇するところだったんだぞ。

 

「それでそれで?ほーちゃんの知り合いだったの?」

 

興味津々です!と顔に書かれた有希ちゃんが目をキラキラさせて聞いてくる。

 

「い、いや違う人だよ」

「え〜本当に〜?」

「うん、私の知り合いは青井さんって人だった。あかいさん、だっけ?その人じゃないね」

「ちぇ、遂にほーちゃんに春が来たと思ったのに〜」

 

危ない危ない。会ったこともない赤井さんを知り合いなんて言えないし、なんとか誤魔化せてよかった。そういえば、新くんと蘭ちゃんが遊んでいた女の子は世良真純ちゃんなのかな。ニアミスしてたんだ。でも降谷さんと諸伏さんとはがっつり話してしまったけど。今後関わることはないだろうし気にしない気にしない。それがいい。私はどこにでもいる米花町民。後ろめたいことなんて有希ちゃんが隠してた高級クッキーからつまみ食いことくらい。

 

「あら、もうこんな時間!英理ちゃんに16時までには帰ってきてって言われてたんだった!」

 

有希ちゃんが携帯を見てそう叫んだ。ただいまの時刻14:47。すぐに着替えて出発しなければ16時前には米花町には到着できない。

 

「もうっ!優作ったら電話出なさいよ〜!」

「話し込んでるんじゃない?降谷さん、優作さんのファンって言ってたし。私ここで待っておくから、有希ちゃんと蘭ちゃん先に更衣室行ってきなよ」

 

優作が来たらこってり絞っておいて!と言い有希ちゃんは蘭ちゃんを連れて更衣室に向かった。優作さんが来たら新くん起こそうかな。

 

「んー……、ほーちゃ…?」

「ありゃ、新くん起きちゃった?」

「かあさんの、こえがしたから……」

 

有希ちゃんの声やっぱり大きかったじゃん。まあそこが有希ちゃんのチャームポイントだけど。新くんを隣の椅子に降ろすと、背伸びをする新くん。

 

「よく眠れた?」

「ん。…ほーちゃんごめん」

「大丈夫だよ。反省してるなら、これから気をつけてくれると嬉しいな」

「おう。きをつける」

「うん、約束ね」

 

新くんの頭を撫でて麦茶を飲ませる。店の中だから外よりも涼しいとはいえ熱中症は気をつけないとね。それにしても優作さん遅いな、電話してみようかな。でも有希ちゃんがかけてもでなかったしなー。事件の処理が終わって野次馬をしていた人達が戻り始めて人が増えてきてるから早く出たいんだけど…。

 

「誉!新一!」

「やっと来た……」

 

走ってきたのか少し汗をかいている優作さん。

 

「あー!優作やっと戻って来たわね!!」

 

と同時に女性陣も着替えが終わり更衣室から帰ってきた。ぷりぷりと有希ちゃんが怒っているのを優作さんが宥めている。あ、優作さんが連れて行かれた。元大女優と人気小説家が何やってるんだか。新くんも蘭ちゃんの方に走って行ってしまったし。私は花ちゃんとオーナーさんにありがとうございましたと伝えて海の家を出る。

 

「誉、気をつけて帰りなさいよ」

「ありがとう花ちゃん。花ちゃんも頑張ってね」

 

花ちゃんにまた学校でねーと言いながら手を振る。

あ、着替えどうしよう。

……水に濡れてないしこのままでいいか。はぁぁぁぁ、疲れた。早くお風呂入りたい。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

さざ波事変から数ヶ月。季節はもうすっかり秋になり、至る所でイチョウの葉が黄色の絨毯を作っている。

 

蘭ちゃんと約束した毛利家の離婚騒動の解決は、概ね無事成功した。英理さんの仕事が軌道に乗るまでの別居、具体的な期間として蘭ちゃんが小学校を卒業するまでに自分の事務所を立ち上げてくださいとお願いした。何様だと言われる覚悟で臨んだが、逆にありがとうと言われた。英理さんは最近、家庭と仕事の両立が難しく小五郎さんや蘭ちゃんにやつ当たりしていたそうで、今回私の提案は渡りに船だったそう。けれど全く会えないのは蘭ちゃんが寂しがると思い、月一は家族3人で出かけるつもりらしい。蘭ちゃんもそれを聞いて嬉しがっていた。そして小五郎さんには照れ隠しでも英理さんを侮辱するような言葉は使わない方がいいとこっそり伝えた。英理さんが悲しみます、料理が下手なら2人で練習してみればいいし、私や有希ちゃんも協力する(有希ちゃん許可済み)と伝えると、それなら……と若干乗り気ではなかったものの頷いてくれた。

 

それから数ヶ月経つ今では蘭ちゃんから相談も無く、時たま突撃!毛利家親密調査!を行うとうちの2人とまではいかないけれど、案外ラブラブそうなので現場は作戦成功だと思っている。

 

閑話休題。

 

学校から帰る途中にあるイチョウ並木を博士と歩いていた。博士は健康診断で体重を減らせと言われたので毎日10000歩を目安に歩いている。1人では続かないと思ったので、登下校で使うバス停を2つほど遠くして私も一緒に歩いている。

 

「きれいじゃのう」

「でも掃除大変そうだね」

「誉くんは風情が無いのう。辺り一面に広がる黄色の絨毯、写真映えするじゃろうに」

「じゃあ写真撮ってあげる。そっち行って」

 

携帯を構えてイチョウの木と博士を撮る。

 

「どうかのう、こんな感じかのう?」

「あ、博士、後ろに下がると危ないよ!」

「おっと!」

「きゃっ!」

「ほらー言わんこっちゃない」

 

博士と博士に押されて倒れた女性に近寄る。博士が謝りながら女性に手を貸して立ち上がらせていた。

 

「いやぁ、気づかず申し訳ない」

「いえ…、私も不注意でしたわ。……っ!」

 

俯いていた女性が博士を見ると目を見開いて固まってしまった。やっぱりどこか怪我してたんだ!

 

「ど、どうかされましたか…!」

「救急車呼ぶね!」

「い、いえ、大丈夫ですわ…!どこも怪我しておりません」

 

でも流石に博士にぶつかられて怪我してるかも…、と思い救急車を呼ぼうとしたが女性から何度も大丈夫だと言われたので携帯を仕舞う。そして女性が突然被っていた帽子を取り、博士に熱い視線を向ける。

ん?なんだこの空気。ラブコメの気配を感じるぞ?

 

「!!、も、もしや……キャンベルさん?」

 

博士の目が輝いてる。女性に釘付けだ。

 

「は、はい…!そうですわ!」

「……博士、お知り合い?」

 

博士が言うには、こちらの女性は博士が子供の頃よく遊んでいた友人らしい。でも友達って感じじゃないんだよなあ。甘ずっぺえ雰囲気漂ってるだよなあ。

 

「そちらはお孫さん……?」

「あ!い、いや違「違います。私は博士の知り合いの子供です。ちなみに博士は独身です」こ、こら!誉くん…!」

 

博士の制止を振り切り、キャンベラさんと呼ばれていた女性の前にずいっと近づく。

 

「博士は今フリーです。アタックするべきです!」

「誉くん!な、何を言っておるのじゃ…!」

「だって博士が動かないから。キャンベラさん、博士はあなたに好意を持っています!」

 

恋愛経験ゼロの私でもわかります!!

 

「!!……、ほ、本当ですか、阿笠さん…?」

 

ここからは皆さんの想像通りの結末です。

博士とキャンベラさんはお付き合いすることになった。でも博士は日本、キャンベラさんはイギリスに住んでいるため遠距離で愛を育んでいくんだって。そういえばキャンベラさんはジュエリーデザイナーでフサエブランドというブランドの社長さんだった。普通に原作キャラだった。私はなぜ気づかない?勘が鈍ってきたかな?

あーそれと母と仕事したことあるって話もされた。以前に母のブランドがジュエリーデザイナーとのコラボ商品を出して爆売れした話をしたけど、そのジュエリーデザイナーがキャンベラさんご本人でした…。世間は狭い。閑話休題、遠距離でどうやって愛を育んでいるのか聞くと、2人は毎日国際電話で通話してるらしい。高校生カップルみたいなことしてるんだね。実際の高校生カップルがしてるかわかんないけどさ。この時代まだスマホが発売されていないからビデオ通話とかできない。インターネットが身近に無い生活不便だよねぇ。ガラケーもまだ持ってないし…。まあ無いものを願っても仕方ないか。

 

「ほーちゃん出版社からお電話来てるわよー」

「はーい」

 

やばい、もうそんな時間か。スマホへの未練を思っていたら有希ちゃんが電話に出てくれたらしい。ドタドタ階段を降りて電話を取る。

 

「もしもし変わりました、ホムラです」

『先生!ご無沙汰しております、小堺です!』

「小堺さんすみません。私からお電話すると言っていたのに」

『いえいえ大丈夫ですよ』

    

電話の途中ですが回想失礼しまーす。どこで出版社の人と知り合ったのか、それは私が春風出版企画の絵本新人賞に応募し見事新人賞を受賞したことが理由です。

 

日本を代表する作家である優作さんの姿を見て自分も創作活動に興味はあったけど、私は絵画専門で漫画のような絵は専門外。なので薄い本は断念し小説や随筆も優作さんがいる手前、生半可な文章は自分が許せない。悩んで悩んで悩んだ結果、自分の絵を見てほしい、私の思いを伝えやすいのは絵だ、と絵本を作ることにした。なんとか作りあげた絵本(仮)を優作さんに見てもらい、新人賞に応募すると伝えるといいんじゃないかい?とだけ言われただけだったので、プロの目ではお遊び程度の代物だと思われたのかなと思ったけれど、ぶち当たって砕けてやる!!と応募。

 

参加賞のボールペンが配達されるのを待っていると応募から1ヶ月後、なんと春風出版から新人賞受賞の知らせが届き、現在は受賞作を処女作として出版する準備をしている最中だ。そして私の担当編集者としてサポートしてくださっているのが今電話している小堺春香さん。出版業界に不慣れすぎる私を手取り足取りサポートしてくれる。

 

『先生のご都合次第なのですが、新人賞受賞者インタビューの時間を14時に変更可能ですか?』

「はい、大丈夫です」

『ありがとうございます!では当日ご自宅までお迎えにあがりますね』

 

それから二言三言話し電話を切る。

 

「ホムラ先生は忙しくなりそうかい?」

 

いつの間に来たのか、優作さんが目の前の壁にもたれていた。

 

「優作さんと比べないでよー。というか私まだ学生だし、学業と両立できないと困る」

 

ちなみにペンネームは本名に掠りもしない名前にした。理由は簡単、工藤優作の姪が描いた作品だとバレないため。多かれ少なかれゴマすりに来る人はいると思うし私は実力で勝負したい。ちなみにペンネームのホムラはペンネームをどうしようか悩んでいたら親友である薫子ちゃんがホムラという案を出してくれたのでそのまま採用した。なんでホムラなのか理由を聞くと、私が描く絵を見てあたたかいと思ったからだそう。て、照れるよね。

 

「ふふ、誉と仕事を共にする日も遠くはないかな」

「期待してて!」

 

一緒にお仕事なんて楽しいに決まってるよー!

優作さんと話しながら外に停めてある車に乗り込む。今日は絶対に遅刻は許されない!

 

「さあ出発進行!レッツゴー!」

「姫の仰せのままに」

「張り切ってるわね〜」

 

ルンルン気分で向かうのは杯戸町のとあるレストラン!

そう、杯戸町ということは……遂に黒羽家に会えるーーー!!嬉しい!!!

チキチキ食事会with黒羽家が開催されるためウッキウキでーす!!

 

「でも優作もほーちゃんも教えてくれても良かったじゃない!優作の兄弟が誉乃さん以外にもいたなんて!」

「兄さんは人見知りだからね」

 

優作さんなんで嘘つくの。怪盗KIDやってる人が人見知りなわけないでしょ。

 

「有希ちゃんも知ってる人だから大丈夫だよ」

「私の知ってるねぇ……、新ちゃんイケメンだったらどうしよ~~!!」

「ぐぇっ!!」

 

後部座席で新くんが有希ちゃんに巻き込まれてる。実は新くん、今日の食事会はあまり乗り気ではなかったんです。そこをなんとか~!と何度もお願いして来てもらった。なんで乗り気じゃないんだろう?有希ちゃんが言うにはヤキモチ妬いてるらしい。ヤキモチ?何に?

 

「そうそう言い忘れていたけれど、兄さん一家にも新一と同い年の子供がいるみたいだよ」

「そうなの~!?新ちゃんお友達になれるといいわねぇ!」

「……べつに」

 

人見知りが再来したかなあ?小学生になってだいぶマシになったと思ったんだけど……。

 

「新くん、交友関係が彼女だけなんて寂しすぎるよ」

「は、はあぁぁ!?か、かのじょなんていねぇし!!!」

「え、まだ蘭ちゃんに告白してなかったの」

「らんはかのじょじゃねぇ!!!」

「「えーー」」

 

有希ちゃんとブーブー、つまらなーいと新くんに言いまくる。

 

「ほ、ほーちゃんだってかれしいないだろ!!」

「へっへーん、こう見えて私、何度も告白されてまーす」

「」

 

あれ?後ろから何も聞こえなくなった。新くん寝た?寝るの急すぎない?

 

「安心しろ新一。誉には彼氏や異性の知り合いはいないよ」

「へ?」

「白百合学園は女子校だ。告白されるのも女子生徒からだよ」

「彼氏がいなくて悪かったですねー、出会いがないんですぅ」

 

後ろからため息が聞こえるんだけど、ちょっと彼氏がいないことがそんなに悪いの!?

などと新くんをおちょくりながらお喋りしていると杯戸町のレストランに到着するまでもう少し。

着いたレストランはこじんまりとしていながら高級感があるお店だった。一見さんお断りって感じのお店。

 

「良さそうなお店じゃな~い!」

「兄さん達はもう着いているみたいだね」

 

ウエイターさんに案内されレストランの中に入る。

 

「し、新くん、どうしよう、緊張してきた」

「なんでだよ、ほーちゃんはあったことあるんだろ」

「で、でもさぁ…」

「こちらのお部屋でございます」

 

個室までついに到着…!

ドアが開かれると中にいた盗一さんが気づいて手を軽く振ってくれた。

 

「え、えぇぇ!?」

「さあさ中に入るよ」

 

優作さんが驚く有希ちゃんを引っ張りながら椅子に座らせる。有希ちゃんナイスリアクション!新くんも快斗くんと驚いた顔で見つめあってる。や、やばいニヤニヤが止まらない。待ち望んだ光景すぎる。

 

「兄さん、食事の前に自己紹介の方が良さそうだね」

「あぁ。では改めまして、黒羽盗一と申します。こちらは家内の千影、息子の快斗です」

「お会いできて光栄ですわ。黒羽千影です。よろしくお願いいたします」

「ご丁寧にどうも。工藤優作と申します。家内の有希子、息子の新一、そして娘の誉です」

「違うからね?」

 

なんで頑なに娘って紹介するの?というかこの状況で普通に自己紹介始めるの流石だよ。

 

「おっほん!…改めまして、工藤誉乃の娘の工藤誉です。今日は私のお願いを聞いてくれてありがとうございます!千影さんと快斗君に会えて、とっても嬉しいです!!」

「私も誉ちゃんに会えて嬉しいわ」

 

千影さん大人の女性だぁ……。い、色気がすごい。ファントムレディ、普通にしててもえっちだ。ってそうだそうだ、したいことあったんだった。まだご飯食べないよね。時間あるよね。新くんと快斗くんを並ばせたい!

 

「新くんご挨拶しよう!」

「あら、じゃあ快斗もご挨拶なさい」

「ぅえ!?」

「!?」

 

有希ちゃんは優作さんに任せた!

出入口近くで固まっていた新くんを引っ張り快斗くんの前に連れていく。近くで見ると双子、いやコピペくらい似ている。でも従姉でも似るって聞くから血が濃ゆいだけだね。そっくりではいけど私も顔は良いんでね…!生物学上の父親の血が濃ゆいだけなんでね…!

 

「はじめまして快斗くん!工藤誉です、よろしくお願いします!ほら新くんも」

「くどう、しんいち…」

「く、くろば、かいと、です」

 

戸惑ってる。ドッペルゲンガーみたいだし、驚くのも仕方ないよね。でも快斗くん咄嗟に敬語が出るの、ポイント高いです。うちの新くんは社会性が無いんです。許してやってください。

 

「な、なあ」

「!……な、なんだよ」

 

快斗くんが新くんに話しかけた。

 

「おまえ、」

「快斗、新一君よ」

「しんいち、おれときょうだいなのか!?それともへんそうしてんのか!?」

「バ、バーロー!へんそうなんかしてねぇよ!おまえのほうがへんそうだろ!」

「新くん、おまえじゃないよ快斗くんね。あと2人ともそっくりなだけだよ。兄弟でも変装でもないよ~」

「ふふっ」

 

2人ともかわいい。快斗くんが新くんに興味津々で色々話しかけてくれている。よかったね新くん、交友関係が広がったね。

 

「ほまれちゃんはしんいちのいとこなんだろ?てことはおれのいとこってこと?」

「うん、そうだよ。快斗くんのパパと新くんのパパが私のママの弟なの」

「はぇ~、でもにてないな」

「そうだね、私は外国の血が流れてるからかもね」

「がいこく!なんかかっこいいな!」

 

え、かわいすぎか。新くんには無いピュアさがある。

 

「三人方、話が弾んでいるが食事会を始めないかい?」

「あ、ごめんなさい。座るね」

「しんいちこっちすわれよ!」

「ん」

 

新くんと快斗くんは隣同士に座って、なぜか私はお誕生日席に座らされる。なんで?食事会始まってるけどすごく物申したいよ?

 

「ん~!美味しい!!誉乃さん来られないなんて残念ね~」

「お噂は聞いていたけれど、お忙しい方なのね」

「姉さんは仕事人間だからね、仕方ないさ」

 

お誕生日席への不満を感じながら運ばれてくる料理を食べ始める。ふ、ふーん?サラダも新鮮ぽくていい感じじゃん?こ、これならお誕生日席でも満足しちゃうかもねー?次はメインディッシュのビーフシチューか。

…………う、うま。美味すぎる。お肉ホロホロだ。どれくらいの時間煮込めばこんなにホロホロになるんだ。会話よりお肉に集中しちゃう。

 

「ほーちゃん、あげる」

「あ、こら、にんじん食べな」

 

お肉に集中していると横から人参が皿に置かれる。

 

「しんいちにんじんきらいなのかー。おれもさかなきらいだ!」

「好き嫌いはダメだぞー。大きくなれなくても知らなーい」

「にんじんたべなくてもしんちょうのびてるし」

「おれもさかなたべてねえけど、きょねんより5センチのびてた」

 

成長期め。ああ言えばこう言いやがる。蒸された人参美味しいよ?なんで好き嫌い多いのに身長伸びるんだ?人体の神秘だ。あ、人参美味しい。少し甘みがあって生野菜感が全く無い。

 

食事会は大いに盛り上がって新くんと快斗くんものすごく仲良くなった。

 

「新くんこれどうぞ」

 

デザートのショートケーキを新くんにおすすめする。クリームが甘すぎなくておいしい。

 

「ん、ありがと」

「快斗くんもどうぞ」

「サンキュー!……んまっ!」

 

ちなみに新くんはレモンケーキ、快斗くんはザッハトルテ。どっちも少しもらったけど美味しかった。デザートも手を抜かない精神、流石です。

 

「ではお暇しようか」

 

デザートを食べ終え一息ついていたらもうお終いの時間らしい。ほとんど料理の記憶でまともに会話したの人参の時だけだ……。でも盗一さんはいつでも遊びにおいでって言ってくれたし、ふつう二輪の免許取ったらばすぐに遊びに行けるか。

 

「盗一さん今日はありがとうございました。また遊びに来るね」

 

レストランを出て車に乗る前に盗一さんに駆け寄る。

 

「あぁ、私も楽しい時間を過ごせたよ。ありがとう誉」

 

優しく頭を撫でられる。

 

「えへへ」

「誉」

「なに?」

 

盗一さんがしゃがんで耳元で話し出す。

 

「千影と快斗をよろしく頼む」

「え…」

 

なんでそんなことを…?まるで盗一さんがいなくなるみたいじゃん……。なんでもないのように盗一さんは離れてしまう。

 

「頼めるかい?」

 

なんで優しく微笑んでるの……?盗一さんの周りで何が起こっているんだろう。でも詳しい話を聞ける雰囲気じゃない。

 

「……わかった」

 

私は何も聞かず盗一さんから離れる。そして別れの挨拶も言わずに車に乗り込み不貞寝をしているといつの間にか本当に寝てしまっていた。




お読みいただきありがとうございました。
次回では黒羽盗一のマジックショーがある時期を1年前倒しにするつもりです。
あと千影さんのキャラがわかりません(泣)
私、普通二輪免許持ってないのであまり詳しいことは書かないようにします。(ちなみにAT車免許持ってるんですよ!)

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