新一のいとこですけど......   作:ヤヤヤンヤ

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血まみれになったプレゼントは捨てた

 

盗一さんの意味深な言葉を聞いてから3ヶ月弱。

あと数日で私は高等部1年生になる。

 

新人賞を応募する前には地獄の試験期間は終わっていて無事高等部に進級することが決定していた。そして高等部への進級祝いとして盗一さんがマジックショーへ招待してくれるらしい。

が、これ盗一さんが姿くらます事件のやつじゃん……。2024年4月の劇場版名探偵コナンまで死亡したと思われていた事件じゃん……。私なんか犯罪組織と戦う力もお金も持ってない。どうすればいいんだろう。こんな事を招待状を貰ってからというものずっと考えている。

 

「はあ……」

「誉、またため息ついてるぞ。やっぱり悩み事があるんだろう?」

「ママ……」

 

母は遂に長期休暇をもぎ取り、私の春休みに合わせて帰国している。そして今は母の休暇が開ける短い間だけ私が小さい頃住んでいた別荘に戻ってきていた。

 

「言えない事か?」

「言えないことなのか自分でもわかんない。でも命に関わる事ではある」

「それは……」

「あ、私じゃないよ!でもママにとっても私にとっても大切な人の命に関わるの」

「故に誉にどうこう出来る事ではない、と」

「……うん」

 

盗一さんがあの場で私にしか言わなかったことを考えると、あまり大っぴらに話していいことではないのかもしれない。だからぼんやりとしか伝えられない。でも私には夢小説の主人公みたいにチート能力で救済なんてできない。

 

「……私達で考えても埒が明かない、こういう事は得意な人間を頼ってみよう」

「そんな人いるの?」

「本当は誉に合わせたくないんだがな。命最優先だ」

 

そう言うと母はリビングから自室に消えていく。犯罪組織から人を救える人間……?もしかして警察?公安とか?

 

数分経ち自室から出てきた母はなぜか疲れた顔をしていた。

 

「だ、大丈夫?」

「あぁ……、少し、いやだいぶ頭がおかしい奴なんだ」

「ぇぇ……」

 

け、警察官でもそんな人いるんだ……。激務で疲れ果てておかしくなっちゃったのかな。

 

ピンポーン

 

「早すぎる……」

 

公務員の激務による過労死のニュースを思い出していると突然インターホンが鳴った。宅配は全部あっちの家指定にしてるから来客かな?母が何か呟いた後インターホンの解除ボタンを確認せず押し玄関に向かう。母のあの反応はやっぱりお客さんか、お茶の準備しておこうっと。でもこの家に来客なんて珍しい。

 

「緑茶と紅茶どっちがいいかな、あ、コーヒーが好きな人だったらどうしよう。今切らしてるんだけどな」

 

お湯を沸かしていると複数の足音が聞こえてくる。え、何人もいるのか。カップ足りるかな。

 

「おっじゃまっしまーーす!!!」

 

廊下からリビングに続くドアが開き、陽気な聞き覚えがありすぎる声とともに赤ジャケットが目に入った。

 

え、

 

「」

「おー!誉乃ちゃん中々いいとこ住んでるじゃあないのー!」

「五月蝿い、ボリュームを落とせ。誉が驚くだろう」

「邪魔するぜ〜」

「失礼する」

 

え、え、え、

 

「ウワァオ!これまた美人な娘ちゃんだことぉ!!」

「……るぱん、さんせい、」

「はいはい、何かしら〜?」

「……キュウ

「ありゃ?」

 

バターンッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ!」

 

び、びっくりしたー。夢にルパン三世と次元大介と石川五右衛門が出てくるなんて贅沢な夢だったなあ。

 

「落ち着いたかー?」

「!!」

「誉大丈夫か?具合が悪いなら救急車呼ぶぞ?」

 

焦った表情の母には申し訳ないが、一旦深呼吸しよう。吸ってー吐いてー、フウー……。

 

「ダメだ、視界の暴力で落ち着かない」

「ほ、誉やっぱり具合が悪いんだな!?きゅ、救急車、救急車呼ぶから安心しろ!!」

「ママ大丈夫。私は元気、目の前が情報過多でテンパってるだけだから」

「そ、そうか…?」

「うん。大丈夫。ただ早急にどうしてママとルパンさん達が知り合いなのか説明してほしいな。早急に」

 

でも説明されても、今私と日本を代表するキャラが同じ空間にいることは理解できないです。というかルパンさん達変装してないけど大丈夫なのかな。銭形警部現れないかな。……ちょっと期待しちゃう。

 

「そうか、説明していなかったな。こいつらは昔中東の紛争地域にいた頃知り合ってな、」

「そんで、なんやかんやあって今は俺達誉乃ちゃんのお得意様ってわけ!」

 

母が紛争地域にいた事も知らなかったし、夢女子みたいになってることも知らなかったなー。でも母って若い頃荒れてたって優作さん言ってたし、そういうこともあるかー。夢小説ならご都合設定としてスルーするのが暗黙の了解だしなー。

 

「なるほど、理解しました」

「マジかよ、今ので理解できんのか」

「これがじぇーけー、という者の力」

「マジか」

「改めまして工藤誉と申します。母のご友人である皆さんにご挨拶できず申し訳ありませんでした。非礼をお詫びします」

 

欲を言えばもう少し早く会いたかったです!!!ルパコナ時空という嬉しさ満載の事実にもう少し、いや幼少期の頃から早く気づきたかった!!!それならこの世界をもっと楽しめたのに!!!

あれ?でもテレビでルパン三世の報道なんて見たことなかったな。新聞も読まないし、ニュースもほとんど動物関係しか見ないからセルフ情報規制してたかぁ。

 

「誉乃ちゃんの娘とは思えないほど出来た子ね〜。オジサンびっくり!」

「母のご友人ですから無下に扱うことなどできません」

「……ホント出来た娘だねぇ」

「やめろ、なんだその目は。何が言いたい」

 

わ、私は前世の知識があるだけなので…!

 

「あ、あの、それでですね、皆さんはどうしてここへ来られたんですか?母にご用でしたら私出かけて来ますが……」

「何言ってやがる、アンタが呼んだんだろ?」

「?」

 

私が呼んだ?ルパンさん達を?

 

「誉、ルパンの力を借りよう。盗一を救うために」

「!!、なんで盗一さんのこと……」

「これくらいの情報なんて朝飯前よん」

 

ま、まじか、世界一の大泥棒相手には隠し事もできないのか。

 

「俺にかかれば娘ちゃんの下着の色でさえわかっちゃうのよ〜」

「す、すごい…!本当ですか!?」

「…期待した反応と全く違うなあ?」

「ち、違うんですか…?」

 

もっと驚いた方がよかったかな。

 

「……誉乃殿、誉殿の情操教育はいかがなものかと」

「今痛感している」

「箱入りにもほどがあるぜ…」

「同世代の異性との交流を増やすべきだったと、今痛感している…!」

「ア、アハハハ……」

 

下着の色わかるのかな?わからないのかな?

 

「お、おっほん!娘ちゃんは黒羽盗一を救いたいんだろ?」

「は、はい!私ができることならなんでもします!お、お金も、用意できる額は少ないですがお支払いします!」

「OK、OK。その依頼、このルパン三世が引き受けてやるよ。ただ娘ちゃんにもバリバリ働いてもらうぜ?」

「ありがとうございます…!!……っありがと、ございますっ……!」

 

盗一さんを救う手立てができたことの嬉しさと同時に己の非力さを痛感し悔しさで涙が出てくる。でも今嘆いても仕方ない、盗一さんの命が最優先だ。俯いたまま涙を拭う。一旦お茶を淹れるためキッチンに戻りお茶とお茶うけの羊羹を出す。

 

「ルパン、情報を出せ。誉は何も知らんぞ」

「お願いします…!」

「ほいほい、んじゃまずは黒羽盗一を狙ってる組織からだ。連中のボスは命の石・パンドラを使って不老不死を目論んでやがる」

 

不老不死なんて現実にあり得るのかな。

あ、でもルパコナ時空だからヴェスパニア鉱石とかあるはずだし、ルパン三世のシリーズで人魚が出てくるお話あったな。不老不死ではないけど怪我してもすぐに回復する女性とか出て来てた。それならあり得ない話ではないのか。

 

「そ奴らは怪盗きっどがぱんどらを盗むのではないかと懸念しているのだな」

「五右衛門だーいせいかーい!怪盗KIDが邪魔になった組織は手取り早く消しちまおうって考えたわけだ」

「まあ普通そう考えるわな」

 

これが大泥棒達の普通……。命があることが当たり前じゃないんだ。

 

「子供には難しい話だな」

「いえ、大丈夫です」

「んなら娘ちゃんはどうやってこいつらをヤっつける?」

 

ルパンさんに頼るだけなら組織を潰すと言えばいいけれど、それなら私のことなんて放っておいて3人だけで動いた方が楽なはず……。私ができること、考えろ、考えろ、ただの一般人の私ができることは何だ。

 

「警察を頼ること、」

「警察?ルパンを売るのか?」

「誉乃ちゃんひっどーい!」

「私にできるのは組織の情報を警察に伝えることです。そして盗一さんよりも先に組織に自分を襲わせてショーを中止します」

 

母の顔が曇る。

 

「んで?」

「私が襲った人間がショーの会場に入ったと警察に話せば、警察は安全確保と犯人を探すためにショーを中止します。警察が集まれば組織は盗一さんへ手を出しにくくなり、盗一さんが狙われる可能性は低くなると思います」

「俺達はどう動く?」

「ルパンさん達には私を襲っていただきたいです。ルパンさんはもう既に組織がどこを活動拠点にしているのか、ボスがどういう人物なのか特定されているはずです。ですから組織に潜り込むなんて朝飯前だと思います。組織の人間のフリをして私を襲い、組織の仕業に見せかけ警察を誘導してください」

 

これが、私が考える精一杯だ。

 

「よーし!そんじゃあ誉ちゃんの計画通りに動きますかね〜」

「おい待て、私が許すと思うか」

 

母が聞いたことのない低い声を出す。

 

「姫の考えた計画だ〜、俺はそれに従うまでだよ」

「……考え直すことは出来ないんだな」

 

母が私を見つめる。

 

「これが最良案だと思う。盗一さんに貴方を救うために私は傷物になったって言ってやるの」

「そうか。ふぅ………………、1発、いや3発ぶん殴ってやれ」

「そうするつもり」

 

母が悲しそうに、呆れたように笑う。

ごめんなさいママ。私、自分が盗一さんに怒ってるって気づいたの。だから止まらない。

 

「ヒュー♪カッコいい女は嫌いじゃないぜ誉」

「これがじぇーけーの力でござるか、奥が深い……」

「んひひ!いい女の娘はいい女になるもんだね〜!」

 

私はルパンさんの試験に合格、したらしい?

マジックショーまで残り2週間も無いため急ピッチで準備を進めていく。計画は私が考えたものでは甘ちゃんだと言われたため少し変わったものの概ねは先ほどの通りになった。

①マジックショーの開演前に盗一さんにプレゼントを渡すつもりだったが車に忘れ1人で取りに向かう

②会場に戻る途中で怪しい人影を見たため気になり人影を追う(この時点で会場付近に隠れている本物の組織の人間は五右衛門さんが捕獲予定)

③人影を追っていたが突然組織の人間に扮した次元さんが現れ撃たれる

④銃声を聞いた人が瀕死の私を発見する

⑤次元さんは逃げるためにショーの会場に入り人混みに紛れて姿を消す(私を撃った拳銃は会場のゴミ箱に捨てておく)

⑥警察が出動しショーが中止する

⑦ここで次元さんからルパンさんにバトンタッチ後、警察にわざと発見される

⑧警察を誘導し組織の拠点付近まで防犯カメラに映りながら逃げる

 

「本当にこの計画通りに進むんですか?」

「これくらいの荒さの方が案外上手いこといくもんだ」

「なるほど…」

 

私が襲われる人は次元さんか五右衛門さん好きな方選んでいいと言われたけれど、刀傷だと五右衛門さんの腕が良すぎて犯人が五右衛門さんと特定されてしまう可能性があるので僭越ながら次元さんを選ばせていただいた。もちろん次元さん愛用のS&W M19 コンバット・マグナム(教えてもらった)ではなく、銃社会では一般的?なM1911という自動拳銃を使うらしい。

 

「……」

 

「阿笠博士だったか?その爺さんになんか発明品作ってもらえねぇのか?人間そっくりの人形とかよ」

「んー頼んだら作ってくれると思いますけど、絶賛繁忙期なので疲労でよくわからない物が産み出されますね」

「む?具体的にはどのような物なのだ」

「服が焼き切れるほどの威力のレーザーポインターとか、窓ガラスが割れるくらいの超音波が出る機械とか、水中で1日以上呼吸が保てる酸素ボンベ、とかですね」

「よく今まで犯罪組織に誘拐されずに済んだな」

「博士は時々家を爆発させてたのでへっぽこだと思われてたんじゃないですかね?」

 

でも今は警察の協力者になっているので家周辺の警備体制が整ってるんだと思う。他の地域に比べてお巡りさんの巡回が多いような気がするし。

 

その後私がソワソワしていると優作さんや盗一さんに勘づかれてしまうので、組織のことはルパンさん達に任せて私は普通に生活しろと言われた。いつも通りの演技をして過ごしていれば遂にマジックショーが開催される日になってしまった。優作さん達とは会場で落ち合う予定なので会場には母の車で向かう。計画の序盤に活躍するプレゼントも本当に盗一さんに渡すつもりで選んだため怪しまれないと思う。

 

車に乗り込み会場までの道をぼーっと眺める。

 

「……誉」

「なにぃ?」

「すまない寝ていたか」

「大丈夫だよ。どうしたの?」

 

何か忘れ物でもしたかな?

 

「私は今でもアイツらを会わせたことを後悔している。誉が犠牲になる選択を誉自身に取らせているこの状況を自分が容認してることがとても憎い」

「ママそれはちが「わかっている。わかっているんだよ、でもね、私は誉には暖かい場所で優しい人々に囲まれていてと願っていたんだ」…………」

「だからこの先自分を犠牲にする選択は簡単には選ばないでほしい」

「…………もうするなって言うかと思った」

「最終手段にはしてほしい。自己犠牲が必ずしも正しいとは限らない。誉が大切だと思う人は、その人も誉を大切だと思っているんだ。だから私や優作達が悲しむことは極力避けなさい」

「……うん。ごめんねママ」

「絶対に許さないからな」

「うん、わかってる」

 

この選択をしたこと、私は一生悔いていく。

 

それから会場までは2人とも無言だった。

 

会場は大きめの演劇ホールで大勢のお客さんが中に入っていく。ホール敷地内の関係者駐車場に停めて私達は入場口ではなく関係者入口に向かう。もちろんプレゼントは車に置いたまま。事前に盗一さんが連絡してくれていたのかstaffと書かれたTシャツを着た会場スタッフの人が関係者入口のドアの前にいた。スタッフさんに案内され黒羽盗一様とプリントされた紙が貼られた部屋の前に着く。

 

「誉、……頑張ろうね」

「うん」

 

小声で呟かれた言葉に頷いてドアを開ける。

 

「こんにちはー」

 

ドアを開けると工藤家と黒羽家が集合していた。

 

「もう!ほーちゃん達遅いわよ〜!待ちくたびれたわぁ」

「ごめんごめん、めっちゃ渋滞してた」

「流石は黒羽盗一のマジックショーだな、人気が凄まじいよ」

「姉さんに褒められるなんて光栄だな」

「思ってもいないことを言うなよ」

 

一言二言みんなに話しかける。

大丈夫、優作さんにも不自然がられていない。

 

「ほーちゃん、おじさんにプレゼントは?」

「あるよ〜、……あれ?」

「わすれたのかよ……」

「い、いや車に置いてきただけだから!ちょっと取ってくる!」

「もう開演まで時間がない、後で取りに行きなさい」

「大丈夫、すぐ戻ってくるから!みんなは先に行ってて!あ、盗一さんは待っててね!」

「ふふ、わかったよ」

 

母から車の鍵を借りて部屋を飛び出す。母の、走るとヘアセットが崩れるぞ!という言葉に手を振りながら走って駐車場に行く。この間わざと防犯カメラがある場所を通って車に戻る。

 

「あったあった」

 

後部座席に置いていたプレゼントを取りドアを閉める。

 

「ん?」

 

駐車場から少し離れたところでキョロキョロと何かを探す怪しい人影を見つける。

 

「迷子かな?」

 

母から進級祝いでプレゼントされた携帯で母に迷子がいたから声かけてくるとメールを送る。よし、アリバイ完了。迷子の人(次元さん)を追いかけるため関係者入口とは反対方向に走っていく。

 

「あ、あのー、迷子の人いますかー……」

 

いかにも追いかけている内に人通りが全く無い薄暗い場所に来てしまったようなフリをする。行き止まりではあるものの頑張れば潜れそうな小窓が開いている。そして防犯カメラはばっちり私の方を向いている。

 

「……流石にいないか。戻ろ」

 

来た道を戻ろうと振り返った瞬間、背後に黒いローブを被った次元さんが現れて私は驚く。

 

「誰…?」

「……」

「……盗一さんを狙ってるんですか」

 

変装マスクをした次元さんはニヤリと笑い拳銃を私に向ける。私は拳銃が怖くて動けず、手の震えを隠す。次元さんは拳銃を向けたまま私の後方にある小窓に向かって歩き出す。

 

「……」

 

次元さんが私の横を通りすぎる瞬間、私は振り返り拳銃を掴んで奪い取ろうと引っ張る。

 

「離して!!こんなもの、壊してやる……!!!」

「……チッ」

 

次元さんに強い力で押され、よろけて拳銃を離してしまう。もう一度拳銃を奪い取るため近づこうとした私に容赦無く拳銃が放たれる。

 

「……ッ!!!」

 

いったぁ…!!!!!

け、拳銃って1発でこんなに痛いんだぁ。痛すぎて立ち続けることができずアスファルトに倒れる。次元さんは再びニヤリと笑みを浮かべた後、颯爽と小窓から会場に入っていく。え、演技うまぁ……。次元さんを見送り会場内に入ったことを確認して、意識がある内に腰部分のポケットから携帯を取り出し119を震える手で押す。足音聞こえるから銃声が聞こえて誰か来てくれているみたいだ。

 

『東都消防庁です。火事ですか、救急ですか』

「……ふぅ、……ふぅ、」

『大丈夫ですか?何がありましたか?』

「じゅうで、うたれて……」

 

あ、やばい、いけるかと思ったけどダメだ。ルパンさんあとはたのんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……いきてる

 

うおおお生きてる。次元さんすごい。流石世界一のガンマンだ。

 

「なーす、こーる…」

 

右手近くにあったナースコールを押すとすぐにお医者さんと看護師さんが入ってきたけれど、意識確認や記憶障害が無いか確認された後またすぐに病室から出て行ってしまう。

あの後どうなったのかな。盗一さん助かったかな。それにしてもお腹いたーい。痛み止め投与してるってお医者さん言ってたけど全然いたーい。お腹痛いから体起き上がれないし、誰も来ないから暇だし。というか今何日の何時なんだ。

 

「誉!!!!!」

「ままぁ」

 

ものすごい勢いで病室の引き戸が開け放たれる。予想通り母だった。遠くから看護師さんの、走らないでください!!という声が聞こえながら少しだけ指を動かし手を振ったようにする。母はだいぶやつれた様子だ。

 

「頑張ったな」

「ん、どうなった」

「盗一は無事だ」

「よかったぁ…」

「あぁ。まず銃声が聞こえたスタッフがお前を見つけた。誉が病院に運ばれたのと入れ違いに警察が到着し、安全のためマジックショーは中止。私や優作はお前の親族として事情聴取されたが簡単なもので安全が確認されるまで主催である盗一達とともに警護されていた。その間に犯人は逃走、その後確保されている。お前が撃たれた拳銃も見つかっているそうだ」

 

だいたい計画通りに運んでる……。

 

「わかった」

「ちなみに今日は誉が撃たれてから、1週間後の午後三時だ」

「ごめんねぇ」

「覚悟の上だったよ」

 

母が優しく手を握ってくれる。母の手のぬくもりでまた寝てしまい、起きると翌日の朝になっていた。

そこから一週間半は母とお医者さんと看護師さんしか会えない日が続き、傷の治りと体調からあと1か月は入院、退院後3ヶ月は車椅子生活になると言われた。実質4ヶ月は車椅子生活だ。学校も始まっているが、オンライン授業なんて普及していないから病室では黙々と自習するしかない。個室だから喋り相手もいないし勉強で時間を潰すしかない。家族以外の面会が今日から解禁されるらしく盗一さんの登場を今か今かと心待ちにしている。ぶん殴らないとね。

 

「誉、来たぞ」

 

引き戸越しに母の声がしたため机に置いたままにしていた教材を片付ける。

 

「はーい」

「ほ、ほーちゃん……」

「やっほー有希ちゃん。新くんと優作さんも久しぶり」

「っ、うぅぅぅぅぅぅぅ……!!!!」

 

有希ちゃんが歩きながら大号泣している。器用だなあ。

 

「よかったぁ、いきてるぅ……」

「びっくりしたよね、ごめんね心配かけて」

「本当よぉ、生きた心地がしなかったわぁ…」

「痛かっただろう。よく頑張ったね」

「うん、めっちゃ痛かった」

「代わってあげたいよ」

 

優作さんに親指で目元を撫でられる。ご心配をおかけしてしまいすみません。

 

「そういえば盗一さん達は?一緒に来なかったんだ」

「兄さん達はまだ警護対象のようでね、自宅軟禁の状態さ」

「盗一を狙っていた奴らは全て逮捕されたようだが、念のためらしい。もう2,3日すれば面会に来るそうだ」

「はぇぇ…」

 

話していると大号泣していた有希ちゃんがさらに泣き始め、それを宥めながら優作さんがいつの間にかリンゴを切ってくれていたのでもぐもぐ食べている。この間新くんは全く喋っていない。怒ってるよね、拳銃持った相手に掴みかかるとか無謀でしかないもんね。呆れちゃうよなあ。

 

「新くん、ごめんね。私が危ない事するなって言ってたのに自分がケガしてたら世話ないよね」

「……ちがう」

「違う?何が?」

「そんなりゆうでおこってるんじゃねぇ!!ほーちゃんがしぬかもしれないときにおれ、げーむしてた。おれがいっしょにいってれば、ほーちゃん、ひっく…、けがしなかったかもなのに……!!」

 

ち、違うんだよぉ。私が自作自演しただけで新くんは何も悪くないんだよぉ!

 

「快斗君も同じ事を言っていたよ」

「そっかぁ。ありがとう新くん、その気持ちだけで十分だよ。でも新くんや快斗くんが無事なことが一番嬉しいんだよ」

「ん…」

 

これは納得してないな。でも吐き出したためかいつも通りの新くんに戻ったからよしとする。

母はいつものことながら優作さん達も面会時間ギリギリまでいてくれた。夜になると一気に静かになって暇になる。

 

コンコン

「!」

 

びっくりした……。眠れずベッドの中でもぞもぞしていたが、突然ドアがノックされ驚く。時計を見るともう21時過ぎている。看護師さんなわけないし誰だ?。怖いから無視して寝よ。

 

コンコン

 

コンコン

 

コンコン

 

ずっとノックされてる…。も、もしかしてオバケ!?看護師さんが夜勤のときたまに見るって言ってたし……。怖すぎて布団を頭から被って耐える。早くどっか行ってよ……!

 

「おいおい、来てやったのに無視はねぇだろ?」

 

布団の外からルパンさんの声が聞こえてきた。オバケが化けているかもしれないけれど、気になって布団から顔を出す。

 

「…ほ、ほんとにルパンさんだぁ」

「おう、ルパンさんだぜ?」

 

オバケだと思っていた人はルパンさんだった。でもいつの間に中に入ってきてたんだろう。大泥棒は物音も出さずに部屋に入るなんて朝飯前か。

 

布団から出て起き上がる。

 

「面会時間とっくに過ぎてるよ」

「泥棒はそんなもん守りませーん。具合はどうだ?」

「お医者さんは経過は順調って言ってた。まだ歩くと痛いから当分は車椅子生活。でも銃弾が運よく太い神経が外れてたから後遺症の心配は無いってさ」

「次元に感謝しろよ~?」

「うん、次元さんってやっぱりすごいんだね」

 

愛銃じゃないのにこんな芸当ができるなんて流石すぎる。

 

「お前さんホントに次元が好きねぇ」

「ルパン一味はみんな好きだよ。でも推しは次元さん」

 

イケオジ感半端ないから。

 

「オシ?今時のJKはおじさんにはわかんねぇな」

 

そっか、まだ推しの概念がこの世界には無いのか。でも推し見つけると世界が変わるしおすすめだよ?……って、ルパンさんがこんな世間話するために態々来たわけないでしょ!お金渡さないとでしょ!

 

「ルパンさん、お、お代?報酬?はいくらですか!?」

「ぬぁに言ってんだ、金は要らねぇよ」

「そんな!ダメです!」

「つってもなぁ」

「端金は受け取らないってこと…?」

「お子ちゃまにせびるより盗んだ方が手っ取り早いわな」

「そっかぁ…」

 

せっかくお年玉貯金の出番だと思ったのに……。

 

「次の依頼では請求してやるよ」

「!、うん!でもルパンさんに依頼することなんてあるかな?」

「さぁな」

 

次の依頼までには私の貯金が1億円になってるはず!がんばって貯める!

 

「んじゃ俺様は帰るぜ」

「……本当に何しに来たの?」

「見舞いだよ、見舞い。じゃーな」

「うん、またね」

 

手を振ってルパンさんを見送る。普通に帰っていくんだ。アデューとか言いながら窓から飛び降りたりしないんだね。

 

「ん?なんだこれ?」

 

枕元に小さい紙が置いてあった。

 

「白紙だ」

 

裏面には何か書かれているかもと思い裏返すと、ルパンさんがデフォルメされた似顔絵とルパン参上の文字が書かれていた。

こ、これ、今絶対ルパン三世のテーマ流れてる!Lupin the third~♪って流れてるよ!

 

「ラ、ラミネート加工してファイリングしなきゃ!!」

 

早く家に帰りたい…!このままでは折れ曲がって大変なことになってしまう…!家宝もんだよ!その日は興奮して眠れなかった。眠れるわけがない。

 




お読みいただきありがとうございました~。
今回はルパン三世を登場させてみたんですが、キャラが掴めてなさすぎる。

原作ではで黒羽盗一を死亡に見せかけて姿をくらませていましたが、私的には黒羽家で仲良く過ごすのも悪くないんじゃないかなと思ったので今回のような感じに書かせていただきました。
あと工藤家と黒羽家の絡みを見たいじゃないですか!?私だけですか!?違いますよね!?

誉の高校時代を原作に照らし合わせるとあまり目立ったイベントが無さそうなので次回は結構時の流れを進めようと思います。

皆さん、寒くなってきたので風邪に負けずに過ごしましょうね!!


追記12/9
誤字報告を確認次第修正してはいますが、気づいた方は遠慮なく教えていただけると嬉しいです。
感想や評価、お気に入りも励みになっています。皆さんありがとうございます。
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