【完結】ゼーンゼン・ツラクナイツ   作:タサオカ/@tasaoka1

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10話 シュウカツナイツ④

 

「ぬわあああん、疲れたもおおおおおん」

「良ぉお~~し!よしよしよしよしよしよしよしよし」

 

ロドス艦内の割り当てられた部屋に俺達は居た。

彼女に飴ちゃんは与えられなかったが、摩擦熱が発生する程度に撫でては褒めまくっていた。

彼女はいつもの旅装備じゃなく、ロドスが支給したであろう薄手の患者服を着ていた。

それはそれで素敵だったが、今は俺の面接の結果より、彼女の体が心配だった。

薄手の患者服越しに伝わってくる冷たい硬さを考えないようにもしたかった。

ロドスに来たし、それに抑制剤もずっと打ってきた、ならば、きっと大丈夫なはずだ。

彼女のサーベイランスマシンを見つめながら、俺はロドスを信じた。

 

現在のロドスには居ないドクター、主人公が目覚める時が近いとも聞いている。

彼女は詳しくはあまり話したがらなかったから、以降のことを俺は聞いていない。

だが主人公が目覚めるとなれば、紆余曲折を経て、鉱石病の治療薬だってなんとかなるはずだ。

ソシャゲのストーリーというものは基本、打ち切りにならない限りは大団円だ。

俺の好きだったメディアミックスソシャゲは打ち切りによって、主人公を救うためにパートナーの妖精が潰されて死んだが───。

 

いやアークナイツは人気作だと言うし、そういったメタ的な視点でも安心できる。

それに恥ずかしいが、俺と添い遂げ、生きてくれると彼女はあの時に約束してくれたのだ。

生きるのを諦めていないから、こうして診察を受けてくれている。

そうで、あるはずだ。

 

ただ、今は本当に心と体が共に疲れているであろう彼女を労いたかった。

自分の体を蝕む病状の進行を直視するのは、きっとツライからだ。

医療知識のない俺が出来ることは、彼女を目一杯ハグしたりしてセロトニンを生産させることぐらいだ。

 

「スー、本当にお疲れさまでした」

「おうよ、全然大丈夫だったわ、お前はトリコ?」

「俺はトリコじゃありません、こっちもまぁ良かったんじゃないかと思います」

「ほーん? あっ、やっぱ居たよな、CEO」

「ええ、まぁ、はい」

「コーフンしたか?」

「まっさかぁ……ちょ、股間に手を伸ばさんでください、人事部に通報しますよ、ステイ! というかあんな小さな娘だったんですね」

「あえてネタバレしなかったからな、たまげただろ」

「まぁ某大学の野球部の監督ぐらいには、たまげましたね」

 

名を呼ばれて、面接室にノックして入った時のことだ。

コータスの少女が、人事の人と並んで座っていた。

驚きはしながらも、おおらか(意味深)な会社であるとは一応知っていたので顔には出さなかったと思う。

 

コータスの少女は名乗った、アーミヤ、と。

そこで言葉と記憶が一致して、可愛い耳だなぁと少しだけ思ったのは彼女には内緒だ。

──すっかり彼女のせいで、そっち方面に染まってしまった。

前世での面接とは違い、既に俺の書類や情報が渡っているからか、内面を探るような雑談などが多かった。

正規職員である彼女による紹介ということだし、CEOもスーと面識が当然あるようだった。

自然にスーという共通の話題になり年相応の笑顔を見せたりして役職名とのギャップが凄かった。

中学生社長は現代にもテラにも存在するのである、スゴイな。

本人がそれを望んだのかは、また別の話だろうが。

 

そして俺が何故、彼女と一緒にロドスへと来たのかを語る段になった。

これを切り出した時の彼女の目は、年齢に見合わないような深みを有していて、少しだけ俺は怖く感じた。

それはそれとして、前世の就活マインドが活きたか、スラスラと口から言葉が出る。

心を読まれようと、どうだっていいと思っていた。

ある種の開き直りではあったけれども

 

結局は、それが正直な俺の姿だからである。

ケツな穴確定野郎の首を素手でねじ切ったのも俺だし、彼女の事を愛してるのも、ロドスを信じているのも。

全て、俺だった。

 

『旅の最中、彼女と共に御社の仕事を遂行しました、そのどれもがこの過酷な大地で、人の命を繋げる重要な仕事でした』

『謂れなき差別によって石を投げられようと、例え救うべき患者さんから悪罵されようと、彼女は笑みを絶やさず、しかし慄然とした態度で仕事を遂行していました、私はその一助にしかなれなかったのが歯がゆかった』

『始めは生まれ故郷から連れ出してくれたという恩義でした、ですが、今の私は彼女のように、このロドスでの仕事に挑みたいと思い、ここまで来ました』

『それに、この会社がきっと大地の病状の進行を遅らせるだろうと、確信しているからです、彼女がロドス製の抑制剤に助けられているのを、旅の間中、傍でずっと見てきましたから』

 

アーミヤさん(畏怖敬称)は頷いて、更に幾つかの質問を重ねて、俺は礼とともにシメヤカに退出。

以上が、俺の初面接だった。

 

「詰まり詰まりなところもありましたけど、概ねそんな具合でしたね」

「お~ええやん、というかそんな風に見てたんだな私のこと……あの制服も、安心して君に譲ってやれそうだな……」

「アレですか?」

 

俺が目覚めるきっかけになった、万国旗制服の事だろう。

あれは派手派手で、一人国連ビル前のようでカッコいいっちゃカッコいいが。

 

「俺じゃあ袖に手を通すこともできませんよ、スー」

「ばーか、本体はパッチの方よ、手作りなんだぜ、私が"どうにかなったら"君が引き継いで、よければ同じ迷い子を連れてくるのさ」

「……」

「そんな顔すんなよ、ずっと一緒に居てやるから……」

 

慰めるように身を寄せる彼女に、不意に前々から思っていたことを言おうと思った。

 

「もしこのままロドスに就職できて、もっと昇進して稼げるようになったら……養子をもらいませんか、スー」

「へ?」

「何処かの孤児でもいい、ロドスにだって行く宛のない子どもたちがいましたから……なので養子を、俺は……」

「どうせ爆発して死ぬのに意味ないって」

「……テラでサム八語録は洒落にならないのでNG」

「……あーわり、ちょっとライン越えてたな、私は、さ……君と二人だけの時間が出来る限り欲しいから……」

「すいません、俺、自分勝手で……でも、スーが散体したら嫌です……そんなの考えたくないんです、だから、何か、何かが欲しくて、駄目だ、自分でも何が言いたいのかわからないです、すいません……」

 

 

 

 

彼女は、おめぇもサム八語録サラッと使ってるじゃねえかとツッコもうかと思ったが、自らの身体を抱く手が僅かに震えていることに気付いた。

少年がここまで感情を顕にして来ることは中々になかったからこそ、彼女も少し驚いていた。

それで自らの胸の中にあった、過去の僅かな心残りが痛みを発して、似合わない言葉が出てしまったのだろう。

そうして珍しく、小さなコータスは黙って、悲しんでいる愛おしい男の抱擁に自らの身を任せてあげた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

使い古された改造制服  1個所持

手を加えられた、ロドス・アイランド旧式制服。

誰も知らないパッチが沢山ついている。

この小さな服に、袖を通す者はもういない。

宿舎に飾れば、雰囲気を良くする






















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