【完結】ゼーンゼン・ツラクナイツ   作:タサオカ/@tasaoka1

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12話 トメラレナイツ

 

ホット・エバミルクの入ったカップから湯気が昇っている。

彼女はそれを両手で持ちながら飲んで、呟いた。

 

「適正、ねぇ」

 

白いヒゲがついてる。

あざとすぎるだろ。計算か、それとも天然か。緊張感あるよな。

だがあえて俺は指摘しない、可愛かったのでOKだから。

そして、この危うい均衡によって存在するヒゲを守護りたいとも思った。

何でもないような顔で、新人オペレーターガイドを片手に俺は答えた。

 

「はい」

「見た感じ、突っ込んでヤるか、突っ込まれる前にヤる、だったもんな」

「なんか響きがいやらしくありません?」

「イヤラシイっていうやつがイヤラシイんですー」

 

まぁ……"選択する自由"があるってのは良いことだぜ。

そう言って、彼女は考え込んでくれた。

 

こうして二人で、朝の食堂で頭を悩ませているのにも理由がある。

 

彼女はお昼前には医療検査で、俺はシフトの関係で初講習が待ち構えていること。

そして俺の身体能力テストの結果に起因する、贅沢な悩みがあった。

昨日は面接学力テストを熟して、その鬱憤を晴らすように体を動かしたのだ。

 

そんな試験の結果を見て、監督してくれたオペレーターのサンドウォッシュさんが

『キミ、重装オペレーターに興味ないか?!今ならエースさんに指導してもらえるぞ!』と、

キラキラしたお目々で言ったのだった。

エースさんて誰や?とか自衛隊の地連みたいだぁと思いつつも、まだ始めたばっかりで色々あるので考えさせてくだせぇと田舎の少年らしく意訳して凌いだ。

 

その後も様々な測定、持ってきた武器の取り扱い、弓を撃つのを見てもらったりだとか。

更に鞭を使ってくるドーベルマンという人と模擬戦みたいなことまでやった。

やはりロドスには女傑が多いという確信を持つぐらいには、初めて見る武器に翻弄された。

前世通して武器としての鞭なんてドラクエの中ぐらいでしか触れてこなかったのだ。

普段は教官職をやっているという彼女からは模擬戦後に色々と話を聞いた。

そうして、オペレーターにも色々な道があることを提示されたのであった。

 

君がどんな選択肢を選ぼうと我々には対応できる力がある、と。

 

最後に、そう言われた。

こんな感じの採用面接(ガチ)が本格的すぎて、少し寝不足かつ気疲れした。

一日目から現場にはいるバイト君みたいな気持ちである、人手不足なのだろうか?

まぁメタ的に考えてみると、今はゲーム開始前の初期状態みたいなものなのだろう。

フェリーンの手も借りたいぐらいだろうしな。

よくあるチュートリアル初ガチャもやってないだろうし、ドクターが来たら更に賑やかになるのだろうか

暗殺者とか、貴族とか、マフィアだとか可愛い女の子が9割ぐらいなんだろうなぁ。

それはそれとしてオペレーターには普通のおじさんお兄さんも多い。

前世のお姉さん方にも優しいソシャゲの可能性もあった。

何にせよ、この際だし、色んな人と触れ合ってみたいものである。

 

それにしても、このテラの人々というのは前世の人類より格段に強い。

そこらの女の子でも結構なパワーを持ってたりするのだから侮れず、不思議だ。

俺もこの体で前世に行ったら、あの◯谷選手と肩を並べて戦えそうなぐらいである。

オリンピックのメダルを取るのもまず夢ではないと思うぐらいには凄まじいものだ。

 

だが逆を言えば打ち倒すべきであろうこの世界の敵も、より強力というわけだから恐ろしい話、身体能力のハイパーインフレーションだ。

……この会社が戦ってるものを考えると、倒せる実体があればよりやりやすいだろうが。

悲しいね、バナージ。

 

「そーいや、前に出てって戦うの"楽しい"んだろ?」

「それはそうですね、でも弓も好きですよ、石や槍や斧を投げるのも好きです、獲物に命中したときとか快感です」

「前々から思ってたが、君ってなんつーか転生者らしからぬメンタルだよなそこら辺」

「うーん、クソ村がクソ村だったんで、自分をアップデートか……あるいは適応したんだと思います、戦いが好きなように、あるいはソフトでなくハードの影響もあるかもと思うんですよね」

 

コンコンと音がする、俺が太ももを軽く叩いた音だった。

 

身体検査をした人がちょっと驚いてたのが面白かった。

まぁ驚くか、俺も大きくなるにつれて広がる甲殻に驚いてたモンニ。

しっかし、なんだろうなぁこれ。

自分の種族がわからないというのも、ちょっと怖い話だ。

自身の血液型がわからない程度には、釈然としない気持ちである。

旅先ではこの耳を見てください、あっしはフェリーン(大嘘)です、で通してきたけど。

『下半身だけに甲殻があるフェリーン?など見たことがない』

と、担当となった医療部門の赤目で白い髪のお姉さんが言っていた。

ちょっと血をチョーダイ!と言われたので喜んで提供した。

 

ロドスで上司の命令は絶対なのだ。(脊髄反射)

 

彼女もそんな種族は原作にいなかったな……と首捻っていた。

鵺とかドラゴンとかワイバーンなど架空生物人もいると言うので、テラの生態系はガバガバである。

絶対先史文明とかが存在して遺伝子弄くってんだろと勘ぐってる。

ちょこちょこ前世と被るワードがあるだけにそう思うのだ。

これって猿の惑星ならぬ源石の惑星じゃねぇよな……?という疑念が拭えない。

彼女も事情を知ってそうだが、若干SAN値が減りそうなのでまだ聞いていなかった。

 

「何かのチートかもな」

 

彼女がぼそっと言う、もう転生というとびきりおかしな状況にあるんだからと。

変なものが付随していてもメリットが有るなら俺も喜んで受け入れようと思う。

 

「この身体能力的にありえるかもしれませんね」

「私もチート欲しかったかな~」

「何いってんですか、スーにはチート級の可愛さあるじゃないですか」

「君さ~!!ホントさ!朝から体温上がるわ!」

「事実を伝えただけですけど」

 

朝からお腹いっぱいだよ~と後ろでジェスチャーするブレイズさんや他のオペレーターさんがたがニヤニヤして去っていくので彼女と一緒に手を振る。

おさわがせしました。

 

「たくよお、まあでも取り敢えずロドスには色んな奴がいるから見てもらいなよ」

「そうですね、暗殺者とか?」

「取り敢えずそのS.W.E.E.Pされそうな思考から離れることだな、エリートオペレーターの人たちとか凄いぞ」

「フムン」

 

それから彼女が話した、ロドス・エリートオペレーター列伝は面白かった

アウトキャストという愉快なサンクタおばあちゃんによる華麗なる銃撃だの、スカウトという人の"スネーク"な潜入工作などなど。

その話の中で、昨日聞いたエースさんという人の正体がやっと誰かわかった。

エリートオブエリートの精神までイケおじらしい、実物を見てみたいから昨日の提案を蹴ったことがちょっと後悔した。

 

PIPIっと音が鳴る。

彼女の腕時計からだった、もうそんな時間か。

 

「おっそろそろ時間だな」

「いってらっしゃい、スー」

「デッデデデデ」

「カーン!」

「カーンが入っとるやん!(歓喜)」

 

そのまま、俺は彼女の小さな後ろ姿を見送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の、外も暗くなった頃だ。

 

久々にディスプレイを長く見て、乾燥した目元を揉みながら部屋に帰る。

気配、真っ暗になった俺の部屋のベッドから"おかえり"の声が聞こえてきた。

ただいまと電気ぐらい点けなさいと、母親みたいな言葉が俺の口から出てくる。

スイッチに手を伸ばそうとすると、電気つけないで、と返ってきた。

制服を脱いでベッドに座ると、彼女の手が暗闇から伸びてくるのが感触でわかった。

ひたすらに静かだった、そして薬の匂いが、少しだけ、する。

 

「気が済むまでこうさせてくれる?」

「ロドスで上司の命令は絶対ですから、無論です」

 

様子を見るためにわざと堅い口調で言うと、拗ねたように彼女は言った。

 

「あなたの、かのじょとして言ってるの」

 

俺は黙って頷いて、そのままにしてあげた。

何時間も、ただ黙り、二人の感触だけの時間を過ごすために、暗闇の中で。

そしてどちらかのお腹が鳴って、まだありつけるかなと食堂へ、向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女の目元が腫れていたことを、俺は知っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女があの時、何を考えていたかを、何故そんな事をしたのかを。

俺は彼女に向き合って、問いただすべきだったのだ。

泣いて、土下座して、惨めったらしく同情を引いてでも、彼女の手を握るべきだった。

後悔をしても、もう何もかもが遅かった。

 

1096年12月が、ドクター救出作戦が、刻々と近づきつつある。

そんな、ある日の出来事だった。






















遅れて申し訳ありません。
主人公の種族はある架空の生物ナイツ
わかった人は凄いナイツ
良ければ評価していただけるとウレシイナイツ
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