【完結】ゼーンゼン・ツラクナイツ   作:タサオカ/@tasaoka1

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14話 メイメイナイツ

ロドス・アイランドに就職して、あっという間に1ヶ月が経っていた。

 

衣食住が揃ってるロドス艦内は、まるで実家のような安心感がある。

彼女との旅は苦しくも楽しかったが、こちらもまた得難い環境だと思う。

まあ一番は、暇な時間は彼女と一緒に同じ部屋でぬくぬくと過ごせることだが。

 

次点として飯が安定して美味しいのが、本当にありがたいことですよねと思った。

病院食はあまり美味しくないという風評は前世通してあるが、病院船でもあるロドスでは例外らしい。

シシカバブやケバブサンドやらが普通にあって、しかもそれらが美味かったのである。

テラ=猿の惑星説への疑念を俺はますます深めた事は言うまでもない。(地味にカレーもあった)

 

今のところ、変な大失敗を起こさず、艦内での生活に馴染めているとは思う。

 

だが、まだ自身がどんなオペレーターになりたいかを俺は決められてはいなかった。

自分の道がわからない、そんなありふれた悩みではある。

自分探しに今は亡きインドへ旅行に行こうか迷うほどではある。

それでもエースさんの隊の訓練にも、何とかついていけるようになっていた。

身体的には、それなりにやっていけてる自信はある。

努力ももちろんしているが、チート様々であった。

地獄の走り込みで膝が笑う事はなくなったのは嬉しい進歩ではあったけど。

まぁ、模擬戦では隊員の方々には普通に負けてばっかりだった。

 

それと、たまにケルシー先生が行う勉強会には折を見て、俺も参加させてもらってる。

彼女の授業は慣れていると言うか、年季の入った感じもあった。

案外、昔は教師とかやってた人かもしれないなと思ったりもした。

変な地雷を踏みそうだから、経歴を聞く勇気はないけれども。

 

勉強会では久々にレッドさんと顔を合わせられたり、ポプカルさんやイフリータさんら(経歴的に彼女らのほうが先輩である)とは知り合いになったりもした。

この子らも感染者だった、未来をも蝕むこのクソ病が早く駆逐されてほしいと祈りながら授業を受ける事になる。

初授業後には、イフリータの姉御からは『ノッポ』というありがたいあだ名を頂戴する。

後日の勉強会で彼女を迎えに来たであろう白衣を着た眼鏡のリーベリお姉さん(恐らく保護者)から軽く謝られたので、

むしろ、彼女たちにこっちが変に気を使わせていないのかとノッポはペコペコした。

 

実際、身長は無駄に高いが、その分パワーがあるし、気に入ってもいるのだ。

彼女を抱き上げることも楽々だし、その点ではこの世界に感謝している。

 

そんなこんなで俺は、ある程度、現状に満足していた。

今の今まで。

 

 

 

俺は、ある1枚の紙の前で選択を迫られていた。

 

 

 

その紙は人事部発、俺宛。

それは恐らく催促の意味を込めてケバケバした色の封筒に収められていた。

まるで前世のネットで見た税金の督促状みたいだぁ……。

俺もすっかり忘れていた、ノッポやら本名やらを使っている内にこの事項が忘却の彼方だったのである。

講座や授業、そして体力を錬成している間に忘れていたとも言う。

 

こちらを覗き込んだ彼女は呆れたような声を出している。

 

「ウッソだろお前!? オペレーターネームまだ決めてなかったんか!?」

「……だって! めっちゃ迷いません?!」

「それはそう、でもお前候補がひどすぎるだろ!?」

「ああ、ちょ、中身を見ないでください」

 

テーブルの上にあったメモ帳がひったくられる。

字が汚いのでめちゃ恥ずかしくもあるのだ。

座学の甲斐あって、そこそこ書けるようにはなってきたけれども。

 

「ノッポはいいとして、ガンダムとゴジラはないって! それに版権的に禁止スよね」

「異世界はルール無用だろ、それにこの世界には◯ンダイも◯宝もないんですよ!おまけにカッコいいじゃないですか?!」

「私が嫌なの! 君、もしかして学校の給食中とかにアニソンやボカロとか流すタイプのオタクだったのか? だとしたら全裸でロドス甲板を兎跳びしてもらうことになるが……」

「い、いや、流してませんけど……!」

 

何らかの、ほの暗き闇を宿した彼女の瞳にいいしれぬ前世の影を俺は見た気がする!

だが即座に否定する、給食中は強制でクラシックが流れていたからな。

ノット・ギルティ、俺に罪なし。

 

「ひとまず踏みとどまれ、同僚がゴジラさんとか、ガンダムさんとか呼んでくるんやぞ…!」

「別にいいじゃないですか、ぐぬぬ……」

「何がぐぬぬ……だ! チート能力はあってもネーミングセンスはそうじゃなかったらしいな!」

地獄耳(Bigears)さんがうるさいですね……」

「私のは二つ名みたいなもんだからいいんだよ!はっ倒すぞ!」

 

しばらくギャーギャーとじゃれ合ってはあーでもないこーでもないと案を出し合った。

ドッゴーラ、リオグランデ、テキサス、マンドラゴラ。

俺の出した案の全てが、MSは諦めろ!川だろ川!被り!これも被り、しかも敵!と却下されてしまう。

なんでや!全部カッコいいからいいやろ!と言っても梨の礫ってやつだ。

煮詰まってきた所で、彼女が手をぱんぱんと叩いて、宣言する。

 

「さて、真面目に考えるぞ」

「えっまだやるんですか、俺もうノッポでいいかなって思ってたんですけど」

「そーれーも、却下だ」

「えー」

 

取り敢えず、彼女が言うには、彼氏がガンダムとかゴジラとか言われるのはヤダー!という結論であった。

なら仕方ないかぁ!よろしくなぁ!ということになる、なるのだ。

全ては彼女が一番なのである。そうなると問題は、じゃあなんと呼ぶかである。

振り出しに戻ってしまった。

 

「私が名付ける!」

 

マ?と言うまでもなく、彼女は発表した。

 

「タイヨウってのはどうよ?」

「それ……それって……」

 

俺の前世の名前である、太陽、そのままだ。

両親は太陽みたいに明るくなってほしいと、そのまんまの意味でつけられた名前だ。

子供の頃は感じの画数が多くて嫌いだった事もある。

ジョジョを読んでた友達からはザ・サンという渾名をもらいそうになったとか色々思い出深い。

別に嫌ではないんだけど、何故という気持ちもある。

 

「駄目~?」

「いいですけどぉ!」

「まぁ嫌とは言えないのはわかりきってるんやけどなブヘヘ……」

 

クッ……俺の単純思考がバレてやがる……。

 

「説明すると呼びやすさもあると思うし、前世の名前だったら親しみとか呼ばれても反応しやすいとかあると思うし、私も恥ずかしくないんだよね」

 

思ったよりも理由があった、既に俺は白旗を上げている。

それで行きましょうと言おうとしたら、彼女が頬を少し赤らめながら告げた。

 

「それに……君の前世も含めて、私だって好きだから、さ……」

 

脳が焼かれた俺はこうして無条件降伏を選んだ。

人事部の人に平謝りしながら、無事、俺のオペレーターネームは決まったのである。

 

 

 

『タイヨウ』と。

 

 

 

 

 

 

 

 

とある街の路地裏。

回収機を待ちながら、俺はブレイズさんと話していた。

 

 

初任務によって、エリートオペレーターである彼女のお供として降下。

敵はマフィアであったが、先に空中からMGS3並のダイブを行ったブレイズさんがやすやすと封鎖線を突破。

俺はパイロットさんの普通に降りてくれたらなぁ!という愚痴を聞きながら、救助要請を出していた現地のロドスのオペレーターと合流。

 

初任務だから緊張はしていたものの、終始ブレイズさんが自前のチェーンソーで猛威を振るった。

俺は何人かのマフィアをボコったぐらいで、ほとんど置物と連絡要員の間を行ったり来たりである。

そんなこんなで無事、敵対勢力の無力化を達成したのである。

その後、回収機を待つ段になって、時間が空いた所でブレイズさんが話しかけてきた。

命名が遅れていたのは周知の事実だったらしく、どうしてタイヨウに決まったかが気になってはいたらしい。

前世絡みのところをボカしながら、俺はオペレーターネームの話をしていたのである。

 

「へ~それでタイヨウになったんだ」

「そうですね、まぁ、はい」

「フフ、Bigearsのこと好きすぎでしょ」

「否定はできませんね!」

「じゃあこれから改めてよろしくね、タイヨウくん」

 

回収機のエンジン音は近づいてきている。

 

1096年10月、俺の初任務は終わった。

 













彼は、タイヨウと呼ばれる度に彼女を思い出します。
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