【完結】ゼーンゼン・ツラクナイツ   作:タサオカ/@tasaoka1

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7話 シュウカツナイツ

夢を見た。

 

非常に残忍な、悪夢に類する夢であった。

しかし、同時に恵まれた夢でもある。

 

その中で、俺の視界の中から伸びた手が人を殺していた。

 

手は、それが生命活動を停止した物体となっても、滅多打ちにしていたのであった。

物体は、村のリーダーであった男が元になっていた。

獣のような耳から中身が出ていて、彼はソレを取り出すことに夢中になりかけていた。

 

物体は、幾つかの日本の法を犯していた。

 

罪状は複数件の強盗殺人、傷害、強制性交等罪、詐欺罪あたりだろうか。 

それは、はっきり言ってどうでもいい。

 

自らの正当性を、あるいは心を守ろうとした少年に、この世界の法を知らない俺の記憶が囁いた、異世界由来の知恵だった。

少年は、自分は恵まれている方だと、この世界には存在しないアフリカ大陸の少年兵よりは全然辛くないと思い出して、下半身から来る痛みと屈辱によって蹲るしかない夜を慰めていた。

 

しかし少年は確かに恵まれていた、現状を打破できうるカードが、少年の手元にはあったからだ。

後に窺い知ることになる彼女のように、苦しみを必要以上に背負ってしまうことがなかった。

狩りを通じて、彼はその牙を研いでいったのだ。

 

リーダーは少年がただの子供だと思って、侮っていて、正直に言えば助かった。

俺であり俺じゃない少年は、ズタズタになった奴の首と胴体をそのまま素手でねじ切った。

垂れ下がる皮膚からぼたぼた血を流すソレを、高く掲げる。

少年は、村の他の男たちに変な訛りのある歪な文法の言葉を聞かせた。

 

「逆らえ、こうなりたくば」

 

体は発展途上だったが、村の誰よりも強い自信があったから。

従わなければ全員を殺すという気持ちだけが、あの時あった。

むしろそれを望んでいたまであった、しかし、同時に疲れてもいた。

 

中途半端な正義感と法を思い出して、殺される前に相手を殺そうと思ったのがきっかけだった。

村の他の男達は少年に従うようになり、その寝首をかこうと思ったものは尽く、逆に生きたまま首をねじ切られた。

少年を頂点とする、恐怖による支配体制がこうして固定化していった。

 

そして、それ以来、村から出た旅人や独立商人たちが行方不明になることはなくなった。

おまけに、少年が食生活"以外"の理由で痔になる事はなくなったという。

 

 

めでたし、めでたし。

 

 

 

 

 

 

 

 

なんでそんな夢を見たかといえば、いよいよロドスが近くなってきていたからだった。

 

そも彼女が言っていたのである、CEOは心が読めるんよね、ウェヒヒ、と。

 

早く言ってほしかったが、考えてみると過去は変わらないのである。

 

それはそれとして、これを理由にロドスに落ちたのなら俺はどうしようかと暫く考えたぐらいである。

逆の立場だったらと考えると、俺が経営者だったら百パーセント落としたい人材であることは確かだった。

CEOとの面接もあるというので、はっきり言えば、ビビっていたのだ。

 

というわけで不安になってたのを普通に彼女に見抜かれた。

何だかんだで人生の大先輩である。

 

「お前さっきから、俺と話そうかチラチラ見てただろ」

 

そっちの大先輩ではないと突っ込むか迷ったが、俺は正直に話した。

 

「はい見てました」

「話したけりゃ聞いてやるよ……! しょうがねぇな(悟空)」

 

彼女はそういう、面倒見が良い所があった。

俺は、また脳みそが焼かれそうだった。

 

かくかく、しかじか。

 

彼女は、俺の過去のことについてはとっくに知ってる。

 

かなり前、意を決して話した時、まぁ、そういうこともあるよねと言ってハグをしてくれた。

そもそも引かれると思っていたので、薄っすらとした恋愛感情を持っていた頃の俺は少し泣いた。

人格統合の結果、自分のやったことだということを、今は飲み込めているが。

それが原因で今回の就職が駄目になり、彼女と離れる事となったら、大人しくあの村で朽ちるべきだったかなと思い始めている。

 

だから結論として彼女と離れることになったらメチャクチャツライと。

女々しくとも、はっきりと、それだけは事実を伝えたかった。

暫く腕を組み考えたあと、彼女はあっけらかんとして言った。

 

「うーん、不確定な未来のこと話すけど、あの会社そういう人がいっぱい集まってるし案外大丈夫だと思うよ」

「ええ……」

「元暗殺者って人が雇われでいっぱいいることになるから、人間性の見本市(by某エリートフェリーン)って感じだね」

「ええっ……そんなにいるんですか暗殺者」

 

ひーふーみーと、小さくて可憐な指を折って数える。

あれ、結構多いな、大丈夫かロドス。

ソシャゲだからそういうこともあるか、ロドス。

 

「片手の指の数以上はいたから大丈夫かなって、最悪私がゴリ押しするから」

「流石にそこまで迷惑は……」

「は?(威圧)迷惑なんてないんだが? 君、今の自分の立場わかってる?」

「えーと……職とかも斡旋してもらってるし……ヒモ……?」

 

ブチっという音が聞こえた気がした。

 

「このクソボケがぁ! 臨時職員として私の下で立派にヤッとるだろうが! 矜持を持て!矜持を~~~!!!」

 

そんなに、ってなる俺は逆に慌てた。

だって現状自分の彼女に村の外へ連れ出してもらい、仕事まで斡旋してもらって、

今度は就職の手伝いまでさせようってんだから、そのものじゃないかと思っていたのだ。

噴火は暫く続いた後、少し落ち着き、鍋を弱火で煮込む様に彼女は言った

 

「あのなぁ、少しぐらい自信もてよなぁ! 私としては親に恋人を紹介しに行くぐらいの気持ちなんだから」

「えっ、親ですか」

「親、そう言っても変わりない人だよ」

 

マズったなと思った、己の自己肯定感のなさが裏目に出た感じだ。

正直に言って、俺は対応を見誤っていたのだった。

 

「まぁいい、とにかくロドスで採用試験を受けてもらうからな覚悟しとけ」

「ウッス……」

「命令は絶対、これロドスの鉄則な」

 

ロドスがドンドンヤバイ組織に思えて来るんですけど、それは大丈夫なんですかね……。

俺は大地に正座をしながら、深々と頭を下げて了承の意を伝えた。

 


























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