【完結】ゼーンゼン・ツラクナイツ 作:タサオカ/@tasaoka1
その二人が、ロドス・アイランドを訪れた時の事だ。
採用されて日の浅いの職員たちは、彼らを意図せずとも奇異の瞳で見ることになった。
一人は、色とりどりの、見たこともないパッチを付けた改造制服を深く着込んでいた。
恐らく感染者の、片耳が大きく欠けたコータスの少女であった。
その姿に、この企業でいちばん有名なコータスを連想する者は少ない。
彼女はより小さく、その髪と耳が白く染まっていたからである。
もう一人は、ヘルメット、胸甲、篭手を身につけ、腰に分厚い山刀を差し、背中には槍と弓含む大荷物を背負い込んでいる。
どこかの戦争に行って帰ってきたような重武装と、それに見合う逞しい体躯を持っていた。
幾つかの傷を負った、フェリーンに見えなくもない、未だ幼さと眉間の皺が共存する顔立ちの少年である。
クセ強人員が極めて多いロドス側から見ても、この二人の組み合わせはかなり目立った。
まず入艦処理の間、この二人が誰にも聞き取れない言語で、仲の良い友人のごとくやり取りをするのを職員たちはたっぷりと目撃する羽目になった。
また少年は職員に係る際は、非常に腰が低く、緊張しているのがガチガチに振る舞い、それがまた目立った。
あんまり頭を下げるもので、隣のコータスが少年の腰に回し蹴りを入れていたぐらいだった。
主に受付での書類処理はコータスの少女が行ったが、彼女がベテランの外勤オペレーターであること、少年が臨時雇いの仮職員であるということが判明する。
それがわかると、疑念はさらなる疑念を呼んだ。
この凸凹な二人が、一体どういう関係であるかを娯楽に飢えた職員たちは大いに話題にしたのである。
まさかの親子、あるいは親が再婚した義兄弟、またはまたは恋人同士などなど、ネタには尽きない。
そして彼女を知っていた古株の職員は、盛り上がりにあえて水を差すつもりもなく、口を噤んでいた。
彼女がまだ生きていることに驚き、親しい仲であろう人を連れて、また此処に来れたことを嬉しく思っていたからである。
この場に於いて──特に感染者にとって、死はそう遠い出来事ではなかったから。
試験、それに続く幾つかの入艦と防疫処理のすったもんだの後、俺は初ロドスを五体満足で味わっていた。
だが、メンタルは無傷とはいかなかった。
今の俺は、率直に言えば耐え難し…という気持ちで口にピストルを咥えたくなっている。
書類のやり取りがあることを、俺はすっかり忘れていたのだった。
彼女と折を見て勉強はしているが、この地で使われている文字があまり書けないので、代わりに書いてもらったのは少し、いやかなり恥ずかしかった。
PCやスマホの予測変換に頼り切り、たまに漢字を忘れていたぐらいの語学力だったせいか。
世界も変わって教育も受けないとなると、今の俺はすっかり文盲だった。
あの村であれば力と恐怖が全てだったが、いざピッチリとした外の社会に出てみれば、俺はただの学なしのクソガキである。
ダイレクトにメンタルが出てくる尻尾を丸めていた所、『まあこれから勉強していこうな、名前だけでも書け書け』と真面目に励ましてきてくれるのだから彼女は面倒見が良い。
席に座りながら本気で泣きそうになったぐらいである。
「どしたん? 話聞こうか?^^ うんうん、それは彼女さんが悪いね」
一方で、彼女はあのケルシーさんというスケスケ服な人と会ってからテンションが高い。
ハグしていたのを一瞬だけ目撃した時は、何故か脳が微破壊されて、危うくレッドさんの攻撃を食らいそうになったぐらいだ。
彼女にも彼女の、ロドスでの人間関係があることがわかって、何だか、とても浅ましき気持ちになった。
情けないかな、少し寂しい気持ちがあった。彼女には言えないな、と思う。
それに多分、彼女が前に親とまで言っていた人がきっとケルシーさんなのだろう。
彼女からは、ロドス・アイランドのケルシーさんと紹介を受けたが。
俺はレッド・サンとの戦いを終えて乱れに乱れた息を整え、アイサツと合わせ、体に染み込ませた必殺アーツ『45度お辞儀』を発動させた。
だが、ケルシーさんは少しも驚かず、それどころか目が若干据わっていたのがちょっと怖かった。
彼女が間に取り入ってくれて何とかなったが、生きた心地がしなかった。
「じゃ、私が忘れさせてやるよォ……」
そのまま先っちょだけとでも言うように、久々に胸甲のない服の内側に、あまりにも滑らかに手を差し込んでくるので、周りの目が気になって気が気じゃなくなった。
幸い面接室として指定された場所の廊下は、あんまり職員がいないから助かったが。
それとは別にちょっと言葉で殴り返してやろうとも思った。
「俺まだ何も言ってませんからね!?俺にとって彼女は前世通して貴方ただ一人だけですから」
「ほーん何だよ急に赤面させてくるじゃん?どこで女たらしの技能を磨いた? テラのドン・ファンがよ」
「そんな事してないですってば、大丈夫です、落ち着いてますから」
「マジか~?」
「マジです」
彼女なりに励ましてくれたのだろう、本当にいい人だ。
俺が笑いかけると、彼女はそのまま椅子からペシッと勢いをつけて立ち上がった。
「じゃ~私がいなくても何とかなりそうだな、またメディカルチェックしてくっからよ、頑張れよな面接」
「ええ頑張りますとも、スー、この際、悪いところがあればサーチ&デストロイしちゃいましょうね」
「おっ……そうだな、検査に行きますよイクイク……」
尽きない淫夢語録が少し止まったのは、やはり俺が面接でトチらないか心配だからだろうか。
ぜーんぜん問題ないと俺は態度で示すように背を伸ばして、手を振った。
だが曲がり角で消える前に、彼女は言った。
「あっそうだ、いくらコータスマニアでもCEOに発情したら、チンコもいじゃうから☆」
「ファッ!?」
「……ガチでやるからな、じゃあの」
久々にヒュンとなった。どこがとは言わないでおく。
10/9、夜に書け次第投稿