炎のポケモントレーナー   作:sasori

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第四話 依頼

 

『さあ遂に決勝戦がやってまいりました! 向かい合うは、バッジ未所持ながらも天候操作によるバトルで快進撃を続けるイグニ選手と、耐久力を駆使した危な気のないバトルを披露するシアン選手です!』

 

 イグニは決勝戦の舞台へと上がる。バトルフィールドの周囲は彼が想像していた以上に観客数が多く、歓声が会場全体に響いていた。

 

 ポケモン大会で優勝する意味は、イグニが思っている以上に大きい。ジム戦は所詮個人で完結する戦いであり、バッジという資格以上の意味を持たない。しかし、大きな大会で優勝すれば著名度は比較にならない程高くなる。そうなればスポンサーが付く事も珍しくない。

 

 この大会で優勝すれば、少なくとも同年代のトレーナーではトップレベルだと証明になる。

 

「全力でいくぞロコン」

 

「いけマリル」

 

 二人は互いにボールを投げ、シアンのマリルとイグニのロコンが場に繰り出された。

 

 その瞬間、ロコンの身体に炎の渦が纏われる。

 

『おおっと!? これはパフォーマンスでしょうか、イグニ選手のロコンが場に出た瞬間、炎が渦のように身体に纏われました!』

 

『これは……』

 

 その光景に観客席からは大きな歓声が飛び交う。

 

 イグニはロコンが見せた現象を自然と理解していた。いや、彼にとっては当然というべきか。

 

「っ……魅せるね君。でもこの戦いを勝つのは僕だ」

 

 シアンはイグニを睨むように視線を向ける。そして、戦いが始まった。

 

「マリル『アクアリング』」

 

「ロコン『鬼火』」

 

「なにっ!?」

 

 『アクアリング』の技を出して隙を見せているマリルに、『おにび』が直撃する。

 イグニの完全な読み勝ちだった。これによって、マリルは『アクアリング』による回復が実質的になくなっただけでなく、火傷の状態異常により物理攻撃が半減される。

 

「ならマリル『水鉄砲』」

 

「ロコン『火の粉』」

 

 『水鉄砲』と『火の粉』がぶつかり合い、大半が相殺されるが、押し切ったのは『火の粉』だった。

 

『なんと、『火の粉』が『水鉄砲』に打ち勝つという予想外の結果が起こりました!』

 

『『日照り』状態では、水タイプの技の威力は半減される。この結果は想像出来た事じゃ。じゃがロコン自身の火力が高いのもまた事実』

 

 マリルに『火の粉』が直撃するが、威力は減衰しているため、あまりダメージは受けていない。その様子を見て、試合が長引くと感じたイグニは、次の一手を打つ。

 

「ロコン『金縛り』」

 

「しまった!」

 

 『水鉄砲』を封じられたマリルは、『火の粉』の技を威力そのままで受ける。

 

「くそっ、マリル『転がる』だ!」

 

「ロコン『火の粉』」

 

 マリルは『火の粉』を受けながらも、ロコンに『転がる』を直撃させる。効果抜群だが、マリルが火傷状態なのもあり、ロコンはあまりダメージを受けていなかった。

 

 そのまま、イグニが終始主導権を握ったまま試合は終わる。

 

『マリル戦闘不能! よって、優勝はイグニ選手だ!!』

 

「よくやったロコン」

 

 歓声が響く中、胸に飛びついて来たロコンをイグニは撫でる。

 

『いやあ、なかなか面白い戦いでしたねテッセンさん。イグニ選手は『日照り』による火力特化の戦いだけでなく、補助技を使った上手い戦い方を見せてくれました』

 

『そうじゃな。イグニ選手は初心者離れしておる。とはいえ、シアン選手も悪くなかった。『アクアリング』によるマリルの耐久を活かした戦い方は理に適っておる。もし、火傷状態にならなければ、また違った試合展開になったじゃろう』

 

 その後、表彰式が行われ、イグニは賞金を受け取った。一ヶ月は旅が出来る、なかなか馬鹿にならない金額だ。

 

 イグニは今回の大会に出場して感じた事がある。それはポケモンバトルは意外と戦術が重要だという事だ。一つの戦術しかなければ、対策された時に何も出来ない。

 

 だが、それは()()()()()()()()()()()()()。炎タイプのポケモンの()()()を引き出せば、どんなポケモンであろうと勝てる。イグニが決勝戦の相手のマリルの戦術を潰したのは、ただ単に試合が終わるのに時間がかかりそうだから。

 

 

 表彰式が終わり、そのまま会場を後にするイグニだが、その後ろから誰かが話しかけてくる。

 

「イグニ君、少し待ってくれんかのう」

 

「貴方は……」

 

 イグニに話しかけた人物は、キンセツシティのジムリーダ、テッセンだった。

 

「お主に話がある」

 

 ひとまず、イグニはテッセンの話を聞く事にした。

 

 

「それで話とは?」

 

 連れられた喫茶店で、イグニはテッセンに問いかける。

 

「ふむ……お主ブレイズの孫じゃろう」

 

「っ! どうしてそれを」

 

「やはりそうじゃったか。ブレイズとは古くからの知り合いでのう。実はお主の事を聞いておる。名前までは聞いておらんかったが、異能の事も含めて」

 

「そうですか……」

 

 祖父が自分の異能の事まで話している人物がいるのは意外だった。祖父なりに色々と思う事があったのかもしれない。

 

「お主に頼みたい事がある」

 

 テッセンは本題を切り出す

 

「このキンセツから東に位置する一一八番道路で、岩肌に忽然と洞窟が出現してのう、中を軽く調査した結果、奥は溶岩溜まりと繋がっている事が分かった。話によれば、炎タイプのポケモンの住処となっておる。そこをお主に調査してもらいたいんじゃ」

 

「なるほど。調査完了の目安は?」

 

「大雑把でいいんじゃが、出現するポケモンの調査と、洞窟の地図の作成を頼みたい。加えて、洞窟内に人が立ち入れない場所があればその情報も」

 

「俺に頼むのは、異能の件があるからですか……」

 

 テッセンは頷いた。

 

「報酬は用意してある。キンセツジムのバッジをお主に授けよう」

 

 ジムバッジはジムリーダーに勝つだけが貰える条件ではない。ジムバッジを授けるに値するトレーナーだとジムリーダーが判断すれば、バッジを渡してもいいのだ。

 

 テッセンからすれば、イグニの実力は既に大会で見た通りにある程度証明されている。ジム戦を行っても勝つ事は明白なため、わざわざ時間を消費して、ジム戦を行わなくていいという判断だった。

 

 だが、逆にいえばイグニのメリットが薄いともいえる。

 

「無論、それだけではない。お主にぴったりなポケモンがおってのう、依頼達成の暁にはそのポケモンをお主に託したいと思っておる」

 

 その言葉にイグニは少し考え込む。

 

「……分かりました。その依頼を受けます」

 

 イグニが了承した理由は単純だった。洞窟に出現する炎タイプのポケモンが気になったのだ。もしかしたら、ビクティニの同族がいるかもしれない。そう考えれば断る理由などなかった。

 

「すまないのう。調査員が簡易的に作成した地図を渡しておこう」

 

 イグニはテッセンから地図を受け取る。洞窟の入口付近と溶岩溜まりまでの道が書かれているようだった。

 

「お主なら大丈夫だと思うが、油断せずに気を付けるんじゃぞ」

 

 その言葉を最後に、この場は解散となった。

 

 

 イグニはまずは洞窟に向かう前に準備を行った。念のため食料と回復薬を多めに買い込み、ポロックの作成にも勤しんだ。

 

 そして迎えた翌日、イグニは一一八番道路に向かい、調査を頼まれた洞窟の前に立っていた。

 

「ここが言われていた洞窟か……」

 

 洞窟の入り口は人が一人通れる程の大きさを持っている。入り口の周囲には、小さな石の破片が飛び散っていた。恐らくは、何かの衝撃で岩肌の一部が崩壊した事により、洞窟が出現したと思われる。すぐ傍には調査中の看板が立て掛けられていた。

 

「ティニ!」

 

 イグニの服の中からビクティニが飛び出し、彼の肩まで移動する。どうやら、ビクティニも興味があるようだ。イグニは洞窟の中へと足を踏み入れる。

 

 彼が最初に感じたのは外と洞窟内部の温度の違い。洞窟の中は外よりも大分温度が高いようだ。イグニは入り口よりも横幅が広くなった洞窟内を直線上に進んで行った。

 

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