対戦よろしくお願いします。
世界樹の迷宮って大体(命が)ライトファンタジーなんですけど、プレイヤーのキャラって全滅しなければ復活できるんですね、何度でも。たとえ大鎌斬首で首を切られても、死の眼光で息絶えても、大喰らいでパックンチョされても…ネクタルや施薬院で復活可能!
もしやプレイヤーの冒険者ってヘイロー持ちなんじゃ…???
リノアのサポートの甲斐もあってか、アリス達の樹海の探索は想像以上にスムーズに進んだといって良いだろう。
5階へ続く階段の前の、4階の小部屋に陣取り、傷ついた身体を癒やしたり底をついた気力を回復させたりする装備を持ってきてくれたのだ。
お陰で、5階へ登っても比較的安全に探索が出来ている。
「いやぁ、リノアさん様々だね~」
「調子に乗らないでお姉ちゃん。何度か危ない戦いとかあったでしょ」
「そうだよ……何度やられちゃうかと思ったか……」
とはいえ、完全に順風満帆な探索というワケでもない。むしろ、危機に陥ったことは何度でもあった。
例えば、うっかり倒す順番を間違えてオオテントウを残してしまった事があった。タッチの差でミドリが撃ち落としたものの、あと少し遅ければラフレシアを呼ばれていただろう。
またある時はギラファビートル2体と毒アゲハ2体に先手を取られたこともあった。幸い、奇襲が甘かったからなんとかなったものの、突き上げや毒をバラまかれていたらどうなっていたかなど、想像したくない。
「大丈夫だよ!どんな敵が来ても、私の魔法でぶっとばしちゃうんだから!」
「大丈夫かなぁ…」
「モモイだからねぇ」
「ちょっと!!!」
モモイが胸を張っても、首をかしげるミドリとユウカ。普段の行動が裏目に出ていることに気づかぬまま、憤慨する。
もちろん、モモイに限らず『ミレニアム』のメンバーは常に奇襲に気を付けている。樹海に挑み始めて日が浅い冒険者なりに、生き残るために出来ることはしているのだ。
しかし、それでもなお、奇襲を許してしまうこともあるのだ。例えば……この前衛兵たちを目の前で散らしてきた元凶として散々警戒している、巨大な花などにだ。
「うぐぇぇぇぇぇっ!!? 苦ッッッッが!?!?!?」
モモイは、口の中に広がる凄まじい味で目を覚ました。
甘さとえぐさと臭さを足して二乗したかのようなソレは、叶うことならもう二度と味わいたくないほどに。
「ぺっぺっ! なにこの味! 口に残る!!最悪!!!」
「
「うぅぅ……もっと優しく起こしてよぉ……って、あれ?」
しかし、目を開いてみると、近くには座り込んでモモイの顔を覗き込むユズがおり、その周囲にも心配そうな目を向ける仲間たちがいた。
「こ、ここは……」
「私のベースキャンプですよ」
モモイのうわごとに答えたのは、モモイ達がリカタ・ジュタに来て以降世話になり続けている先輩冒険者。彼女たちの母校にいた先輩に面影が似る少女―――リノアだ。
言われてみて、周りを見てモモイは気づいた。自分がいた場所は確か、5階だったはずなのに、何故か4階のリノアのベースキャンプに戻ってきているような……。
「リノア、さん…?」
「びっくりしたんですよ。霜が降りて、意識のないあなたが担ぎ込まれたときは」
リノアが軽く状況を説明した。
ミドリ達が大慌てでベースキャンプに駆け込んできたそうで。
その内容が―――仲間がやられた、ということだったらしい。
そこまで言われてモモイは思い出した。気を失う直前、何があったのかを。
「そっか………私、あの花にやられたのか…」
「完全に先手を取られていたので、モモイを防御することができませんでした」
「ミドリにお礼言っときなよ。あんた担いだのミドリだったんだから」
「目が覚めてよかった………!」
そう。モモイは、ラフレシアの奇襲から放たれた捕食の冷気で意識を飛ばしていたのだと気づいたのだ。そして…目が覚めるまで、体を温めたうえで
「ごめん………私のせいで………」
「も、モモイが謝ることありません!」
「そうね。モモイだけの責任じゃないわ」
今回の出来事は、モモイひとりの責任とは到底言い難い。
油断した結果奇襲を受け、痛手を負ったのは事実である。だが、周囲の警戒の隙を突かれたのはモモイだけではない。一緒に行動していたパーティメンバー全員がそうなのだ。
「私も油断してたよ。お姉ちゃんがやられた時はカッとなっちゃって、あの花に殴られて…」
「え!? ミドリも怪我したの!? それで私を背負ってたの!!?」
「言っとくけどお姉ちゃんが一番ヤバかったんだからね」
「ミドリもミドリよ、軽くない怪我なのに無茶して」
「仕方なかったでしょ、ユウカとアリスちゃんは花相手に
ミドリはラフレシアの奇襲時の事を思い出しながら話し出す。
血を分けた姉が冷気にやられ倒れ伏す所を見て、頭に血が登ったそうだ。
『よくも…よくもお姉ちゃんを!!!』
『落ち着いてミドリ! まずは退くことを考えて!!』
ユウカの静止も聞かず、炎の銃弾を放ち、ラフレシアを燃やそうとした。しかし、炎に苦しんだラフレシアが想像以上にもがいた結果、ミドリもラフレシアになぎ払われてしまったのだ。
その後は、なんとかアリスが逃走経路を見つけて事なきを得ている。
そんな話を聞いてるうちに、分かったことがある。
自分の知らないところで、仲間たちが大変な目に遭っていたんだ。
そう知ってしまっては、いくら根が明るいモモイでも励ましの言葉を喋るのは不可能であった。……自分が真っ先に倒れてしまったのでは尚更に。
気まずい沈黙が流れる。先輩冒険者のリノアでさえも、どうすればいいか分からず言葉をかけられずにいる。
そんな中。
「…反省は、このくらいにしましょう」
パチン、と手を叩いたのはアリスだった。
「さっきの戦闘で、アリス達の課題がわかったと思います。
ああいった不意打ちの時、パーティメンバーを庇えなかったのはアリスの失敗です」
「……何言ってるのよアリスちゃん。仲間を守るのは私の役目だわ」
「私…あんなにカッとなるなんて思わなかった」
「私も……すぐにモモイを治療できなかったのもあると、思う…」
その言葉を皮切りに、反省を述べていく仲間たち。
彼女たちは、失敗に落ち込むだけではない。そこから学びを得て、前を見ることがもう出来ていたのだ。
ひとえにこれは……名もなき神々の王女の鍵を巡った戦いを経て、色彩の攻略戦を終えたからこそ得た強さでもあった。
仲間たちの強さに自然と笑みが出たモモイは、気怠い体に鞭を打ち、勢いよく立ち上がった。
「私もっ! あんな不意打ちであっさりやられちゃったのが悔しくてならないよ!! 次に花に出会ったら、丸焼きにしてやる!!!」
「無茶は駄目ですからね、モモイちゃん」
リノアに止められつつも、すっかり元の調子を取り戻した「ミレニアム」の5人。
自分たちの態勢が立て直ったことを確認すると、次の行動に移ろうとする。
モモイが一歩踏み出した―――次の瞬間。
『我…呼び……に答…よ……貴様も力が…しかろう……』
「!!?」
頭が激痛に襲われ、立っていられなくなる。
「「「モモイ!!?」」」
「お姉ちゃんっ!?」
膝を着いたモモイの目に、心配そうに自身を覗き込む仲間たちの姿が映った。
ある者は慌て、ある者は涙を目に浮かべながら、必死でモモイの名を呼ぶ。
急に朧げになった視界で自身を確認するが、治療された後の傷が痛むような様子はなく、むしろ激痛の原因が自身の中から生まれているようであった。
だが、その激痛は思っているよりもすぐに引く。まるで、先程までの頭痛が嘘かのようだ。
「だ…大丈夫!?」
「やっぱりさっきの傷が響いてるんじゃない? 街に戻った方が…」
「待って」
モモイの容態を心配してくるユウカやユズ。だがモモイは、その心配に答えるより先に答えないといけないことがある。
「いまね…またあの『声』が聞こえたの」
「お姉ちゃんが前から言ってたアレ?」
「うん。私を呼んでいるみたいなんだけど、なんというか……圧?みたいなのが凄かったんだ」
「大丈夫なんですか?」
「うーーん、でもとにかく声の元に行かなくっちゃって思ったんだよね」
そう語るモモイに不自然な点はない。
モモイは本当に、自分にしか聞こえない声に強く呼ばれていると思っているし、他の4人の目から見ても今のモモイに違和感は抱かないようである。
強めの圧でモモイを呼んだ、声の主の意図はまだわからない。
「モモイがそこまで言うなら、アリス達は行ってみるべきだと思います!」
「もしかして、誰かが助けを呼んでいる…とか?」
「もしそうなら、早く助けに行ってあげたいな……」
「でもそうなると、皆も危険な目に遭う可能性は高いわよ」
「それでも放っておけないよ! 帰る手がかりがなくなっちゃうかもしれないっていうのもあるけど……」
「それ以上に、誰かの命の危機を見て見ぬフリをするなんて、勇者がやることではありませんので!」
「そこまで言うなら、止めはしないけど……」
もしかしたら、助けを呼んでいるのかもしれない。
仮にそうだとしたら、アリスやモモイは必ず助けに行くだろう。感情的だが情に厚いモモイや本気で勇者を目指しているアリスなら当然のことだ。ミドリも特に反対する雰囲気ではない。
モモイの頭痛や声など、気になる点は多いが、改めて彼女たち冒険者は、5階を探索することにする。
「あとちょっとだけ探索したら帰るわよ。ユズが言ってた、『絶対に無理はしない』って話、守ってもらうんだから」
「「はーい」」
とはいえ、この日はあまり探索を続けることなく街へ帰る方針を固めたのだが。
いくら声が気になるとはいえ、無茶をして倒れてしまっては元も子もない。
それから、何度か探索と帰還を繰り返していくうちに、5階の地図が埋まりだした頃。
木々をくぐり進む彼女たちは、ぬかるむ地面の多く見える大きな広間に辿り着いた。
コオロギが飛び回る姿も見える大広間の、その中心部から……恐ろしいほど明確な殺気を感じ取った。目を凝らしてその先を見てみると、一匹の蜥蜴が広間の中心に鎮座しているではないか。
遠目から見ても巨大な体躯。特徴的なたてがみに長くなった口髭。鬣や髭は虹色に輝いていることで、より樹海の中で目立ちやすくなっている。そんな派手な巨大蜥蜴が…鋭い爪の生えた四本足で、ぬかるむ大地に立っている。
辺境伯の宮殿で見た絵の通りの魔物だ。アリス達は確信した。彼女たちは、ようやく目指すべき対象、イピリアがいる住処へ辿り着いたのだ!
「つ、ついに来ちゃったね……」
「ほんとに虹色に輝いてるなんてね」
「周りにあのコオロギ達がいるよ」
「あれを倒さないといけないのか…!」
冒険者を見つけるなり、髭を振るわせて唸り声をあげるイピリア。
まるで、いつでも準備はできている、かかってこいと言わんばかりのオーラを放ってくる。
「あいつ…襲ってこないね」
「それくらい強さに自信があるっていうの…?」
「ねぇ、まずは手前のコオロギを倒しちゃわない?」
「だ、大丈夫なんですか?」
「むしろコオロギから倒さないとヤバいと思う。あいつら、戦いに割り込んでくるんだよ」
戦いが起こるとその音を頼りに割り込んでくるコオロギの習性。それを放っておいたままでイピリアに挑んだら、間違いなく戦いに乱入される。
それを悟ったモモイからの提案に、首を横に振らない者はいなかった。
彼女たちは、各々の武器を抜いて、イピリアの前にいるコオロギを倒そうと挑みかかる。
今の『ミレニアム』なら、跳び回る黒蟋蟀など敵ではない。イピリアと全力で戦うためにも、露払いに挑む冒険者たち。
「ほう…あいつが、か」
「? あれ、今…」
「お姉ちゃん、どうしたの?」
「なんでもない! さあ、まずこのコオロギをブッ倒すよ!」
モモイは、コオロギと戦う前に聞こえたハズの、重要な言葉を聞き逃し、術式を起動させる。
その後コオロギが倒されるまで、イピリアが動く気配は一切なかったが………果たして、それは一体何を意味するものなのだろうか。
「―――というわけで、3階のザリガニに挑みます!」
「なんで!!?」
「まぁ、イピリアの方が強敵なのは間違いないから、私達がどれだけ戦えるか腕試しってヤツだよね!」
「ど、どうしてこんなことに……?」
「…怪我が出ないように戦うわよ」
………まぁ、イピリアとの決戦はもう少し先になりそうではあるが。
Tip!:イピリアの行動
どうやら、イピリアは同じ部屋にいるFOEと冒険者が戦っているときは乱入しに来ないようだ。それは強者ゆえの余裕なのだろうか。それとも、何かイピリアの興味を引くものを見つけて、それを観察していたからなのだろうか。
※ストーリーモードとクラシックモードでイピリアの動きは変わらないけど(オイ
ここまで読んでくれた君は、この小説に感想を送ってもいいし、高評価をつけてもいい。
送る感想は短くても長くても構わない。感想があることで作者のモチベーションが上がり、よりハイペースでリカタ・ジュタの樹海の謎が明らかになるだろう。
好きな戦闘曲は?(通常戦闘編)
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鉄華 初太刀
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鉄華 討ち果て朽ち果て
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鉄華 恍惚
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戦場 初陣(Ⅱ)
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戦場 響く剣戟の調べ
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戦場 戦慄
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戦場 初陣(Ⅲ)
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戦場 討ち果て倒れる者
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戦場 疾風
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戦場 己が信念を杖に
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戦場 双眸爛爛と
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戦場 始動
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戦場 明日を掴むは死闘の先
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戦場 刀光剣影
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戦場 高揚
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戦場 死が分かつ十字路
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戦場 戦いの火蓋
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その他