ブルア界樹の迷宮   作:伝説の超三毛猫

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ブルアカ×世界樹の迷宮、略してブルア界樹の迷宮です。
対戦よろしくお願いします。
今回、とうとうボス戦に突入します!


智慧の意味

「どおっりゃああああ!!」

 

 淡碧ノ樹海の、あるエリアにて。

 冒険者ギルド『ミレニアム』は、激闘を繰り広げていた。

 

「ふぅ…あと何発で倒れるんだアイツ!」

「それより下がって! 攻撃が来る!」

「わかった! 任せるよユウカ!」

 

 ユウカが、術式を撃ち終えたモモイと銃弾をリロードするミドリを下がらせ盾を構える。

 直後、冷気を纏った赤いハサミが彼女たちを襲った。盾越しにこれまでとは比べ物にならない程の衝撃が襲い掛かる。

 マトモに食らえば命さえ持っていかれかねないこの威力は、ユウカの盾スキル……フリーズガードによって軽減される。

 

「くっ…防御していても嫌になる威力!」

「でも―――!」

 

 相手の魔物―――紅いザリガニのハサミの攻撃が終わった隙を突いたのは…アリスだ。

 光り輝く剣の一撃を、隙だらけのザリガニに振るう。

 

ミラクルエッジ!

 

 それは、アリスが覚えている技の中で、最も威力の高い剣技。

 すべてを薙ぎ払い、仲間の窮地を救うヒーローの奥義だ。

 それをマトモに食らったザリガニの片腕のハサミが吹き飛び、体が大きく揺らいだ。

 

「これで―――最後ッ!」

 

 間髪入れずに撃ち込まれた、ミドリの雷の銃弾(サンダーショット)が決め手になった。

 かつて彼女たちを竦ませた魔物が、軋む音を立てて崩れ落ちていく。

 ……これで、紅鉄の蝲蛄を討伐することに成功したのだ!

 

「や…やった!勝てた!」

「し……信じられないわ…逃げるしか出来なかった私たちが…」

「きっと…イピリアはこれ以上なんだよね…?」

「はい…ですが、ひとまず魔物の素材をいただいてしまいましょう!」

 

 かつてブランから警告された、死と隣り合わせになる魔物の討伐に成功したモモイ達は、その実感を掴めないまま立ち尽くす。

 どれくらいそうしていたのか、アリスがザリガニから素材をはぎ取り終えた頃に、再起動したコンピュータのように動き出し、アリアドネの糸を取り出した。

 

「準備を終えたら、次はイピリアと戦うわよ」

「もちろんです!アリス達で、ミッションを達成しましょう!」

 

 少女達は、辺境伯の任務を成し遂げる為、また愛しき母校へ帰る手がかりを見つける為、街へ戻ってイピリアとの戦いに備える事にする。

 

 

 

 

 

 ―――そして、武器とアイテムを整えたアリス達は、遂に5階のイピリアがいる広間に戻ってきた。

 

「さて、行くわよ!」

「はい! いざ、ボス戦です!」

 

 そうして、各々の武器を抜き戦いを挑もうとして。

 

来たか…小さきものよ

「!!?」

 

 突如、モモイを頭痛が襲う。

 立っていられなくなるほどの激痛に、思わず膝をついた。

 

「モモイ!?」

「そんな、一体どうして!?」

「わかりました…! きっと、この先に助けを求めている人がいるんですね!」

 

 動揺するパーティメンバー。だが、頭痛に襲われているモモイは、誰よりもその原因を察していた。

 薄れていく視界で前を見据え、震える指先を持ち上げて前を指していく。

 アリスは、それを「助けを求めている人がいる」と思ったようだが………モモイの出した結論は違う。

 

「ち……が、う……」

 

 モモイが感じ取ったこと。

 この状況から導き出した答え。

 モモイ指さすものは、彼女たちの先にいる、その更に奥などではない。

 ―――目の前にいるのだ。

 

「こえの、ぬし、は……」

「ま、まさか…」

「……イピリア、だ……!」

 

 それを最後に、モモイは何も言わなくなる。

 ……否、何も言えなくなったのだ。明らかに顔色が悪く、目も虚ろな彼女は、何かに抗っているかのようだ。

 

 

 

 

 

 ―――モモイは、気が付けば真っ暗な空間にいた。

 

「あ、あれ……?」

私の声が聞こえるな…小さきものよ

「お、お前は……!? なんで、私とおんなじ姿をしてるの?」

 

 唯一見えるものは、自分自身。

 だが、目つきも雰囲気もまったく違うそれは、鏡で見る自分とはまるで違う……そういう風に感じ取れた。

 

それはお前が私をそう認識しているからだ。

 私はこの樹海の王……お前たちがイピリアと呼ぶ存在…

「イピリア!?」

 

 その名を聞いたモモイはすぐさま手甲から術式を放とうとする。

 だが、思うように体が動かない。

 

「なんで……っ!?」

お前も薄々分かっているのだ。私とお前は同類だ

「わけがわからないよっ! 私がお前みたいな大トカゲと、どこが同類だって言うのさ!」

魔法だよ

「ま、魔法……!?」

 

 イピリアを名乗る自分自身にそう言われるも、姿かたちが全く違う生物から同類扱いされたことが全然納得いかないモモイ。

 それを結びつけるものは魔法だ、とイピリアは言う。

 

お前の戦いぶりを見させてもらったぞ………素晴らしい力だ。

 どうだ、私と共に生きより多くの魔法を極め、より深き智慧の神髄に向かおうではないか

「やだよ!! なんで私がそんな事!!

 私はミドリ達とミレニアムに帰りたいだけ! 術式は手段でしかないよ!」

本当にそうか?

「当たり前でしょ!!」

ならば何故、すぐに私を攻撃しない?

 

 イピリアの問いに、モモイは答えに窮した。

 当然だ、戦う相手であるならば、すぐにでも攻撃できたはずなのに。

 それどころか、自分の姿を重ね、対話をすることさえしてしまっている。

 

一つ……良いことを教えてやろう。

 お前たちのその姿は……自らの願望が元になっているのだ

「願望…?」

お前のその姿―――アルケミストは、世界の法則を見極めるために智慧を求め、探究せんとする姿だ

 自らの知らない知恵を追い求めて、やりたいことがあった……そう思っているのではないか……?

 ここで得た力を、なんとかしてゲームに活かしたい…この魔法のような力で遊び尽くしたい……そうは思わんか…?

「………」

心当たりはあるようだな

 

 モモイの心当たり―――それは、ゲーム制作のことだ。

 彼女の役職はシナリオライター……要はゲームの物語やシステムを考えることだ。常に、新しいアイデアやプレイヤーの心を動かせるストーリーを求めている。

 ゲームができるとなると怠惰な一面も見えるが…ゲームにかける情熱は、決して嘘ではない。「テイルズ・サガ・クロニクル2」をはじめとしたゲームを作った実績もある。

 

そして…ここまで言えば、何故私がそんなことを知っているのかも理解できよう

「…?……!! あ、そうじゃん! なんで私がゲーム開発のネタで苦しんでるの知ってるんだ!!」

クククッ、疑問にすら思わなんだか……まぁいい。

 私なら、貴様を元の世界に帰すことができる、ということだ

「!!! 元の、世界に…?」

 

 イピリアは、自分ならモモイをキヴォトスに帰せると言う。

 それは、元の世界に帰ることを望んでいたモモイにとっては、喉から手が出るほど欲しいものだ。

 

無論、相応の働きはして貰うがな

「かえ、れる…?」

まずは私を討たんとする愚か者どもを、共に撃退しようではないか

「わた、しは……」

 

 突如目の前に降ってきた、帰れるかもしれないというチャンス。

 イピリアが出してきた提案に、モモイは―――

 

 

 

 

 

「お姉ちゃん! お姉ちゃんってば!!」

「……」

 

 今までピクリとも動かなかったモモイが、唐突に4人の方を向く。

 

「…! お姉ちゃん、気が付いたんだね! 良かっ―――」

 

 ミドリがその言葉を言い切る前に。

 モモイは、冒険者セットの解体用のナイフを手に取ると、そのままミドリに体当たりをかました!

 まるでモモイに刺されたかのように、ミドリはそのまま倒れこんでしまう。

 

「ミドリ!!?」

「モモイ! 何やってるんですか!

 まさか、さっきの言葉…イピリアに洗脳されたというのですか!!?」

 

 その姿を見た少女たちは、大慌てだ。

 特にアリスは、振り向いてモモイとミドリに駆け寄ってしまったため、完全にイピリアに背を向けてしまっている。

 それを、存在するだけでリカタ・ジュタの街に不漁の時期をもたらす怪物が見逃すはずがない。

 

「(たわいもない……これで、3人目だッ!)」

 

 その無防備なアリスの背に、イピリアの爪が襲い掛かる!

 

「あっ……」

 

 

 

 ―――次の瞬間、突然に吹き荒れた炎と放たれた銃弾が、イピリアの攻撃をいなした。

 

!!

 

 続けざまに剣が、杖が、イピリアを捉えんと振るわれる。

 だが、イピリアは巨体をよじらせて、距離を取って攻撃を躱した。

 

「むぅ、あとちょっとだったのに!」

「流石にそう簡単にはいかないか」

「アリスちゃん、大丈夫?」

 

 アリスが見たのは、いつもと変わらず…しかし、イピリアへの怒りに燃えた4人の姿だった!

 

「モモイ! ミドリも……大丈夫だったんですか?」

「え、あぁ、さっきのナイフね…」

 

 ミドリが、服の袖をアリスに見せた。

 元々が厚着のせいか、袖に余裕があり、よくよく見ればそこにナイフの跡があった。

 つまり、ミドリに抱き着いた時、モモイがミドリに刺さらないよう、ミドリのコートだけを刺し貫いた証左であった。

 

「イピリアが脳内に話しかけてきたんだ。『力が欲しいか、帰りたかったら仲間になれ』ってね。

 ………でも、そんなのに頷くわけないじゃん!」

 

 すっかり正気に戻ったのであろうモモイは、意気揚々と言い放つ。

 

「あんな状況での誘いなんて、罠に決まってる!

 その手の罠なんて、定番過ぎて騙されるフリが大変だったもんね!

 ゲームのシナリオライター舐めるなよ!!」

「そうか………そう、でしたね……モモイは」

「……とはいえ、ちょっと危なかったけどね。ありがとミドリ、お陰で助かった」

「お安い御用だよ」

 

 …つまり、先程までのモモイの寝返りは、イピリアを釣るための演技。

 相手を油断させ、先手を打つための舞台演技(ロールプレイング)だったのだ。

 態勢を整えたモモイの目が、イピリアをまっすぐ捉える。

 

「言ったよね、私は『みんなとミレニアムに帰りたい』って!

 確かに、私は力を求めていたのかもしれない。こんな魔法みたいな力が手に入って、楽しいと思っていたのかもしれない」

 

 でも、と言いながら術式を起動させた。

 

「……それは皆で帰るため!

 皆を傷つけようとしたお前の仲間になんて、絶対ならないからね!!」

 

 互いに戦闘態勢になり、一歩ずつ前に踏み出していく。

 …今目の前にいるのは、樹海の生態系や平和を乱し、人々を苦しめている元凶。

 それだけでなく、君たちを同士討ちさせようとした、許されざる敵である!

 さぁ、その手に術式を起こし、勇敢に立ち向かいたまえ!

 

 

 

 

 

 戦いが始まって、即座に動いたのはアリスだった。

 剣を振り下ろした瞬間、現れるのはアリスと全く同じ姿の残像。

 

「ユウカ!ガードを!」

「任せなさい!」

 

 防御を担うのはユウカだ。

 全員に防御陣形を組ませ、イピリアの攻撃に備える。

 

「おりゃあ!」

「狙い撃つ!」

 

 続いて、モモイが氷の術式を、ミドリが腕を狙った狙撃を、イピリアに向かって放つ。

 2つともイピリアに当たり……特に、氷の術式が当たった途端、イピリアが悲鳴を上げて身をよじる。

 

「やったあ! 弱点来た!」

「攻撃来るよ、モモイ!」

 

 弱点を当てて興奮するモモイだったが、ユズに促されてすぐさま切り替える。

 どんな攻撃がくるかも分からない状況。5人が各々防御態勢を整えた直後に、イピリアが放ってきたのは。

 

グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!!!

 

「「「「「!!!?」」」」」

 

 咆哮。

 その巨体に相応しい轟音が、虹蜥蜴の口から放たれた。

 鼓膜が破れるかと思うほどの爆音に、冒険者たちは思わず耳を塞ぐ。

 

「なん、て、咆哮……」

「完全に私たちの常識外ね……」

「ユズ、大丈夫…?」

「うん…ちょっと、耳が痛いけど」

 

 モモイの洗脳に失敗し、先手を取られ、あまつさえ弱点まで突かれて。

 それでもなお、イピリアがぶつけてくる殺気は衰えることはない。まるで、「そんなもの効かぬ」と言っているかのようだ。

 しかし、『ミレニアム』の冒険者たちが怯むこともない。

 

「さすがにそんな簡単には倒せない、よね……」

「それでこそボス戦です! さぁ、ここからですよ!」

「やってやる…! 私、怒ってるんだから!」

「絶対に……負けない!」

「皆、思いきりやっちゃいなさい!」

 

 アリスが、ユウカが、モモイが、ミドリが、ユズが……イピリアへの戦意を燃やす。

 そして、母校に帰るための、最初の強大な敵との闘いの幕が切って落とされた。

 




Tip!:アルケミスト
世界樹の迷宮におけるクラス(職業)のひとつ。
錬金術という特有のスキルを用いて、炎・氷・雷の属性攻撃を行うことを得意とする。
その独特な攻撃は、武器では傷を与えにくい魔物との戦いや属性攻撃が苦手なボス級の魔物との戦いでは重宝するといっても過言ではない。
類似する職業には、占星術を用いて属性攻撃を放つゾディアックという者もいる。



魔物図鑑
イピリア
淡碧ノ樹海の奥地に生息する、虹色の鱗や髭・鬣を持つ巨大な蜥蜴。
こいつが一匹狩りに出るだけで昆虫系の魔物が暴れ回り、生態系に凄まじい影響を及ぼす。
その名は、虹色の姿だけではなく、怒りによって雷を自由自在に操っているように見え、まるで天罰を落としているかのように見えることから、ある大陸の神話の精霊からつけられたという。
【攻略情報】
・耐性(◎…よく効く、○…効く、△…効きづらい、✕…効かない)
スタン
即死
石化
テラー
呪い
眠り
混乱
麻痺
盲目
頭封じ
腕封じ
脚封じ

・行動
通常攻撃
大絶叫(頭/全体)……全体に無属性ダメージ&広間内に跳び回る黒蟋蟀がいなかったら広間入り口側に跳び回る黒蟋蟀を2体召喚する。
天罰(頭/拡散)……1体から左右に拡散する雷属性攻撃。前ターンに予備動作がある
沼地攫い(腕/列)……1列に斬攻撃。
捕食(なし/敵1体)……跳び回る黒蟋蟀に大ダメージ&自身の全攻撃力が上昇。跳び回る黒蟋蟀が乱入してから使用する。
薙ぎ払う花尾(脚/全体)……全体に壊攻撃。
・概要
戦う前に周囲の跳び回る黒蟋蟀をすべて倒しておく。復活は数日かかるので、倒したら再復活する前にイピリアに挑もう。乱入されると、イピリアが捕食することで攻撃力が上がり、手がつけられなくなる。攻撃デバフをかけておくか明滅弾でコオロギの乱入を防ごう。
弱点は氷属性。ストーリーモードでは、アリスの凍砕斬やモモイの氷の術式が有効。
気をつけるべき攻撃は、高威力なうえフロントガードで軽減できない天罰。イピリアが大きく息を吸い込んだ、という予備動作が見えたら、パラディンなどの盾職のショックガードなどで防ぐか全員防御しよう。頭を封じれば天罰を不発にすることも可能。





ここまで読んでくれた君は、この小説に感想を送ってもいいし、高評価をつけてもいい。
もちろん、存在しない記憶を投げるのも、違う世界線の透き通った世界樹の迷宮を創造するのも自由だ。

そろそろ第一階層終了です。次にはイピリアを倒して第2階層行きたいなぁ。

好きな戦闘曲は?(通常戦闘編)

  • 鉄華 初太刀
  • 鉄華 討ち果て朽ち果て
  • 鉄華 恍惚
  • 戦場 初陣(Ⅱ)
  • 戦場 響く剣戟の調べ
  • 戦場 戦慄
  • 戦場 初陣(Ⅲ)
  • 戦場 討ち果て倒れる者
  • 戦場 疾風
  • 戦場 己が信念を杖に
  • 戦場 双眸爛爛と
  • 戦場 始動
  • 戦場 明日を掴むは死闘の先
  • 戦場 刀光剣影
  • 戦場 高揚
  • 戦場 死が分かつ十字路
  • 戦場 戦いの火蓋
  • 戦場 振り上げし刃
  • その他
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