対戦よろしくお願いします。
淡碧ノ樹海の奥地で始まった、イピリアと『ミレニアム』の冒険者との戦い。
イピリアが絶叫のような咆哮を上げたことで、周囲に変化が生じた。
「ねぇみんな、アレ!」
モモイが指さした場所から、コオロギが現れる。
ただのコオロギではない。かつて戦いの際に乱入され、またイピリアと戦う前に駆逐したハズの黒蟋蟀である。
遠目から見ても、騒音の元に集まる習性を持つあの蟋蟀が、こちらにやってきているのは明白だ。
このままでは、イピリアとの戦いのさなかに乱入されることは想像に難くない。
「大丈夫……この時のために、シフォンさんから買っておいた……!」
しかし、対策をしていたユズは、バッグからあるものを投げた。
それは、掌大のサイズをした、包みにくるまれた丸い火薬。
ユズの手から離れ、上空に投げられたそれはバン、と音を立てながら激しい光を放つ。
冒険者たちにとってはあまり眩しいものではないようだが……蟋蟀にとっては違うようだ。
「ナイス、ユズ!」
「回復の手が空いた時はそれをお願いね!」
「はい!」
周囲の魔物の動きを鈍らせる、特殊な光を放つ閃光弾―――明滅弾。
効果は一瞬だが、しばらくはコオロギが近づいてくるまでの時間を稼ぐことができるようだ。
もし、ユズが明滅弾を使い続けることができれば、コオロギを近づけさせずにイピリアを倒すことができるかもしれない。
「攻撃、来ます!」
「どぅわああああっ! あっぶない!」
「攻撃が効いている気がしない……!」
だが、イピリアだって突っ立っているばかりではない。
人ひとりほどある大きな腕を振り下ろせば、たちまち強烈な薙ぎ払いが襲ってくる。
モモイとミドリ、アリスはその一撃を躱すことができたが……その状況がいつまで続くか分からない。
もし誰かがイピリアの攻撃に被弾したら、ユズがその傷を見る必要が出てくる。
明滅弾も数に限りがある。いつまでも足止め出来はしない。
つまり、アリス達が求められるのは………
「ユズの明滅弾が無くなる前に、イピリアを倒します!!」
―――速攻!
「「「はぁぁぁぁっ!!」」」
アリスの氷を纏った剣が、モモイの氷の術式が、ミドリの体温を奪う弾丸が、イピリアに突き刺さる。
モモイが、早い段階でイピリアの弱点を突けたのは僥倖であった。余計な気力を使わず、効率的にイピリアの体力を削ることができるのだから。
対するイピリアは、その著しく発達した前足の鋭い爪を振り下ろして反撃する。
だが、その攻撃が来るたびに、ユウカやアリスの盾で防ぐことができている。
「うっ……これは…なかなかの攻撃力です!」
「これが、イピリア……生態系を崩すほどの威力ってワケ!?」
一撃食らうごとに、最前線にいるユウカとアリスがその威力に驚くが、浮足立つことも、ましてや足元が覚束なくなるほどの致命傷を負うでもない。
順調に戦えている。少なくとも現段階では。5人は間違いなくそう考えていた。
―――だが、彼女たちは、イピリアがイピリアと呼ばれている所以を知らない。
そもそも彼女たちは科学の都・ミレニアムサイエンススクールに所属していた生徒。神話関係のオカルトチックな話題は門外漢なのだ。もしここに、全知の先輩でもいれば、話は別だったのかもしれないが。
―――イピリア。その昔、ある大陸の神話に出てきた、水と雷の精霊。
雨雲を吐き出し、雷鳴のような声で鳴く。聖地に人が立ち入れば、たちまち水を奪い、天罰を与える存在。
イピリアが、息を大きく吸い込んだ。
今……無知なる冒険者に、天罰が下される。
「! 息を吸い込んだ?」
「ボスの攻撃の予備動作です! 全員回避の態勢を!」
アリスがそう叫んだ直後。
イピリアが口を開いた。
その喉奥が輝いたのが見えた直後。
虹蜥蜴の喉奥にあった光が、一直線に飛んできて―――ユウカとアリスを貫いた。
「うぁぁぁああああああああああああああああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!!!?」
「うわあぁぁぁああああああ!!?」
「ユウカ! アリスちゃん!」
光線の射線上にいなかった3人は、すぐさまユウカの元へ駆けつける。
一瞬の砲撃をマトモに食らったユウカは、周囲の地面ごと鎧が焦げていた。全身も焦げ跡と出血がひどく、体がピクピクと痙攣している。両膝をつき、目を開けない彼女はまさしく満身創痍といった様子だった。即死していないのが奇跡的なほどである。
「ユウカがやられた!?」
「い…今の、まさか、雷…!?」
「生物ができていいことじゃない……!」
パーティの中で、最も硬いパラディンであるはずのユウカがやられた。
その事実が、幼い3人に圧し掛かる。だが。
「そ、そう、です…きっと、雷属性です……!」
「「!!?」」
「アリスちゃんも酷い怪我!!! 大丈夫!?」
アリスは、それでも折れてはいなかった。
ユウカへの雷撃に巻き込まれたアリスも、尋常ではない怪我を負わされたようだ。
それでも、闘志は絶やさないといった風にイピリアを見上げながら、時折痙攣する体に鞭打って立ち上がろうとする。
「アレさえ対処できれば…イピリアに勝てます!」
「い、いや! あんなのどうやって対処すればいいの!?」
「ひとまず、ユウカを起こして、ください! この戦いに、ユウカの守りは…絶対、必要です…!」
そう言うや否や、アリスはイピリアに肉薄する。
「アリスは、決めたんです! もう誰も、パーティメンバーは失わせない!」
イピリアは、先程雷を放射したばかりなのか、万全でもないアリスの動きに咄嗟に反応できなかった。
「皆の為にも! あなたを倒します! 凍砕斬!!」
決して軽くはない雷で傷を負いながらも、イピリアを倒すという決意が全く消えていないアリス。
息も絶え絶えなその姿に、突き動かされたように3人は行動する。
ユズは、持っていたバッグの中からネクタルと身体を冷やす薬品を取り出し、ユウカに駆け寄った。
ミドリは、銃に薬用弾を詰め、すぐさまアリスに向けて引き金を引いた。
モモイは、仲間の回復に回った二人を見て即座に次の術式を起動し、イピリアに向かって氷塊を放った。
3人とも、エリドゥだけではなく、これまで迷宮で己の役割を持って探索し、戦ってきた経験があったからこそ、この場で最適な行動を取ることが出来たのだ。
「ユズ! ユウカを任せた!」
「うん……やってみる…!」
「アリスちゃん、いける?」
「ありがとうございますミドリ!助かりました!」
薬用弾を撃ち込まれることによって、体の痛みは軽くなる。
アリスの氷の剣に苦悶の声を上げたイピリアが、仕返しと言わんばかりに右腕の爪で襲い掛かるが、その前にアリスは飛びのいて距離を取っていた。
「ユズ! ユウカは!?」
「もうちょっと待ってて!」
倒れたユウカを手当てするユズをちらと見て、まだ時間を稼ぐ必要がある、と考える。
自身のダメージはミドリが癒してくれたものの、状況は良くなったとは言えない。
もし、今の状況でもう一度あの雷を喰らったら、間違いなく全滅する。
「モモイ! ここで時間を稼ぎますよ!」
「オッケー! 私に任せて!」
アリスの宣言に全力で答えたモモイ。
彼女の頭にあったのは、少し前のアリスの後ろ姿と、先程のイピリアとの問答だ。
―――毒の蝶にユウカと妹がやられそうになっていた時。アリスが見たこともない一閃を放ち窮地を救った。
それが冒険者ならだれでも持ちうる秘奥義だと知った時、助かったと安堵する反面、自分が情けないと感じた。
本当なら、妹の、仲間の、窮地は自分が救いたかったのに。
そんな感情が全く無かったといえばウソになる。
―――魔法という、キヴォトスにはなかった力で遊び尽くしたいだろう?
そう問われた時、即座に否定できなかった。それはつまり、モモイが少なからずアルケミストという魔法使い――正確に言うと魔法ではないようだが――に一種の憧れがあったからだ。
早く帰って、この経験をネタにゲームシナリオを書きたい………そんな風に思っていたからだ。
今なら、できるハズだ。
イピリアからの誘惑を跳ね除け、仲間の為にこの力を使うと決意したばかりの今なら。
魔物の注意を自分やアリスに向けつつ、ユズが回復させるまで時間を稼ぐ。
覚悟を決めて―――その秘奥義を解き放った。
「フォースブースト!」
全身に力がみなぎるのを感じたモモイは、そのまま氷の術式をイピリアに放った。
ブースト前に比べて、生成される氷の大きさが大きくなったような気がする。
「お姉ちゃんも、その必殺技を……!?」
「ミドリ! 撃って!」
「う、うん!」
ミドリも負けじと銃の引き金を引く。
銃弾と、剣技と、高威力の術式。これらによって、イピリアは苛立たし気な殺気を3人に向け続けている。
そして、イピリアの爪を躱し続けることが出来ている。
だが……3人は…否、冒険者たちは忘れていた。
戦いの最初にイピリアが何をしたのかを。
「キシャァァァァァアアア!!」
「「「「!?!?」」」」
そう。イピリアが大絶叫によって呼び出した魔物―――跳び回る黒蟋蟀だ。いつの間にか、戦場に乱入できる距離まで近づいてきてしまったのだ!
ユズの明滅弾は確かにコオロギにとっては眩しく前後不覚になる光を放っていたが、それは一時的なもの。明滅弾がなければもっと早い段階で侵入されていた。しかも現在ユズはユウカの治療中だ。明滅弾を投げている暇などなかった。
とはいえ、魔物が増えて後衛が狙われるかもしれないことを許容できないアリスとモモイは、攻撃を切り替えた。
「アリスちゃん! あのコオロギごとやるよ!」
「はい!」
アリスは、即座に放てば敵全体を切り裂く一撃と化すブレイブワイドに。
モモイは、コオロギの弱点を突き、かつイピリアが使ってこなかった炎属性の全体攻撃…大炎嵐の術式。
炎が、斬撃が、イピリアの鱗とコオロギの外骨格を傷つける。
「!! お姉ちゃん!アリスちゃん! 退いて!!」
「「!!!」」
ミドリが
何かの攻撃だと思ったミドリは、少しでもダメージを稼ぐために銃弾を放つ。そして、二人に距離を取って逃げるよう促した。
そして、弾丸を受けたイピリアは―――――そのまま、近くで跳び回っていたコオロギに食らいついた。
「「え…」」
「なん……」
「うそ…」
バリ、ボリ、と外骨格を砕く音を盛大に響かせながら、コオロギを咀嚼していくイピリア。
突然の同士討ち。一体何事かと、手を止める冒険者たちに向かって、コオロギを食べ終えたイピリアは先程とは比べ物にならない殺意を滾らせて、冒険者達を睨みつける。
そして―――花が咲いている太い尾を振り上げたかと思えば……そのまま、薙ぎ払ってきた!
「わぁぁぁぁっ!」
「きゃああああっ!」
「うわあああああああああああっぶない!?」
皆がみんな、寸でのところで屈むか飛び上がるかして、その強烈な尻尾の一撃の範囲から逃れることに成功。
だが、その表情は芳しくない。全員が、イピリアに起こった異変に気が付いたのだ。
「攻撃の威力が上がっている…!」
「コオロギを食べたことで、攻撃力アップがかかったということでしょうか」
「う、うそ!?」
「ユズは回復に集中してて! 私たちが何とかする!」
先程のイピリアの捕食が回復強化だったことを知り、慌てるも後の祭り。
今はあの状態のイピリアから勝利をもぎ取るために出来ることを模索するしかない。
幸い、モモイに一つ案があった。
「あいつが口開いた時、口の中に出来るだけ大技ぶち込むのはどう?」
「き、危険だよ! アリスちゃんが食べられちゃう!!」
「違う、違うよミドリ」
モモイの案にミドリは即反対する。
アリスが危険だと。だが、モモイは元よりイピリアの口内に食らわせる攻撃は決めていた。
「私の奥の手の術式だよ。アイツに食らわせるのは私の術式」
「それは……それでも! 今のあいつに近づけるの? よしんばできたとしても、それで倒せる保証は!?」
「信じて。お願い」
ミドリの懸念する事項に、モモイは何も答えられていない。
しかし、信じてほしいと念を押す姉の気持ちは、これでもかと伝わった。
ミドリは知っている。生まれてこの方、ここまで強情になった姉は、何をもってしても止められないことを。
そして、その無謀とも言える勇気こそが、自分にはない……才羽モモイにしかない強さであり、それによって救われた命さえあったことも。
「「「いち、にの…さん!」」」
合図とともに、飛び出したのは一人のアルケミスト。
モモイだ。後衛職であるにも関わらず、勇敢――否、最早蛮勇というべきか――にもイピリアに接近する彼女に、イピリアは盾すら持っていない後衛職に何ができるのか、とあざ笑うかのように前足をあげた。
だが、その爪がモモイを沼地ごと攫う前に、イピリアの目に突き刺さるような痛みが走った。
「グオオオ!?」
それは、ミドリの弾丸だった。モモイに攻撃をさせまいと、イピリアの目に向かって狙撃したのだ。
苛立たし気な悲鳴を上げたイピリアが、再び全員をその尻尾で撥ね飛ばそうとする。
しかし、それはアリスの氷の剣に阻まれた。
いつの間に近づいていた彼女の剣が顔面に振るわれ、鼻を斬られ、自慢の髭を斬り飛ばされた。
「グオオオオオオオオ!!」
顔を傷つけられた怒りで、巨大な頭で空を舞うアリスに頭突きをするイピリア。
頭突きを喰らったアリスは、ぬかるんだ地面に叩きつけられて―――消えた。分身だ。
「サンキュー、アリス!」
アリスが分身だとイピリアが気付いた時には……モモイは、十分な距離まで近づいていた。
彼女の最後の切り札が、最大限に効果を発揮する距離まで。
もはやなりふり構っていられない。そこでモモイに狙いを絞ったのは本能か偶然か、イピリアはモモイに何もさせまいと、大きく息を吸い込んだ。
「「「!」」」
それは、天罰の合図。
モロに当たればパラディンですら膝をつく凶悪な雷。
普段ならその恐ろしさに身構えてしまうが……モモイは違う。
術式の起動を始めた。自分が使いうる、最強の術式の起動を。そう……「この時を待っていた」と言わんばかりに。
「ふっふっふ…かかったな!」
モモイが術式の起動を行いながら、勝ち誇る。
しかし、勝利を確信した笑みを浮かべるモモイとは裏腹に、ミドリは顔を青ざめた。
「駄目だよお姉ちゃん!
そいつ、雷の発動が早くなってる!」
「え?」
イピリアの方を見ると、そいつは今にも雷光を放ちそうな勢いである。
さっきユウカに放った時よりも、攻撃態勢に移る時間が早い。
このままでは、モモイが奥の手を放つよりも早く、イピリアが雷を放ってしまう。
「や、やば―――」
だが、術式を起動してしまったモモイはどうすればいいのかわからない。
このまま奥の手を撃つのは絶対に間に合わない。
では違う術式は? いや、今更術式の切り替えなど遅すぎる。
ならば逃げる? だが、このチャンスを逃しては、あとどれくらい自分たちの体力が持つか分からない。
焦りからか、どうやって逃げるかということさえも頭に浮かばない中で。
一振りの剣が飛んできて、イピリアの首筋に突き刺さった。
「「「!!!!」」」
この場にいる者は、イピリアと『ミレニアム』の冒険者。剣を使うとなれば、アリスだ。
モモイがアリスを見ると、アリスはその手に剣を持ったまま驚きに目を見開いている。彼女ではない。
と、なると誰が―――と周りを見渡すより先に、声をあげた人がいた。
「こっちを見なさい、イピリア!
うちの子達には……それ以上、手は出させないわよ!!」
ユウカだ。
その傍らには、ユズが笑顔で3人に合図を送っていた。ユウカの蘇生に成功した、ということだろう。
先程倒れたハズの死に体の人間の啖呵を耳にしたイピリアは、首をゆっくりとユウカの方に向けた。
「ユウカ、ユズ!危ない!!」
意識が戻ったばっかりのユウカと、回復役のユズに、あの恐ろしい雷が再び向けられる。
いくら何でも病み上がりにはキツすぎる。思わずよぎった最悪の未来図にモモイ達が声をあげる。
だが、再びイピリアの雷撃は発射されなかった。
イピリアの顔面を、横薙ぎにぶん殴った者が現れたのだ。
「フン…作戦に穴がありすぎだ、新米ども。下手を打てば死ぬって俺の話、聞いてなかったようだな」
重厚な装備。そこから覗く赤い髪。高い背。腰に差した剣。両手には、片手で持てる小さな盾と、普段は背負っている大きな斧。極めつけは………鼻につくような憎まれ口。
『ミレニアム』の少女たちは、突如戦場に現れたその男の正体を、一瞬で理解した。
「だがまぁ………自分たちだけでイピリアをここまで追い込んだパーティは、お前らが初めてだ」
ブランだ。ミレニアムの5人が樹海に挑み始めて以降、初めて彼女たちに助太刀をするように現れ、彼女たちの戦いぶりについて、センスがあると賞賛したのだ。………めちゃくちゃ分かりづらいが。
と、なると、もう一人。ブランに続いて手を貸すものが……確実に、いる。
「グオオオァァァァ!?!?」
「!?」
「あら、今日は珍しいこともあるものですね」
イピリアの横っ腹に、炎の槍が突き刺さる。
悶える虹蜥蜴を呆気に取られて見ていた5人だったが、気が付けばユウカとユズの隣に、黒髪のアルケミストが立っていた。
「ブランが新人を褒めるなんて、よっぽどのことがなければあり得ないんですよ」
「余計な事を言うなリノア。別に俺は、進んで人を見捨てる気もねぇってこった」
「本当に珍しいですね♪ いつの間に彼女たちをそこまで買っていたのですか?」
「チッ………おいモモイ・サイバ。さっさと決めろ」
「ぅえええっ!!? わ、私!?」
「じゃなかったらその手の術式は何なんだ。
あの虹蜥蜴に食らわせるつもりじゃあなかったのか」
ぶっきらぼうなブランの指摘を受けて、正気に戻ったモモイ。
今、その手の中には、イピリアを倒すための全力を込めた術式が発動を待っている。
そして、目の前のイピリアはブランとリノアの攻撃に悶え、隙だらけだ。これを逃す手はない。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!!」
それに気づいたモモイは、イピリアの口に回り込んで、未だ光り輝く喉の奥に向かって―――
「いっけぇぇぇぇぇぇえええええええええええええええええ!!!」
―――
モモイの全力の術式は、イピリアの口内の電気とぶつかり合って―――爆ぜた。
首から上を真っ黒に焦がしたイピリアは、ゆっくりと巨体が横に倒れて……やがて、動かなくなった。
それは即ち、ギルド『ミレニアム』が、
「お疲れ様でした、ユウカちゃん、皆」
リノアの労う声が耳を揺らす。
それに軽くお礼を言いながら、5人は、手をあげて、それぞれハイタッチを交わした。
普段はこういう場面では飛び回りそうなモモイでさえ、この激戦の後では、はしゃぐ元気も残っていなかった、ということだろう。
「これ、飲んでおいてくださいね」
「それは?」
「花蜜のジュースです。それを飲んで、しっかり休んでから戻ってきてください。
私たちは、先に貴方たちがイピリアを討伐したと、辺境伯様に報告してきますね」
ユズにジュースを渡しながらそう言うと、リノアはアリアドネの糸を掲げる。
それだけで笑顔のリノアと、こちらを見ようともしないブランは、あたたかな光に包まれて消えていった。リカタ・ジュタに帰還したのだろう。
「さてと」
ユウカがジュースを配りながら、戦場を見渡す。
先程までイピリアがいたからか、魔物がやってくる気配は一切ない。
目立つものがあるとすれば、倒れ伏して動かないイピリアと、それを相手に意気揚々とドロップアイテムの採取………要するに剥ぎ取りをしているアリスだけだ。
「みんな大丈夫? 怪我とかはなさそうだけど、疲れてるんじゃない?」
「いや…一番大変だったのはユウカ先輩なんじゃ」
「そうだよ、イピリアの電撃くらって倒れて…肝を冷やしたんだからね!」
「……そうね、ごめんなさい。
今回ばっかりは、足を引っ張っちゃったわね。セミナーとして、立つ瀬がないわ」
ジュースを口に付け、各々が休憩に入った、激戦の跡地。
それぞれが戦いで受けた傷や溜まった疲れを労いあう中、やけに静かなモモイに、ミドリが気付く。
「…? お姉ちゃん?」
「――――――」
「一体どうし―――」
「…お」
「お?」
「思い出したーーーーーーーーーーーッッッ!!!!!」
弾かれるように立ち上がりながら絶叫する。
その様子に、ユウカやミドリ、ユズは目を丸くする。
尋常ではない様子で、イピリアの剥ぎ取りをしていたアリスも急いで戻ってくる程だ。
「どうしたんですか、モモイ!」
「
「決まってるじゃんそんなの!
「「「「!!!!」」」」
モモイが唐突に叫んだこと。
それは、キヴォトスからリカタ・ジュタにやってきてしまった少女たちが、何よりも求めていたものであった。
Tip!:今作・ブルア界樹の迷宮のアルケミストのフォーススキル
フォースブースト・分析魔装
3ターンの間、術式スキルの威力が上昇し、消費TPが半減される。世界樹Xのゾディアックのフォースブーストみたいなモン。
フォースブレイク・超核熱の術式
敵全体に、強力な無属性攻撃を放つ
定量分析くん?あぁ、彼はパッシブスキルになったよ。
第一階層ボス・イピリアドロップ品
虹色の髭 ……通常
痺れる雷色の虹鱗……条件:麻痺状態で撃破
ここまで読んでくれた君は、この小説に感想を送ってもいいし、高評価をつけてもいい。また、アンケートに答えてくれても構わない。
もちろん、存在しない記憶を投げるのも、違う世界線の透き通った世界樹の迷宮を創造するのも、踏破した迷宮の思い出を語るのも自由だ。
思い入れのある世界樹の迷宮ナンバリングは?
-
初代
-
Ⅱ・諸王の聖杯
-
Ⅲ・星海の来訪者
-
Ⅳ・伝承の巨神
-
Ⅴ・長き神話の果て
-
新Ⅰ・ミレニアムの少女
-
新Ⅱ・ファフニールの騎士
-
X
-
リマスター版
-
不思議のダンジョンⅠ・Ⅱ
-
その他(拙作の存在しない記憶を語る)