ブルア界樹の迷宮   作:伝説の超三毛猫

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ブルアカ×世界樹の迷宮、略してブルア界樹の迷宮です。
種さんのセイアとLynnさんのリオ会長共々、対戦よろしくお願いします。

いつも高評価・感想ありがとうございます。皆様が創作の励みです。
今回は箸休め回です。ジビエカレーライスとか鹿肉のステーキとか食べてみたい。なんというか、「まったくイメージできない肉・素材」で「イメージしやすい料理」が出来るのがいい。ただし虫料理、貴様らは多分リアルで出されても食える気がしない。


カイルと樹海料理

 ギルド『ミレニアム』は、依頼を受けていた。

 キヴォトスから迷い込んだ生徒である彼女たちは、元々キヴォトスへ帰る手がかりを探すために樹海の探索を行っているのだが、時折収入のために依頼(クエスト)を受ける事があるのだ。

 

「ここで食材集めねぇ…」

「食べられる物あるのかな?」

 

 今回受けた依頼(クエスト)は…普段5人が使用している宿の主人・カイルからのもの。

 極彩色ノ茸林において、食べられそうな物を出来るだけ多く調達してほしい、というものだ。

 

「キノコしか採れなさそう…」

「確かに…」

 

 極彩色ノ茸林は、見渡す限りキノコに覆い尽くされたような樹海だ。

 足元を見ればキノコ、前に視線を移せばキノコ、見上げればキノコ………どのキノコも、キヴォトスでは見た事がなく、どのような味なのか想像出来ない。

 

「この依頼さ、ここらのキノコをテキトーに刈るだけ…じゃ駄目だよね? きっと」

「どうなんだろう……そもそも食べられるのかな?」

「見たことのないキノコは毒の可能性があるから取らないほうが良いのだけれど……」

 

 そもそも、キヴォトスの…それも科学の都であるミレニアムサイエンススクールからやってきた彼女たちからすれば、見ず知らずのキノコを食材として採るにはかなり勇気がいる。少し知識と自重があれば、キノコがすべて食べられるものだと勘違いする者はいないからだ。

 いるとするならば………

 

「アリスは雑草キノコを手に入れた!」

「これももしかしたらワンチャンいけるんじゃ…」

 

「ストップ!お姉ちゃんストップ!?」

「こらっ、待ちなさいモモイ!アリスちゃんも片っ端から採らない!!」

 

 …その最低限の知識さえないか、異世界だから価値観が違うかもしれないと思う者だ。

 最悪、カイルに判断を委ねてもいいが、クエストとして仕事を受け持っている以上、出来るだけ食べられるものだけを持って帰りたい。そう考える真面目なユウカやミドリは、あまりそこら中のキノコを摘むなと警告する。

 

「待ってよ二人とも! ここはキヴォトスじゃないんだよ、リカタ・ジュタなんだよ!?

 どのキノコが食べられて、どれが食べられないかなんて、分かるわけないじゃん!

 なら、全部採ってから調べた方が良いんじゃないの!?」

「どれが食べられるか分からないんなら、なおのこと片っ端から採るのをやめるべきでしょ! 絶対キリがないし危険だよ!」

 

 どちらの意見も簡単に譲る様子がない。

 モモイとミドリ…どちらの言い分も一理あった。

 極彩色ノ茸林が既にキヴォトスの常識から外れている樹海であるため、これまでの常識が通用しない可能性がある。ゆえに、キヴォトスで通用していたキノコに対する常識が、まるで通用しない可能性もあるのだ。

 とはいえ、未知数なキノコの群れであることは事実………どのキノコが無毒で、どれが有毒かなど、分かるわけがない。

 なので、考えなしに全種類採るよりは、工夫を凝らす必要があった。

 

「あの…」

「ユズ?」

「どうしたの?」

「えっと……ここの魔物が何を食べてるか、で…判断できないかな?」

「「!!!」」

 

 ユズの提案にその手があったか、と手を打つ姉妹。

 

「……やみくもに採るよりはマシかもね」

 

 暫くは、樹海の魔物が食べるキノコで判別する、という方針を取った。

 この手を使っていれば、少なくとも他の生物さえ食べない毒物は回避できるからである。

 

 勿論、この依頼はただキノコを採取して終わるものではない。

 

「モモイ!最後の一匹!」

「オッケー! これで終わりだぁー!」

 

 樹海の中では、危険な魔物が冒険者たちに襲いくる。

 たった今も、魔物の群れを薙ぎ払い、最後に残った森ウサギをモモイの炎の術式が焼き尽くしたところであった。

 

「相変わらず魔物が襲ってくるよねー」

「…………」

「アリス?」

「アリス、閃きました。

 これ、食べられませんか?」

 

 アリスが指さしたのは、焦げたウサギに斬り伏せたキノコ達……要は先程まで戦っていた魔物の群れであった。

 

「えぇぇぇっ!? 本気で言ってる…!?」

「た、確かにウサギ肉はジビエとしてある…かな…」

 

 

 こうして、アリス達は樹海の探索を続けながらも、魔物からも食材になりそうなものを採るようになった。

 

「これなんてどうかな?」

「え、そいつ毒持ちじゃん! 絶対ダメだよ!」

「い、一応だよ! 解毒する方法とかあるかもじゃん!」

「一応で持って帰っていいものかなぁ…」

 

 例えば、ひとりでに動くキノコの魔物群。

 ただ、それらは元々毒で冒険者を苦しめる魔物たちだ。

 毒マツタケ、痺れエリンギ、トリップマッシュ……どれも食材としては望み薄だろう。

 だがモモイは、念のため一応と称して持って帰ることにする。

 

「パンパカパーン! アリス達は怪しい石像をやっつけた!」

「この石像…体内に動力でもあるのかしら」

「持って帰って調べますか?」

「そうね……シフォンさんの元で売ればお金になるかも」

「食材はどうでしょう?」

「イヤ石でしょコレ! 流石に無理だよ!!?」

 

 例えば、ひとりでに動き、石の爪で襲い掛かってきた怪しい石像。

 石でできた鋭い爪で、前列を薙ぎ払いに来た自立人形。物理攻撃にも強く、モモイの術式でようやく壊せた代物だった。

 ユウカを始めとした、科学の徒であるミレニアムの生徒たちにとっては、動力が不明なまま動く魔物に興味がわき、素材をはぎ取った。だが身体は石そのものであるため、食材としての利用はほぼ諦めていた。

 

「見てください!こことか食材になりませんか!?」

「確かに……こんなでっかい鳥みたことないけど…」

「食べられそうか否かで言えば、食べられそうか……それじゃ、解体していく?」

「はい! アリスにお任せです!」

 

 例えば、カラフルで巨大な駝鳥。

 強靭な脚で突撃を繰り返し、パーティ全員を撥ね飛ばそうとしてきたが、なんとか足を封じて勝利。

 キノコや石像と違い、鶏肉を食べるというイメージが湧いたために、倒した駝鳥―――ジャイアントモアから素材と肉を採ることに反対する人はいなかった。

 

 こうして、様々な素材を採ること数時間。

 『ミレニアム』の少女たちは、素材を持ってカイルの元に帰還することが出来たのである。

 

 

 

 

 

「カイル!只今帰りました!」

「おや…アリスちゃん!他の皆も!帰って来たんだね!」

 

 冒険者の宿―――『カイリーの宿』に顔を出した5人は、早速宿の主人・カイルに今回の探索で得た素材を見てもらうことにした。

 

「これは……いっぱい採ってきたね!」

「モモイとアリスが片っ端から採ってきたから、毒の有無は分からないですが…」

 

 森ウサギ、ジャイアントモア、怪しい石像、毒キノコモンスター3種といった魔物から採れた素材に、採取の場所で採れた巨大シイタケ、虹茸、岩茸……更には、極彩色ノ茸林のそこら辺に生えていた雑草キノコや茂みのキノコ、果てはキノコの大樹の皮なども出てくる。

 想像以上の収穫だったのだろう。それを見たカイルは、ユウカ達に微笑んで。

 

「大丈夫! 僕なら、毒の有無が分かるから。

 あぁ、それと…もしよければ、これで作る新作メニューの味見をしていってくれないかな?」

 

 持ってきた食材を調理してみて、試作を食べさせてくれる。

 そのカイルの申し出に、5人は顔を見合わせて、顔をほころばせた。

 どう返事するかなど、明らかであった。

 

 程なくして、宿のキッチンで調理が始まった。

 いい香りが、リビングに充満し始める。

 

 

「美味しそうな香り…!」

「ちょっと、おなかが減ってきたかも……!」

「手際良いわね、カイルさん…」

「楽しみだなー!」

「楽しみです!」

 

 カウンターに座った5人が各々、料理の完成をしばし待つ。

 程なくして、カイルが一つ目の皿を持ってきた。

 それは、キノコのスライスが乗った鶏肉のステーキだった。きつね色になるまでパリパリに焼きあがった皮からは、バターとキノコ達の香ばしい香りがする。

 

「「「「「おぉぉ……!!」」」」」

「“巨駝鳥のモモステーキ・キノコソース”です」

 

 焼きあがった鶏肉の匂いは、あっという間に『ミレニアム』の少女たちの空腹を刺激した。

 たまらずといった様子で、一人、また一人とナイフとフォークを持ち、己の目の前に置かれたチキンステーキを切り分けようとしている。

 それを口に運ぶと――――――感じ取ったのは、バターの口当たり鳥の皮、ジューシーな肉質であった。肉の繊維は歯で簡単に切れるほど柔らかいのに、皮は歯に挟まれる度にパリ、パリと口の中で弾けて音が鳴る。

 あとから来るのは、キノコ独特の香りと歯ごたえ。鶏肉の肉汁を邪魔することなく、柔らかな味と香りを後に残していく。

 

「うんまいぃぃぃ~~~~ッ!!」

「これがあのジャイアントモアだなんて…!」

 

 思わずモモイとユウカから声が零れる。他の面々も、それぞれ美味しそうにチキンステーキを食べ進めていた。

 それが半分くらいになったところで、別の料理が運ばれてきた。

 

「それは?」

「“樹海キノコの八宝菜”です」

「こ、これ全部キノコ~~~~?」

「はい。エビと卵以外は全部キノコですよ」

 

 続いて運ばれてきたのは、大小彩りさまざまなキノコが、小エビやウズラの卵と共に、透き通った餡に絡めて煮込まれた料理に、ほぉ、と息が出る。

 試しに口に運んでみると、あらゆる食感が飛び出してきた。キノコ特有の柔らかい歯ごたえはもちろんのこと、シャキシャキとまるで野菜のような歯ごたえに、ベイビーコーンのようなコリッとした味わいも出る。言われなければ、キノコしか使っていないとは夢にも思わないだろう。

 

「……というかこれ、魔物のキノコじゃないですか。使って大丈夫なんですか?」

「ふふ。意外かもしれないけど、このキノコ達は十分に加熱すれば無毒化できるんだよ」

 

 特に直接火で炙るのが一番だよ、と言いながら調理の手を緩めずに進めるカイルからは、確固たる自信からくる料理人のプライドが感じられた。どうやら、中毒の危険性はないらしい。

 

「あ、そうだ!カイルさん、アリスちゃんが持ってきた怪しい石像は…?」

「石は流石に、食べられないんじゃないかな……」

「あはは、アレならアレで、使いようがあるんだよ。はいこれ」

 

 思い出したようにアリスが持って帰った石像の話題を出したミドリとユズの前に、木製の皿が置かれる。

 中に入っていたのは、湯だった出汁と煮込まれた肉・野菜……そして、不気味な見た目をした石―――怪しい石像の頭部だった。

 

「うわっ!」

「あ、あの……カイル、さん?」

「何だい?」

「えっと、その………こ、これは、その。ナニ、ですか…?」

「“怪しい石焼き鍋”だよ。火にくべた熱い石で調理してるから、最後まであったかいんだ」

「あ、成程………石を食べるかと思ってビックリしました」

 

 最初は、インパクトのある見た目に驚いたユズだったが、いざ鍋の中に浸っている長葱を取り出して食べてみると………その味に目を見開く。

 

「あふっ…はふっ、はふ…」

「ははは、急いで食べなくて大丈夫さ。石焼き鍋は簡単に冷えたりしない」

「凄いですね。この発想はありませんでした」

 

 食べられない石から出てきた、見た目も楽しめる料理。

 熱された怪しい石像の石で調理された肉や野菜は、『ミレニアム』の少女たちを存分に楽しませることが出来た。

 

「今日はありがとうございました、カイルさん。

 依頼の報酬だけじゃあなくって、ここまでご馳走してくれて」

「良いのさ。僕やリーシェにとっては、君たちは娘みたいなものさ」

「カイルって何歳なのさ…」

「そういえば、リーシェナさんはどちらに?」

「数十分前に買い出しに行ったよ。そろそろ戻ってくるかな」

 

 そう言った直後、宿の玄関から「ただいまー!」と声が聞こえた。

 全員がその声に気付いて間もなく、短く切りそろえた金髪の美女が両手に買い物袋を提げて帰ってくる。

 彼女こそ、カイリーの宿の女将にして、カイルの妻であるリーシェナである。

 

「あなたー! 荷物運んでー!」

「勿論さリーシェ!今行くよ!

 ……さて、僕は行かなきゃ。愛しのハニーが助けを待ってるんでね!」

 

 イカした笑顔を浮かべながら、颯爽と妻の元へと走っていくカイル。本日も相も変わらぬ熱烈具合である。

 

「………カイルさんとリーシェナさんって、いい人なんだけど、人目を憚らなさすぎる気がするのよね…」

「そうですね………見てるこっちが、恥ずかしくなっちゃう……」

「………………いいんじゃない? お似合いなんだし」

 

 あまりに人目を気にしなさすぎる鴛鴦夫婦に、見ている方が恥ずかしくなると言わんばかりに赤面する一同。新婚ならまだしも、アレで3年目だそうだ。結婚生活など、まだ学生の彼女達には想像出来ないが、それでも信じられない話であった。

 

「あれ、アリスちゃんは?」

「あそこ」

「え?」

 

「リーシェナ! 緊急クエストですか?アリスがクエストを受けます!」

「えー!良いの!? じゃあお願いしようかな〜」

「はい!アリスは『荷物運び』のクエストを受注しました!」

 

「行動が早いっ!?」

「ちょっと! 私まだ食べ終わってないのに!」

「というかアリスちゃんは食べ終わったの?」

「え! あ、えっと、はい!」

「目を逸らした!あとちょっと言い淀んだわね!

 ちゃんと食べてからにしなさい!!」

 

 リーシェナを手伝おうとしたアリスが、まだ食事中であることに気が付いて注意するユウカ。

 それを筆頭に、カイリーの宿では、『ミレニアム』の少女たちと共に、いつも通りのにぎやかな時間が流れていくのであった。

 




Tip!:樹海料理
新・世界樹の迷宮2で生まれたシステム。採取・伐採・採掘した食材や討伐した魔物の肉等から、探索時に付与効果をもたらす料理を提供する。
探索準備だけでなく、街の人々にも売る事が出来、冒険者の収入にもなっている。

リカタ・ジュタの樹海料理
★1
和 はさみカブトの姿焼き・赤青蟹の味噌汁・梟の軟骨揚げ・くるみ羊羹
洋 鹿肉のステーキ・クルミ入りライ麦パン・鹿肉と樹海野菜のトマト鍋・ラフレシアティー
中 球獣肉の中華炒め・鹿肉のタタキ風・軟骨揚げシトロン餡かけ丼・黒茶

★2
和 マツタケの炊き込みご飯・怪しい石焼き鍋・三種キノコの佃煮・???
洋 モモステーキキノコソース・キノコの親子ステーキ・樹海キノコパスタ・???
中 樹海キノコの八宝菜・樹海マトンの上海焼きそば・???・???
※???はシンプルに思いつかなかっただけです。申し訳ない…



魔物図鑑
怪しい石像
ひとりでに動く、不気味な見た目をした石像。冒険者の前に現れ、岩石製の鋭い爪で薙ぎ払ってくる。物理的な攻撃には高い耐性を持つ反面、雷には弱い。熱にも強く割れにくいため、石焼き鍋の金石として使用されることも。

ジャイアントモア
かつての時代に絶滅したハズの、強靭な脚を持つ巨鳥。そのフィジカルを利用して、全員に突撃してくる。脚部をよく使用する=肉がしっかりしており、料理に使うと絶品。



ここまで読んでくれた君は、この小説に感想を送ってもいいし、高評価をつけてもいい。
送る感想は短くても長くても構わない。感想があることで作者のモチベーションが上がり、よりハイペースでリカタ・ジュタの樹海の謎が明らかになるだろう。
もちろん、存在しない記憶を投げるのも、違う世界線の透き通った世界樹の迷宮を創造するのも、また踏破した迷宮の思い出を語りに来るのも自由だ。

思い入れのある世界樹の迷宮ナンバリングは?

  • 初代
  • Ⅱ・諸王の聖杯
  • Ⅲ・星海の来訪者
  • Ⅳ・伝承の巨神
  • Ⅴ・長き神話の果て
  • 新Ⅰ・ミレニアムの少女
  • 新Ⅱ・ファフニールの騎士
  • X
  • リマスター版
  • 不思議のダンジョンⅠ・Ⅱ
  • その他(拙作の存在しない記憶を語る)
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