ブルア界樹の迷宮   作:伝説の超三毛猫

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ブルアカ×世界樹の迷宮、略してブルア界樹の迷宮です。
対戦よろしくお願いします。
気が付けば投稿がひと月ぶりになっちまった………(戦慄)


巨大茸の胞子に頭を抱えて進む道

「ねぇ~~、そろそろキノコも見飽きたよ~」

「わがまま言わないのモモイ。着実に進んではいるハズよ」

「代り映えしない光景なのは事実だけどね」

「でも、ユウカの言う通りアリス達は目的地に近づいているハズです!」

 

 進んでも進んでも、大小さまざまなキノコが生えそろうだけの、極彩色ノ茸林。

 始めこそその非日常さに面食らったが、探索が進むにつれて代り映えのしない光景にモモイが辟易とした弱音を吐き出した…そのタイミングで。

 5人は、真新しい脅威に直面することになる。

 

「! 新しいモンスターです! 見てください!」

 

 それは、巨大なキノコであった。

 遠目から見ても人の数倍はありそうな背丈。その上に乗っかっている黄色の傘には、血走ったような赤い目と鋭い牙が生えそろった巨大な口が見えた。

 これまで以上にグロテスクな巨大キノコに、『ミレニアム』の足が止まった。

 

「うわぁ…やばいやついるよ……」

「アードウルフや羊並みのプレッシャーです…」

「ちょっと様子を見てみよう?」

 

 初めて見る強大な魔物を見かけた時のように、その巨大キノコの様子を観察してみる。

 その巨大キノコは、アリス達が発見した後でも、こちらに来る様子はない。まだキノコの方が冒険者たちを見つけていないようだ。

 また、巨大キノコの動きも緩慢だ。まだ獲物を見つけていないから、という可能性もあるが、足のように発達した石突でも、この樹海を歩きにくそうにゆっくりと動いている。これ以上スピードが出ないのであれば、よほどモタついていない限り巨大キノコに捕まりはしないだろう。

 だが、それでも突っ込むのを躊躇う要因はある。それを最初に口にしたのは、モモイだ。

 

「あのキノコの周り……なんか白っぽくなってない?」

「胞子…かな。あのキノコの」

 

 そう。

 問題は、その巨大キノコが、決して狭くはない範囲に胞子をバラ撒きながら歩いているということだ。

 これまでの茸林の探索で、この手のキノコ系の魔物がばら撒く胞子には、人体に害を及ぼす影響があることは何度も経験している以上知っていた。あの巨大キノコの胞子に限って、なにもない訳がない。

 

「あいつ、どっかに行かないかな…?」

「……ちょっと、どっか寄ってみる?」

「それでどこにも行かなかったらまた別の策を考えなくっちゃいけないじゃん」

「あのキノコをどうにかできる方法を少し探してみましょう!」

 

 巨大なキノコが阻む行く手を後にして、少女たちは他の探索していない場所へと回り道をしてみることにする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――一通り、回り道をした結果。

 他の地点を探した結果、宝箱や伐採が可能な場所こそあったものの…先へと進む道は、あの巨大なキノコがいる道しか残っていないようであった。

 そして。その巨大キノコはというと。

 

「「「………」」」

「…まだ、どいてない……」

 

 初めて見た時と変わらず、冒険者たちの行く手を阻む形で胞子をバラ撒き居座っていた。

 このままでは、先へ進むことが出来ない。

 

「うぇぇ……どうする? 私の術式で焼いてみる?」

「それは最終手段ね。こっちに気付いていないとはいえ、流石に攻撃されたら襲い掛かってくるでしょ」

「だよねぇ……」

 

 キノコの胞子、そして同じ階層のキノコの弱点として炎で攻撃してみるかとモモイが苦し紛れに提案する。

 だが、先に攻撃を叩き込んだ場合、魔物の反撃を受ける可能性がある。ましてや目の前の魔物は強大なプレッシャーを放つ巨大キノコ。モモイが術式を撃ちこんだだけで倒れると思うのは希望的観測が過ぎるだろう。

 打つ手なしか。目の前のキノコ、最早戦って排除するしかないか。

 その方向で意見が固まりかけた時。アリスが何かを思いついたように跳ねた。

 

「ちょっと待ってください! アリス、良い作戦を思いつきました!」

「アリスちゃん?」

「それはですね……あのアードウルフを、キノコに突っ込ませます!」

「駄目よ!危険すぎるわ!!」

「うわーん! いい案だと思ったのに!」

「だいたい、あの狼の突撃はとんでもないスピードなのよ。ここまで連れてこられる訳ないじゃないの!」

 

 ユウカの言うことももっともだ。

 無法の鐚呀怒狼(アードウルフ)は、いまだ危険な魔物として認識されているし、習性もいまだ解明中。あの狼の炎なら、胞子どころか巨大キノコ本体すらも焼き尽くせるかもしれないが、策として使うにはいささか危険すぎる。

 だがここで、ユズは思い出した。

 

「あ、あの…!」

「ユズ?」

「これ、使えないかな……?」

「あ、これ、イピリア戦で使った……!」

「明滅弾! それなら、もしかして!」

「うん…! これで、あのキノコの動きを、止められるかもしれない……!」

 

 それは、イピリアと戦った時に使用した、魔物の動きを止める火薬の残りである。

 バックパックの奥から出てきたそれを見て、少女たちはそれを使おうと決めたのであった。

 

 

 ―――手筈通り、空中でバン、と気味のいい音が鳴った瞬間、巨大キノコは唐突な閃光に驚いて動きを止めた。

 その隙に、一気に駆け抜けていく『ミレニアム』の冒険者たち。

 

「ふぅ……」

 

 巨大キノコから距離をおけた先で、ようやく息を吐いたユウカ。

 彼女は、巨大キノコのすぐそばを走り抜ける際、余計な胞子を吸い込まないように息を止めて駆け抜けたのである。

 

「ねぇ、みんなは大―――」

 

 大丈夫?、と言おうとして、言葉に詰まった。

 何故なら……ユウカ以外の4人が、膝を突いて、息を荒げていたからだ。

 その目の様子から、正気とは思えない。まさか、と思いながら近づきつつ4人のリアクションを待った。

 

「アリスは しょうきに もどった! アリスの こうげき です!!」

「あはっ、あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!」

「おっぺけぺ~~どっかーん!!」

「ざぁ~こ♡ざぁ~こ♡」

 

「ちょ、何やってるのよあなた達!? ここ迷宮だから!

 正気に戻りなさいよもう!!!」

 

 正気に戻ったと言いながら、武器を抜いてところかまわず振り回すアリス。壊れたように笑いだすモモイ。明らかに異常な言語を話し出すミドリ。何処かのメスガキのようなことを言い出すユズ。

 全員が全員、確実に混乱している。

 

「まさか、あの巨大キノコの胞子のせい…!? ちょっと胞子の薄い場所を駆け抜けただけなのにっ…!!!」

 

 4人の異常の原因が予想のつくものであることを見抜き、ユウカは戦慄した。

 もし、あのまま戦う選択肢を取っていたら……かなり不味い状況に陥ったのではないだろうか。

 ちょっと近くを通り過ぎただけでこれだ。もし本格的に胞子をかけられたら……想像もしたくない。

 ある意味、ユズが明滅弾のことを思い出してくれて助かったというべきか。

 

「ま、待ちなさい! バラバラに移動しないで! こら、正気に戻りなさいっ!」

 

 そんなことを思ったのも束の間、目の前の惨状をどうにかすることに考えをシフトし、ユウカは混乱した4人をどうにか抑えることに集中するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――時はほぼ同じくして、リカタ・ジュタ、辺境伯の宮殿にて。

 その広間には、3つの人影があった。

 一人は、この宮殿の主。辺境伯の少女フランベリル。

 そして残り二人は……重厚な鎧に身を包んだ、赤髪の男と、軽装の錬金術士の少女。ギルド『アルマリク』のブランとリノアであった。

 

「ご苦労であった、ブランにリノア」

「いいえ。すべて当然のこと」

 

 フランベリルの厳格な言葉に、恭しく跪いて頭を下げるブラン。

 

「そなた程の冒険者がいれば、後続や同期も安心できよう。贔屓目の後進も順調に育っていると聞くぞ」

「ありがとうございます、辺境伯様。ユウカちゃん達はもう熟練の冒険者です。力もめきめきつけてきて…」

「甘やかすな、リノア。アイツらはまだ樹海を舐めている。気を抜けばあっという間に樹海の餌だろうが」

「否定出来ぬのが辛い所だ。だが、成長を一切見ずに色々否定的にものを言うのは良くないぞ、ブランよ」

「…………はい」

「リノアよ、ブランの言い分にも一理ある。彼女たちにはまだ成長の余地が残っている筈だ。一人前ではあっても、熟練と呼ばれるにはまだ時期尚早であろう」

「はい…」

 

 双極的な『ミレニアム』の評価を下すブランとリノアの中庸を探しながら、フランベリルは「そろそろか」と呟いた。

 

「『ミレニアム』は現段階で、どの階まで進んでいるのだ?」

 

『ざっと8階ほどかと…』

 

「ではそろそろあやつについて語るべきだな」

 

 フランベリルは思い出すように天井を見上げた。

 

「この迷宮の街が出来て以来ずっと…冒険者が辛酸を舐め続けた相手。

 茸の分際で我々を惑わし、多くの有望な冒険者を食らってきた、あのキノコだらけの階層を生み出した狡猾な主。

 倒しても倒しても、数日もすれば何事も無かったかのように復活する巨大キノコ。ヤツに決まっていよう……」

 

 フランベリル曰く、狡猾で群れた敵を分断させて襲うこともできる凶悪な魔物。

 キノコだらけの階層を作り上げたと言っても過言ではない、極彩色ノ茸林の主。

 重い口をようやく開いて、フランベリルはそいつの名を口にした。

 

「―――ロビックス

 ようやく…『ミレニアム』がアレに挑む資格を手に入れた、ということか……」

 

「「!!」」

 

「近いうちに、君達冒険者主導で奴の討伐作戦を組む。必要になったら声をかけるゆえ、その際は力を貸してほしい」

 

「御意」

「分かりました…」

 

 フランベリルの厳命に、ブランは一糸乱れることなく、リノアはそれに少々遅れて戸惑い気味に、了承の返事を返す。

 辺境伯の間から去っていく二人に、フランベリルは表情を変えぬまま、鋭い瞳で見送った。

 

「ようやく、歴史が変わるか…」

 

 フランベリルのその独り言は、誰にも聞かれることなく消えた。

 

 

「だ、大丈夫ですかね…? ユウカちゃん達、あのロビックスと戦うなんて」

「アイツらを熟練と言ったのはお前だろ。お前が信じなければ、俺は知らん。そもそも俺は無理だと思うがね」

「ブランは最初からあの子達を信じていないからでしょう。私は信じたうえで、あの子たちの身を案じているんです」

「屁理屈をこねやがる……俺はヤツらの実力をこの目で全て見切るまで認めないってだけだ」

 

 ブランとリノアのそんなやりとりも、特段誰かが気に留めることもない。

 辺境伯の宮殿で始まった、ロビックスなる極彩色ノ茸林の主討伐ミッション。

 それに、ギルド『ミレニアム』が参加し、更なる激戦の渦の中に飛び込んでいくことは………そう、遠くない未来の出来事である。

 




Tip!:ギミックFOE
世界樹の迷宮には、何らかのギミックの代わりになるFOEもいる。そのような魔物は、冒険者に炎を浴びせようとするなどの脅威である一方、上手く活用すれば…?



魔物図鑑
大喰らいの天狗茸
血走った目と鋭い牙が生え揃った口を持つ巨大なキノコ。ハイ・ラガードではダイオウキノコと呼ばれている。鋭い牙で獲物に食らいつくほか、平衡感覚を狂わせる胞子を常に出しており、戦闘中にはランダム複数混乱、マップ中では操作反転の胞子を放つ。なお、操作反転中にエンカウントしたら、1ターンだけとはいえ全員混乱状態で戦闘が始まる。最悪である。



ここまで読んでくれた君は、この小説に感想を送ってもいいし、高評価をつけてもいい。
送る感想は短くても長くても構わない。感想があることで作者のモチベーションが上がり、よりハイペースでリカタ・ジュタの樹海の謎が明らかになるだろう。
もちろん、存在しない記憶を投げるのも、違う世界線の透き通った世界樹の迷宮を創造するのも、また踏破した迷宮の思い出を語りに来るのも自由だ。

思い入れのある世界樹の迷宮ナンバリングは?

  • 初代
  • Ⅱ・諸王の聖杯
  • Ⅲ・星海の来訪者
  • Ⅳ・伝承の巨神
  • Ⅴ・長き神話の果て
  • 新Ⅰ・ミレニアムの少女
  • 新Ⅱ・ファフニールの騎士
  • X
  • リマスター版
  • 不思議のダンジョンⅠ・Ⅱ
  • その他(拙作の存在しない記憶を語る)
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