ブルア界樹の迷宮   作:伝説の超三毛猫

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お久しぶりです。
別連載のコラボ編の連続で参っている内にこんな時期になりました。

ブルーアーカイブ×世界樹の迷宮、略してブルア界樹の迷宮です。対戦よろしくお願いします。
今回は、探索を暫しお休みして街の人達とのコミュ回にしようと思います。


幕間・『ミレニアム』と街の人々
ギルド『ミレニアム』の慌ただしい休日


 リカタ・ジュタの街、恋する雪見亭。

 そこでは常に、様々な冒険者が酒や依頼や、己の冒険譚を語る相手を求めてごった返している。

 

 その日は、いつにも増して盛況であった。

 それは何故か? ……答えは、ただ一つであった。

 

「えーと、鹿肉ステーキの人ー!」

「こっちだ、モモイちゃん!」

 

「ご注文をお伺いします!」

「ははは、硬くならないでミドリちゃん!

 私達アレね、すき焼き鍋とクルミ羊羹3本!」

 

「ユウカちゃーん!エール追加で!」

「こっちもエール頼むよ!」

「はい!ただいま!」

 

「お待たせ、しました……こちら、蟹の味噌汁、5人前です……」

「おぉ!頑張ったね!ユズちゃん!」

「ひっ…い、いえ…ウエイトレスとして…これくらいは…」

 

「ご注文のチキンカレー3人分になります!」

「おっ、ありがとよ!」

「はい!ノルマまで、あともう少しです!」

「頑張れアリスちゃん!!」

 

 ……ギルド『ミレニアム』の少女たちが、期間限定でウエイトレスを行っている。

 リカタ・ジュタでは、その話題が持ちきりになっていたからだ。

 そもそも、ギルド『ミレニアム』の少女たちはかなり見た目が良い。無自覚ながら、華に欠けやすい冒険者という職業の彩りになっていた彼女達の給仕を受けられるとあっては、行かない冒険者はいなかった。

 

「ところで、何で君達がこんな所で給仕なんかしてるんだい?」

 

「え、えーと……実はアリス達、フランベリルに昨日から樹海探索を禁止されてまして…」

 

「え、禁止!!?」

 

「明後日には解禁されるんですが……それを知ったリンダが『折角だからここで働いていきな』と……」

 

 そんな事を彼女たちがしている理由だが…フランベリルによる一種の「謹慎令」が『ミレニアム』に出されたことが原因だった。

 きっかけは……先日彼女たちが活躍した事によって討伐された、極彩色ノ茸林の王、ロビックス討伐作戦の時。ロビックスの罠に嵌められ、撤退しようとした所、『ミレニアム』はロビックスの元へ辿り着き、そのままロビックスを撃破した―――わけだが。

 その行動のあまりの危険さが、リカタ・ジュタ中に知れ渡ったのだ。

 リンダから拳骨入りの説教を受けたことに始まり、ブランやリノアにも叱られ、フランベリルからも「謹慎令」を出されるに至ったのだ。

 

『今回は運が良かっただけだ、調子に乗るな馬鹿共が』

『みんな、心配したんですよ? 撤退できなかった気持ちもわかりますが、もっと自分自身を大事にしてください』

『不幸が重なっただけだ、というのは理解できる。だが、我々にとって君達はもう大事な冒険者なのだ。無理はして欲しくない』

 

 そして、暫く休むべきだと判断したフランベリルによって、彼女達は樹海の入口に近づけなくなってしまったのだ。数日で解禁されるとはいえ、彼女達にとっては、キヴォトスへ戻る手がかりへの道を遠回りさせられたようで、焦りが隠せていなかった。

 それを見兼ねたリンダによって臨時的に雇われて……今に至るのであった。

 

「うぅぅ〜〜っ、これさえ無ければもう次の階層行ってたのに〜〜!!」

「おっ、気になるかい? なら教えよう、次の階層は———」

「わぁぁぁぁぁあーーーっ!! 駄目駄目駄目駄目!!!

 ネタバレは厳禁だって言ってるでしょー!!!」

「お姉ちゃん仕事してよ……」

 

 そのため、迷宮の探索は他の冒険者に遅れを取りつつある。

 新階層に行ってきた冒険者の話を、「ネタバレは駄目」と聞くまいとしているモモイと、それに呆れた視線を向ける妹のミドリ。こういったやり取りがまた、冒険者達の心を掴む。

 

「おやおや、精が出てるね」

「り、リンダ!?」

「ご、ごめんなさい!お姉ちゃんがまた仕事サボって……」

 

 リンダに声をかけられ、ミドリは慌ててモモイをたしなめた。給仕を装って冒険者の話に混じっていたモモイは、リンダの登場にバツが悪そうな顔をする。

 

「何言ってんだい。話をするのも、立派な仕事さね」

 

 リンダは豪快に笑うと、カウンターの中からモモイたちを見渡した。

 

「ま、精が出るのは良いことだが……お前さんたち、次の階層が気になって仕方ないって顔してるね」

「うぐっ……」

 

 モモイは顔を覆った。

 

「わかってるのに言わないでよリンダさん!」

「そりゃ、聞きたくなるさ。リカタ・ジュタの冒険者なら、誰もが知りたいことだからね」

 

 ユウカがトレーを片付けながら、ふと疑問を口にした。

 

「そういえば、リンダさん……」

 

 ユウカは、この賑わいの中心にいる冒険者たちをちらりと見た。彼らは酒を飲み、笑い、まるで明日をも知れぬ生活を楽しんでいるように見えた。

 

「何故、みんなは世界樹に挑むんですか?」

 

 ―――そうまでして、彼らは一体何を求めているのだろうか。

 それは、ギルド『ミレニアム』の少女たちにとって、最も単純でありながら、最も無関心であった問いだった。

 彼女たちの目的はただ一つ、キヴォトスへの帰還の手がかりを探すこと。他の冒険者たちが何を求めているか、深く考えたことはなかった。

 

 ユウカの問いに、近くの席に座っていた髭面のベテラン冒険者が、鹿肉ステーキを噛みしめながら答えた。

 

「そりゃあ決まってるだろう、ユウカちゃん!」

 

 冒険者は豪快に笑い、テーブルを叩いた。

 

「世界樹の迷宮の奥の奥には、お宝が眠ってるからな!」

「お宝……ですか?」

「そうよ、お宝!金銀財宝!見たこともねぇマジックアイテム!見つけりゃ絶対、大金持ちになれるってぇの!」

 

 コップの酒を一気飲みする。

 そんな彼に、脇から別の冒険者から反論の声があがった。

 

「おい、冒険者が全員お前みたいな俗物みたいに言うな!」

「何だと!じゃあお前は金目当てじゃないって言うのか?」

「当然だ。僕はこの世界にはまだない、崇高な叡智を求めて迷宮に挑んでいるんだぞ。僕の街では全員そう言って迷宮に挑んだ」

「いやいや!迷宮の宝だからって、お金や知恵とは限らないよ!!最強になれる技術かもしれないじゃない!」

「私達はそもそも、そのお宝の正体知りたくて挑んでる感あるもんねー」

 

 わーわー、と頼んでもいないのに世界樹の迷宮のお宝の話題を巡って、言い争いを始める冒険者たち。大なり小なり、もう全員酔いが回っていた。

 

「お宝があるなんて、何で分かるのかな?誰か見つけた人がいるわけでもないのに…」

「ミドリ、そんなこと聞いたら失礼だよ……」

 

 ミドリは半眼になりながら呟いた。

 それを聞いたユズは不安げにミドリの袖を引いて咎める。

 

「いや、いいんだユズちゃん。ミドリちゃんの疑問は当然だろう」

 

 リンダは懐かしむように遠い目をした。

 

「この地にはね、昔から伝わる言い伝えがあるんだよ」

 

 リンダはカウンターの木を軽く叩きながら、落ち着いた声で語り始めた。酒場の喧騒が一瞬静まり、周囲の冒険者たちも耳を傾けた。

 

遥か昔、この地がまだ幼い頃、世界に大いなる厄災が降りかかった。空に浮かぶ七つの光が大地を覆い、あらゆるものを飲み込もうとした時、遠い空の彼方から、小さな箱舟に乗って乙女たちが降り立ったという

 

 この話は、リカタ・ジュタに住まう者たちなら誰もが知っているが、リンダが語る伝説にはどこか言葉では説明できない重みがあった。

 語られていくリンダの言葉に、ユウカとミドリは思わず顔を見合わせた。

 

彼女たちは頭上に輪っかを戴いていて、整った顔つきや体つきから、天使のように美しかったと伝えられる。彼女たちは、荒れ果てた大地に新たな命を吹き込み、私たちリカタ・ジュタの祖となったのだ

「頭上に、輪っか…?」

 

 アリスがぽつりと呟いた。

 

祖は言う。大樹の頂に、私たちの宝物をおいてきたと。

 かけがえのないものを置いてきてしまった、と。

 その“宝物”の正体は誰も知らない。―――それからというもの、リカタ・ジュタには大樹の頂を目指す冒険者が集まるようになったのさ。その“宝物”の正体を確かめるためにね」

 

「そうそう!私達はその神話を確かめるために冒険者になったんだ!」

「おうよ!ロマンも掴めて億万長者にもなれる!一石二鳥どころの話じゃないぜ!」

「だから、君はどうしてこう、お宝って言葉をそのまま捉えるかな…!」

「本に書いてあることがなんで宝になんだよ! もっと分かりやすい言い方するだろうが―――」

 

 リンダの話が終わると、酒場は再び、お宝の正体を巡って喧騒を取り戻し始めたが、モモイたちの心の中は静まり返っていた。

 

「……天使の輪」

「箱舟に乗って……」

「祖となった……?」

 

 モモイ達は頭の中でリンダの言葉を反芻する。それは、彼女たちが知る自分たちの世界と、あまりにも奇妙に重なる部分が多かった。

 

「ねぇ、ユウカ……」

 

 モモイが小さな声で尋ねた。

 

「その伝説の『宝物』って、もしかして私たちが探している……」

 

 リンダが語った伝説の『宝物』とは、自分たちの故郷―――キヴォトスに関係あるものではないか。元の世界へ帰る為の装置か何かのことではないのか、と。

 ユウカは、しばらく悩んだそぶりをして……首を横に振った。

 

「流石に、そこまでは分からないわ」

 

 ユウカは神妙な面持ちで続ける。

 

「ただ、私たちが世界樹を登る目的と、皆が世界樹を目指す目的は、一致するところがあるのかもしれないわね」

「あの、それなんですけどユウカ―――」

「邪魔するぜ」

「「「!」」」

 

 アリスがユウカになにか言いかけた時。店のドアが開いた。

 客は、『ミレニアム』を何かと気にかけていたギルド『アルマリク』の一人……ソードマンのブランであった。

 ブランは、カウンターに腰かけると、リンダに話しかけた。

 

「リンダさん、いつもの」

「あいよ」

「い、いつもの…って……!カッコいい!」

「はぁ?何言ってんだモモイ・サイバ」

「いや、分からない!? こう、行きつけのバーに座って『いつもの』って頼むアレだよ!ゲームとかドラマとかでよくある!!」

「………お前は何を言ってやがる?」

 

 ブランは心底理解できないといった顔でモモイを一瞥した。モモイは「何でわからないかなぁ!」と不満げに頬を膨らませるが、ブランは全く意に介さない。

 ユウカは、ブランの様子を静かに観察していた。普段はぶっきらぼうながら、ロビックス討伐戦では命がけで自分たちを守ってくれたブラン。彼もまた、世界樹に挑む理由を持っているはずだ。

 

「あの、ブランさん」と、ユウカは意を決して声をかけた。

 

「ブランさんは、何のために世界樹の迷宮に挑んでいるんですか?」

 

 ブランは、リンダから渡されたエールを一気に飲み干し、豪快に息を吐いた。

 

「ハッ。そんなもの、決まってんだろ」

 

 ブランはユウカを正面から見据え、一言。

 

「金だ」

「えっ…」

 

 ユウカは一瞬言葉を失った。あまりにも単純明快で、何の含みもない答え。

 

「おぉ、金目当てだったのか、ブラン!」と、近くの冒険者たちが再び囃し立て始める。

 

「お前と一緒にするんじゃねぇ。俺にはな、明確な目的がある。それを達成するために、途方もねぇ程の金が要るってだけだ」

 

 つまらなそうに囃し立てた男をあしらって、エールを仰ぐように一口、喉へ注ぎ込む。

 そして、鷹のような目をユウカに向けて、こう問い返した。

 

「お前らこそどうなんだ?」

 

 ブランは冷めた目で『ミレニアム』の四人を見回した。「お前らが命を賭けて迷宮に潜る理由は何だ? その反応からして、金目当てじゃなさそうだが」

 ユウカは一瞬、答えに窮した。元の世界に戻るだの何だの、現実主義な考えを持つブランに言って信じてもらえるとは思い難い。だが、他の言い訳も咄嗟に思いつかない。

 とにかくブランの問いにはやく答えなければ、とユウカが口を開いた、まさにその瞬間だった。

 

「お…お待たせいたしました……!り、リンダさんの特製、薬草と鳥肉のシチューです……」

 

 ユズが、湯気を立てる大きな鍋を両手に抱えてカウンターにやってきた。その湯気と香りは、酒場の喧騒を一瞬で打ち消すほど食欲をそそるものだった。

 

「おお、来たか。腹が減っては戦はできねぇからな」

 

 ブランはシチューの香りに顔を緩ませ、そのままユズから鍋を受け取った。

 

「ひっ……!い、いえ、どうぞごゆっくり……!」

 

 ユズはブランの迫力に怯えながらも、どうにか鍋を渡し終える。ブランはシチューを口に運び、満足そうに頷いた。

 

「うめぇな……やっぱシチューはこれ以外ありえねぇ」

 

 ブランがシチューに夢中になったことで、先ほどのシリアスな問いかけは、うやむやになったまま打ち切られた。ユウカは、料理を持ってきたユズに笑顔で耳打ちする。

 

「ナイスよ、ユズ。助かったわ」

「? 何がですか?」

「……ふふっ、後で教えるわ」

 

 ただリンダの料理を運んできただけのユズには、何のことかわからず、首を傾げることしかできなかった。

 

 

 

 

 しばらくして、客たちが各々の食事を終え、帰路につき始めて客もまばらになってきた頃。

 ユウカは、モモイたちが残りの客への給仕で席を外した隙に、アリスにそっと話しかけた。

 

「ねえ、アリスちゃん。さっき私に言いかけていたこと、何だったの?」

「はい、ユウカ」

 

 アリスは真剣な瞳で言った。

 

「アリスは、リンダさんが語ってくださったリカタ・ジュタの生まれについての話が、ただの伝説じゃない気がします」

「ただの伝説じゃない……?」

「はい。箱舟、天使の輪……私たちとあまりにそっくりです。そして、『かけがえのないもの』という言葉………もしかしたら私たちがここに来るきっかけになった、モモイやミドリの記憶と関係しているのではないでしょうか」

 

 アリスはさらに続けた。

 

「それだけではありません。伝説の『祖』は、この世界に『新たな命を吹き込んだ』と伝えられています。

 ユウカ……アリス、思うのです。リカタ・ジュタの祖となった乙女たちは、私たちと同じように、キヴォトスからこの世界に転移してきた、別の時代の…」

 

 アリスは一度言葉を切り、周囲を警戒するように目線を動かしてから、小さな声で、しかし確信を持って囁いた。

 

「『()()()()()』だったのではないでしょうか」

 

 その言葉は、ユウカの脳裏に強い衝撃となって響いた。彼女たちが抱いていた漠然とした不安と希望が、一つの明確な仮説として形になった瞬間だった。

 

「……アリスちゃん」

 

 ユウカはアリスの肩に手を置いた。彼女たちの迷宮探索は、キヴォトスへの帰還という私的な目的を超えて、この世界の根幹に関わる大きな謎へと繋がってしまったのかもしれない。

 

「……そう、かもしれないわね」

 

 ユウカは、テーブルを拭くユズと残りの客の相手をするミドリ、カウンターで皿洗いをするモモイとリンダ、そして、残った客による酒場の喧騒を見つめた。

 

「これは……探索が手がかりになる、って仮説が、現実的になったのかもしれないわね」

 

 謹慎が解ける明後日。その日までに、ギルド『ミレニアム』は、第三階層へと進む準備を、今まで以上の覚悟で始めることになるだろう。

 




Tip!:リカタ・ジュタの始まりの伝説。以下に概要の全文を記載する。

遥か昔、この地がまだ幼い頃、世界に大いなる厄災が降りかかった。
空に浮かぶ七つの光が大地を覆い、あらゆるものを飲み込もうとした時、遠い空の彼方から、小さな箱舟に乗って乙女たちが降り立ったという。
彼女たちは頭に円環を戴き、天使のように美しかったと伝えられる。彼女たちは、荒れ果てた大地に新たな命を吹き込み、私たちリカタ・ジュタの祖となったのだ。
祖は言う。大樹の頂に、私たちの宝物をおいてきたと。かけがえのないものを置いてきてしまった、と。その“宝物”の正体は誰も知らない。
それからというもの、リカタ・ジュタには大樹の頂を目指す冒険者が集まるようになった。



ここまで読んでくれた君は、この小説に感想を送ってもいいし、高評価をつけてもいい。
もちろん、存在しない記憶を投げるのも、違う世界線の透き通った世界樹の迷宮を創造するのも自由だ。

もっと詳しく書いて欲しい部分とかありますか?

  • 樹海の世界観
  • 様々なクエスト
  • リカタ・ジュタの人々との交流
  • 他の生徒達についてのこと
  • ブラン&リノアとの交流
  • 樹海の魔物のこと
  • 強敵との戦闘
  • その他(さり気なく…)
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