ブルア界樹の迷宮   作:伝説の超三毛猫

36 / 37
ブルアカ×世界樹の迷宮、略してブルア界樹の迷宮です。
対戦よろしくお願いします。


砂被りの電影

 砂塵ノ仙閣の中層階、世界樹の迷宮第13階。

 そこに辿り着いた『ミレニアム』の5人は、言葉を失った。

 そこは、これまでの階層とは異質な空気を纏っていた。

 見渡す限りの砂漠と、墓標のように乱立する巨大なサボテン。そこまでは12階と変わらない。だが、足元をよく見れば、砂に半ば埋もれるようにして、無機質な鉄骨やひび割れたコンクリートの残骸のようなものがちらほら散乱するようになっていた。

 まるで、かつてここにあった「何か」の文明が、砂に飲み込まれて朽ち果てたかのように。

 

「あー……あっちぃ……。もうやだ、足が砂に埋まって全然前に進まないよぉ……」

 

 モモイが拾った木の棒を杖代わりにしながら、だらりと肩を落とす。

 照りつける日差しは容赦なく一行の服越しの身体に突き刺さり、体力を奪い、ただでさえ重い足取りをさらに鈍らせていた。

 

「文句言わないの。ほら、ちゃんと水飲んで」

「ユウカだって、さっきから息上がってるよ……?」

「そ、それは……この鎧が熱を吸収するからで……!」

 

 ユウカが額の汗を拭いながら強がるが、その顔には明らかな疲労の色が浮かんでいた。最後尾を歩くユズに至っては、無言のまま今にも倒れそうな足取りでモモイの背中を追っている。

 

「はぁ……こんな時、ネル先輩がいてくれたらなぁ……」

 

 ふと、モモイが恨めしそうに空を見上げて呟いた。

 

「ネル先輩?」

「そう! C&Cのネル先輩! あの先輩なら、こんな暑さなんか気合いで吹き飛ばして、邪魔な魔物も『あぁん?死にてぇ奴から前に出ろ!』って、二丁の銃でズバババーッて全部なぎ倒してくれそうじゃん!」

 

 モモイの真似に、ミドリがくすっと笑う。

 

「ふふっ……確かに。ネル先輩なら、この迷宮でも無双できそうだね」

「ちょっと、モモイ。今ここにいない人の話をしてもしょうがないでしょ」

「でもユウカ!あの人なら銃を剣に変えても無双できるって!」

「まぁ……C&Cの00(ダブルオー)のあの人がとても強いのは確かだけど…」

 

 ユウカが呆れたようにため息をつく。だが、その声色はどこか懐かしげで、苦労を語りながらも、頼もしい先輩を思い浮かべていることが伝わってきた。

 

「でも……ネル先輩、強かったよね。ゲーム開発部の部室にも、たまに遊びに来てくれたりして……」

 

 ユズがぽつりとこぼす。

 『ミレニアム最強』と謳われる、小柄で凶暴、けれど実は面倒見のいい先輩。

 誰もが、遠く離れたキヴォトスにいる彼女の姿を脳裏に描いていた。

 その時だった。

 

「はい。ネル先輩は、どんなに強大な敵が相手でも、絶対に背中を見せない人でした」

 

 それまで静かに前を歩いていたアリスが、立ち止まって振り返った。

 その表情は、いつもの元気な勇者の顔ではなく、どこか遠くを見つめるような、静かで、透き通った目をしていた。

 

「ちょっと怖い人でしたけど、アリスにとっては、最強の戦士でもありました。一緒に、ゲームをしたこともありましたね」

 

 それは、まるで英雄の叙事詩を語り継ぐかのような、穏やかな響きだった。

 

「アリス……」

 

 モモイが少し驚いたようにアリスを見る。

 

「(今は離れ離れだから、アリスも寂しいんだ……)」

 

 モモイたちは、そう解釈した。いつも明るく振る舞っているアリスも、本当はキヴォトスのみんなに会いたくて仕方がないのだと。

 

「……そうだね。アリスちゃんの言う通り、ネル先輩は最強の戦士だよ」

「メイドだけどね」

「きっと今頃、私たちがいないから、心配してるわ……だからアリスちゃん、早く元の世界に帰らなくっちゃね。」

「……ん?待って、ユウカ。もしかして……怒られるかな!?」

「当たり前でしょ。不可抗力とはいえミレニアムから離れて連絡ひとつ寄越さないもの。心配してるのはネル先輩だけじゃないわよ」

 

 ユウカが優しく微笑みかけ、アリスの頭を撫でる。

 そして、帰った後に訪れるだろう受難に頭を抱えるモモイに笑い声が起こった。

 その温かな手の感触に、笑い声に、アリスは一瞬だけ、本当にほんの一瞬だけ、目を細めた。

 

「……はい! そうですね、ユウカ!」

 

 だが、アリスはすぐに顔を上げ、いつもの眩しい笑顔を作った。

 

「勇者アリスは、仲間と共に前へ進みます! 目指すは下の階層です!」

「ふふっ、その意気よ。さあ、少し休んだら出発―――」

 

 ユウカが歩き出そうとした、その時。

 

 

 ―――ギギ……ギガガガガガッ……!!

 

「え……?」

 

 ユズがびくりと肩を震わせる。

 砂漠には似つかわしくない、ひどく錆びついた金属が軋むような異音。

 音の出処は、すぐ目の前の砂丘だった。

 ズズズ、と砂が滝のように崩れ落ちる。

 そしてその中から、行く手を阻むように『それ』が姿を現す。

 

「な、なにアレ……!?」

 

 モモイが悲鳴を上げた。

 それは、複数の金属パーツが無造作に繋ぎ合わされた、異形の自律機械だった。

 まず、その機体は砂と錆にまみれ、ところどころから細かな電線がはみ出ている。

 あちこちの装甲は剥がれ落ち、ひび割れたレンズの奥で不気味な赤い光が明滅している。その姿は、この階層のあちこちに転がる『残骸』が、無理やりくっつき強引に動き出したかのようだった。

 そして、その錆びた装甲の表面には―――摩耗して全く判断出来なくなったロゴ。

 

「あれは……自律機械……そんな…!?」

 

 ユウカが信じられないものを見るように、目を細めた。

 この樹海、文明の跡地のようなものがあったが…まさか、今も尚、独立して動く機械が存在するとは。

 

 ——バチバチバチッ!!

 

 

 考える隙も与えず、機械の周囲に青白い放電が走る。

 

 ―――『朽ちゆく送電鬼』。

 

 のちにそう呼ばれることになる砂に埋れた筈の時代の遺物が、侵入者を排除するためだけに、凶悪な電撃と共に一行へと立ちはだかった。

 

 ――バチィィッ!!

 

 乾いた砂漠の空気を切り裂き、青白い火花が爆ぜた。

 その直後、凄まじい放電が周囲の砂をガラス状に焼き溶かしながら、扇状に広がる。

 

「うわっ!? 熱っ、熱いよ!!」

「大丈夫ですかモモイ!」

「焦げては……ない! くそっ、なんなんだよ、あいつ! 何で世界樹の迷宮に、あんな自動の機械みたいなのがいるわけ!?」

「考えるのは後!下がって、モモイ!ミドリ、援護を!」

 

 ユウカが盾を構え、前に躍り出る。だが、衝突の瞬間にその腕を伝ったのは、これまでの魔物の打撃とは違う「痺れ」だった。

 機体全体が剥き出しの変圧器のように電線やら端末やらが露出しており、そこが高圧電流を帯びている。

 

「くっ…かすっただけでこの威力!?」

「か…回避に専念して!アイツの雷、動きが遅い!」

 

 後方から冷静に戦況を観測していたミドリが指示を飛ばした。

 それに従い、距離を取ったユウカとアリスは気付く。なるほど、確かにあの機械の放つ電撃は、軌道がゆっくりであり、余程の事がない限り直撃はしなさそうだ。

 後ろから見ていたミドリの観察眼が、機械の攻撃の弱点を一つ、見抜いたのだ。

 

「な、なんなんですか、これ……! 魔物じゃなくて、機械なのに……」

 

 最後尾で杖を握るユズの手が、小刻みに震えていた。

 ミレニアムサイエンススクールにおいて、自律機械は日常の一部だ。

 自分たちの生活を支え、時にはゲーム開発部の部室で共に過ごしたこともある、身近な「道具」のはずだった。

 だが、目の前のそれは違う。

 

 砂に磨り減った装甲、むき出しのシリンダー。

 何より、かつて人々の生活を便利にするために作られていただろう機能が、今はただ破壊のためだけに暴走している。

 その、機械の末路を突きつけられたような恐怖が、ユズの胸を締め付けた。

 

「ユズ、回復ちょうだい!今のうちに、態勢を整えるわ!」

「え、あ、はい……!」

 

 ユズが必死に詠唱し、ユウカにヒーリングを飛ばす。

 

「よしっ、ユウカが引きつけてる間に……!」

 

 モモイが手甲の起動具を構えた。

 先日のリノアとの特訓の記憶がよぎる。応用と実践、そして何より、自分には「雷の術式」がある。

 

「機械系の敵なら、回路をショートさせちゃえば一撃でしょ! いっけぇーっ、雷の術式!!」

 

 モモイの放った紫電が、空気を震わせて『朽ちゆく送電鬼』へと真っ直ぐに直撃する。

 

 ―――バチィィィンッ!!

 

 激しい閃光と破裂音が、砂漠に響き渡った。

 剥き出しの配線にモモイの雷が直撃し、機体内部で白い光が迸る。

 壊れかけの機械に、大きな電圧の攻撃。それは確実に、砂被りの機械のショートを引き起こした。

 

「ギガ……ガ、ガガガガッ!!」

 

 送電鬼の装甲の一部が内部からの爆発で吹き飛び、黒煙が上がる。

 機体が大きくたたらを踏んだ。明らかな大ダメージだ。

 

「やった! 効果ばつぐん——」

 

 だが、モモイがガッツポーズをした―――その直後。

 

 ―――ピィィィィン……!!

 

 送電鬼のひび割れたレンズが、不気味なほどの深紅に発光した。

 

「え……?」

 

 直後、壊れたリミッターから溢れ出した暴走電流が、嵐のように周囲へ撒き散らされた。

 

「キャアアアッ!?」

「みんな、伏せて!!」

 

 ユウカの悲鳴にも似た指示。

 これまでの遅い軌道とは違う、無差別かつ広範囲の乱れ撃ちだった。

 雷撃の雨が砂丘を穿ち、周囲のサボテンを一瞬で消し炭に変えていく。

 

「な、なんで!? 倒したんじゃないの!?」

「モモイの雷撃で回路が焼き切れて、暴走してるんです!」

「な、なんて規模の放電……こんなのまともに食らったら黒焦げだよ!」

 

 ユウカが咄嗟にショックガードを展開するが、それすらも紙のように貫かれそうなほどの威力。

 もはや手が出せない。ミレニアムの5人は岩陰に身を隠し、ただ頭を抱えて嵐が過ぎ去るのを待つことしかできなかった。

 

 激しい光と轟音。その中でユズは、耳を塞いでただ震えていた。

 かつての日常にあったものと似た姿の機械が、悲鳴を上げるように暴れ狂い、壊れていく姿。

 それが、たまらなく恐ろしかった。自分たちのいた世界も、いつかこうして狂い、壊れ、砂に埋もれていくのではないか―――そんな根源的な恐怖が、ユズの心を蝕んでいく。

 

 どれほどの時間が経っただろうか。

 永遠にも感じられた雷の嵐が、不意に、嘘のようにピタリと止んだ。

 

「……え?」

 

 恐る恐るミドリが顔を出すと、そこには黒煙を上げながら、ガクン、ガクンと不規則に痙攣する送電鬼の姿があった。

 その赤いレンズの光は、風前の灯のように明滅している。

 

 ――ギュゥゥゥン……。

 

 まるで電源が落ちる寸前のような、間の抜けた機械音。

 すると送電鬼は、こちらに背を向け、引きずるような足取りで砂丘の奥へと移動し始めたのだ。

 

「逃げる……の?」

 

 モモイが呆然と呟く。

 送電鬼を追いかけ、向かった先には、砂に半ば埋もれた、古びた鉄塔の基部のような設備があった。

 そこにほうぼうの体でたどり着くと、その設備にケーブルのような腕を乱暴に突き刺した。

 すると……途切れかけていた赤い光が、ゆっくりと、だが確実に息を吹き返し始めていくではないか。

 

「あれって……もしかしなくても、充電器……?」

「……はい。完全にバッテリー切れを起こして、充電ポイントまで撤退したようです」

 

 アリスが冷静に状況を分析する。

 その光景を見て、全員の頭の中に一つの「解」が浮かび上がった。

 

「……つまり」

 

 ユウカが、岩陰から立ち上がり、確信に満ちた声で言った。

 

「あの機械の最大の弱点は、『燃費の悪さ』よ。暴走するほどの電撃を放てば、すぐにエネルギーが空になる」

「じゃあ、無理に攻撃しないで、あいつが勝手に電池切れになるまで避けてれば……!」

「戻って充電する前に、あの充電ポイントそのものを破壊しちゃえば、あいつはもう回復できないってことだね!」

 

 見合わせたモモイとミドリの顔に希望の光が差す。

 圧倒的な暴力の前に絶望しかけた彼女たちだったが、倒せない敵などない。

 相手が動く、その理さえ見抜いてしまえば、攻略の糸口は掴める。

 強大なゲームのボスに挑み、ついに攻略法を見つけた時の高揚感が、モモイ達の身体を軽くする。

 方針は立った。あとは、それに従って作戦を立て、その通りに行動してヤツを倒すだけだ。

 

「作戦開始よ! アリス、モモイ、合図に合わせて最大火力で叩き込んで!」

 

 ユウカの号令が砂漠に響く。

 充電を終え、再び赤いレンズを血のように光らせた朽ちゆく送電鬼が、鉄塔から端子を引き抜いた。

 ギギギ……と、砂を噛む不快な音を立てて、機械が再び一行へと向き直る。

 

「ガガ……ギギギッ!」

 

 充電を終えた送電鬼が、再びその巨体を震わせる。

 ひび割れたレンズから放たれる赤光は、先ほどよりも一層禍々しく、砂漠の熱気を帯びて輝いていた。

 

「来るわよ! ミドリ、牽制! アリスは私と一緒に前線を維持して!」

「了解!」

「勇者アリス、盾になります!」

 

 ユウカの指示が飛ぶ。ミドリが放った拳銃の弾丸が送電鬼の関節部に突き刺さり、火花を散らす。

 一瞬だけ動きが鈍った隙を突き、アリスが剣を叩きつけた。

 その瞬間、送電鬼のカメラが、ミドリとアリスの方へ向く。

 振り上げた鉄の腕は―――ミドリに振り下ろされる前に、アリスが割って入り、持っていた盾と剣で受け流した。

 

「今よ、モモイ! 充電器を狙って!」

「任せなさいって! これが特訓の成果だよ……全色発現!フルカラー・バースト!!」

 

 モモイが手甲に全魔力を込める。

 起動具の中で、放たれるのは、七色を帯びた炎だ。

 それは、リノアとの特訓の結果、得た力。

 虹色の光を放つ巨大な火球。それは送電鬼を飛び越え、背後の古びた鉄塔――さきほど、送電鬼が充電していたポイントへと直撃した。

 

 ――ドォォォォォンッ!!

 

 爆発と共に、砂に埋もれていた鉄塔が根本からへし折れる。

 それは、この送電鬼の大事な生命線が、砂塵の中に消えることを意味していた。

 

「ギ、ギギギギギッ!!」

 

 拠点を失った機械が、まるで人間が激怒したかのような、絶叫にも似たノイズを撒き散らす。

 全放電を行おうとするが、もはや供給源はない。それでも青白い火花を放ち、電撃を放とうとするさまはまさしく壊れた機械そのものだ。

 

「これで最後です! リミット解除―――ショックスパーク!!」

 

 アリスが剣を高く掲げる。黄金の光が砂漠の太陽よりも眩しく輝き、送電鬼の錆びた装甲を真っ向から両断した。

 

 

 

 

 

 

 静寂が訪れる。

 二つに割れた機械の残骸が、プスンと黒煙を上げ、二度と動かなくなった。

 

「……やった……倒した……」

 

 モモイがへなへなと砂の上に座り込む。勝利の喜び。だが、パーティの空気はどこか重いままだった。

 

「…………」

 

 ユズは、その場から動けずにいた。

 足元に転がる、送電鬼の腕だったパーツ。そこには、何かが書かれていた。

 長い年月、砂に削られたのだろう。ほとんど消えており、まったく分からないが………ユズには何か、感じるものがあったのかもしれない。

 

「……これ、まさか……」

 

 ユズの声は震えていた。

 先ほどの戦闘中、頭の片隅でずっと鳴っていた警報。

 この「朽ちゆく送電鬼」は、ただの魔物じゃない。

 

 自分たちが誇りに思い、これまでずっと帰りたいと渇望している、愛しきミレニアムサイエンススクールの技術……その成れの果てなのではないか。

 

 もしそうだとしたら。

 自分たちが帰ろうとしている場所も、いつかこうして誰にも顧みられず。

 砂に埋もれ、ただ通りかかる者を拒絶するだけの「残骸」になってしまうのではないか。

 

「ユズ……?」

 

 俯きながら動かないユズに、ミドリが心配そうに手を伸ばす。だが、その手が触れる前に、ユズの目から大粒の涙が溢れ出した。

 

「ひっく……う、うわぁぁぁん……っ!」

「ちょ、ちょっと、ユズちゃん!? どうしたの!?」

「怖い……怖いよぉ……! どこまで行っても砂ばっかりで……機械も、全部壊れてて……私たち、本当に、本当に帰れるの……?」

 

 一度溢れ出した不安は、止まることを知らなかった。

 暑さ、疲労、そして「文明の死」を突きつけられたショック。ユズの心のダムが決壊した。

 

「ごめん、なさい……私、部長なのに……こんなに、怖くて……不甲斐なくて……っ」

 

 しゃがみ込み、顔を覆って泣きじゃくるユズ。

 モモイやユウカが慌てて駆け寄り、背中をさすったり声をかけたりする。

 だが、ユズの耳には届かない。彼女は今、自分の中の底なしの暗闇に飲み込まれていた。

 

「……今日は、ここまでね」

「ユウカ?」

「帰るわよ。ユズがまずいわ」

 

 ユウカが沈痛な面持ちで、アリアドネの糸を取り出した。

 ボスの情報も、第13階の全容もまだ掴めていない。だが、この状態のユズを連れて先へ進むことは、死を意味する。

 その判断に、異議を挟むものなど、いなかった。

 

「ひとまず、宿へ戻りましょう」

 

 アリスの言葉に、ユズ以外の全員が頷いた。

 青い光が一行を包み込み、砂漠の景色が遠ざかっていく。

 ユズの泣き声だけが、熱い風の中にいつまでも響いていた。

 

 

 ――その日の夜。

 リカタ・ジュタの街は、いつも通り穏やかな灯りに包まれていた。

 だが、ユズは宿屋の自室にいることができず、ふらふらと夜の街へ出た。

 気が付いたら、暗い路地を、涙で視界を滲ませながら歩いていた。

 

 怖い。怖くて、動けないはずなのに。いつの間にか、こんなところにいた。

 だがそれだけでなく、ユズの脳裏を支配していたのは、罪悪感だった。

 自分が情けなくて、みんなに申し訳なくて、消えてしまいたい。

 

 そこで。

 カツン、と硬いブーツの音がした。

 

「……おい。こんなところで何をしている」

 

 低く、冷徹な声。

 ユズが顔を上げると、そこには月明かりを背負って立つ、赤い髪の男――ブランがいた。

 巡回中だったのか、その鋭い眼光は夜の闇の中でも一切の曇りがない。

 

「ひっ……あ、ぶ、ブラン、さん……」

 

 ユズは慌てて涙を拭おうとしたが、一度崩れた感情は制御不能だった。

 しゃくり上げるユズを、ブランはじっと、無機質なほど静かに見下ろした。




Tip!:条件ドロップ
魔物の中には、戦闘中に特殊な条件を満たすことでしか手に入らないドロップ品がある。それはたいてい、強力な武具になるのだが、例によって条件は手探りで探すしかない。魔物図鑑に、それっぽいヒントが書かれていることが多いので、基本的にはそれを頼りに探っていくことになる。


魔物図鑑
朽ちゆく送電鬼
オリジナルFOE。マップ上では倍速で追いかけてくるものの、数歩分移動したら充電切れを起こして充電スポットに戻っていくという動き。充電切れを起こした際に接触すればHP85%の状態で先頭に入れるほか、確実に先制を取れる。

・耐性(◎…よく効く、○…効く、△…効きづらい、✕…効かない)
×
スタン
即死
石化
テラー
呪い
眠り
混乱
麻痺
盲目
頭封じ
腕封じ
脚封じ


使用技
通常攻撃
スパークアラウド(脚技):ランダム対象複数体に雷属性攻撃+確率麻痺付与。命中率がとても低く威力が高い。
サンダーヘイター(なし):雷属性攻撃を受けると自動で発動。全体に回避率低下デバフ+脚封じ。
フラッシュバン(頭技):全体に確率で盲目付与。

備考:サンダーヘイターは、雷属性を受けると即座に発動する。そして、次のターンの朽ちゆく送電鬼の行動が「スパークアラウド」で確定する。フラッシュバンは、HPが3割を切ると使用してくる。脚封じや盲目状態だと、スパークアラウドが命中するため危険。

ドロップ
焦げた電線(ノーマル)
煌々としたネオンライト(レア・雷属性攻撃で倒す)



ここまで読んでくれた君は、この小説に感想を送ってもいいし、高評価をつけてもいい。
送る感想は短くても長くても構わない。感想があることで作者のモチベーションが上がり、よりハイペースでリカタ・ジュタの樹海の謎が明らかになるだろう。
もちろん、存在しない記憶を投げるのも、違う世界線の透き通った世界樹の迷宮を創造するのも、また踏破した迷宮の思い出を語りに来るのも自由だ。

もっと詳しく書いて欲しい部分とかありますか?

  • 樹海の世界観
  • 様々なクエスト
  • リカタ・ジュタの人々との交流
  • 他の生徒達についてのこと
  • ブラン&リノアとの交流
  • 樹海の魔物のこと
  • 強敵との戦闘
  • その他(さり気なく…)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。