対戦よろしくお願いします。
ところで、新世界樹の迷宮Ⅰ&Ⅱみたいに、固定されたキャラが同じシチュエーションで別々の台詞言うの面白くありませんか?
作者は新Ⅰ&Ⅱのボイス聞く場所で、属性攻撃時の台詞やトドメ時、混乱時や仲間が戦闘不能時、リベンジ攻撃……そんな台詞たちをずっと聞いていました。何気にベルトランがもう聞けないのが残念すぎる。
「アリアドネの糸?」
「そうデス!これこそ、辺境伯サマが認めた冒険者にノミ提供できるアイテムデース!!」
辺境伯の試練に合格を貰い、冒険者の証を貰ったユウカ達ミレニアムの冒険者一同は、そのままイチジョウ工房へ出向き、シフォンを呼んだ。
桃色の冒険者の証を手に入れたのを見たシフォンが、得心がいったような表情で取り出したのは、まとまった糸束のようなものだった。
「アリアドネの糸とは、世界樹の迷宮を探索する冒険者が必ず携帯する必須アイテムデス!
使用すると、どこにいても安全に、リカタ・ジュタに帰ることができマース!!」
「そうは見えないんだけど……」
「数多くの冒険者御用達デスので、ソコは心配無用デース!!」
冒険の必需品とは思えない形のものが出てきたことに漏れたユウカの本音にも、シフォンは笑顔でこの糸をアピールする。
曰く、全滅寸前の冒険者が九死に一生を得た。
曰く、荷物がパンパンになって困り果てた冒険者の助けになった。
曰く、武器を持っていくのを忘れた冒険者がコレのお陰で助かった。
「トニカク、シンプルですが誰もが欲しがル、そんな夢のアイテムがこのアリアドネの糸なんデース!!」
「便利じゃん! ねぇユウカ、これ買おうよ!」
後ろ2つの話は兎も角、何時でも帰れるというのは魅力的だ。
特に、仲間がやられた、補給物資が底をついた……等、迷宮探索の中で起こり得る、どうしようもない状況を打破できる画期的な発明である。
もしその効果が事実であるならば――多くの使用実績がある以上、十中八九事実だろうが――1個は買っておきたいものであった。
「そうね、信頼はできるか…」
「ナニか気にナル事デモありましたカ?」
「ねぇシフォンさん、このアリアドネの糸って、どういうメカニズムで街に帰れるんですか?」
「エ?」
「え? だから仕組みですよ。これを使ったら、どういう過程があって街に戻ってくることが出来るのかなって思いまして」
「エ??」
「え?」
「…………」
「…………」
何気ない、だがミレニアム生にとってはある意味当然の質問に固まるシフォン。
そして、知っているだろうと思って投げた問いかけに対するシフォンのリアクションの意味が分からず、同じく固まるユウカ。
その二人のやり取りを聞いていたアリス・モモイ・ミドリ・ユズの4人もまた、固まるしかない。
流れる沈黙。時間にして数秒だったそれを破ったのは、勢いに任せてこんなことを言ったシフォンだった。
「……と、トニカク!! 買って使えばスベテが分かりマース!!!
どうか騙されたツモリでオヒトツ、いかがデショーカ!?」
「………………大丈夫、なのかな」
不安げにつぶやいたユズを即座に励ますことができた人は、誰もいなかった。
不安に駆られながらも、念のためとアリアドネの糸を購入し、ついでにミドリの弾丸やモモイの術式の薬品なども補給した5人は、去り際にシフォンからこんな情報を聞いた。
『アッ、そうそう! ミナサン冒険者として認められたことで、酒場で仕事を受けてもらえるようになってイルはずデス! 是非寄ってみてくだサーイ!!』
ミレニアムの5人は全員未成年なため、酒を飲むなど無縁だ。
そう思いながらも、シフォンの言葉を頼りに半信半疑といった様子で、街の酒場を探した。
「『恋する雪見亭』…ここね」
「ね、ねぇ……ホントに入るの?」
「問題ありません!酒場といえば、情報収集の場所ですから!」
「うわぁ…怒られそう…」
ロールプレイングゲームの定番に目を輝かせるアリス以外は、帰ったら先生に怒られそうな場所へ赴くことに後ろめたさを感じながら、静かに扉を開く。
そこには、酒場といえばな造形の、ダークな色に塗装された丸テーブルがいくつかとカウンターがあり。
そのカウンターの奥から「いらっしゃ〜い!」と元気な声が聞こえた。
声がしてしばらく後にモモイ達の前に現れたのは、見た目3、40代と思しき恰幅のよい女性であった。………それは、一言で言えば魔女であった。魔女が帽子を脱ぎ、エプロンをつけた……そのようなイメージの女性が顔を出した。
彼女は、来店した客が年端もいかない少女達と解ると、顔をしかめた。
「…なんだい、ここは酒場だよ。酒も飲めないお子様が来るような場所じゃない。帰んな」
「ま、待ってください! アリス達はお酒を飲みに来たんじゃなく、クエストを受けに来たんです!」
そう言ってアリスは冒険者の証を女店主に見せた。
女店主は、その証をマジマジと見つめると……信じられないような表情を一瞬見せ、直後に不敵な笑みを浮かべた。
「なるほど、そういうことかい。早とちりして悪かったね。
嬢ちゃんの言う通り、ここ『恋する雪見亭』では、街の人達からのちょっとしたお遣いや仕事の斡旋もしているよ。
そしてアタシは、この店の店主・リンダ。リンダ・ブラックベルだ」
「アリスはアリスです!」
「早瀬ユウカ……ユウカ・ハヤセといいます」
「あっそっか…名前から言った方がいいのか………モモイ・サイバです!」
「ミドリ・サイバです。この人の妹です」
「えっと………ユズ・ハナオカ、と申します…」
「アリスにユウカにモモイ、ミドリ、ユズだね。分かった、こっちに来な」
リンダに連れられて店内に入った5人は、彼女の案内で店の中にあった大きな掲示板の前まで案内される。
そこには、大小さまざまな羊皮紙が針で留められていた。よく見ると、その羊皮紙すべてに、何かしら文―――あれこれを採って来て欲しいとか、アレをやって欲しい等―――が書かれていた。
「街の連中の
それをあんたら冒険者が選び、アタシに見せて仕事をキッチリ行う……それがこの街のシステムって所さね」
「成程…冒険者は、何でも屋みたいなところがあるのですね」
「あんたは賢いねユウカ。当然ながら
「はい!どんとこいです!」
「うわぁ…部費のことでガミガミいうユウカみたい……」
「もう一度言ってごらんなさいモモイ」
ぶっきらぼうに、しかし言葉の裏から厳しさと優しさを感じるリンダに余計な事を言ってユウカの怒りを買ったモモイ。
モモイがユウカにウメボシ*1を受けている横で、リンダが掲示板に手を伸ばし、羊皮紙を数枚取って他の3人に見せていた。
「駆け出し冒険者のあんた達だと、この辺りの依頼がいいだろうねぇ」
「なになに………『薬草採取依頼』?」
「こっちは…『刃物の原料集め』ですか…」
「それぞれ施薬院と包丁鍛冶の依頼さね。受けるつもりなら言いな。いちばん簡単な依頼とはいえ、気を抜くんじゃないよ」
酒場のシステムを理解したアリス達は、早速リンダが勧めてくれた
5人が受けた依頼は、二つ。
まず、薬草の採取依頼。コームポピーと呼ばれる花を一定量採取して欲しいという、単純明快な依頼だ。
二つ目は、包丁作りをしている鍛冶職人からの依頼。子守熊の腕爪という、鋭い爪を納品して欲しいという依頼である。
「この爪ってさ、もしかして…」
「うん。きのう戦った、コアラの魔物の爪のことだと思う」
「ユズ、採取できる場所って、地図に描いてなかったっけ?」
「あ、はい。ここですね」
幸い、どちらも心当たりがあった。
先日、辺境伯から出された試練…その過程で地図を作製したのだが、その時にユズは採取できるだろう場所を地図にメモしていたのだ。
また、包丁鍛冶から納品を頼まれていた魔物の爪も、聞いていた特徴からすでに出会っていたコアラの魔物のものだと当たりをつけている。
あとは、それぞれ必要な素材を集めるのみだ。
「……! みんな、下がって!」
「あ!出ました、前のコアラです!」
「よーし、ちゃちゃっとやっつけちゃうぞ!」
そうこうしている間に、肉食コアラの群れが数体、躍り出てきた。
目の前の少女達を食い物にするべく、襲い掛かってきたのだ。
だが……この前の初戦闘とは違い、ユウカは恐れることなく盾を構えた。続けてアリスも剣と盾を手に立ち向かう。
「ユウカ!?」
「大丈夫、あなた達は攻撃して!」
キヴォトスでやっていた戦い方とはあらゆる点で勝手が違う。
だが、キヴォトスにいた頃でも、ユウカが最前線に立って敵の攻撃に耐える…
それに……後ろには、大事な後輩がいる。ミレニアムきっての問題児だが……それでも、大切にしていないわけではない。ユウカに、退く理由はなかった。
「うっ!?」
「ユウカ!!」
「大丈夫!!?」
「気にしないで! ちょっと慣れない感触にビックリしただけ!」
肉食コアラ達の攻撃を必死で受け止める。
盾の重さも、それ越しに伝わる敵の攻撃の重さも初めて味わう感覚だ。
でも、似たような役割はキヴォトスで果たしていた。
ならば……ここでも、できるハズ。そう信じて、必死に盾を構える。
「ぐっ!」
しかし……気合でもどうにもならない場面は、ある。
肉食コアラ達の攻撃を全て盾で防ぎきれず……鋭い爪がユウカの身体を襲う。
ヘイローがあって頑丈であるが、コアラ達の爪がユウカに確実な痛みを与えていた。
「ユウカ先輩!」
「ユズ! まだ来ちゃだめ!」
それを助けようと駆け付けたユズ。
だが、ユウカに殺到するコアラにとっては、新たな餌が割り込んできたようにしか見えなかったようだ。
コアラ達の中から、なかなか倒れないユウカから今やってきたユズに狙いを切り替えるものが現れる。
「ひっ!」
「ユズ!!」
コアラの獰猛な瞳と気迫に気圧されてしまった。
到底、襲い掛かりそうな肉食コアラに対抗できようハズがない。
その隙を見逃さず、コアラが襲いかかろうとした、その時。
バンッ! ボオォ!!
「「「!!!」」」
銃弾と炎が、肉食コアラ達を捉える。
「ユズちゃん大丈夫!?」
「うちの部長に手出しさせないよ!」
ミドリとモモイだ。
ミドリはいつの間にか持っていたリボルバーを、モモイはその手に付けている籠手に付属する術式発動器を、慣れないながらも敵に向け、攻撃を放った。
「あ、ありがとう…」
「大丈夫!」
「困った時はお互い様でしょ!」
「残りのコアラも倒します!」
姉妹に続いたアリスも、剣を振るう。
それが肉食コアラの一匹を切り裂くと同時に、不思議なことが起こった。
剣を振るったアリスが分裂……いいや分身し、もう一人、いるかのように見えるではないか。
「あ、アリスちゃん…!?」
「これぞ、勇者のスキルです!」
これぞ、ヒーローの特殊能力―――残影。
剣技や盾技を使用した時、ごくまれにその技の速度から残像を生み出すことができるようになるのだ。
残像は一定時間たつと消えるが、それでも残像は、質量のある攻撃をするという。
現に、たった今生まれたアリスの分身も同じように剣を一閃。
本体と分身……否、残像がそれぞれコアラを切り捨てていったのであった。
「す…すごい!そんなの使えるなんて聞いてないよ!」
「この街でヒーローというジョブに転職したら使えるようになってました!」
「一体どういう理屈なの…?」
「アリスちゃん、ますますこの世界に適応していってるね…」
「本当にすごいよアリスちゃん。私達、まだ銃の感触と今の武器が違って違和感が抜けないのに…」
「私ならマシな方だよ」
やがて、襲ってくる肉食コアラがいなくなると、アリスはコアラから素材の剥ぎ取りを開始する。
その中で、腕から生えている切れ味鋭い爪……子守熊の腕爪を手に入れることに成功したのであった。
ヒーローの…ひいてはジョブの力を重々痛感したモモイ達は、採取ができる迷宮のポイントまで、自作の地図を頼りに歩いて行った。
「やったじゃないかあんた達!!!」
上機嫌にバンバン、とアリスとユウカの背中を叩くリンダ。
あの後、無事に採取も終わり、二つの依頼をこなしたということでリンダに報告したところ、あっという間にリンダは機嫌を良くし、アリス達にこう告げた。
「まぁ、
「はい!」
「えぇ」
「は、はい…」
「こんな感じに
あんた達が何を目的に世界樹の迷宮に挑んでいるのかは知らないけどね、それだけじゃないよって事は、覚えときな。
今はあんま必要性を感じなくってもねぇ、そういった縁を大事にすることで、いつか味方になる日が来るからね」
「「「はい!」」」
そんな感じで笑顔で送り出された5人は、宿屋への帰り道を、リンダの笑顔を思い出しながら歩く。
「ねぇみんな」
「「「「?」」」」
「たまにはさ、あぁいう依頼、受けても良いんじゃない?」
モモイから出た意外な言葉に、真っ先に反論したのはユウカだった。
「待ちなさいよモモイ。ミレニアムに帰りたくないの?」
「そ、そりゃもちろん帰りたいよ!!? でもさ、何て言うんだろう……」
ミレニアムに帰る事について問われて、必死に考えをまとめ、言葉を選びながら、モモイは続けていく。
「確かにさ、いつかはミレニアムに帰るんだし、そのつもりなんだけどさ。
その日までは、その……この街にいるわけじゃない? だったらさ……この街の人にも世話になるワケだし、ね…?」
その都度考えながら話しているせいで曖昧だ。
しかし…言いたいことは、しっかり伝わった。
そのことは、ユウカも例外ではなかったようで。
「…別に、そこまで意地悪をする気で言ったんじゃないのよ。私は」
それだけ言うと、街の人達の温かさを思い出したのか黙り込んでしまった。
気まずいのではない。モモイの言いたいことに、全面的に賛成したのである。
「それじゃ、明日も頑張るために、宿屋の人とも仲良くなりましょう!」
「あまり夜更かししないでよ?」
沈んでいく夕陽の中…5人の冒険者の少女達は、たわいないことを話題に出しながら、宿屋への道を歩んでいくのであった。
Tip!:パラディン
世界樹の迷宮におけるクラス(職業)のひとつ。
自らの身体と盾を用いて、仲間を守る聖騎士。味方を守る防御のスペシャリスト。パーティーにいれば、強敵との戦いが格段に楽になる。
あらゆる物理攻撃は勿論のこと、炎・氷・雷の属性攻撃からも守る事に長けているほか、熟練のパラディンは盾ひとつで敵にダメージを与える術を身に付けている。
魔物図鑑
肉食コアラ
人を襲い、肉の味を覚えたコアラ。足払いで動きを封じて食らう凶暴性を持つが、こいつに手を焼いていては迷宮を制覇することなど到底できない。
ここまで読んでくれた君は、この小説に感想を送ってもいいし、高評価をつけてもいい。
もちろん、存在しない記憶を投げるのも、違う世界線の透き通った世界樹の迷宮を創造するのも自由だ。
先生、世界樹の迷宮は知ってますか?
-
“うん、もちろん知ってるよ”
-
“いや、知らないなぁ。ごめんね?”