ブルア界樹の迷宮   作:伝説の超三毛猫

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ブルアカ×世界樹の迷宮、略してブルア界樹の迷宮です。
対戦よろしくお願いします。

最近、旧作のリマスター版が多いような気もします。逆転検事しかり、ライブアライブしかり、ドラクエⅢやFFもそう。世界樹の迷宮も例に漏れずリマスター版が出ましたね。
個人的には、新たな物語をプレイしたいところです。逆転裁判7や逆転検事3、世界樹の迷宮Ⅵ、新世界樹の迷宮Ⅲやドラクエ12が発売されるのはいつになるんだろう、なんて考えたりもしている。


樹海の強敵たち

 冒険者の朝は早い。

 樹海を目指す為に、朝早くから準備をして、迷宮に潜り込まなければ、日没までに探索を終わらせることは出来ないからだ。

 つまり、スタートが遅れればそれだけ、準備の時間が縮まり、それすなわち命が縮まることにも繋がりかねない。

 それゆえに、冒険者の朝は早い。

 

「ぐがぁ…」

「すぅ…すぅ…」

「くー…」

「う〜ん……」

 

 早いはず、なのだが。

 その宿屋の一角で目の当たりにしたのは、各々のベッドで惰眠を貪る姿であった。

 もうじき9時も半ばになるにも関わらず、モモイが、ミドリが、アリスが、ユズが……目を閉じて静かに寝息を立てているそのさまを見て、ただ一人早起きしていた人物・ユウカは、全身をわなわなと震わせて。

 

いい加減に! 起きなさいッ!!!

 

 リカタ・ジュタの宿屋に、ユウカの怒声が響き渡った。

 

 

「あれほど夜更かしするなって言ったのに!!」

「ごめんってば〜!!」

「ごめんなさい…私が止めるべき立場なのに…」

「……ユズも夜更かししたの?珍しいわね」

 

 ミレニアムにいた時から説教の対象であったモモイとミドリ、ゲームとリアルの境界線が曖昧なせいで未だ問題児のアリスは兎も角、いちおう良識のある部長のユズまで夜更かしをしていたとはどういうことか。

 不思議そうな顔をしたユウカに答えたのは、宿屋の主人を務めている金髪の男だった。

 

「まぁまぁ、ユウカちゃん。

 昨日は妻に色々教えてくれたみたいだしさ」

「モモイ達がですか?」

「うん。リーシェが宿のお客さん相手の娯楽を教えてくれって頼んでたみたいでね……ずいぶん長い間やり込んでたみたいだよ」

 

 宿屋の主人の言葉に、これ幸いとモモイが割り込んで説明を始めた。

 

「そっ…そーなんだよユウカ!聞いて!」

「な、何よ?」

「宿屋の女将さんがさ、宿で休んでるお客さんが気を紛らわせる方法に悩んでたから、教えてあげたんだよ!」

「あんた達、なんで………あぁ、そういえばミレニアムをカジノにしようとした時もあったわね………まさか、その時のゲームを?」

「この世界、ゲーム機だけじゃなくって、トランプもないみたいなんです」

 

 続いてミドリが、姉の発言を補強する形で、口を開く。

 ゲーム機がないのはこの世界の文明レベルから分かり切っていたことだが、まさかトランプもなかったとは。

 その事実を聞いたユウカは驚きの表情を見せた。事実、この情報を初めて聞いたゲーム開発部の一同も、それはそれは驚いたそうで。

 

「リカタ・ジュタでは、賭け事はもっぱら仕留めた樹海の生き物の数や大きさ、強大さで競っているみたいでして…」

「カードで勝敗を決めるって概念がなかったんだって!だから、私達がいくつかトランプのカードゲームを提案したんだけど…」

「そもそもトランプがなくって……お姉ちゃんがトランプをイチから作ろうって提案して、アリスちゃんがそれに便乗して―――」

「ちょ、ちょっと待ちなさい。トランプを…作った?」

「はい」

 

 聞き捨てならないことを、念を押して確かめるユウカ。

 どうやら……このゲーム開発部の4人は、女将にゲームを提案したいあまりに……トランプをイチから作り出そうとして夜なべしたらしい。

 しかも、少しずつトランプに使えそうな紙を集めるところから始めて、ジョーカー含めた54枚の図柄をすべて書こうとしたらしい。………時間は全く足りず、未完成のまま全員寝落ちしたらしいが。

 異世界に来たというのに、ゲームに対する情熱を失っていないことに、感心すればいいのか呆れればいいのか分からなくなったユウカは、ため息をつくしかなかった。

 だというのに、宿屋の主人の男は満足げに頷きながら、こう言うのだ。

 

「良いんだよユウカちゃん。

 リーシェのために何かをしてくれたってんなら、その子達の行動も嬉しいもんさ!

 なぁに、寝不足だっていうなら、昼までウチで休んでいけば良いんだしさ!!」

「……あまりこの子達を甘やかさないでください、カイルさん。絶対つけ上がりますので」

「ちょ、ユウカ!!?」

「ははは。じゃあ僕は、リーシェを起こしに行ってくるよ」

 

 宿屋の主人―――カイルがここまで言ってしまっては、叱るに叱れない。

 ユウカはため息を深くついて、この後のことに頭を悩ませるのであった。

 

 

 

 

 

 なんだかんだ準備が終わり、迷宮に入ったのは、昼前のことであった。

 

「いい? いくら寝坊して探索開始が遅れたからって、無茶はダメだからね!」

「わ、分かってるって~」

 

 描いた地図を見合わせて、空いている所を逐一埋めながら進んでいく。そして、初めて入った階層の地図がほぼ埋まりかけてきた頃。彼女達は見つけたのだ。

 

「見て見て!これ!」

「階段です!次のフロアへの入り口ですね!」

「こんなのがあるなんて…一体、この樹海どうなっているのかしら」

 

 自然豊かな筈の迷宮にある上り階段。

 それを登った先にも、また同じような迷宮がある。

 思いきり室外のハズなのに、室内にあるかのような造りの迷宮に謎を抱きつつも、ミレニアムの5人は探索を続けていく。

 そうして進んでいった先……迷宮内のとある池にて。

 モモイは、あるものを見つけた。

 

「どうしたの?お姉ちゃん」

「いや、ここってホントに自然なんだなーって。見てよこれ」

「わっ、サワガニだ。私、生で見るの初めてかも」

「ちょっと取ってみよっか」

「なんでよ」

 

 見つけたもの……サワガニを捕まえるため、モモイは手を伸ばす。

 しかし……サワガニは、モモイの伸ばした右手を鋭い鋏で思い切り挟んだ!

 

「ぎゃーーっ!? 痛たたたた!!?」

 

 モモイの悲鳴を聞いて駆けつけたユウカやユズ、アリスもモモイの所業をミドリから聞く。

 ユウカやユズは呆れるしかない。ここは危険な迷宮のはずだ。

 

「…そんなにカニが取りたいのならアリスが取りましょうか?」

「アリス〜!頼んだ!」

「頼んだじゃないでしょ」

 

 ユウカのツッコミをよそに、アリスは左手……モモイが抑える右手とは反対の手でサワガニを捕まえようとする。

 ……しかし、サワガニはそれも予想していたようで、もう片方の鋏でアリスの手も挟んだ!

 

「うわあっ!?」

「アリス!?」

「うわーん! 手を思い切り挟まれてしまいました!」

「二人して何やってるの…」

 

 挟まれて腫れた手を庇う二人に呆れ返っていると、サワガニは鋏をくいくいと動かし、挑発している。

 

「ねぇあれ、こっちを煽ってない!? ちっちゃいカニのくせに!!」

「ほ、ほんとだ…煽ってるように見える…」

 

 まるで人と同等の知能があるかのようなカニに、どうするか迷っていると、ユウカがため息をついた。

 

「…あのね、こんな小さなカニに何ムキになってんのよ」

「ユウカ…」

「確かに、こっちを認識しても逃げないどころか挑発するのは珍しいけど……カニ自体はそこまで珍しい種類じゃ―――」

 

 ぱしゃり。

 カニを見るために近づいたユウカの顔に、水がかかった。

 何が起きたのか、すぐに理解出来なかったユウカの前で、カニが反復横跳びのように左右に動き回り、鋏を振り回して更に挑発する。

 数秒、固まっていたユウカだが……自分がされた事の意味が理解できると同時に、般若の表情をサワガニに向けた。

 

「この蟹!」

「待ってユウカ!落ち着いて!!」

「落ち着いてるわよミドリ……落ち着いて…あの蟹を魔物の餌にする方法を考えてるんじゃない…!」

「全然冷静じゃない!!? お姉ちゃん!ユズ!アリスちゃん!ユウカ止めるの手伝って!」

 

 怒り心頭のユウカがたかがサワガニ相手に用意周到かつ大人げない制裁を加える展開を避けた一行だが、それでもサワガニが煽りのタップダンスをやめる気配はない。

 

「あの蟹、なんとか捕まえたいな…」

「でも、普通に獲ろうとしたらまた手を挟まれてしまいます!」

「あの…モモイ?」

「なに?ユズ」

「木の棒かなにかを使うのはどうかな?」

「それだ!!」

 

 ユズの提案に意を得たモモイは、手頃な枝を手に取り、それを囮にサワガニを捕まえようとする。

 二人の思惑通り、突いている枝をサワガニが挟んだ瞬間……モモイがそれを釣り上げた!

 

「やったぁ!」

「良かったね、モモイ!」

「パンパカパーン! モモイはサワガニを手に入れた!」

「ようやく終わったわね…」

 

 こうして、モモイはついに、池の中にいたサワガニを捕まえることに成功したのである!

 

 

 

「やったね、お姉ちゃん」

「やったよ、ミドリ!」

「それで…そのサワガニ、どうする気だったの?」

「え?」

 

 

 

 ―――しばし勝利の余韻に浸っていた5人だったが。

 ミドリがモモイに投げかけた質問をうけ、水を打ったように静まり返った。

 確かに、彼女達は全力を賭してサワガニを捕まえた。…………しかし、それがなんだというのであろうか?

 何の役にも立たないサワガニを捕まえて、何をしようとしていたのだろうか?

 

「「「「「…………」」」」」

 

 途端に目が覚めたモモイは、サワガニを池の中に放ると、無駄にした時間を取り戻すように、早足で探索に戻る。

 ユウカ達もそれに続いて、探索に戻ったのだが、この日の探索が終わるまで、このサワガニの件について言及するものは誰もいなかった。

 

 

 

 

 

 サワガニとの乱闘を終え、暫くした頃。

 ミレニアムの5人はある魔物から不意打ちを受けた。

 

「ユウカ先輩!」

「う…ぐ……だい、丈夫…」

 

 それは、4本のハサミを持った、緑色で大型のカブトムシだった。

 茂みから急に襲いかかってきたソイツの攻撃を、モロにユウカが受けてしまったのだ。

 幸い、出てきた昆虫―――はさみカブトは、その後モモイが反撃で放った術式によって一撃で沈黙したものの、あわや大惨事になる所だったのだ。

 

「やっぱりこの樹海は危険だよ、今日はもう帰った方が良いんじゃないかな…?」

「そうだね。流石にユズの回復薬も心許なくなってきたし」

「うん……これ以上はちょっと怖いかも」

「いのちだいじに、ですね!」

 

 ユウカの怪我はユズが看て回復しているものの、気力(TP)に不安を抱えたメンバーは、全員が帰還に賛成。

 はさみカブトから工房で使えそうな素材を剥ぎ取っているアリスでさえ、パーティメンバーの体力の限界を感じ取ったのだろう、反対の意見を出さなかった。

 そして、剥ぎ取った素材を入れ終えて、ようやくイチジョウ工房で購入したアリアドネの糸を使う時がようやく来たか、と思った―――その時。

 

「!! 皆さん、隠れて下さい!」

 

 アリスがいの一番に指示を飛ばした。

 他の4人も、アリスの指示を聞いた瞬間に、茂みの中に身を隠した。

 ……アリスだけでなく、全員が気付いていたからだ。………強大な力の持ち主が、近くにいる事に。

 

「つ、つい隠れちゃったけど…どこからこんな気配が…」

「シッ! お姉ちゃん黙って! 見つかっちゃう…!」

 

 普段から楽観的なモモイでさえ冷汗を流す。

 下手に物音をたてると気付かれるかもしれない、という一心で静かにしようとするミドリ。

 他の3人も、それぞれが近くに固まって茂みに隠れ、気配を殺しつつ先程までいた道の様子を伺った。

 そうしてしばらく隠れていると、木々の隙間から、そいつは現れた。

 

「―――ブルル」

 

 ―――そいつは、鹿だった。

 体高は、ユウカと同程度か、それ以上か。

 肌は青色で、金色の体毛をたくわえており、頭には立派で硬質そうな角が一対、生えていた。

 そいつは、先程までアリス達がいた場所を悠々と歩いてくる。

 

「「「………」」」

 

 全員は、息を殺す。

 こいつは、これまで戦ってきた魔物や、先程不意打ちしてきたカブトとは比べ物にならないほどの強さだ―――そういう感情が確信に変わったからだ。

 だから、見つからないように茂みの中で身動きひとつせず、その鹿の出方を伺っていた。

 

「―――」

 

 だが……鹿は、茂みに誰か隠れていることにさえ気付かない――或いは興味がなかったのだろうか――かのように、そのまま悠々と歩いてどこかへ去っていった。今だけは、それが5人にとっての不幸中の幸いでもあった。

 鹿が通り過ぎて、どれだけの時間が経っただろうか。アリスが一番に茂みから出てくると、他の4人もそれに続いて出てきた。そして、バックパックからアリアドネの糸を取り出す。

 

「…………帰ろう? ねぇ、今すぐ帰ろう?」

「…そこまで念を押さなくっても、今日は帰るわよ。流石にあの鹿は、対策なしじゃ危険すぎるわ」

「まさか、あんな化け物がいるなんて……」

「今日はこの辺にしましょう」

 

 色々あったこの日では、あの鹿の対策など万全に考えられるはずもない。

 そう判断したギルド『ミレニアム』は、この後アリアドネの糸によって、無事リカタ・ジュタへ帰還を果たすのであった。

 ちなみにミドリが下した、「そろそろ帰った方がいい」という判断は決して恥じるべきものではない。彼女達はまだハッキリと知らぬことではあるが、樹海では油断と慢心をした者から死んでいくものである。

 

 

 




Tip!:リカタ・ジュタの個性的な人々

カイリーの宿…カイル&リーシェナ
カイリーの宿を経営しているおしどり夫婦。板前のカイルと女将のリーシェナ、二人の息のあったコンビネーションで、冒険者の傷や疲れを最大限癒やすことができるらしいが、時折夫婦のアツい惚気話に砂糖を吐く人もいるという。

イチジョウ工房…シフォン
イチジョウ工房の看板娘。銀の髪と元気なカタコト日本語がトレードマーク。製品の販売だけでなく、鍛造も行っているらしいが、家族が全員無愛想で、彼女が客の応対をしているため、街の人々からは看板娘として見られている。

恋する雪見亭…リンダ・ブラックベル
酒場「恋する雪見亭」の店主。魔女と見間違うくらいの強面をしており、見た目通り厳しい人物だが、見た目からは想像できない優しさも持っているため、何だかんだ慕う街の人は多い。

冒険者ギルド…ショウ
迷宮の街リカタ・ジュタの冒険者ギルドの長。ぶっきらぼうで寡黙な性格をしているが、ひとたび冒険者がピンチに陥れば、誰よりも早くその人達の為に動くという。

辺境伯の宮殿…フランベリル
弱冠16歳で辺境伯の座を受け継いだ貴族の少女。だが1を聞いて10も20も知る聡明さと誰にも怯むことのないカリスマ性を持ち合わせており、親でもあった先代よりも優秀な名君であると太鼓判を押されている。



Tip!:FOE
Field On Enemyの略。世界樹の迷宮においては、ランダムエンカウントの他に、シンボルエンカウントで、「目に見える敵」を採用している。そのシンボルに接触すると遭遇する敵をFOEと呼ぶのだが、世界樹の迷宮においてシンボルエンカウントのFOEはとんでもなく強く、遭遇=全滅と言ってもいい程に凶悪。どれくらい強いかというと階層到達時のレベルのパラディンならガードの上からでも殴り殺せるレベルで強い。そのため、基本的にFOEは避けて進むことになる。
ちなみに、拙作の淡碧(タンヘキ)ノ樹海には、鹿以外にもFOEがいるらしい。予定しているのは以下の4体である。

①今回アリス達が会った鹿。そのステップは人を狂わせる。
②ティラノサウルス。その牙には麻痺毒があると言われている。
③赤い姿をした蜊蛄。コイツのハサミは強者の証であるが、狙って帰ってきた者は少ない。
④本作オリジナル。乱入型FOE。ヤモリのエサ。



魔物図鑑
はさみカブト
樹海で進化して巨大化したカブトムシ。その頑丈な甲殻はあらゆる武器を通さないが、術式には弱い。

先生、世界樹の迷宮は知ってますか?

  • “うん、もちろん知ってるよ”
  • “いや、知らないなぁ。ごめんね?”
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