第16話「ブラック・リベンジ」
「・・・負けた。私が・・・」
「さぁ、俺の勝ちだ。君の名前を教えてもらおうか?」
(・・・冷静になって考えてみればたかが名前を聞き出すくらいでデュエルなんて、一体どうなってんだ?)
「・・・仕方ないわね。私の名前は黒月 暗菜(くろつき あんな)1年B組の出席番号13番よ」
「名前以外はどうでも良いのだが・・・俺は黒風 瞬だ。所属するクラスは1年A組だ・・・ところでさ・・・」
「何よ?」
「お前、さっき魔のデッキ破壊ウィルスを発動する時、罠カードじゃなくて魔法カードを宣言してたら勝てたんじゃねぇか?俺の場には2枚の黒い旋風もあったんだし、『もしも相手の手札にBFモンスターがいたら黒い旋風の効果が発動してしまうんじゃ?』とか思わなかったわけ?」
「・・・そうなのよね。私もついさっき思ったわ。私って昔から勝負事で自分が優位に立つと、自分の力を過信し過ぎて、重要なところを見落としちゃうのよね。さっきの魔のデッキ破壊ウィルスが良い例・・・」
「自分を信じる事は悪い事じゃないが、もう少し冷静になった方が良いな。ま、俺もたまにあるけどな・・・あ、それともう1つ」
「ん?」
「お前何で俺に声を掛けて来たんだ?部活の勧誘か何かか?」
「あぁ、忘れるところだったわ。実は貴方に折り入って頼みたい事があるのよ」
「頼みたい事?」
「えぇ、貴方にこの女をデュエルで倒して欲しいのよね」
そう言うと彼女は制服のポケットから1枚の写真を取り出した。
そこに写っていたのは、白衣に身を包んだ茶髪の少女だった。
「誰だこれ?白衣を羽織ってるけど・・・」
「生物部の副部長、仁科 学(にしな まなぶ)の妹の仁科 萌(にしな もえ)よ。超ブラコンでおまけに超ぶりっ娘で私服はいっつも肌の露出の多い服に下は決まってミニスカート。しかも制服として着用してるスカートは超丈が短くて、何と膝上23cmもあるとか!!図書室で調べてみたらミニって普通、膝上10cmの非常に丈の短いものらしいじゃない。それを膝上23cmってどんだけ短くしてんのよ!!考えられる?膝上10cmでも非常に短いと表記されてるのに23cmよ?23cm・・・」
「わ、分かったから落ち着け!!」
ボクは興奮しながら迫ってくる彼女の両肩に手を当て、彼女をそっと押し返す。
「でも何で俺なんだ?」
「・・・でね、身長は高1にして145・2cmしか無くて体重も33・8キロと細くてスタイルが良いの。でもあれだけ細くちゃまるでガ○ガ○くんよね、ププッ・・・。いや、ガ○子ちゃんかしら?でもその細い体系に似合わず胸は結構あってね。スリーサイズは何と上から・・・」
「・・・おい、聞いてんのか?」
「ハッ!ご、ごめんなんだっけ?」
「はぁ・・・だから何で俺がこの娘の相手をしなくちゃいけねぇんだって事」
「あぁ、その事ね。貴方もイケメンのくせに鈍いわね」
「・・・負けたんだ」
「!!」
ボクの言葉に一瞬だが暗菜が反応した。どうやら図星だった様だ。
「図星か・・・しかも負けた回数は1度や2度ではないな?恐らくは何度も・・・」
「きゃー辞めてー!!私、これでもクラスでは一番強くて、皆からはデュエル・クイーンて呼ばれてるのー!!」
(クイーン・・・そう言えばコイツとここに来る途中、すれ違った連中がコイツを見てそんな事を言ってたな・・・)
「だから、今日私が貴方に負けた事も内緒にしてね?」
「・・・こっちにもプライドってもんがあるが、まぁ良いだろう。どうせ影井を倒すまではキングを名乗る気はねぇし、その代わり結果はドローだったって事で良いな?」
「もう、仕方ないわね。良いわ、私も貴方に依頼を出した身。それくらいは我慢してあげる」
「・・・で、何で俺がこの娘とデュエルする必要があるんだ?別に俺じゃ無くてもよくね?」
「貴方じゃないと駄目なのよ。だって彼女、貴方に敵意を持ってるから」
「・・・え?」
「実は貴方がうちの学校に転校してきた時にね、この学園の大半の女子が貴方に一目惚れしたのよ。そのおかげで彼女のお兄さん、学先輩の評判は落ちてしまって学園美男子グランプリ第2位に・・・。萌はそれが許せなくて今や学園一の美男子として有名になった貴方に敵意を示してるのよ。貴方が来た所為で愛する兄が降格したとなれば、超ブラコンのあの娘としては恐らく本人以上に悔しい筈でしょうね・・・」
(悔しいでしょうねぇ・・・)
「ん?今、何か言った?」
「ん?いや別に、何も?」
「兎に角、頼んだわね?私は今からあの娘と話を付けてくるから」
そう言うと暗菜はその場を走り去った。
それにしても自分の憎む相手の対戦相手に、相手が最も嫌う人物を使命するとはねぇ・・・。
翌日、下駄箱を開けるとピンク色のハート型のシールの付いた手紙が置かれていた事に気付いた。
(何だこれ?ラブレター?今時こんな事する娘がいるのか?・・・いや、1人だけいるな・・・)
ボクはすぐに察しがついた。そう、昨日会った女子生徒、暗菜が言っていた仁科 萌だ。恐らく果たし状のつもりなんだろうけど、何だこのラブレターっぽい手紙は・・・。
そう思ってボクは手紙を開封するとそこには血を思わせる赤い色で書かれた恐怖文字が並んでいた。
(・・・成る程、ぶりっ娘は本性を現すと殺人鬼化するって事か。ところどころに見られるハートマークは気になるが・・・)
ボクはその日の放課後、手紙に指定されていた場所である屋上に足を運んだ。
(待ち合わせ時間5分前か。少し早く来ちまったな・・・)
そんな事を思いつつもドアを開けると、そこには暗菜の姿があった。
「暗菜?どうしてここに?」
「あ、瞬君。今日のデュエル、萌が萌の一番嫌ってる相手に負けて落ち込む姿が見たくてつい来ちゃった」
(やっぱこの女、腹黒い・・・)
ガチャッ
「お?」
「ついに来たっぽいな」
2人の予感は見事に的中した。無論、兄貴と一緒に来る事もだ。
「あら、随分と早く来たのね、女たらし。ってあれ?負け犬の暗菜ちゃんまで」
「・・・アンタ、兄が一緒じゃなかったら泣かしてたわよ?」
「ふぇ~ん、あの腹黒負け犬女、怖~い。助けて~お兄ちゃ~ん」
「おぉよしよし・・・」
「相変わらず見ててイライラするわ、このやり取り・・・」
「で?萌ちゃんだっけ?やるならとっとと始めようぜ?」
「何よその言い方!レディに向かって!!」
「いや、別に普通に誘っただけだが?」
「全っ然普通じゃないわよ!!何よ、とっととって!!」
「ゃ、こっちにも都合ってモンがあるし・・・」
「どうせ大した用事じゃないくせに!!世界中どこ探したって絶対にいる訳がないでしょうけど、萌みたいな可愛い女の子とデートの約束でもしてるの?」
「ゃしてねぇけどさ。つか、お前より可愛い娘なんて世の中にゃゴマンといるぞ?」
「きぃー!!!何よその言い方!!やっぱ私はアンタなんか大っ嫌い!!」
「別に好かれたいとか思ってねぇんだがなぁ、寧ろお前みたいな面倒臭い奴、本来はお断りだ」
「こ、この私をお、おこと、おことわ、お断りりりりりりり・・・・!?」
(どんだけショック受けてるんだか・・・)
「もう良い、とっとと始めるからお前もデッキを用意しろ」
「フン!アンタなんかには絶対負けないわ!!世界一の美少女にして世界一強いこの私がアンタごとき瞬殺してやるわ!!」
「あぁ、何でも良いから早くな?」
「分かってるわよ!私のターン!!私はカードを2枚伏せる。更にマスマティシャンを召喚!!効果発動!!」
(マスマティシャン・・・確かあいつの効果は・・・)
「この子の召喚時、デッキからレベル4以下のモンスターを1体墓地に送るわ!!私はデッキからボルト・ヘッジホッグを墓地に送る!!これでターンエンドよ!!」
萌:手札:2枚 モンスター:マスマティシャン(ATK/1500)魔法・罠:2枚
LP8000
「ボクのターン!俺はBF-暁のシロッコをリリース無しで召喚!!」
「レベル5のモンスターをリリース無しで召喚?」
「コイツは相手の場にモンスターがいて自分の場にモンスターがいない時、リリース無しで召喚できる。更に俺はチューナーモンスター、BF-疾風のゲイルを特殊召喚!!」
「きゃー!何その子?可愛いー!!!」
「ゲイルは、まぁそうかもな・・・。だが、こいつの効果は強力だぜ?ゲイルの効果発動!!1ターンに1度、相手モンスターのステータスを半分にする」
マスマティシャン:ATK:1500→750
「まだまだ行くぜ?更に俺はBFー残夜のクリスを特殊召喚!!」
「新しいBF?しかも攻撃力1900って高・・・」
デュエルを見ていた暗菜が新たなモンスターの登場に驚く。
「昨日は出番が無かっただけさ。そして俺の場にBFモンスターが3体並んだ事で手札から罠カード、デルタ・クロウーアンチ・リバースを発動!!このカードは自分の場にBFモンスターが3体表側表示で存在してる時、手札から発動できるカード。このカードの効果で相手の場の伏せカードを全て破壊する!!」
「そ、そんな私のカードが・・・」
「伏せカードはここのところ、めっきり仕事しなくなったミラフォともう1枚はサイクロンだったか。危ない危ない、バトルだ!疾風のゲイルでマスマティシャンを攻撃!!ブラック・スクラッチ!!」
「きゃあぁん、私のモンスターが・・・」
萌:LP8000→7450
「だけどこの瞬間、マスマティシャンの効果発動!デッキからカードを1枚ドローするわ!!」
萌:手札:2→3
「まだだ、続いてボクはクリスでダイレクト・アタック!!何もなければシロッコでもダイレクト・アタックだ!!」
萌:LP7450→3550
「カードを1枚伏せてターンエンド」
瞬:手札:1枚 モンスター:シロッコ(ATK/2000)クリス(ATK/1900)ゲイル(ATK/1300)魔法・罠:1枚 LP8000