デュエルシーンだけが観たい方は、このパートを飛ばして第7話を御覧下さい。
第6話「E-HERO ダーク・ガイア(前編)」
「メガロック・ドラゴンでエルシャドール・ミドラーシュに攻撃!!」
メガロック・ドラゴン:ATK/4900
「罠カード発動!!強制脱出装置!!メガロック・ドラゴンには御退場願おうか」
「なっ!?・・・チッ、俺はカードを1枚伏せてターンエンド!!」
「俺のターン!ショック・ルーラーの効果発動!!素材1つ使い、罠カードを宣言!!そしてショック・ルーラーとミドラーシュでダイレクト・アタック!!」
宇宙:LP3000→0
「うわぁ、また俺の負けかよ。いい加減、勝たせてくれよ何敗目だよ、俺」
俺とデュエルする度に負けっぱなしの宇宙は、いい加減嫌気がさしたのか無茶苦茶な事を言い出した。
「無茶言うな、てか甘えんな。白星が欲しかったら自力で何とかしろよ。俺も自力でお前から白星を勝ち取ったんだからよ」
今じゃ校内最強と謳われる様になった俺も、昔はしょっちゅう宇宙に負けていた。
デュエルモンスターズを始めたばかりの頃は、今の宇宙みたいに後少しのところで逆転負けをして、その度に悔しい思いをして、毎日宇宙に勝つ事ばかりを考えて、過ごしていた。
今の俺が校内最強と呼ばれる様になったのも、あの時、諦めずに何度も何度も宇宙に挑戦し続けたからだと思う。
あの頃の熱い気持ちがあったからこそ、自分のデッキと見つめ合う機会が増え、自分のデッキの弱点・欠点に気付く事ができ、それらを補う術を身に付ける事が出来たんだと思う。
だから、俺は俺をここまで成長させてくれた宇宙に深く感謝している。
感謝しているからこそ敬意を表する為に、敢えて手を抜かず全力で相手をしているのだ。
手加減するという事は、相手を見下す悪意あるプレイングだと俺は思う。
そんな悪意あるプレイングを平気で出来るデュエリストに、いや、人間に俺はなりたくない。
だが、宇宙はその事を知ってか知らずか、最近じゃ負ける度に手加減を求めて来る。
宇宙の短所といったら恐らく、ろくに努力もせずに相手に勝とうとするその腐りきった根性だと思う・・・。正直、親友としてこんな友の姿は見たくなかった。
最近じゃ、そんな事ばかり考えてしまう。
まぁ人と人なんだし、そんな一言、二言で片付いてしまう様な簡単な話ではないだろう。
「よし!影井!!さっきのは練習!これが本番だ!もう1度デュエルだぁ!!」
「・・・いや、今日はこの後、予定があるから、また明日な?」
「・・・ちぇっ、まぁた得意の勝ち逃げかよ・・・」
「はいはい、どうせ勝ち逃げですよ。悔しかったらもっと腕を磨きたまえ」
そう言い残すと俺は生徒会室を後にした。
「・・・ちぇっ、なんだよ勇吾の奴、校内最強とまで噂される様になったからって天狗になりやがって・・・」
俺は珍しく超絶的に不機嫌になった。最近の影井は絶対調子に乗ってる、誰のおかげで今の自分があるんだとさえ思えて来た。
「あ゛あ゛あ゛クソッ!!腹の虫がおさまらねぇ!!」
怒りが最高潮に達した時、ついに俺は生徒会室の壁を力一杯に殴った。
その時、思ったより大きな音が部屋中に響き、近くの教室が騒がしくなり始めたので、俺は急いでデッキと鞄を持って、静かにそして素早く生徒会室を出た。
「はぁ~流石に今のは拙かったな。あそこで見付かってたら俺はもう生徒会室に行けなくなるところだった・・・」
いつも影井と星と一緒に歩く道を俺は珍しく1人で歩いていた。
「・・・影井はさっさと帰っちまうし、星は今日は授業中に早退しちまうし。影井にはどんどん引き離されていくし・・・俺、もう何の為にアイツとデュエルしてるのか分からねぇよ・・・。確かにゲームで負けたからと言って死ぬ訳でも何かを失う訳でもねぇけどさ、でもだからって毎回勝ち逃げされる側の身にもなれってんだよ。お前は知らないかも知れねぇけど、俺だってあの時のお前みたいに頑張ってるんだぞ?まぁ自画自賛するのもどうかと思うけどさ・・・」
そんな独り言を言いながら歩いていると、1件のカードショップが目に止まった。
「・・・こんな所にカードショップなんてあったっけ?つい最近出来たのかな?それにしては開店記念の飾りが見当たらねぇけど・・・ちゃんと役場から許可を得てるのかな?」
不審に思いつつも、そのカードショップの事が気になった俺は、取り合えず中に入ってみた。
「ドアに近付いてもドアは開かない、ボタンもついてないし手動ドアか。それにしたって今時、手動ドアの店なんて珍しいな・・・」
ガララララ・・・
ドアは立て付けが良くないのか、少し重い感じだった。
中には誰もおらず、店内は静まり返っていた。
(誰もいないのか?)
「ごめんくださぁ~い、どなたかいらっしゃいますかぁ?」
不審に思った俺は店内に向かって呼びかける。
しかし、少し待っても返答は無かった。
不気味に思った俺は、何も見なかった事にしようと引き返そうとした。
すると、足元で「ザリッ」という音が聞こえた。
見てみるとそれは1枚のデュエルカードだった。
「こんな所にカードが・・・?」
手にとって見てみると、特に変わった様子は無い様だった。
「・・・E-HEROダーク・ガイア・・・?・・・悪魔族+岩石族モンスターで召喚できるモンスターか。効果は・・・?ふんふん、成程・・・え?マジで?すげぇ良い効果じゃん。あ、でもこれって店内にあったカードだから一応、売り物なんだよな?いや、ひょっとしたら誰かの落し物って事も・・・。まぁどの道、貰っていく訳にはいかないよな。でも、どうしようコレ・・・。元あった場所に戻しておく?小学生の頃、校長先生も『手に取った物を返却する時は、元あった位置に戻しなさい』って言ってたしな。・・・となると、この辺か?」
俺がカードを戻そうと腰を下ろすと、目の前から老婆の声で
「力が欲しくないのかぃ?」
という声が聞こえた。
突如聞こえたその声に驚いた俺は、慌てて顔を上げた。
見ると、すぐ近くに白髪に茶色いエプロンを身にまとった腰の少し曲がった老婆がいた。
「!!・・・・・・!?!?!?」
驚きのあまり声を出せず、1人でパニックになっていると老婆はただ一言。
「まぁ、落ち着きなされ」
とだけ言った。実は俺は昔から人一倍、驚く性格で今の様に今まで誰もいなかった筈の場所に人が立ってたりすると、声も出せずに慌てふためいてしまうのだ。
・・・まぁビビリと言われても否定は出来ないのだが・・・。
「時に質問なのじゃが、お前さん、力が欲しくないかぃ?」
「え?はぁ・・・まぁ、そりゃあ欲しいですけど・・・」
「何だぃ、近頃の若いモンは、はっきりしないねぇ。求めるものがあるなら、あるとはっきり言ったらどうだぃ!!」
「え?はぁ、すみません・・・」
(何でいきなり初対面のババァに説教されなきゃいけねぇんだよ!?)
そう思いつつも俺はその後、言われた通りにはっきりと自分の正直な気持ちを打ち明けた。
「・・・ほぉ、見返したい相手がおると・・・」
「はい!!最近そいつは調子に乗ってまして、まるで弱者であるお前に用はねぇよ、みたいな感じで俺を見てくるんです」
「ふむ、成程な・・・、よし分かった、それじゃそのカードはお前さんにプレゼントしよう」
「え?貰っちゃって良いんですか?」
「ええともええとも、ワシは前からお前さんの様な者をずっと探しておったんじゃい。お前さんは見事ワシの御眼鏡に叶った。だからそのカードは今からお前さんの物じゃ」
「本当ですか?有難う御座います!!よっしゃああぁぁ!!明日こそは絶対に負けないぞ影井ーーー!!!今までの俺とは違うというところを見せ付けてやらぁぁ。そして校内最強の座も俺のものだぁぁぁ!!!」
俺は上機嫌でそのカードショップを後にした。
家に帰ると早速、自室に篭り、デッキ調整を始めた。
翌朝、前日の夜更かしが響いたのか俺は、いつもより慌てていた。
朝食もロクに摂らず、全力疾走で学校に向かった。
正門の扉が閉まる5分前、俺は何とか門を通り抜け、自分の教室へと向かった。
教室には既に、影井と星が待機していた。
「あ、お兄ちゃん今日は遅かったじゃん。ひょっとして昨日、夜更かししてた!?」
「星?もう体調は大丈夫なのか?」
「うん、この通り」
「え?何?宇宙、珍しく徹夜したの?あ、夜更かしだっけ?」
「そうみたいなの、お兄ちゃんったら昨日の夕方、帰って来るなり可愛い妹の事も放ったらかしにして、1人部屋に篭ってなかなか出てこなかったのよ。あ!ひょっとして近くのレンタルビデオショップでエッチなDVDでも借りて観てた?」
「制服着たまま、んな事するか!幾ら俺が歳不相応の顔だからって、アダルトDVDなんか観るか!!後2年は早いだろうが!!ってそうじゃねぇ!!新しく見つけたカードショップで買い物してたんだよ」
「・・・カードショップも制服着たまま行く所じゃないと思うんだけど・・・」
星が生意気にツッコミを入れやがったが俺はそれを華麗にスルーしてやった。
「新しいカードショップ?」
「ああ、俺だけの穴場スポットさ。昨日の帰りに偶然見付けたんだけどさ、そこで店員の婆ちゃんから良い物を貰ったんだよ」
(この辺りに老婆が店員を勤めてるカードショップ?)
俺達は宇宙の言ってる店が思い浮かばなかった。
そもそもカードショップの店員と言ったら、せいぜい30~40代後半くらいの人が店員を勤めてるものだが、宇宙の話では老婆が店員を勤めていた言う。
俺達は宇宙がカードショップと駄菓子屋とを勘違いしてるんじゃないかとも思った。
「あ~、昼休みが楽しみだぁ・・・って、影井!今日の昼休みは俺とデュエルできるんだろうな?ここんとこ、先輩達とばっかりやってるらしいけどよぉ」
「あぁ、今日は昼休みも放課後も大丈夫だ。先輩達もデッキを見詰め直すとか言って、今日は俺とデュエルしたくないらしい」
「アハハ、トラウマ植えつけちゃったかも知れないね。その内、校舎裏に呼び出されて集団リンチされちゃうかもよ?」
「恐ろしい事言うなよ・・・」
(影井と星はこんな話で盛り上がっているが、見ていろ?影井、今日こそお前に勝ってみせるからな?)
俺は燃え上がる復讐心を滾らせていた。
キーンコーン・・・
ついに待ちに待った昼休みが訪れた。本当だったら、朝、影井と顔を合わせた時からリベンジをしたかった今日の俺にとって、前の4時間はいつも以上に長く感じた。
まるで何時間もの間、お預けを喰らっている犬の様な気分だった。
自分でも気付かないうちに体を震わせていた所為か、途中から具合でも悪いんじゃないかとも疑われたが、その身の震えも全ては影井にリベンジしたいという強い気持ちからくるものだった。
「影井、飯はもう食い終わったのか?」
昼休みが始まって5分程度しか経過していなかったが、一刻も早く影井とデュエルしたかった俺はこんな質問をしてみた。
「お前、今日はいやにせっかちだな。新作のデッキを試したい気持ちは分かるけど、少し落ち着けよ」
(何が少し落ち着けだ、こっちは昨日からずっと楽しみにしてたんだぞ?)
そう思いつつも俺は、そわそわしながら影井が昼食を済ませるのを今か今かと待ち続けた。
そろそろもう1度、影井に話し掛けようと席を立とうとした時だった、影井は俺の背後でデッキを持って立っていた。
「待たせたな、それじゃ始めようか」
「え?何々?勇吾君、デュエルするの?」
「うわぁ、勇吾のデュエルが久し振りに見られる、校内最強の実力を早く見せてくれ」
影井が久々に皆の前でデュエルをするという事が伝わると、クラス中が俺達に注目し始めた。
「なぁ、今日はどっちが勝つと思う?」
「うーん、そろそろ天幻寺が勝つんじゃないか?何か最近、良い感じらしいし。今朝もデッキを改良したって言ってたし」
「いやいや、ここはやっぱ影井だろ。何せあの全国大会ベスト8進出まで行った事のある荒木 先輩に無傷で勝ったって話だぜ?」
(・・・あの荒木 先輩相手に無傷で勝利・・・なのに俺は・・・)
影井の現在の戦績を知ると、自分だけ置き去りにされてしまった気分になり、寂しさと羨む気持ちから嫉妬心も強くなった。
お互い机をくっつけるとデッキをシャッフルし、その後お互いのデッキをカットする。
そして最初の手札となる5枚のカードをデッキからドローすると、いよいよ俺達のデュエルが始まろうとしていた。
to be continued