―――海賊は嫌いだ。
―――海賊が嫌いだ。
ふいに、子供の頃の記憶が
家への帰り道、耳の奥で
死んだ野良犬だと気づくまでに、数歩を要した。
まるで昼下がりに
脚はひしゃげ、腹は
荷馬車に轢かれたのだろう―――そう思ったのは最初の数秒だけだった。すぐに理解した。この世界には、倫理すら持たない“人間の皮を被った何か”がいる、と。
―――あの時からだ。私が“形”を得たのは。
品性の欠片もない
そして、
何もできずに震えていた、あの頃の弱い自分。
―――誰もやらない“なら”、私がやる。
海賊王の処刑後、世界には“悪”が溢れた。欲望に
鍋に放り込まれた
―――誰もやらない“から”、私がやる。
取り除くべき害悪は島々を荒らし、
「……るかった」
嘘をつき、人を
―――腐っている。
関わるほどに、憎悪は澱のように積もり、思考は刃のように研がれていく。
「……む……くれ」
―――だから。
“悔い改める時間”だけは平等に与えてやる。じっくりと。丁寧に。逃げ場がないように。
「………頼む……」
甲板に転がる海賊を無視し、海に浮かぶゴミくずのように衰弱していく姿を見下ろしながら、胸の奥に溜まった
―――“コレ”が、私と同じ「人間」だと?
肥え太った腹は、今やあの野良犬と同じく削がれている。
不摂生と
「もう、二度と………」
「………チッ」
心底からの嫌悪を示す舌打ち。私は海楼石を埋めた
「貴様は―――」
一呼吸の間を置いて、問う。
「面白半分で犬を殺さないと誓うか?あの日、腐乱した犬のそばにいたガキを“目付きが気に入らねぇ”と蹴り飛ばさないと誓うか?心配して駆けつけた母親を―――」
「すまねぇ……何の話を―――」
言い終える前に、剣先は脳天を
◆◆◆
夜の
―――この程度で三千万ベリーか。
殺した海賊の数は、もはや覚えていない。生け捕りにしない賞金稼ぎ―――“海賊殺し”。海賊達から海軍将校以上に恐れ、そして心底から
それでいい。それでこそ、正しい。賞金稼ぎの剣士には揺るぎない正義と悪を憎む動機があった。