もしも、シャーレに赴任してきたのがゴルゴ13だったら… 作:御厨パステル
皆様、お待たせしました。
次回でエデン条約は完結致します。
長かったな……。
あらすじ
ミカの説得に成功し、ティーパーティーの再建に成功した先生。
全ての決着をつける為、生徒を惑わせる悪い大人への制裁が始まる…
______________________
トリニティ総合学園 テラス………。
セイア「…まさかこうして、3人で集まれるとは思わなかったよ。」
ナギサ「セイアさんの予知夢にもありませんでしたか?」
セイア「そうだな…ここ最近はイレギュラーばっかりだよ。」
セイア「先生の動向だけはどうしても視えなかった…。」
ミカ「先生って何者?」
「ただの一般人だ。」
セイア「ただの一般人だったら、ミカと殴り合って勝てるわけ無いんだよ。」
「偶々だろう。」
ミカ「ぜんっぜん、息切れて無かったし、絶対本気出してなかったでしょ!?」
「子供相手に本気を出すのは大人げないだろう。」
ミカ「…何か腑に落ちない…。」
ナギサ「まぁまぁ、ミカさん。」
ナギサ「…話は変わりますが、先生はこの後どう動くおつもりですか?」
「アリウス生からの情報で、何者かがアリウス分校に寄生しているという事が判明した。」
「ソレのせいで、このような凶行をしている。」
セイア「ソレが誰なのかは先生にも分からないのか?」
「おおよその検討はついている。」
「エデン条約まで後2日、もう大詰めだ。」
「奴らも何かしらのアクションは起こすだろう。」
「そこを叩く。」
ナギサ「なるほど…何か、私達にできる事はありませんか?」
「あたかも"何も知らない"といった感じで生活しててほしい。」
「大勢で動いてしまったら、奴らも尻尾を出さないかもしれないからな。」
「何か動きがあったら連絡する。」ガタッ…
「失礼する。」コツコツコツコツ…
ミカ「先生っ!」
「…。」ピタッ
ミカ「気をつけてね…?」
「…あぁ。」
コツコツコツコツ…
_____________________
ゲマトリア 隠れ家兼研究所……………。
黒服「………。」
コンコン。
黒服「…おや。ベアトリーチェでしょうか…。」
黒服「まだ彼らの作品は出来てないらしいので、追い返しますか…。」
黒服「全く…余裕が無い人ですね……。」
ガチャッ…
黒服「まだ、例のモノの完成までには時間を要するようです。お引きと………り………。」
「……………。」
黒服「う、うわぁぁぁっっ!!!?」
ガシャァン!!
思わず腰が抜けて後ずさりをしてしまい、アンティークテーブルの上の花瓶を落としてしまう。
黒服「な、何故、貴方がここに……っ!?」
「…………。」
???「うるさいぞ黒服。芸術家の邪魔はするものじゃ……?」
???「……誰だ。」
「…お前たちに聞きたい事があって、ここに来た。」
???「…さてはお前が【先生】か。」
マエストロ「私の名前はマエストロ。貴方の名前は?」
「デューク・東郷」
マエストロ「…東郷…伯爵………偽名か。」
マエストロ「それで、何用か。」
黒服「…マ、マエストロ!そんな高圧的な態度を取るのは…!」
マエストロ「…何故だ?と言うより、お前はいつまで腰が抜けているんだ。」
黒服「わ、私だってこんな醜態を晒したくは無いですよ…!」
???「騒がしいですね。」
黒服「ゴルコンダ…!」
ゴルコンダ「…おや。外から来た大人…ですか。」
ゴルコンダ「はじめまして、先生。私はゴルコンダ。」
ゴルコンダ「背を向けた状態での挨拶となるご無礼、どうかお許しくださいませ。」
ゴルコンダ「わたくしにはこれ以外の方法がありませんものでして……。」
???「そういうこったぁ!」
ゴルコンダ「こちらはデカルコマニーです。」
「…………。」
ゴルコンダ「…黒服?背が縮みましたか?」
黒服「私はどうもあの一件以来、先生を見るとちょっと体が縮むようになってしまいましてね…。」シュ~…
黒服「何故でしょうかね…もうこの肉体が生存を諦めているのでしょうかね……。」
「…マダムという奴を知っているか。」
「「「…!?」」」
マエストロ「……何処でそれを?」
「生徒から聞いた。」
「アリウス分校の実質的な支配者とも。」
マエストロ「…まぁ、確かにそのような事をしてはいますね。」
「ただの大人がそこまでの力を持ち合わせているとは思えない。」
「何者かの援助があるのか、それとも人ならざる者なのか。」
「そんなあやしいやつが居そうな所と言ったらここしか無いだろう。」
「…何か、そのマダムの手助けになるような事はしていないだろうな。」
「「「!」」」
マエストロ「…それを知って、どうする。」
「援助を止めてもらう。」
マエストロ「…随分と勝手な意見だ。」
黒服「こ、ここは正直に言ったほうが…。」
マエストロ「何故そこまで弱腰で対応しているんだ、黒服。」
黒服「これは忠告です…!彼を敵に回すのだけは辞めた方が良いです…!」
「例えば、兵力の増強の為の人形兵器を製造していたり。」
「「「!」」」
「例えば、一撃で生徒を葬る事が出来るような兵器を開発していたり。」
「巡航ミサイルのような物を用意していたり。」
「「「!!?」」」
「…そういう事をしているかどうかを聞いている。」
ゴルコンダ「……随分と細かな内容ですが…それを何処で?」
「質問をしているのはこちら側だ。」
黒服「み、皆さん…早く白状した方が身の為です…!」
ゴルコンダ「いや、なぜ貴方はそちら側なのですか。」
黒服「私はあなた達の身を案じて言っているんです!」
ゴルコンダ「黒服らしくないですね…。」
「………吐け。」
「でないと、一人づつ消えていく事になる。」
マエストロ「!……随分と強気だな。」
「…………。」スッ……
目にも止まらぬ早さで、ゴルコンダ&デカルコマニーの前に接近し、正拳突きでゴルコンダをぶち抜いた。
ゴルコンダ「………。」
マエストロ「ゴ、ゴルコンダ!?大丈夫か…!?」
ゴルコンダ「…………………。」*1
デカルコマニー「わァ………ぁ………。」
黒服「デカルコマニーも言葉を失ってます…!」
「次は誰だ。」スゥッ…
「…じゃあお前にしよう。」
「顔が2つあるから1つ取っても支障はないだろう?」グググッ…
マエストロ「ひ、ひぇぇぇぇ……!!!」ガタガタガタガタ…
黒服「せ、先生!どうか落ち着いてください!」
……………………………………。
「……それで全部か。」
黒服「はい……話せる事は話しました…。」
「本当だな?」
マエストロ「ほ、本当だとも!」
デカルコマニー「…。」
「……お前達がベアトリーチェから手を引くというのなら、この件はお咎め無しとしてやっても構わない。」
黒服「えっ!?」
「そちらにとってメリットの多い契約だろう。」
黒服「い、いいんですか?」
「まだ何か望むのか。」
黒服「い、いえ!そういう訳では…。」
「なら契約成立だ。」
「より細かく、洗いざらい吐いてもらおうか。」
「既に配備してある兵器の場所。」
「それと、ベアトリーチェの居場所も。」
………………………………………………。
トリニティ自治区から数km離れた廃墟群………。
アリウス生「いよいよ明後日だ。」
アリウス生「あの忌々しいトリニティと邪魔なゲヘナを同時に叩ける…。」
アリウス生C「この巡航ミサイルで……っ!」
アリウス生「この日をずっと待っていた…!」
「ようやくだな。」
アリウス生「あぁ…本当にようやく…………だ?」
「…………。」
アリウス生「だ、誰だお前!!?」
「答える義務はない。」スッ…
アリウス生「くっ………!」ドサッ…
「……。」コツコツコツコツ…
「急所は外した…だが、動けないはずだ。」
アリウス生「そ、外に警備がいたはずだ…!」
「今この瞬間に、俺とお前の声だけがこの場に響いてる事で大体予想はつくだろう。」
アリウス生「…!」
アリウス生「な、何をしに来た…!」
「そのミサイルを貰いに来た。」
アリウス生「なっ……!」
「……マダムの居場所を教えてもらおうか。」
アリウス生「だ、誰が教えるか……!」
アリウス生「この兵器は、私達アリウスの望みだ…!」
アリウス生「そう簡単に何でもかんでも言うかっ!」
「……………。」
「随分と侵食は進んでいるな。」
アリウス生「…は?」
アリウス生の両手足を縛り、お姫様抱っこで持ち上げる。
アリウス生「な、何をする!?」
「治療だ。」コツコツコツコツ……
アリウス生「治療だと…?」
「これでな。」
アリウス「……これは?」
アリウス生の目線の先にはよく分からない機械と椅子。
ドサッ…
ゴルゴは椅子の上にアリウス生を座らせる。
「……………。」カチ……カチッ…カチッ。
アリウス「……っ!」
「強張るな。」
「一瞬で終わる。」カチッ…
アリウス生「…っ!?」
「………。」
………………………………………。
アリウス生「……ん、んん?」パチッ…
アリウス生「あれ…寝ちゃってたのか……。」
「起きたか。」
アリウス生「…!」ガバッ…
「気分はどうだ。」
アリウス生「…特に何かと言うのは……。」
「………トリニティ。」
アリウス生「……トリニティがどうした…?」
「……やはりな。」
アリウス生「少し話に付いて行けてないから…説明を…。」
「端的に説明すると、お前達は怨念を増幅させられていた。」
「一種のマインド・コントロール状態だった訳だ。」
アリウス生「!?」
「現に今、トリニティの名を聞いてもそこまで怒りが湧いてこないだろう。」
アリウス生「言われてみれば……確かに。」
「お前達のトップはお前達をコントロールし、使役していた。」
アリウス生「…!」
「…イライラしてくるだろう。」
アリウス生「…私達は皆、良いように使われてたって事だろ?」
「そうだ。」
アリウス生「……ムカついてきたっ!」
「そこでだ、お前にやって欲しい事がある。」
アリウス生「…何だ?」
「ここにお前の信用できる奴を呼んでこい。」
「全員に治療を施す。」
「そして、兵を募りマダムを攻撃する。」
アリウス生「…!」
アリウス生「そんな事…出来るのか…?」
「出来る。」
アリウス生「………分かった。」
アリウス生「復讐出来るってんなら、何でもしてやるっ!」
「その意気だ。」
「すぐに実行する。」
アリウス生「所で……あんたの名前は…?」
「デューク・東郷。」
______________________
翌日…………。
トリニティ総合学園 テラス……………。
ピピピピピ…ピピピピピ…
ナギサ「…!先生から…。」
ナギサ「…すみません、出てもよろしいですか?」
セイア「あぁ、いいとも。」
ピッ…
ナギサ「…どうかされましたか、先生?」
ナギサ「…はい……はい。」
ナギサ「えぇぇぇぇ!!!?」ガタッ…!
ミカ「んぐっ!?」ビクッ!
セイア「!」ビクッ!
ナギサ「はい……そうですか……。」
ナギサ「何か私達にできる事は…。」
ナギサ「………はい、承知しました。」
ナギサ「では、失礼しますね。」
ピッ……………
ミカ「ナギちゃん、いきなりおっきな声出さないでよ!」
ナギサ「す、すみません…。」
セイア「それで?先生は何と言ってたんだ?」
ナギサ「…アリウス分校の生徒をこちらに引き込んで、反乱軍のような物を作っていると……。」
セイア「……それはまた凄い事をしているな…。」
ミカ「そんな簡単に出来る事なのかな…?」
ナギサ「…まぁ先生なら出来るでしょうね…。」
ナギサ「それと、白州アズサさんと連絡が取りたいとも仰ってましたね。」
セイア「……まさか、アリウス分校内に突撃する時の案内役として……なのか?」
「「………ありえるのが怖い(ですね)。」」
______________________
トリニティ自治区から数km離れた廃墟群……。
ザッザッザッザッザッ…
アズサ「…ここに先生が?」
アズサ「先生!いるのか!」
ザッザッザッ…
「…アズサか。」
アズサ「私に用だと聞いたんだが。」
「とりあえず中で話そう。」
「こっちだ。」
アズサ「……。」
…………………………………。
アズサ「こ、これは……!?」
アズサの目の前には2つの巡航ミサイルとそれの発射台があった。
「これをエデン条約の調停式の時に撃ち込んでくる算段だった様だ。」
アズサ「そうなのか…。」
『…ん?お前、白州アズサか?』
アズサ「…誰だ?」
アリウス生A「あぁいや、一方的に知ってるだけ。」
アリウス生A「アリウススクワッドに居ただろ。」
アリウス生A「結構、アンタの名前は知れてるよ。」
アズサ「………そう、か。」
「………。」
「ここを占領し、そのまま補給基地の様な運用をしている。」
「ここには、ベアトリーチェの呪縛から解放された生徒が集まっている。」
「その内、俺達はアリウス分校を襲撃する。」
アズサ「……私はそれの手助けか?」
「……そうなるな。」
アズサ「……。」
アズサ「分かった。」
アズサ「私も、決着をつけなければならない事がある。」
アズサ「残して来てしまった、人たちの。」
「……。」
『あ、あの〜〜!』
「「!」」
アズサ「…ヒフミ!?」
ヒフミ「あっ、アズサちゃん…!」
「…どうしてここに。」
ヒフミ「ごめんなさい…アズサちゃんを追いかけて来て…。」
「そうか。」
ヒフミ「アズサちゃん……。」
アズサ「……ごめん、ヒフミ。」
アズサ「私はやるべき事があるんだ。」
アズサ「もしかしたら、もうそちらには戻ってこれないかも。」
ヒフミ「え……?」
アズサ「……楽しかった。」
アズサ「人の温もり、誰かと分かち合える喜び。」
アズサ「……死んでも忘れない。」
ヒフミ「……アズサ、ちゃん…。」
「…………。」
「何を言っているか分からないが、お前を死なせたりはしない。」
「「…!」」
「アズサ、俺はお前を人殺しにする気もないし、汚れ役を受けさせる気もない。」
「あくまでも分校の構造を教えてほしい。」
アズサ「そ、そうだったのか。」
「別に前線に出てもらう気もない。」
「早とちりをするな。」
アズサ「す、すまない。」
「……だが、アリウススクワッドについても教えてほしい。」
「恐らく、俺達の襲撃を妨害してくるだろうからな。」
アズサ「…分かった。」
アズサ「アリウススクワッドは4名で構成されてる。」
アズサ「リーダーの【錠前 サオリ】。」
アズサ「メンバーの【戒野 ミサキ】、【槌永 ヒヨリ】、【秤 アツコ】。」
アズサ「ミサキはミサイルランチャーを所持している遊撃枠。」
アズサ「ヒヨリは狙撃手。」
アズサ「アツコはSMGを持っている。」
アズサ「いつもガスマスクを着けてて、それには防御力を上げる効果があると言っていた気がする。」
アズサ「そして…サオリ。」
アズサ「サオリは、私の教官みたいな事をしてくれた。」
アズサ「私の、といってもアリウススクワッドの皆は、サオリが鍛えたようなもの。」
アズサ「…実戦では一度も勝てた事はない。」
アズサ「アリウス分校の中でトップの実力者。」
「……。」
「情報、助かる。」
アズサ「………。」
ヒフミ「…アズサちゃん?」
アズサ「…私はアリウススクワッドの皆を裏切ったんだ。」
アズサ「私だけ、トリニティに来てしまった…。」
アズサ「だから…恨まれていると思う。」
アズサ「…先生。」
「…。」
アズサ「皆は、他の人たちより強くベアトリーチェに支配されていると思う。」
アズサ「……殺す一歩手前くらいまでいかないと、止まらない。」
アズサ「…けど、私は助けたいんだ。」
アズサ「裏切り者の身の私だけど…そんな事を言える立場では無いけど。」
アズサ「偽物の人生を歩まされている…皆を…。」
アズサ「お願いだ…先生。」
アズサ「サオリ達を助けてあげてくれ……!」
「………。」
「分かった、やってみよう。」
アズサ「…!」
アズサ「…これはヒフミのおかげでもあるんだ。」
ヒフミ「わ、私?」
アズサ「私はヒフミ達と出会って、気付かされたんだ。」
アズサ「だからこうして、皆を救おうと決断できている。」
アズサ「ありがとう、ヒフミ。」
ヒフミ「え、えへへ……。」
「「!!?」」
「……。」
アリウス生A「せ、先生っ!」
「何だ。」
アリウス生A「何処からか分からないけど、ミサイルが撃ち込まれた!」
アズサ「…ミサイル…っ!?」
ガタガタガタガタ…
爆破の風圧で廃墟が揺れる。
誰が叫んだか分からないその声が、廃墟内に響く。
アズサ「…!!」
「…………。」
ヒフミ「バ、バレていたと言う事ですか…!?」
「そう考えるのが妥当だ。」
アズサ「………。」
「……アズサ。」
アズサ「大丈夫だ、先生。」
アズサ「止めてみせる……きっと……っ!!!」
______________________
アリウス生B「と、止まらないっ!!」
「状況は。」ザッザッザッ…
アリウス生B「先生…!」
アリウス生B「アリウススクワッドの3名がこちらに接近して来ています!」
アリウス生B「何とか抑えようとはしているのですが……。」
「分かった。」
「一旦、全員を引かせろ。」
アリウス生B「い、いいんですか!?」
「このまま迎撃させておくメリットがない。」
「万全の状態にしておきたい。」
アリウス生B「…分かりました…。」
ザザッ…!
アリウス生B「総員!撤退準備!撤退準備!」
トランシーバーで前線の生徒に通達する。
……………………………。
???「……アイツら下がっていくよ。」
???「…様子を見る。前には出るな。」
???「…了解。」
???「……。」
ザッザッザッザッザッ…
「「「…!」」」
ザッザッザッザッザッ…。
アズサ「………。」
「………。」
???「…アズサ。」
アズサ「…サオリ。」
サオリ「…何のつもりだ。」
アズサ「止めに来た。」
サオリ「…1人で?」
アズサ「…先生もいる。」
アズサ「私は一人じゃない。」
サオリ「…………。」
サオリ「…私たちを止めたいか?」スッ…
サオリ「ならば私のヘイローを破壊してみろ。」
サオリ「…白洲アズサ。」
アズサ「…っ!?」
「………。」
アズサ「先生っっっっ!!!!!!」
サオリの放った弾丸はゴルゴの腹部に当たった。
「……。」
アズサ「先生……!大丈夫……っ!!?」
サオリ「……………。」
「……。」ゴソゴソゴソ…
アズサ「先生……?」
「…。」ガサッ…
ゴルゴのジャケットの内ポケットから銃弾が食い込んだポケットティッシュが出てきた。
「ポケットティッシュが無ければ、貫通していたな。」
アズサ「いやいやいや、先生!何で貫通してないんだ!?」
「コレのおかげだ。」
アズサ「防弾仕様のポケットティッシュは見た事ないぞ!!?」
サオリ「……ミサキ、防弾仕様のポケットティッシュを知ってるか?」
ミサキ「聞いた事無いよそんなの。」
ミサキ「…単純にあの大人がおかしいだけ。」
サオリ「そう…だよな。」
「………。」スッ…
「「「!?」」」
アズサ「せ、先生?何処を撃って…?」
「部隊との合流を考えての配置もあるだろうが、まるで隠れられていない。」
放たれた弾丸が倍率スコープのレンズを破壊する。
ヒヨリ「ひぇっ……!」ガタガタガタガタ…
サオリ「……いつから気付いていた。」
「最初からだ。」
「アズサに、メンバーの一人は狙撃手だと聞いていたからな。」
サオリ「…それでも、位置が割れるとは思わなかった。」
サオリ「………只者ではない。」
「……。」
サオリ「……。」
サオリ「なっ…!?」パシュッ!
ミサキ「…っ!」パシュッ!
アツコ「…!?」パシュッ!
「………。」
目にも止まらぬ早撃ちで、3人の顔の横を弾丸が通過した。
「銃を置くか。」
「それとも。」
「このまま続けるか。」スゥッ……
「「「…!」」」ゾゾゾッ………!!
サオリ「(これが……殺意………っ!?)」
ミサキ「(……本気でやる気…!?)」
アツコ「(こ、怖い………!)」
サオリ「…………。」
サオリ「ミサキ、姫を連れて下がってくれ…。」
ミサキ「な、何言ってんの…!?」
サオリ「無理に傷ついてほしくない…!頼む…!」
ミサキ「…………分かった。」サッ…
ザッ……。
サオリ「………。」
「………。」
アズサ「サオリ……っ!」
サオリ「もう、戻れはしない。」
サオリ「『Vanitasvanitatum』………。」スチャッ……。
「…………。」カチャッ………。
ほぼ同タイミングで撃ち始めた両者。
サオリ「……!」ダッダッダッダッ!
距離を詰めながら射撃を繰り出すサオリ。
「……。」ザッザッザッザッザッ…!
回避行動に専念しながら応戦するゴルゴ。
サオリ「……。」ダッダッダッダッ……!
サオリ「(こんなに激しく撃ち合いながら、一定の距離を保たれている…!)」ダッダッダッダッ……!
サオリ「(明らかに…戦い慣れしている…!)」ダッダッダッダッ…!
「………。」ザッザッザッザッザッ……サッ…!
回避しながら廃墟の瓦礫に身を隠すゴルゴ。
サオリ「……。」ザッ……。
サオリ「(隠れる……?この状況で……!?)」
「…………。」サッ…!
《center》バァン!バァン!バァン!
瓦礫から出ていた鉄筋コンクリートに向かって銃を撃つゴルゴ。
サオリ「な…っ!?」
跳弾した弾の1つがサオリの帽子のつばの部分を貫通する。
サオリ「っ……不味い…!」
跳弾に不意を突かれ、転がってくるグレネードを気づくのにコンマ数秒遅れた。
サオリ「スモークグレネードだと…!?」
一時的に視界が煙で覆われるサオリ。
サオリ「(とにかく音だ…音を頼りに相手の位置を…!)」バッ…
サオリはその場に屈み、弾丸が当たる面積を少なくして音を待つ。
サオリ「(………銃声もない…足音もしない……?)」
サオリ「(………………まさか動いてないのか…?)」
サオリ「(………一体、何の為のスモークなんだ…!?)」
サオリ「…!!?」
背後から銃口が向けられているのを感じた。
サオリ「(……まさか…音を消して詰めてきていたのか…!)」
「予想外の事は起こる。」
サオリ「……っ!?」
サオリ「(前方から声が聞こえた…!?)」
サオリ「(じゃあ今、私に銃を突きつけているのは……!)」
スモークが晴れる。
アズサ「………………。」
サオリ「……アズサ。」
アズサ「もうやめて、サオリ。」
サオリ「私を止めても、この計画は止まらない。」
サオリ「あくまでも私達は駒の1つだ。」
サオリ「だから、如何する事もできない。」
アズサ「…………。」
「すべての事象の根底に虚無を見出す。」
「何物も真に存在せず、また認識もできない。」
「そのような思想を植え付けられている。」
サオリ「……。」
「だが、お前は優しい。」
サオリ「…!」
「聞こえないように小声で喋っていたようだが、丸聞こえだった。」
「逃げるように促していただろう。」
「果たしてそれは【全ては虚しい】と唱えてる人間が言える事なのか?」
「まだ、諦めきれてないんじゃないか。」
サオリ「!」
「どんなに洗脳されても、その人の本質までは変えられない。」
「その乖離した2つの考えがお前を苦しめている。」
サオリ「…そうなのかも、しれない…な。」
「………。」カチャッ…
サオリに銃を向けるゴルゴ。
アズサ「…先生!?」
サオリ「…!」
「……だがここで殺す。」
「【アリウススクワッドとしての錠前サオリを。】」
アズサ「……!?」
「凝り固まった思想を崩すには、起爆剤が必要だ。」
「この銃弾をトリガーとして…な。」
「ここで生まれ変わるんだ。」
「錠前サオリ。」
サオリ「……せん、せい………っ。」
「…心配するな。」
「安心して、新しい人生を歩め。」
サオリ「!」
銃弾が頬を掠めた。
そして、私の心を締め付けていた鎖の様なものが壊れた気がした。
サオリ「………。」
アズサ「サ、サオリ…?」
「初めまして、本当の錠前サオリ。」
「…気分はどうだ。」
サオリ「……ありがとう、先生……。」
サオリ「私、生きていいんだな。」
サオリ「私として、生きて…いいんだな…!」
「あぁ。」
「存分に楽しんでこい。」
ミサキ「リ、リーダー……?」
サオリ「ミサキか。」
サオリ「……ミサキ。」
ミサキ「な、何……?」
サオリ「私はこれから、アリウスの反乱を手伝うつもりだ。」
ミサキ「……えっ!?」
サオリ「過去の私に別れを告げる為に。」
サオリ「私のような思いをしている人を救う為に。」
サオリ「……頼む……手伝ってくれないか?」
ミサキ「………。」
ミサキ「…別に私はここ以外に居場所なんて無いし、」
ミサキ「…リーダーが行くのなら、付いて行く。」
サオリ「…姫もそれでいいか…?」
アツコ「…。」コクコク。
ミサキ「後でヒヨリにも連絡を取るけど、多分付いてくると思うよ。」
サオリ「…ありがとう、皆。」
アツコ「…サオリ。目が綺麗になった。」
サオリ「…!そ、そうか…!?」
アツコ「私も…なれる?」
サオリ「……あぁ。」
サオリ「全てを終わらせたら、自由になれる。」
サオリ「そうだろう?先生。」
「そうだな。」
「この悲劇の幕引きを務めるのは、お前たちだ。」
______________________
アリウス反乱軍 前哨基地………。*2
サオリ「改めて、錠前サオリだ…よろしく頼む。」
ミサキ「……戒野ミサキ……よろしく。」
ヒヨリ「つ、槌永ヒヨリです…っ!」
アツコ「………。」スッ…サッサッ。
「秤アツコだな。」
サオリ「先生、手話が分かるのか…。」
「あぁ。」
アツコ「………。」
「…話せない訳ではなさそうだがな。」
サオリ「姫は、アリウス分校の生徒会長の血筋なんだ。」
サオリ「だからなのかは分からないがアリウス分校の中でも特段、マダムに特別視されていた。」
サオリ「他の生徒との交流をさせない為に手話をさせているんだ。」
サオリ「私達とも、手話で意志疎通を取っている。」
「そうか。」
「…アツコ。」
アツコ「…?」
「他の奴と声を通じて話したくはないのか?」
アツコ「……。」
「お前はお前だ。」
「なりたい様になっていい。」
「自分の価値を決めるのは自分だ。」
「自分が大切なら、解放してやれ。」
アツコ「……。」
カチャッ……。
ガスマスクを取り外すアツコ。
アツコ「……。」
「…デューク・東郷。」
「お前の名前は?」
アツコ「…私は…アツコ。」
アツコ「秤、アツコ…!」
サオリ「…姫……っ。」
「まだまだ、自分を出していく練習が必要だな。」
「…先に、今やるべき事をやるがな。」
サオリ「……。」
「改めて聞くが、俺達はアリウスを襲撃する。」
「お前達も付いて行く、という判断で構わないか。」
サオリ「あぁ、大丈夫だ。」
サオリ「これは私達の総意でもある。」
「分かった。」
「……準備を整え次第、すぐに動くぞ。」
「今日が奴の命日だ。」
………………………………。
アリウス生A「…えっ!?アリウススクワッドも合流したのか!?」
「そうだ。」
アリウス生B「もしかしたら勝てるんじゃないか!?」
「油断はするな。」
「準備を怠る事で後悔するのは自分だ。」
「「了解(です)!」」
サオリ「………。」
「…何かあったか。」
サオリ「アリウスから離脱したのにアリウススクワッドと言われるのは何か…な。」
「確かに思うところはあるか。」
ヒヨリ「いっそ名前を変えちゃいますか?」
ミサキ「そんなに大事な事…?」
「…まぁ名前が変わる事で士気が上がるならな。」
サオリ「先生は何か浮かばないか?」
「俺に委ねるのか。」
サオリ「私達を救い出してくれたのは先生だ。」
サオリ「なら先生の所属の部隊としての名前が欲しい。」
「………………。」
「……第13部隊。」
サオリ「……13部隊?」
ミサキ「なんか理由とかあるの?」
「そう呼ばれてた時もあった。」
ヒヨリ「呼ばれてた……?」
サオリ「やはり、先生は何かそういう仕事に就いていたんだな!」
「余計な詮索は止めてくれ。」
「…ともかく、この名前で構わないか。」
サオリ「私は問題ない!」
ミサキ「…元から何でも良かったし…。」
ヒヨリ「私も何かカッコいいのでOKです!」
アツコ「私も、それでいい。」
サオリ「早速、何か指示をくれ!先生!」
「……。」
「他のアリウス生の情報から大雑把な地図は作った。」
「ベアトリーチェ…マダムの居場所は分かるか。」
サオリ「…少し書き足してもいいか?」
「あぁ。」
サオリ「私達が呼び出される場所は…この辺りだな…。」
サオリ「細かい座標などは分からない…。」
「いや、構わない。」
「後はこちらで何とかする。」
「アロナ、この地図から大体の座標を割り出してくれ。」
アロナ『了解です!』
「割り出せたら、アレに入力をしてすぐに発射してくれ。」
アロナ『分かりました!』
サオリ「…先生、アレってまさか。」
「そうだ。」
サオリ「…っ!?」
ミサキ「えっ?もう発射するの…!?」
「敵の準備が整う前に襲う。」
「容赦はしない。」
「ミサイルの発射台は近い、すぐに揺れが来るぞ。」
「何かに掴まっておけ。」
ベアトリーチェがいるであろう場所に2基の巡航ミサイルがが発射された。
ヒヨリ「す、凄い……。」
ミサキ「まさか、自分が用意した兵器で攻撃されるなんて思ってないだろうね。」
「相手の力量が掴めない今、先に削れるだけ削っておく。」
「着弾まで約5分だ。」
「着弾と同時に突撃出来るように移動するぞ。」
「「「「了解(!)。」」」」
いかがでしたでしょうか。
エデン条約編が完結したら、パヴァーヌ編を再開する予定であります。
よろしくお願いします。