深海へようこそ   作:きすことおり

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シミュレーターが鎮座している隣の部屋、演算ルームにて。ホーキンスは隣のペイターに話しかけた。

「さて。ペイターくんは二人をどう見るかい?」

ペイターははい、と返事をする。

「先にライナー・フランツについて申し上げます。インファイターにしては被弾を気にしすぎているように見受けられます。スタッガー限界の見極めが甘くクイックブーストを雑に出しているため、EN残量がなくなった際の被弾が多すぎます」

「なるほど、軽量逆関節に乗ってるペイターくんらしい意見だね。一次試験の時に酷評していたミラくんはどうだい?」

「これでD判定は詐欺です」

ペイターは端末に映したミラ・ヴェルナツキ―の履歴書を見ながら言った。ホーキンスは頷く。

「うん、私もそう思う。でもね、一次検査でも片鱗はあった。視線は既に敵を捕らえているのに、なかなか引き金を引かないのは何故だか……わかるかい?」

ペイターは思案する。

「……武器のリチャージを待っていたのではないでしょうか。一次試験の規定機体は、スタッガーを取りづらい構成になっています。敵を確実に撃破するために、クールタイムを取っていたのではないでしょうか」

「ペイターくん、それは出撃回数を重ねている私たちだから言えることだ」

ホーキンスは続ける。

「いいかい? 実戦経験のない人間が敵を見たら、普通は『なんとしてでもすぐに対処したい』と思う。私たちはスタッガーを取った方が効率がいいと判断できるが、初心者はミサイルやライフルを計画もなく撃ち続けて、敵からの攻撃はすべて避けようとする。一次試験のミラくんはクイックブースト回数が多くて被弾を気にしすぎていたように見えるが、敵への攻撃は全てワンテンポ遅れていた」

ホーキンスは一次検査の結果をディスプレイに表示させた。再現動画も隣で流す。

「脳波測定の結果も見たんだけどね。ミラくんの敵影認識速度はかなり速い。だが攻撃までの反応速度は遅く、武器の運用効率も悪い。おかしいと思って動画を見たら、近接してしつこく追従する敵に、ミラくんは頑なにレーザーダガーを使わずミサイルで対処していた。いくら初心者は近接武器を使わないといっても、あの距離なら使う人の方が多い」

ホーキンスがシークバーを動かして、当該のシーンを映す。ペイターは言う。

「この敵ですね。ブレード以外の武器はクールタイムに入っています。ホーキンスさんのおっしゃるように、初心者が敵をすぐに対処したいと思うのであれば、ここでレーザーダガーを振らなければ筋が通りません」

「ああ、ここまで見てようやく気付いたよ。ミラくんには検査の数値を誤魔化すために、何かしていた。裏を返せば、何かできるだけの技量がある。なぜ検査でそんなことをするかは知らないけど……母数が多い定期検査は数字だけしか見ないし脳波測定もやらないから、落とすのが普通だろうねぇ。スネイルに進言してよかったよ」

「慧眼、流石です」

「ペイターくんも見抜けるようになろうね」

「精進します」

「そう固くならないで、動画を見てすぐ気づいたんだから優秀だよ。さて、ペイターくんはミラくんをどう見る?」

ペイターは一呼吸おいていう。

「敢えてミラ・ヴェルナツキーの欠点を申し述べるならば……協働作戦にパイルを持ってきた僚機がいるにも関わらず、3連レーザーキャノンを持ってくるところでしょうか」

「あっはっは! 言えてるねぇ」

ホーキンスは腹から声を出して笑う。

「ホーキンスさんのご意見はいかがですか」

「そうだね……ミラくんに足りないのは、粘り強さかな」

「なるほど、勉強になります」

「ならば、今押すべきボタンは?」

「こちらかと」

ペイターは躊躇なく、コンソールにある「実弾詰まり」のボタンを押した。

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