ゲヘナへの道〜先生の熱愛疑惑騒動〜   作:星組

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先生のランキングもとい思い出マウント大会勃発

 どこかと戦争でもおっぱじめそうな空気だな。

 シャーレオフィス内にある視聴覚室。その片隅に佇みながら、尾刃カンナはため息をついた。

 本日は一時期キヴォトス中を騒がせた、先生熱愛騒動。その延長線にあるイベント……もとい、事を収束する為に設けられた場である。

 騒ぎの元凶になったメモリアルロビーの完成。その実験の為に何名かの生徒達が集められているが、一応趣旨としてはそういった検証をしつつも、思い出を振り返ったり、見せあったりして楽しもう! シャーレのメンバー皆で! ……主催であるエンジニア部と協力関係にある万魔殿の言い分は以上だ。

 

 なお、それは建前(勿論、純粋に思い出を振り返りたい気持ちもあるだろうが)。

 真実はあの日に流れてしまった映像の真偽を問いただす。これが大目的だろう。それほどまでに、先日の映像は衝撃的だった。……主に一部の生徒達にとって。

 その為この場にはトリニティ、ゲヘナ、ミレニアム、百鬼夜行、レッドウィンターや山海経にヴァルキューレ。果てはアビドスやSRTにいたるまで、ありとあらゆる学園にいる、シャーレ所属の生徒らが、厳正なる抽選を乗り越えて(流石に視聴覚室に希望者全員は入らなかった)ここに来ているのである。

 

「(違うか。ここで戦争が起きようとしているのか)」

 

 苦笑いしながらカンナは肩を竦める。何せ、実験参加者らは揃って皆が探りあうような目で互いをみているからだ。

 因みにカンナ自身は抽選には応募していない。が、それがかえって中立と見られてしまったのか。「お願い! 現場の警護を……!」と先生に泣きつかれてしまった。同じような人間は他にもいる。

 シャーレの十三人からは、スズミとツバキ、チセの三名が。ヴァルキューレからは中務キリノと合歓垣フブキが。SRTからは……おそらくはピンポイントで月雪ミヤコのお目付け役として空井サキ。

 他にも近衛ミナや佐城トモエ、蒼森ミネ。あと、謎のへそ出しヘルメット団の生徒が部屋に配置されていた。

 

「(シャーレの十三人が全員いない。各地を警備しているか、各々が自由に過ごしているのか。他の警備役は、単純に実験参加者が少ない学園の者を選んでいるらしい)」

 

 警備する側とすれば、メンバーが頼もしい者ばかりなのは単純にありがたい(約一名はめちゃくちゃ怪しいが)。ただ問題は……。

 

 アビドス。まさかの全員参加

 

 トリニティ。参加者は聖園ミカ、下江コハル、浦和ハナコ、栗村アイリ、杏山カズサ。

 

 ゲヘナは空崎ヒナ、天雨アコ、銀鏡イオリ、火宮チナツ、黒舘ハルナ、愛清フウカ、羽沼マコト、棗イロハ。

 

 ミレニアムからはエンジニア部三人は勿論のこと、早瀬ユウカ、生塩ノア、天童アリス、才羽モモイ、飛鳥馬トキ。

 

 百鬼夜行からは久田イズナ、桐生キキョウ、水羽ミモリ。

 

 レッドウィンターからは連河チェリノ。間宵シグレ。

 

 山海経からは朱城ルミと……見慣れぬ幼女が一人。恐らくは梅花園の園児だろうか?(妙に威厳があるが)……先生を信用していない訳ではないが、過激なシーンが出たらルミに目を塞いでもらうことにしよう。

 

 SRT。月雪ミヤコ。学園という括りにこの場で唯一一人だが、妙に堂々としていた。

 

 以上。

 ちなみに何名かはノートパソコンやスマホを構えている。すなわち……抽選に漏れた組でも、リモートでこの場に参加しているらしい。なんだその執念は。そんなのアリか。

 なので、もはや参加者は多数としか表現できない。改めて確認を終えたカンナはフーッと息を吐き、味がある表情で天井を仰いだ。

 

「(……いや、多いわ! てか私達だけで止めれるかこんな面子ゥ!)」

 

 飲み終わったコーヒーの紙コップを床に叩きつけたくなる。

 シャーレオフィスの視聴覚室は映画館もかくやな広さであり、これだけの人数も入れる。入ってしまった。

 というか、よく見なくても三大学園の生徒会クラスの生徒が集結しまくっているし、治安維持に貢献する組織のメンバーまでチラホラ見える。ゲヘナにいたっては、自治区を丸投げしてはいないだろうか?

 何? そもそもゲヘナだから基本荒れている? そ、そうか……。

 

「(いや、むしろこれは……何か事が起こればシャーレにも連絡が来て、下手すると、この場全員が出動するのか)」

 

 逆説的に今のキヴォトスは治安が良いと言ってもいいのでは?

 カンナの本来優秀な筈の脳は、今までにない状況でバグっていた。

 まぁいいか。何も起きなければそれでいい。案外お互いに牽制し合うかもしれない。

 そら、今も何故か百鬼夜行の猫耳生徒とトリニティの猫耳生徒が和やかに会話している(端から見る限りでは)。

 ……まるで猫の縄張り争いだな。と口にしたらこっちに銃口が向けられそうなのでカンナはもはや何も言わないことにした。

 そうこうしているうちに、先生が連邦生徒会の面々を引き連れて登場した。

 先生の左に七神リン。右に扇喜アオイ。それぞれの後ろからは岩櫃アユム、由良木モモカが続く。錚々たるメンバーだ。……まさか彼女らも実験に参加するのだろうか?

 何故かユウカとミヤコがジト目で先生とアオイを交互に睨んでいるが気の所為だ。

「また隣に……」「件の通い妻。要注意人物の一人……」なんて呟きも聞こえるが……気の所為だ! 気の所為だとも。

 

 そんな見えない争いが見えたのもつかの間。先生の周りにわっと元気な生徒達が群がりはじめた。

 

「主殿!」

「先生だ!」

「遅いぞカムラッド!」

「先生、久しぶり〜☆」

「おお、熱愛先生です!」

「ははっ……待ちなさい。最後誰だ? アリスだな。こやつめぇ〜」

 

 思いのほかシャレにならないセリフが混じり、声の主の額を先生が指で優しく小突く。キャッキャと和やかな空気が流れる中で、先生は誘導されるがままに部屋の真ん中へ連れていかれて……。

 物凄く笑顔なマコトに出迎えられていた。

 

「ああ、先生よ。待ちわびたぞ。今日はよきドゥームズデイとなるだろう」

「いや、マコト待って。終末迎えちゃダメだからね? 欠片もよくないよ?」

「……まぁ、色々掘り起こされた末に迎える、先生にとっての社会的終末という意味では……。間違っていないのでは?」

「イロハ。誤解なんだ。本当にやましいことは………………い、一切ないからね!」

「……………私の脚を舐めた」

「イオリィ!?」

「……むむっ、わ、私と女子寮で一夜過ごした事もあったよね〜☆」

「そう言う話でしたら、先生は私と同衾したこともあります。ピース、ピース」

「え〜っ、私には発酵したジュースも、同衾も許してくれなかったのに〜? まぁ、一夜過ごしたのは私もだけど」

「待ってくれ。待って! アレ私、ただ巻き込まれただけだよね!? ミカ! ちょっと反省しなさいって言ったじゃないか! トキ! 君は何かこう、無断で入ってたよね!? シグレはちょっと語弊がね! ホントに一晩明かしただけで……」

「ん、先生。脚舐めは弁解しないんだ?」

「……………………………詳しくは言えませんが、やむに止まれぬ事情がありました。寧ろイオリの脚がアビドスを助ける力の一つになったのかもしれない」

「うへ〜…………え、マジで?」

「あらまぁ。先生ってば本当に……色々とヤッてきたんですね〜♡」

「い、色々……! え、エッチなのはダメ! 死刑!!」

 

 

 大騒ぎである。何かもう、これは収拾つくのか? だとか。下手なものがメモリアルロビーから飛び出したら、大混乱……悪ければ乱戦にもなりうるのでは? なんて色々な危惧が脳裏をよぎるが……カンナは潔く諦めた。

 なるようになれ。という奴である。現実逃避ともいう

 

 そんな中、色々と準備を終えたエンジニア部が改めて説明を始める。メモリアルロビーは改良を重ね、更に精度を増したばかりか、より細かい質問にも答えられるようになったらしい。

 先生が顔を引き攣らせながら笑っている。「余計な機能を……」だとか「どうしてベストを尽くしちゃったの?」という声が聞こえてくるかのようだった。合掌。

 

 その後、先生からの挨拶も間に挟まれた。

 生徒達への日頃の感謝と、騒動によって心配をかけたことの謝罪と、仕事のフォローのお礼。そして楽しく思い出を振り返れたらいいなぁ……という儚い願いが述べられた。

 無論、最後に関しては無理だろう。……流石にあんまりなので、後日あの屋台で一杯奢ってあげよう。カンナは密かにそう決意した。

 

 すると、先生の挨拶を終えたところで、今回の主催であるマコトが手を挙げる。

 

「キキッ、始める前に一ついいだろうか?」

 

 そう言った彼女は芝居がかった身振り手振りで立ち上がる。

 

「今回の集まりはメモリアルロビーの検証だ。思い出振り返りは後からついてきた副産物のようなもの。故に先生。そしてこの場にいる皆の者もこの集いが終わるまでは嘘偽りを禁ずるべきだ」

「まぁ……そこはお互いに信じ合おうか」

「嘘はつかない。……そういうことでいいな? ならば、こちらの質問にも真摯に答えて貰おうか。もとより真実の探求もこの実験の目的なのだから」

 

 沈黙が訪れる。

 誰もが固唾を飲むようにして先生を。あるいは騒動のある意味引き金である、火宮チナツに視線を向けていた。

 カンナは長年のヴァルキューレでの活動により、それぞれの生徒達がどんな考えなのかをうっすらながら理解できた。

 

 まさか……いきなり行くの?

 アンダーグラウンドな情報では、火宮チナツが大トリだったのでは?

 いやでも正直……。

 一番、気になる!

 

 分かりやすすぎる生徒達の反応にカンナは頭を抱えたくなりながらも、一応警護仲間達の様子を見る。

 ツバキとチセはぽや〜っとしていた。

 ミナはどこかの店の食券……だろうか。それをスタイリッシュに手で弄ぶのに全力を出していた(警護しろや)

 スズミ、トモエ、ミネ、謎のへそ出しヘルメット団員は静かに自分の警護範囲を護っている。頼りになりそうなのはここくらいか。……いやダメだ。よく見るとトモエは、ワクワク顔なチェリノを見てご満悦。多分彼女はチェリノしか守らない可能性があった。

 キリノは少しソワソワして集中力を欠いており、フブキはそんな相方の様子を見てこれ幸いとばかりにサボっている。

 サキは一番前のめりなミヤコを見ながら、呆れたようにため息をついていた。アイツも苦労するな。カンナはそんな感想を抱いた。

 誰もが向かい合う先生とマコトから目を離さない。

 すると、微かな機械の駆動音が聞こえてきて……。

 

「先生、ぶっちゃけ可愛いと思っている生徒を教えてもらおうか」

「…………え?」

 

 完全な虚を突かれた形で先生の顔は凍りつき。そのまま弾かれたかのようにエンジニア部の方を見る。

 メモリアルロビーは何だか虹色に……ゲーミングPCもかくやとばかりに輝いていた。

 

「う、ウタハ? まさか……」

「うん、先生。もう稼働している。今日は質問攻めだし、今日惜しくも抽選で漏れてしまい、リモート参加にならざるを得なかった生徒らからも沢山お便りが来ているよ。…はりきっていこう!」

「ま、マコトォオ!」

「キキッ! こういう不意の質問こそ本音が出るもの。先生は意外と心や理性にバリアを張るのがお上手だからな。さぁ……! 教えたまえ! イブキだろう? そうだろう? イブキ一択だろう!? これでキヴォトス中にイブキの可愛らしさが知れ渡るなぁ! ハァーッハッハァ!」

「あ、それが目的だったんだ。というか、生徒はみんな可愛いと思ってるんだけど……」

 

 

 というか、それでイブキを出したらかえって出てこなくなるのでは? カンナは訝しんだ。

 

「説明しますと、やはり深層心理に働きかけますので……先生にとって印象深い可愛らしさが映し出されるかと思いますよ!」

「う、う〜ん。でも自分でいうのもなんだけど、絞りきれないくらいいっぱいあると思うんだけど……それこそパッと思い浮かばないくらいに」

 

 その瞬間、カンナは見た。生徒ら全員の総意……もとい、声に出さぬ魂の叫びを。すなわち……。

 

『だからこそ! その無意識の部分が知りたいんじゃろがい!』

 

 全員の視線がモニターに集中する。やがてそこには……。

 

「そ、そんな……う、嘘……」

 

 搾り出すような声を出したのは、会場にいた聖園ミカだった。それもその筈。メモリアルロビーが啓示したのは、彼女がよく知る人物だったのだから。

 上品な仕草。淑やかで清らかな声。亜麻色の長い髪と、純白の制服を身に纏った……天使の姿がそこにあった。

 

 

「ごきげんよう、先生。少し遅くなるようでしたので、お茶を淹れてお待ちしておりました」

 

 トリニティのティーパーティーが一翼、桐藤ナギサ。

 先生の中で可愛いランキングに入っているらしい彼女は、ティーカップを傾けながら柔らかな笑みを浮かべていた。




めちゃくちゃ間が空き申し訳ありません。
チナツがハードにやって来てくれたり(みんなメモロビ見よう。ASMR買おう)
最推しが新衣装といい出番貰ったり
セイアちゃん実装&リオが来るよが起きたり。これからも楽しみですね。
ちょっとある理由で構成を変えてたり、あと、単純にキャラ増やし過ぎたと反省しています。
もうちょい少ない人数でドタバタやって締めでよかった。

ともかく次回より、ブルアカらじおみたいな先生のランキングもとい色んな生徒さんらの思い出エピソード出して互いに脚を引っ張りあった末にチナツのエピソードで全員大ダメージみたいな感じをやり、エピローグ後に完結となります

その後はまた別連載か短編枠でドタバタミヤコちゃん劇場か、先生とソフレになった生塩さん的な話を書けたらなと思います(我慢できなくて始めちゃう可能性もあり)
最後まで楽しんで貰えたら幸いです。
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