ゲヘナへの道〜先生の熱愛疑惑騒動〜   作:星組

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シャーレの先生の明日はどっち

 その瞬間、まず異変が起きたのはクロノス報道部のカメラだった。

 急なカメラのトラブル。続けてメモリアルロビーも停止。

 その場にいた電子機器類が軒並みダウンしたのである。

 白目から正気に戻った先生も慌ててヘッドギアを外し、周りにいた生徒に警戒を促すも、その後も特に何かが起きることもなく、全員が首を傾げていると、クロノスのカメラが復旧したタイミングで近くの『ドローンレース部』が謝罪に駆け込んできた。

 なんでも、競技用の妨害ドローンを動かしていたら、変な暴走をしてしまい、その余波がこちらまで来たのだとか。

 メモリアルロビーは反動で故障。

 まぁ、正直耐久面を上げるのはこれからの予定だったから仕方がないな。とは白石ウタハの言葉だった。

 

「取り敢えず先生! 先程の妙に色っぽい女子生徒とは、混浴していた……ということで間違いはないでしょうか!?」

「……………………はい」

 

 とはいえ、そこで止まらないのが川流シノンという女子であった。

 本来はミレニアムプライスの成果物の取材が目的であり、スケジュール的には次の取材先に行かなければならないのだが……。

 彼女の目は語っている。こんな面白い……もとい特ダネを逃がしてたまるかと。

 時間ギリギリまで先生から情報を引きずり出す気マンマンであった。

 

 一方、シャーレの先生はというと突然の電波障害で生徒の安全確保の為に反射的に身体が動いたまではよかった。

 だが、色々問題ないと分かった後で、結果的に今の状況はもの凄く大変なことになっていると察して、冷や汗が凄いことになっていた。

 答える声色は、いつかに仕事で三徹した後よりも弱々しい。

 

「私の聞き間違いで無ければ、二人きりでと彼女は口にしていましたが……あの女子生徒とはどのような関係なのでしょうか?」

 

 先生にとって幸運だったのは、今この段階で映像に映っていたのが、ゲヘナの風紀委員、火宮チナツだとクロノス側が気づいていないことだった。

 裸も同然だった。眼鏡を外していた。といった状態が結果的に彼女の正体を覆い隠したのだ。

 勿論、時間をかけて調べれば……主にSNS上にて。

 

『今の子、何か見覚えがある気がする』

『ん、これは尋問』

『キキッ。たまげたなぁ……風紀は何処へ行った?』

 

 

 といった具合に、あの一瞬でしかない映像で気付いた者もいた為、シノン達が更に踏み込む材料が揃うはずだったが、いかんせん彼女達には時間がなかった。

 今は放心しているが、この場にはミレニアムの生徒会……セミナーのメンバーが二人。加えてシャーレにも所属している。インタビューが打ち切られたら、この場では従わなければならない。

 だから少しでも言葉を引き出したかった。

 

「……彼女とは、生徒と先生の関係だよ。何かと助け合うことが多い」

「なるほど、つまり先生と生徒は混浴しても問題ないと?」

「……アレは、海より深くて山より高い……気もする事情があって。本来なら私も遠慮するところだったんだけど」

 

 

「(いや、混浴する事情! イズ! 何ですか先生!)」

「(こんな豪華な温泉をふたりだけでだなんて……人生何が起こるか分からないものですね……という一言しか、私達には情報が与えられていませんからね)」

「(本当に何が起こるか分からないよね。まさかその事実が生放送されるなんて)」

「(これはもう少し説明や解説が必要なんじゃないですかねぇ、先生!)」

「(ふむ。助け舟をだしてあげたいが……タイミングを完全に見失ったな。許せ先生)」

 

 ユウカ、ノア、ヒビキ、コトリ、ウタハが内心でそれぞれコメントする中、先生は静かに深呼吸する。

 

「まぁ、これ以上は生徒のプライバシーに関わるから、回答は控えさせて貰うよ。結論だけ先に言っちゃうと、温泉を楽しんで帰ってきた。……それだけだからね」

 

 嘘だ! と、それなりに先生と関わりが長い五人は総ツッコミしたが、口には出さなかった。

 温泉を楽しんだは多分本当なのだろうが、確かに先生は動揺していたのだ。つまり、事情とかに色々とマズイ部分があるのは確定である。

 ズルい大人な躱し方をした以上、これ以上クロノス報道部では情報は引き出せまい。

 事実シノンとマイは釈然としない顔ながら「時間切れですか〜」と呟いて、撤収準備を始めていた。

 

 それを見た先生は内心でホッとしつつも……。どうしよう。と、結構テンパっていた。

 やましいことは……ない(もの凄く長い目でみれば)

 チナツに手を出してるなんてことも、勿論ない。

 邪な感情については……今は保留。

 ただ、とんでもない理論だが、温泉に二人で羽根を伸ばしているシーンが最初に流れてよかったと思っていた。何せあの日は……色々あったのは温泉だけではないのだから。

 それはもう色々あった。それこそ、限りなくアウトに近いセーフなことが。だが、先生はそれを闇に葬ることにした。

 もうメモリアルロビーは私が使わなければ問題ない……筈だ! という、清々しいまでのクズ思考である。

 問題は……。

 

「(視線を……もの凄く視線を感じる……!)」

 

 手を振ってシノン達を見送りつつ、目下逃がしてくれそうもない五人の視線に先生は泣きそうだった。

 加えて、彼はこの場にもう一人加わることを予想していた。

 だってタイミングがあまりにも良すぎる。

 それこそ、こちらの状況を何らかの手段で把握していたのではないかという程に。

 加えて、電子機器を妨害するドローンを意図的に暴走させるなんて事が出来るの者は……。わりとキヴォトスには複数人存在するが、その中でも状況の盗み聞きとハッキングという行為で結びつけられる生徒は……。

 

 

「や、やぁ。コタマ」

 

 ユラリとエンジニア部ラボの入口に現れた人影に、先生は震え声で挨拶する。

 彼女との付き合いは長い。この場で言えば、ユウカとほとんど変わらない。シャーレ立ち上げ時から力を貸してくれた生徒である。

 最近百鬼夜行自治区で一緒にお祭りを楽しんだイズナ曰く『主殿の十三人』の一人。……何かちょっと響きに恐怖を感じるが、ともかくそれくらいにはよく行動を共にしていた。

 故に分かる。分かってしまう。

 今日は何処に盗聴器つけたの? と苦言を言う隙が見えないくらいに、彼女の気配にはじっとりとしたものが含まれていると。

 

「先生の心の悲鳴……もとい声が聞きこえたので、ここに来ました」

「そ、そうなんだ」

「美しい思い出に、私と山に行ったことが入ってなかったことに抗議したい気分もありますが、今はいいです。そんなことよりも……」

 

 説明を求めます。今私は冷静さを欠こうとしています。

 ぷくー。と頬を膨らましながら、「激おこです」と呟きながら、コタマは顔を上げる。そこにはスマートフォンと、ある温泉旅館の画像がついていた。

 

「温泉の背景とかから、ヴェリタス作のツール等を駆使して……ここを割り出しました」

 

 そう言ったコタマの元に、バッと五人の生徒らが集結した。

 そこには……。

 

「か、カップルプラン限定の……個別露天、風呂……ですって?」

「……へぇ……なるほど?」

 

 動揺するユウカ。

 こちらに悪戯っぽい流し目を送りながらも、声は冷たいノア。

 先生は震えることしか出来なかった。

 

「コトリ! 買い出しを! 大至急でメモリアルロビーを直す!」

「アイアイサーです! 先生、少々お待ちください! 帰っちゃダメですよ!」

「先生、疲れたでしょ? 体中のコリと疲労が抜けるまで離さない、素敵なマッサージチェアがあるから、それに座ろう。ちょっとシートベルトがキツいのと、パワーが凄いのがたまにキズだけど」

 

 ウタハ。私はもうメモリアルロビーは使わない! 使わないよ?

 コトリ! はっやいな君。そんな足早かったっけ?

 そしてヒビキ。それマッサージチェアちゃう。普通はシートベルトとかないでしょ。明らかに拷問用か、拘束用のイスにしか見えないんだが?

 

 そしてさっきから、スマートフォンが凄い震えている。大量のモモトークが来ているのは明らかだった。

 嘘でしょ。あの一瞬を皆見てたの? 

 画面を見るのが怖すぎた。そうこうしているうちに顔を真っ赤にしたユウカが、プルプル震えながらもこっちにズンズン! と詰め寄ってきた。

 

「先生! ちょっとお時間いただけますか?」

 

 ……よし、逃げよう。

 




公開情報

・先生に対して

ユウカ→私がいないとダメなんだから(恋愛感情わりとあり)
ノア→観察対象と、本人は言い張る(深層には……)
ウタハ→尊敬、頼れる先生感。それはそれとして面白い事があればそっち優先
ヒビキ→Like寄りな好き。恋愛はわからぬ。ただ、先生に相手が出来たら複雑かも
コトリ→ほぼヒビキと同じ。どちらかといえば好奇心寄り
コタマ→重くはないが、色々無意識に先生に関することを集めがち。特定の相手が出来たら音収集にノイズが入るかもと危惧している

・ドローンレース部
ドローンで3次元立体機動マ◯オカートやろうぜ! な集団。本作オリジナルの部活
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