魔法少女はおとなのつとめです。   作:多部キャノン

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第六十六話 エゴーロケーション 後編

◆◆◆

 

 霧島 瑠奈(きりしま るな)、魔法少女名ルナシルヴァ。

 特筆するような家庭事情もなく、これと言った特技や趣味があるわけでもない普通の女の子。

 

 強いて特徴をあげるとするなら、その時その場で興味があること、楽しそうだと思ったことに特に深く考えず飛びつく性質であることか。

 『みんなが言うからこうしよう』といった、日本人にありがちと言われる気質は彼女にはあまりなく、興味の向く方向次第で、一人の趣味に没頭する時間も多くあった。

 クラスメイトのそんな姿を見たフローヴェール……風見取 衣(かざみどり ころも)は引っ込み思案な子だとしていたが、付き合いを続けてすぐ『そうでもないな』と認識を改めさせられる。

 

「このたび魔法少女になりましたー。ころもちゃ……フローヴェールちゃんのお友達でーす。みんな、よろしくねー」

 

<うおおおおお>

<新魔法少女か かわいい>

<フローヴェール様のご学友!? 推します>

 

(…………えへへー)

 

 ともかく、そんな気質は魔法少女になってからも変わらず。

 マスコットやフローヴェールから命がかかっている、本当に気をつけてと口酸っぱく言われたことからも、本人なりに真剣に取り組んでいたが。

 それでも彼女にとってそれは、『リスナーさんも優しいし、楽しいことばかりだから続ける』────そんな無邪気な趣味止まりではあった。

 

 …………だから。

 

(……フローヴェールちゃん、しあわせそー。おとなの男の(?)人の胸吸うの、そんなにいいのかなー。あたしも言ったら交代できないかなー)

 

 虚獣の精神干渉を受けたあの日、意識がぼんやりとしているうちに、問題が解決していたことを知った時も。

 彼女にとって重要なのは、危機感でも助かったという安堵でもなく、楽しい魔法少女がまだ続けられることと、友人の悩みが解決したらしいということだけ。

 だから、シラハエルたちの働きもあって自身が炎上することも無かった彼女は、いつも通りの日常にただ帰る……はずだった。

 

 

「…………申し訳、ございません……(わたくし)は……(あるじ)さまに何もっ……!」

 

 相方である、紫のコウモリのような姿のマスコット、シドラが心から悔いていた。

 

 虚獣の干渉を受け、ルナシルヴァの霧を利用されたことによって魔力の繋がりも切り離されたマスコット。

 元々無口で表に感情を出しづらいはずの彼は今、状況の報告すらも出来なかった己以上の無能はいまいと、パートナーたる魔法少女が戸惑うほどの責任を感じていた。

 

「別にそんなに気にしなくていいと思うよー。ほら、みんなだって…………っ」

 

 そう、珍しく彼女なりに気遣いながら見せたのは、自身を話題に出しているSNSのポスト。

 そこには彼女が信じた通り、心配から解放されたという安堵と祝福がその多くを占めていた……が。

 中にはいくつか、想定していない熱量で書き込まれたものがあったことに、ルナシルヴァは気づく。

 

 ────ルナにかばわれたシラハエルが偉そうに目立ってるの腹立つな

 ────病み上がりのルナシルヴァに無理させすぎだろ、なんでフローヴェールとシラハエルのコラボに呼んだ?

 

「……………………んー……」

 

 シラハエルとフローヴェールのコラボで、ルナシルヴァにヘイトを向けずに救いきるためにシラハエルが口にした説明。

 多くの視聴者はそれを必要な嘘だと分かって流したが、当然そのまま信じた視聴者も少なからず存在する。

 

 そして、その場その場の『楽しい』を第一に生きていた少女が、自分のために頑張った人が誤解を受けている、という状況を見て当然良しとするはずもなく。

 

 

「突発で動画回してまーす。あのね、前の配信で少し誤解しちゃってる子がいるから話しちゃうんだけど────」

 

 思い立ったら、即実行。

 かつてフローヴェールの容認を受け、即魔法少女となってしまったときと同じように、今度はマスコットが止めに入る間すらなく。

 彼女は、友だちや恩人が隠していた、自分が知るあの戦いの全容をショート動画という形で暴露した。

 

 今度は…………燃えた。

 

 気遣いを無駄にしたな、と魔法少女それぞれのファンを名乗るものからの苦言、元々の自身のファンからの忠言、炎に釣られた界隈外からの雑言。

 そして、フローヴェールやシラハエルからの裏から手を回すようなフォローと、自責をますます強めながらも事態の収拾に身を粉にするマスコット。

 それらを矢継ぎ早に体感したルナシルヴァは……ああ、あたしはミスをしたんだ、と強く深く理解した。

 

 元々が庇いたい、誤解を解きたいという善意から出たものということもあり、炎上の規模としては幸いそれほど大きなものではなく。

 フォロワー減こそあるだろうが、やがて別の話題に取って代わられる程度のもの、と説明を受け理解した上で……彼女は、今度は相談した。

 

「────迷惑かけるの、楽しくない。出来てなかったこと、出来るようになりたい。ねえシドラ、どうしたらいい?」

 

 

 その日以降、彼女は友人であるフローヴェール……()()()()、絡みのなかった魔法少女と積極的なコラボを行うようになる。

 彼女に足りないモノを補わせるための、シドラのこの施策はハマった。

 

 これまでなんとなくでしか使っていなかった、魔力や攻撃一つ一つに思考を通わせて戦い、援護して。

 知らない相手とも、コミュニケーションを取る経験を積み続けて。

 コラボして戦って、コラボして守って、コラボして楽しんで。

 やがて、『あ、考えてやったほうが楽しいことも多いんだ』ということに気付いた時には、すでにその魔法少女は一端(いっぱし)以上の戦闘技術を身につけていた。

 

 ……そして。

 

「おぉ……なるほど、こうやって集めてドーンッて撃つ感じもあるんだ、ふんふんなるほど…………"楽しそう"。

これがあったら、前みたいにパワー不足で負けることも無くなるじゃん。また出来ることが増えるね、次のコラボでやってみよ」

 

 友人も出ているということで、彼女もまた視聴者として動向を追い、学んでいったハロウズアカデミー。

 その集大成となるような生徒と五つの虚念(クィンク・ネブラ)の戦いを見届けた少女は、その思いつきを具体化させられそうだと、無邪気に笑う。

 

「…………『何があっても、ずっと楽しんで続けられる』。才能とは恐ろしいものだ」

 

 そんな様子を見ながらマスコットシドラは、見出した少女に内心何度目かわからない畏れを抱いていた。

 

 

------------

 

 

「────はぁぁっ!!」

 

 虚獣が放った、振動を伴う魔力弾を咄嗟に刀で打ち消したクオリアエコーズ。

 そんな彼女の表情は、これまで以上の緊迫感に包まれたものとなっていた。

 

 その理由は、虚獣の狙いの変化だ。

 虚獣は近くで構えるクオリアエコーズではなく、その背後で魔力と霧を溜め始めたルナシルヴァこそが危険だ、とその殺意を向ける。

 『倒す方法あるから、準備の時間が欲しい』────ルナシルヴァにそう任された前衛の少女は、霧を散らす効果を持つ振動を逆位相で打ち消しながら、自らも被弾を避ける立ち回りが求められていた。

 

 さらに、迫る虚獣からルナシルヴァを守るため陣取った位置は、これまでの戦いでも最も深い霧が収束し始めている場所。

 当然、先程彼女の思考を硬直させた『配信映えしない』という懸念は避けられない展開だ。

 

<がんばれえええええ>

<守れてる音ちゃんと届いてるぞ>

<ルナシルヴァも無事だ、いい感じ!>

<無理するなよおおお>

<いけいけいけいけ>

 

「────っ!」

 

 それでも、クオリアエコーズはもう迷わない。

 たとえ見づらくても、注がれる魔力が少なくなっても。

 今はただ、リスナーとクオリアエコーズのために、と出来ることに没頭していた。

 

 ……やがてその姿勢は、この場の誰もが想定していなかった、一つの変化を呼び起こす。

 

 

<なんかキレイ……キレイじゃない?>

<初見だけどこんな戦い見たことねえ、なんだこれ>

<霧がスモークみたいになってんだけど>

 

<え、なんかよく観たことある感じになってる、これって>

 

(これ、は……!)

 

 戦いのさなか、視聴者たちの魂が困惑を伴いながらも"盛り上がり始め"の気配を感じたことに、クオリアエコーズとマスコットハイドルが瞠目する。

 

 次の瞬間、リスナーや彼女たちのおぼろげな感覚を言語化したのは……最もリスナーの様々な顔を見てきた、ルナシルヴァだった。

 

「わ、これあれだっ! ────みんな、観て観てー! 私たち、今……『戦いながらライブ』しちゃってるっっ!! 楽しい、楽しいね! 何も考えず、盛り上がって……いこー!!」

 

<うおおおおおおおお>

<虚獣戦中にライブまじ?>

<わああああ>

<急に歌うよ!?>

<YEAHHHHHH>

 

 ルナシルヴァのスモークに乱反射される、彼女自身の魔力光とクオリアエコーズが弾く火花のコントラスト。

 そして、不規則に打ち鳴らされる攻防……金属音や魔力の振動音が、視聴者の不安をも呑み込む一つのステージへと舞台を昇華させていた。

 

(見えづらい霧すらもトクベツ感にして、幻想のライブ会場にしちゃうっていうの……!? 偶然だとしても、初コラボでどんな相性してんのよあの二人っ……!!)

 

「────ッッ!!」

 

 驚愕を見せるハイドルと同時、この事態に焦れたように声なき咆哮を上げたのは変質型虚獣だ。

 彼は、ルナシルヴァの防衛に集中していたクオリアエコーズに向け、硬質な右腕を力任せに叩きつける。

 

「っ!?」

 

 障害の排除を優先したのだろうか、突然の狙いの変化に反応が遅れた少女は、一瞬身体を硬直させながら覚悟を決め────

 

「ピンチには、ドーン!!」

 

 その次の瞬間には、虚獣の剛腕が宙を舞っている光景を目の当たりしていた。

 ルナシルヴァが咄嗟に放った、溜めていた魔力の"一部"により、虚獣の腕がねじ切られたように撃ち貫かれたためだ。

 

 そばで見ていたハイドルは、彼女が放ったこれまでと違う攻撃の正体に思い至る。

 

(うっま……虚獣を弱体化させる霧を束ねて、魔力弾に纏わせてる……! 効果が集中した結果、あの鎧にも通用する貫通力を出してるってこと……!?

…………だけど、今それを見せてしまったって、ことは────)

 

 そう、感嘆とともにハイドルがよぎらせた懸念に呼応するかのように。

 虚獣は再び金属質な異音を奏でると、その身体────魔力振動を起こしていた体質をも変化させようとうごめく。

 纏った霧が今の身体を貫こうとするのならば、霧でも弱めきれないほどの魔力でコーティングすればいい、と。

 虚獣の身体は、さらに禍々しい厚みを増そうとしていた。

 

(っ、と……さっきより変わるの早い……虚獣も本気だねー。ちょっと魔力使っちゃったし間に合うかな……っ)

 

 その虚獣のなりふり構わない姿には、リスナーの盛り上げを意識しつつ俯瞰した目で状況を観られていたルナシルヴァすらも、僅か苦い表情を浮かべそうになり────

 

 

「────いいの? 私が前にいるのに、"そっち"に対応しちゃって」

 

 今度は、クオリアエコーズが半月のように口を開き、笑った。

 

「────────ッッッ!!?」

 

<FOOOOOOO>

<うおおおおぶっ飛ばした>

<えっぐいの入ったああああああ>

 

 瞬間、残った虚獣の左腕がギャィィィンッと甲高い音を立て、斬り飛ばされた。

 振動を打ち消していた先程の能力から変質したと見るや、少女の渾身の斬り上げが叩き込まれたことによる音は、まるでエレキギターが奏でるそれのようにその場に鳴り響く。

 

 ルナシルヴァに撃ち抜かれた右腕に続き、跳ね上げられた左腕が宙に舞うのを目にしながら……魔法少女二人は、それぞれが楽しそうに口にした。

 

「────ああ、そうか。変質型虚獣はコラボで協力して(こうやって)、倒せばいいんだ。……ふふ、あとで"みんなに"共有してあげないと。……あとはお願い、ルナ!」

「うわーおかっこいいー! 楽しいねエコーズちゃん、みんな! もちろん、まっかせて~!」

 

 クオリアエコーズの一撃に沸くコメントを脳裏に感じながら、魔力の後押しで準備を終えたルナシルヴァがぶんっと杖を振る。

 すると、集っていた霧が巨大な水滴────レンズのようになって彼女の前に現れた。

 宙に静止する神秘的な水鏡は、しかし直後に杖に収束する魔力に照らされ、強く激しく光り輝く。

 

 

「最後はやっぱ、大技でドッカーン、だよね! 観ててねみんな────霧点砲光(むてんほうこう)ッッ!!」

 

 

<ルナシルヴァの新技く、くる>

<うわ、なんだこれ演出やっば>

<いけえええええ>

 

 解き放たれ、レンズに吸い込まれた強大な魔力光は、さらに霧の塊という貫通力をも纏った、ルナシルヴァ固有の一撃となって襲いかかる。

 すでに抵抗の術を奪われた上、直前の混乱から変質も半端になっていた虚獣の鎧など、もはや何の障害にもならぬとばかりにうち貫き────

 

 光が消えた頃には、霧も虚獣も無い。

 ただ開放感ある晴れやかな空間だけが、魔法少女とライブ参加者(リスナー)たちを歓待していたのだった。

 

 

------------

 

 

「わーやったやったー! コラボいっぱいやったけど、こんな戦い方で勝てたの初めてーっ! エコーズちゃん、いえーい!」

「あ……いぇーい……? ちょっと、恥ずかしいからあんまくっつかないで、ルナシルヴァっ……」

「途中呼んでくれたルナでいいよ~、いやーすごかったねぇエコーズちゃん、本当にコラボ初めて?」

 

 

(やったわね、クオリアエコーズ。…………ふぅぅぅ~……良かったぁぁ~~)

 

 想定外の強敵と相対した初コラボで、大成功とも言える戦果に沸くコメント。

 そして、お互いが自然な……クオリアエコーズの方にはまだ照れが見えるものの、それでも喜び称え合う姿に。

 マスコットハイドルは、心底から安堵の息をついていた。

 

 今回のコラボ企画について主導したのは、事前に伝えていた通りハイドルではある、が。

 パートナーの性質(めんどうくささ)も鑑みて、最初のコラボ相手は誰でもいい、というわけにも行かなかった。

 

 そこで、コラボを始めとした相互互助の相談も受け持っているハロウズアカデミー……ひいてはマスコットコンジキたちに相談の上、ことを進めていたのだ。

 つまり、クオリアエコーズに行ったコラボというだけの説明は方便で、実質的には少女が避けようとしていたアカデミー施策の一環だったとも言える。

 

(あの子が抱えるものは……ただ無くせ、と言われて無くせるものじゃなかったからね)

 

 このコラボを仕組んだハイドルの主な狙いは、『承認の依存先の分散』だ。

 そもそも、承認欲求というものはそう簡単に消せるようなものではない。

 例え彼女が望んだ通り天才、才能があるというコメントで溢れたとしても、結局依存が強まるだけ。

 だから、同じ魔法少女など彼女を別の形で認めることが出来る友人、ライバル……なんでも良いから承認の向かう先が増えてくれれば、と期待していたわけだ。

 

 その意味で、能力の相性もよくグイグイ距離を詰めるルナシルヴァは、彼女の初めての相手として適切と言えた。

 これで、コメントと……何より同期のフローヴェールへと一方的に向きすぎていた、面倒な相方の意識も少しは変わっただろう。

 

 あとは強いて懸念点をあげるなら、これがアカデミー施策の一環と知られれば、聞いてなかったとクオリアエコーズがへそを曲げるという可能性ぐらいだが────

 

「いやー実際すごくやりやすかったよー。これもアカ……おっと。お互い、今までちゃんと戦ってきてたからだよねー」

「ん……? うん、そうだね。……そうだ、途中ちょっと強い言葉で言っちゃってごめんなさい。

あなたがあれだけ戦えることも、ちゃんと考えていることも……見損なってた。私、あなたのこと全然知らなかったね」

「えー全然いいよーそんなのー、別にあたしだって」

 

(ふひゅー、危ない危ない、やっぱりアカデミー関連は一応口に出さないでってお願いしておいて良かったわね)

 

 そう、事前に抜かり無く口止めをしていたことが功を奏し、少々危うかったが要らない情報は与えずに済んだ。

 自分の深慮遠謀っぷりが怖い……とばかりにきゅいっきゅいっと笑ったマスコットは、満足気にそのまま少女たちの会話を見届け────

 

 

「────あたしだって、エコーズちゃんのこと友だちから聞いてただけだもん。知ってる? フローヴェールちゃんって魔法少女。

エコーズちゃん見た目もすっっごいカッコいいし、戦闘センス抜群で関わってみたいけど、コラボとかしなさそうなスタイルだから遠慮してたのにずるいずるいっ!

って今回すっごい羨ましそうにして────あれ、エコーズちゃん?」

「────────っ」

「……………………」

 

 完全にフリーズしたクオリアエコーズと、そっちがあったかと頭を抱えてうなだれたハイドル。

 二人分の無言にルナシルヴァがクエスチョンマークを浮かべだしたあたりで、ようやく魔法少女が"震えた声"を発した。

 

「……ふっ……、ふーんっ、そう。聞いてた、認知してた……知ってくれて……センス……

ふぅ……まあ……良いんじゃないかな。そういうことならあなたも、その友だちって子も。そのうちまた機会があったら、こふ、コラボとかも、別に……考えておく」

「わーおやっぱりクールだねえ。うんうん、フローヴェールちゃんにも伝えておくねー! それじゃ今日はこの辺で、おつかれさまでしたー! またあそぼうねー!!」

 

 

 はい、お疲れ様でした、となんとか鉄面皮を保って伝えたクオリアエコーズは、即座に踵を返しズンズンと歩く。

 

 魔法少女体のままで、道中一言も発さずに自宅まで戻った彼女は、そのまま自室のベッドに豪快にダイブした。

 

 

「~~~~~~~~~ッッッッッッ!!!!」

 

 

 そうして、枕に顔を埋めながら延々と両足をバタつかせ……彼女自身は決して認めまいが、『推しに推されていた』少女は悶絶する。

 

「承認欲求の分散……三歩ぐらい解決に進んだと思ったのに、結局二歩戻ったわぁ…………」

 

 そんな彼女の姿に、相方のマスコットハイドルは天を仰ぎ……そして、続けた。

 

「…………ふぅ。ただまあ、形はどうあれモチベも上げられたし……良かったじゃないの、クオリアエコーズ」

 

 気を取り直した相方は、今もバタつかせる少女を微笑ましく思いながらも、最後に口にする。

 

「あなたにやる気があるのなら、まだまだ。あなたがもっと知られるまで頑張ってもらわないと困るのよね。

アタシはあなたが一番『魔法少女の中でほっとけなくて、見てて面白くてカワイイ』って最高の才能を持ってるって、ずぅぅっと信じてるんだから。

……今言っちゃうと絶対調子に乗って危ないから、伝えるのはまだまだ先だけど」

 

 そう、誰に聞かせるでもないハイドルの呟きは、静かに世界へと溶けていった。

 

 

 ────才能も、努力も、功績も、失敗も、趣向も、嫉妬も、希望も、全部全部その身に呑み込んで。

 

 今日も魔法少女たちは、それぞれの日々を生きていく。

 

 

◆◆◆




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