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「け、研究室の……『虚念動態解析室』の主導でも、もちろん政府のものでもありません。彼女はAIではない存在……言葉通りなら生まれたてのマスコットとして、間違いなく彼女自身の判断で動いています」
浦道が口にした彼女────鮮烈な勝ち方でデビューを果たしたアイギスケープ。
人造魔法少女A.E.G.I.Sの素体を駆る、マスコットを名乗るその存在について、数日ぶりに研究室に訪れた白羽とコンジキに、室長たる彼は説明をする。
白羽たちが事前に予想していた通り、彼らにとっても衝撃は大きいらしく、以前訪れたときよりも慌ただしい様子が見て取れた。
「管理下から外れている……おそらく廃棄という形で話が進んでいた、とのことですがどこかのタイミングで目覚めてセキュリティを抜けた、ということになるのでしょうか?」
「そう……ですね、元々彼女には魔法少女として可能な限り柔軟に立ち回ってもらえるよう、素体側にある程度のセキュリティへのアクセスツールは付与されていました。とはいえ、このツールだけでは何も出来ません。具体的な突破手段はAI運用をしながら慎重に教えていく想定でした、が」
「────が、彼女はそれを知識として持って目覚めた……そういうことじゃろうか?」
コンジキが難しい顔で促すと、浦道はコクリと頷き、少しだけ自嘲気味に続ける。
「それに関してはおそらく研究室……いえ、きっと主に私のせいと言えるでしょうね。人々の期待、そうあれという想いからマスコットと同じ成り立ちをした彼女は。私たちのこのまま終わってほしくない、一度ぐらい自由に戦わせてやりたい、という無念が宿ったのでしょう。
……当然パスワードや認証はすでに変えていますが、一度脱出済みで維持コストも魔力で補えるなら、今さら慌てて締め出したところで無意味と言えます。
念のためこちらから出した、帰投への打診に対しても、彼女自身の言葉で『ごめんなさい』と丁寧に返されています。……室長として、この事態の責任は私にあります」
「…………なるほど……」
そう、責任の所在を口にしながらも、すらすらと用意していた答えを口にする彼の表情は。
戸惑いの中にもどこか、憑き物が落ちたような晴れ晴れしさもあるように白羽は感じた。
自分が想像した以上に、どういう形であれA.E.G.I.Sを動かし、魔法少女のためと活動が出来るということは彼の中で重いことだったのかもしれない、と。
「そうあれ、という想いの影響ならば、責任はワシらにも、みなにも少しずつあると言える。
このタイミングで目覚めたからには、『あの魔法少女シラハエルが虚念を撃退出来なかった』という世間の危機感も間違いなく影響しているじゃろう。
…………何より…………いや…………」
そう、コンジキは何事かを続けようとして……やはり思い直したように首を振る。
一瞬不思議そうな顔をした浦道だったが、気を取り直して白羽たちにとっての要点を話した。
「そんなわけで……大変申し訳ございませんが、こちらで彼女をすぐに管理下に置く、というのは難しいでしょう。
元々廃棄の予定だった以上こちらから強くも言えませんし、下手に協議や手続きを挟んで前回の配信から間が空くと、生まれた彼女の生存にすら影響を及ぼしかねませんし……」
「そうですね。幸いコンジキ様経由でコンタクトを取ることは出来たので、自分たちもこの後、アイギスケープさんに会う予定はあります。改めて彼女の方針をうかがい、協力体制を結べれば────と、どうされましたか?」
「あ、いえ、その……」
そして、事前に決めていた予定を口にしていると、浦道が怪訝というべきか、不思議そうな顔で自身を見ていることに白羽は気づいた。
「えっと……こちらからの質問になるのですが……その、白羽さん側は……大丈夫、なのでしょうか……?
厄介な相手も現れて……えっと戦い終えた矢先、こちらの問題で発生した魔法少女のことまで……そんな状況にもかかわらず……えっと、その」
「『────ボロボロに負けたばかりなのにやけに饒舌で明るく見える、無理して平気な顔をしているんじゃないか』……と言ったところでしょうか?」
「────っ」
(…………そうじゃ、白羽殿は初敗北を喫した相手と再戦を義務付けられていながら、あまりにも平常通り……いや、むしろ普段以上の前向きっぷりじゃ。……ワシの精神状態を見て、自分がしっかりしなければと奮起させているのかもしれんが……それにしても……)
さらっと返された言葉にコンジキも考え込んでいると、慌てたような浦道の言葉が返された。
「ぁ……! いや、その……! 観ましたがボロボロなんてことは全然……! っじゃなくて……、えっと、もしかしてもう、オブリビオンに勝つとんでもない秘策を持たれていたり、とか……?」
「ふふ、失礼いたしました。嫌な聞き方になりましたね。……残念ですが、今のところ明確な勝ち方まで対策出来たわけではないので、そこは中々頭が痛いところではありますが……そうですね」
そう一度切ると、白羽はいつもの癖でメガネを押し上げながら、少しだけ考え込む素振りを見せ、続ける。
「────"それとは別に"……ここ最近、ずっと考えていたことに一つの答えが出せそうだったので……正直、気分は少し高揚しています。
……ああ、ちょうどいい。せっかくここまで来たので、よろしければ後ほどルクスリアさんとコンジキ様で、場所を取って大事な内密の相談をしたいのですが……よろしいでしょうか?」
「む…………?」
「え、あ、はい、承知いたしました。『またしばらく会えないじゃん!』って愚痴っていた彼女も喜ぶでしょう、が……しかしこの流れで、勝ち方とは別の内密の相談……? 魔法少女活動に関わることなら聞けませんが、どんな内容なのか少し気になりますね」
初耳であることから、意外そうな声を漏らすコンジキと、初邂逅時と比べ少しだけ打ち解けた様子で軽く話題を続ける浦道に。
白羽は────魔法少女であり配信者としての経験も重ねてきた彼は、軽く含み笑いを見せ。
そのまま、高揚しているという自認に違わない口調で返したのだった。
「大人や虚念が集まっての、内密の相談です────それはもちろん、悪巧みですよ」
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「…………おとなって、こわ~~~~……」
「ぬしは……あの状況の中そんなことを……? ヤツに勝つ必要がある、という前提は変わらんが……確かに、それが叶う……なら」
そうして、ルクスリアとコンジキの二名にその"希望"を伝えたシラハエルは。
恐るべき存在であるはずの虚念に少し距離を取られ、不調気味のパートナーマスコットにも複雑な表情をされたが、ともかく協力を取り付けることが出来たのだった。
虚念と会う、ということで念のため変身した魔法少女体のまま、ひとまずほっ、と息をつくシラハエル。
そんな彼の様子に、もうすぐ終わる面会時間をちらりと気にしながら、ルクスリアが興味深げに話題を投げる。
「────んで、次はあの子と……A.E.G.I.Sに宿ったってマスコットの子とお話しするんだよね? シラハってば、今日もいろんな子に粉ばっかかけて、うらわかきじゅんじょーをもてあそぶんだ、わっるいねー」
「どこでそんなろくでもない言い回しを……まあ、想いでカタチ作られる際に、そういう知識も入ってくるってことなのでしょうか」
「たぶんねー、わたしはみんなが想うよりおとななんです。実際、
振り返ることで同意を求められた、コンジキがコクリとうなずき返したのを見ると、そのまま少女は楽観的に続けた。
「なら、そっちはすぐなんとかなりそうだねー。わたしとかオブリビオンみたいなめんどそーな虚念とちがって、目的もいっしょのマスコットなんでしょ?」
「そう……なんですが……ええ、そうなればいい、ですね。進展がありましたらまた報告ないし相談させてください」
「? ん、もちろんいい、けど」
が、そちらに対しては思いの外悩ましい様子というか、微妙なリアクションを返された少女が疑問符を浮かべたところで。
予定通り面会時間が終了し、その場は解散となったのだった。
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そうしてシラハエルたちがたどり着いたのは、とあるサテライトブース。
魔法少女が各地で利用するためにと点在するその施設は、マスコットの使用承認を得ることで配信環境のある個室を利用できる。
強力な虚獣の予兆に助っ人として遠征したあとや、自宅の配信環境がまだ乏しかったり騒音が気になるという魔法少女が主な利用層といったところだ。
そして、マスコットとしての特性も持つアイギスケープもまた、ここで過ごしている、ということで。
防音のため外から話し声は聞こえないが、おそらく先客がいるだろうそこに、彼らは足を踏み入れようとしていた。
「────さて。自分の都合で少し遅れましたが、ようやくアイギスケープさんとの面会ですね。確かみなさんは先に着かれているんですよね? 上手くやれているといいのですが」
「う、む……それなんじゃがな。ワシの予想では問題があるとすれば魔法少女たちでなく、むしろ────」
シラハエルの言葉に、何かしらの確信を胸に返すのはマスコットコンジキ。
その真意を実際に口にするまでもなく、扉を開けたシラハエルたちに飛び込んできたのは────
「と、いうわけでねミリアさんもわたしもたくさん苦労したようにファンの数や声は本当に大事なの、ふぅ、アイギスさんは注目を集めてデビューできたから是非その熱を逃さないようにしたほうがいいとおもってあとねせっかくだから必殺技とかもはやいうちに」
「ハクシキ早い、早いぶー! ただそうだ、今は自然体でやってるみたいだけど、キャラ付けとか気になったこととかあるなら相談は早めをおすすめするぶー、うちのフローヴェールはプロだからきっと良い意見がだせるぶー。あとは────」
「あ~! ハクシキもアントンもいきなりグイグイ構いすぎだろっ! 気持ちはわかるが引いたらどうすんだ……すまねぇなアイギスケープ。邪魔や変な介入しようって気はねぇんだがどうしてもな」
「あ、あはは……とんでもないです……お気遣いありがとうございます、勝手な行動でお騒がせしたのに……」
「…………やっぱりのう」
魔法少女たちでなく、彼女たちの相棒であり裏方であるマスコットたち。
彼らに我先にと"
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