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人造魔法少女にして人々の期待が宿ったマスコットの少女、アイギスケープ。
二回目の雑談配信を無事成功させた彼女は、自らの配信スタイルを見つけられた手応えを胸に。
ここからは自立した魔法少女として、一人の力でやっていく────その、つもりだった。
「アイギスさん、この前の配信すごかったね! ただ、私もついやらかしちゃいそうになるけど、あまり多く発言しすぎている人がいると、配信の……何ていうのかな。身内感? みたいなのが出て新規さんが困っちゃうから。
自分語りをお願いしているときは、一人一回ずつみたいなルールがあってもいいかも、だね」
「う……」
「良い属性見つけたじゃない、アイギスケープさん。ただ、コメント返ししてる間は良かったけど、それ以外のタイミングはまだちょっと無言の時間が見られたわね。
良かったら後でトークの練習しとかない? 第一目標は7……いえ、5秒以上の無言時間を無くすところからね」
「うぅ…………」
「なあなあなあ、オブリビオンのぶっ飛ばし方ってもう考えとるん? 配信では言えへんってことやけど、せっかくやし先にちょっと作戦会議しとかん?
うちもな、アーカイブ見たり変質型虚獣シバいたりで考えとることあるんやけど……」
「うぅぅ………………」
「今日も配信者としてみなさまとどっか
「ごめんなさい今日配信予定ありますので……」
「うぅぅぅ……ですわ……」
魔法少女たちが、連日のように絡んでくる。
配信の話だったり課題の話だったり、戦いの話だったり趣味の話だったり。
面白い返しも出来ない自分に、魔法少女あるいはマスコットたちは、ヒマでもないだろうに飽きもせず関わり続けてくる、と少女は困惑した。
『迷惑です、もう配信をするには十分です、一人でやれるので関わらないでください』と。
アイギスケープは、オブリビオンと対消滅するべきという自身の目的を胸に、辛くあたってでも遠ざけるべきかとよぎる────が。
「……確かに……記録していけば、誰が喋ったのかもカウント出来ますし、ちょうどいいかもしれませんね……ありがとうございますミリアモールさん、次からやってみますっ」
「『ええっと』、って考えたり喋れていない時間、言われてみれば多いかも……フローヴェールさん、少しだけお願いできますか?」
「そ、そうですね……エターナルシーズさんの配信も拝見してます。アレに対処されないためには手数はもちろんですが、それ以上に火力が大事になるはずって思ってまして……」
生まれて日の浅い少女にも伝わる、魔法少女たちの慈しみを。
ましてやオブリビオン打倒のために、"概ね"利がある提案をしてくる彼女たちの手をはねのけることを。
アイギスケープが……『魔法少女のための魔法少女』が行うのは、当然のように困難を極める話だった。
「…………うん」
そんな彼女たちの様子を見ながら、第一段階は順調だと頷くのはこの光景を作った張本人、シラハエルとコンジキ。
彼らは自らも隙を見てアイギスケープから孤独を奪いながら、作戦成就のために並行して動き続ける。
その一環として、両手に持ったデバイスとにらめっこしていた天使の魔法少女は、一瞬目を大きく見開くと、すぐさま隣のパートナーにその画面を向けた。
「おっと……コンジキ様、こちらを。またもありがたいモノが投稿されていました。是非、見てみてください」
「おお、#シラハ絵ルタグの新作か。オブリビオンへの苦戦を見せたあとじゃから、界隈が荒れたりせんか心配もあったが、こうした応援は本当にありがたいものじゃのう。
そしてこれは、また気合が入ったも、の…………っ」
どこかいつも以上と言った具合に、シラハエルが弾ませた声とともに見せたのは、ファンアートイラストが映った画面だ。
その様子にわずか戸惑いながらも、実際のイラストを注視したコンジキは……息を呑む。
「こ、これはワシを……というか、以前ルクスリア殿との配信で見せたような一枚絵を……?」
「ええ、あの時コンジキ様を頭に乗せたことで、キツネ耳などの獣属性? というべきものが自分に叩きつけられ一瞬姿が変わったわけですが……
このイラストはあえて、頭の上のコンジキ様と一緒に自分が協力して戦っている、というコンセプトのようですね。
絵の技法にはあまり詳しいわけではないですが、コントラストの見せ方などを考えるに、コンジキ様をメインとしているイラスト……そうも思えます」
補足したそれはあくまで彼の所感でしか無かったが、コンジキもまた同意見だったのか。
喜ばしく思いつつもなんとも言えない、そんな複雑な表情で顔を背けた。
「わ、ワシらマスコットは表に出さんでもいいと言うに……全く、初めて見かける絵描き殿で、あまり描き慣れている様子ではないが……また妙な情熱を向けてくれたもんじゃなっ」
「確かにこれまでの傾向からは珍しいものですが……耳や質感といったコンジキ様のディティールがやけに細かいからでしょうか。
見てください、ついている返信や引用でも、極めて好意的に受け入れられています。
こういうのもありなのか、としている反応も多いので、この先似たような絵も増えるかもしれませんね。
……いっそ配信者として単独デビューされるなら、手伝いますが?」
普段の意趣返し、とばかりに目を細める魔法少女に、よさぬかとコンジキは苦い顔で返す。
そんな、どこか肩の力が抜けた様子の二人のもとに、おずおずと一人の魔法少女がやってきた。
「あ……お話中すみません天使様、コンジキ様。今大丈夫でしたか?」
「もちろんですよミリアモールさん。アイギスケープさんの件、もしかして何か気になることでも?」
話しかけてきた少女ミリアモールはもちろん、普段関わりが深い魔法少女やマスコットには、自身の目的を共有済みのシラハエル。
特に、アイギスケープの様子には注視する方針で固まっていることから、内心わずか身構える彼に対して、ミリアモールは慌てて両手を振る。
「いえいえ! アイギスさんの方は全然……お話もすごく聞いてくれるし、ちょっとずつ前以上に受け入れてくれてる……ように感じます。
なのでそっちとは関係ない、ふと思ったぐらいの疑問で……えっと、虚念に関するお話なんですが……」
「む……」
────虚念。
直接対峙したエターナルシーズやセレスティフローラと比べると、ミリアモールから出すには比較的珍しい話題。
だが当然、今を生きる魔法少女の一人として、真剣に受け止めていることを知るシラハエルは、コンジキとともに姿勢を正した。
「その、忘失のオブリビオンはまた楽しいって思うために、今は天使様と戦うのを期待して待っている……ってところなんですよね?」
「うむ……配信で見せた発言からも、やつの成り立ちからしてもおそらく間違いはあるまい」
「念のためルクスリアさんにも確認はしていますが、同じ虚念から見てもその可能性は高い……とはうかがっています」
そんな同意を得たミリアモールは頷くと……ほんの少しだけ気まずそうに、遠慮がちにその質問を問いかける。
「ただ……ちょっと思ったんですが、戦えたら楽しい、強いって思われそうな魔法少女って天使様だけじゃなくて、エターナルシーズさんとか……それに、クラリティベルさんみたいな人だって居ますよね?
待っている間、我慢出来ない~ってなって、襲われたりしないかなって……えっとごめんなさい、お二人の考えが違ってるとか言うんじゃなくって……!」
話している途中、憧れの人を相手に他に強い人がいる、今の方針は間違っている、と。
そういたずらに異議を唱えているように思われたら、と慌てる少女。
ましてやクラリティベルという、元々シラハエルと出会う前は最も強い影響を受けていた名前を出したことで、彼女は気まずい思いに支配されかける。
「もちろん分かってますよ、ありがとうございます。そうですね……おっしゃる通りでその
「シラハエル殿を第一と捉えておるならば、やつから他の魔法少女に手を出す可能性は高くない、とワシらは見ておる。それは、やつ自身の望みから遠ざかる行為に成り得るからな」
「あ……そっか、今別の子の被害が配信に映ったりしたら……ちょっとひどい話だけど、天使様に対して『あの時ちゃんと倒してれば』とか、嫌なこと考える人が出ちゃうかも知れないから……」
が、当然シラハエルたちは気分を害した様子もなく、少女の質問を歓迎した。
そして今や人気配信者の一角となり、以前よりも視聴者感情を知るようになったミリアモールもまた、すぐに得心を見せる。
「少しでも強くなりコンテンツとして楽しませろ、と言った以上、少なくとも再戦までは相手の魔力を削ぐような行動は取らない可能性が高い……これもまた、シラハエル殿が敗戦を過剰に深刻に捉えなかった理由とも言えるな。
……ワシも後から言われて気づいたクチじゃが」
「もちろん、虚念の考えることなので絶対とは言えませんし、コンジキ様より他マスコット方に注意喚起はしていただいています。
……もっともオブリビオンの特性を考えると、仮に襲われたとして逃げるのが正解とも限らない、というのは頭の痛い問題ですが……」
「た、たしかに……変に逃げると逆につまんないって怒りそうかも……」
配信アーカイブに残っている、マスコットに対し冷徹に吐き捨てた時の目を思い返し、げんなりとした表情を浮かべる三人。
そんな空気をなんとか変えようとしたのか、気を取り直したようにミリアモールはある意味"本題"となる提案を彼らに向けた。
「話題に出したついでに聞いちゃうんですけど……今回の討伐、それこそクラリティベルさんに協力をお願いしたりは出来ないんでしょうか? 虚獣討伐にすごく活動的で強い人だから、コラボ出来たら、もっと確実に倒せたり、とか……」
「ぅ……んん……そう、ですね……」
「…………?」
が、シラハエルにしては歯切れの悪い声色を返されたことに、少女は首をひねる。
そんなつもりは無かったが、もしかしておかしな質問をしてしまっただろうか。
不安が心をよぎりかけたとき、一瞬で念話による相談を済ませたコンジキがおほんっと咳払いをした。
「それについては……まあ普通の配信者なら裏事情として、軽々しく漏らすものでもないが、人命が関わる虚念の事ゆえ……マスコットたるワシ判断で良しとさせてもらうとじゃな」
「ミリアモールさんは協力者としてすでに身内と言える方ですし、信頼して明かしてしまいますと。実のところこれまでも何度か機会をうかがわせていただいていますが……残念ながらまだ実現には至っていない、という状況となりますね」
「身内だなんて……えへへ……っ♪ ────じゃなくて、そうだったんですね……
というかそりゃそっか、天使様たちの目的で、アカデミー企画の時とかに声をかけていない理由なんて無いですもんね」
魔法少女クラリティベル。
かつてミリアモールが魔法少女を目指した理由そのものでもあり、王道の魔法少女像を地で行く大手配信者。
そんな彼女を知るミリアモールも、誰もが知る強さと安定感を買っての提案ではあった。
が、それはそれとしてシラハエルたちの回答に、ある種の納得も少女は見せる。
(言われてみれば、コラボの流れが増えた今でも、あの人が誰かとコラボされてるところ見たこと無いかも……そういうスタイルなのかなぁ)
シラハエルとクラリティベルという憧れの人同士のコラボが実現して、もしそこにほんの僅かでも関わることが出来たなら……
そんな実利込みの欲目もちょっぴりあったことから、ひっそりと肩を落とした少女だがすぐに気を取り直すと。
やっぱり自分たちの力で頑張ろう、と決意を新たにその場を後にしたのだった。
「アイギスケープ殿はもちろん、クラリティベル殿とも……いつか配信上で協力しあえる時が来たらいいのう」
「……………………そう、ですね…………」
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「ふぅ…………」
ブンブンブン、と元気に手を振る少女セレスティフローラと別れたアイギスケープは、拠点へ戻ろうと一人、歩を進める。
結局、配信があると断ったあとも、日をまたいで強引に連れられた少女は今回の経験……とあるスポーツアミューズメント施設の
(セレスティフローラさん……いや、『セレスって呼んでくださいましっ!』…………でしたよね。
……最初は私のほうが上手かった競技も、どんどん追いついてきてた……前のアカデミーの経験から、努力のコツみたいなものを掴まれたんだろうな。うん、今日でセレスさんのこともよく分かった……けど……)
そんな彼女になんとかノリを合わせようと努力していたのも最初だけ、あとの方は自分もムキになって……いや、夢中になってしまっていたと自覚する少女。
マスコットたる少女はぶんぶん、と首を振ると、いつの間にか出ていた月を、決意をもって見上げた。
────大丈夫、最近続いている関わりも今日のこれも、今までと何も変わらない。
ただ、目的のために配信の勉強をさせてもらっているだけ。
みんなの優しさを無駄にしないためにもちゃんと活かして、視聴者たちの熱意を集めて強くなって……そして。
「そして、私は絶対、オブリビオンを────」
「『倒す』。ずいぶん気の長い方針に"観える"が、その身体にそんな時間の猶予があるのか?」
「────────ッッッ!!!?」
瞬間、考え事に夢中になっていたところにかけられた声。
大きく息を呑んだ少女は、本能のまま弾かれたように臨戦態勢をとる。
小さな体躯の彼女が、驚愕に見開きながらも睨みあげた先に居たのは、シラハエルの配信で暴を振るった記憶も新しい虚念……オブリビオンの姿。
彼ないし彼女は、緩慢に周囲の仮面を回しながら、シラハエルと邂逅したときとは違う静かな表情で見下ろした。
「お前たちマスコットはつまらない存在だが、『私たちを消すために生まれた存在』という点だけはほんの少し……そうだな、食べ物でいうならパンケーキの"ダマ"ぐらいの興味はある」
記録にも残るパンケーキを、知らず例えに使われたことに、少女の眉根が跳ね上がることにも構わず。
オブリビオンは今度は薄い笑いを浮かべた、安心させるような口調で告げようとし。
「そういうわけで、本命前の味見……というほどでもないか。要はただの品定めに来ただけだ、そう怖がる必要は────」
そう、言葉を続けようとした瞬間、オブリビオンは自身がすでに知っている事実と眼の前の光景に、一つの食い違いがあることに気づく。
────盾が、無い。
「ッッ!!」
それと同時、ザグンッという音とともに鋭利な衝撃が、虚念の死角、真後ろから叩き込まれた。
一切の容赦無く虚念の延髄をえぐったそれは、横向きになったアイギスケープの大盾が魔力操作で打ち込まれたものだ。
「ッ、あぁぁああぁッッ!!!!」
無防備なところに会心の手応えで大盾が入ったとみるや、
内在する魔力を使い切る勢いで手元へ戻そうとする主に応えるように、ギャリギャリギャリ、と甲高い音を奏でながら大盾は躍動し────
「…………そこそこ、悪くない」
「…………っ!」
そして、首をえぐられながらのオブリビオンが無造作に、雑に。
後ろにかざした片手によって、その動きを止められることとなった。
虚念は、今もまだ緩慢な仮面の動きを続けながら平常通りの品評を始める。
「声を聞いた瞬間には殺害手段を展開していた点はかなり高評価と言える。ただ、攻撃手段が凡庸なのは惜しい点────いや、これは」
が、その途中でピクリと身体を震わすと、虚念は見開いた目に露骨に光を灯しながら、仮面をぎゅるぎゅると高速で回し始めた。
「思えば、配信はまだつけてもいないじゃないかっ。にもかかわらず私たちを両断しかけた異様な殺傷力……
今もこの手に伝わる魔力は、配信で得たそれの一部を、生命維持は最低限にし盾にストックしていたということか……?
これまでどの魔法少女も観せたことのない技術……邂逅と同時飛ばした手際と言い、この奇襲のために相当準備をしてきたことがうかがえる。
…………周りに観せる大人しい、健気な振る舞いよりは、その機械や昆虫染みた冷徹さが素の部分に近いか?
少なくとも戦いという点では、すでにそこらの才無き魔法少女連中よりよほどマシ……ふんふん……」
「……えらそうにッ……! 私はともかく魔法少女やマスコットたちをいつも好き勝手に訳知り顔で……!
目元は爛々、爛々と、口元はぶつぶつ、ぶつぶつ、と。
自分の世界に入ったように一方的な語りを続ける敵対者に、アイギスケープは歯を軋らせながら感情をあらわにする。
────今、アイギスケープが放った技に名前はない。
なぜならオブリビオンの言葉通り、配信外……討滅相手が油断するタイミングで仕留め切るため練り上げた技であり、名前をつけることで視聴者を盛り上げる理由も無かったためだ。
その上で、この技は彼女にとっての本命も本命、必殺の決意をもって打ち込んだ一撃であり、事実思惑通りに刺さったもの。
にもかかわらず、身体の両断が叶わず追撃につなぐことすら出来なかったことに、まだ経験の浅い彼女は内心の動揺を抑えきれずにいた。
(
吹き上がる魔力にあかせた理不尽な耐久、回復力……相手の攻撃を観て全て受ける余裕が、そこから出ているのはわかってた……けど……ッ!)
どうしよう、どうすればこの虚念を倒せる。
配信をつけて魔力をもらわない限り、これ以上の有効打は考えられない。
だけど、配信をつけての全面戦争となると、そこで勝てなかったらたとえ殺されなくてもそれで終わり。
ただ、オブリビオンを倒すためだけにあれと生まれた身で、配信上で負けを晒せば……その存在への期待は失せ、その場でかき消えてもおかしくはない。
……そしてまだ、今の攻撃でも倒れないオブリビオンを仕留めるに足るだけの準備が出来ているとは、とてもじゃないが言えない。
(…………??)
が、そんな焦燥で頭がいっぱいになりかけた少女が、ふと訝しげな表情を浮かべる。
「…………ふむ……」
……渾身の一撃を防いだ敵対者が、自分に何も仕掛けてこない。
それどころか、自身でも負け惜しみに近いものと思った言葉を受け、虚念が顎に手を当ててぶつぶつと自問し始めたためだ。
「……『何者のつもりで偉そうに』……それを言われると確かに弱い……シラハエルにも突かれたが私たちもまたそうあれ、という想いの奴隷でしかないのは事実と言えるか。
その先に何があるのか、それを良しとしないなら私たち虚念はどこに行くべきなのか……」
「…………っ、あなたは……っ?」
ある意味、必殺の一撃に耐えられたこと以上の想定外、とも言える虚念の反応。
マスコットの在り方をただ嘲笑った憎むべき相手の、これまでの配信で見せなかった返しに、アイギスケープは文字通り虚を突かれた想いに囚われる────が。
「
「っ……!」
次の瞬間には、殊勝な態度が嘘だったのかと思うほど、こざっぱりした表情で見下ろしたオブリビオン。
仮面の動きは緩慢なものに戻り、それに合わせたようなゆったりとした足取りで少女のもとへ踏み出す。
「……とはいえ、どうやら今はここで手詰まりか。思った以上ではあったが、この先もコンテンツになるか、と考えると……まあ所詮はマスコット、限界は近いだろう。
…………私たちのようにどうせ再生する身体なら、いっそ手足をもいだ姿でも収めてシラハエルに突きつけるのが一番有用か……?
いやいややりすぎだ、呼び起こすのが憎悪一辺倒では二口も保たず飽きかねない。いやしかし、与えるストレスが適度なら……」
「…………ッ、虚念……!!」
まるで、自身の"そうあれ"という使い方まで上から被せ、塗り替えるかのような虚念の発言。
初めて覚えた感情……使命感でも理不尽への怒りでもない、純粋な悔しさをアイギスケープが口から滲ませる────と。
チカリッ、と。
少女と虚念の視界の端に、光が瞬いた。
「────ッッ!!?」
瞬間、忘失のカタチ『オブリビオン』は、これまでほぼ全ての攻撃を受け切りコンテンツとして楽しんでいた虚念は、本能のままに全力で身を翻し。
その寸前まで虚念がいた地点を、極太の魔力光が轟音とともに駆け抜けた。
そして、砲撃を受けたオブリビオンはもちろん、アイギスケープも一体何が、と首を回した先。
小さなビルの屋上に足を踏みしめていたのは、鮮やかな栗色の髪の魔法少女。
殺傷力の権化とも言える光線を放った少女は、砲台にも見紛う長い杖を両手に構えながら。
あくまで朗らかに、笑いかけたのだった。
「困ってるヒト、発見っ! 『魔法少女クラリティベル』、呼ばれてないけど参上、だよっ☆」
◆◆◆