人間の身でファミリアを作るのは間違っているだろうか   作:仙託びゟ

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報告会

「と言うことですので『神会(デナトゥス)』については当面女神デメテルにお任せすれば問題ないかと」

 

「なるほど、わかった。後日僕も挨拶に向かうことにしよう」

 

 ピュグマリオン・ファミリアの報告会。数日に一度開かれ、主人ピュグマリオンへ現状を伝えるものである。

 会と名がついているものの、主に報告するのはガラテアのみ。全幹部級リビングドールから念話で話を聞いて、報告の取捨選択をするのがガラテアの役目である。

 現在、ピュグマリオン・ファミリアの組織構成は以下のようになっている。

 

 まず主人としてピュグマリオンがファミリア全体の方針決定と組織拡張を担当。その下に夫人兼団長としてガラテアが付き、実務全般とファミリアの方針に対する実務方針の決定を担当する。

 

「続いて戦闘班ですが、私がLv3で基本アビリティオールA。ヒガントーナとメリーも、Lv2の基本アビリティオールCまで来ています」

 

「ふむ、やはり中層モンスターの魔石ともなると、輸出されるクズ魔石とは質が違うか」

 

「はい。また、理性あるモンスターを新たに発見しました。外見は掘鱗虫(トンネル・キャタピラー)そのもので喋ることもできないようですが、同種のモンスターから襲われていたので助けてみたところ、言語を理解する素振りを見せたため連れて帰ってきた次第です」

 

「うん? あのモンスターは馬車より一回り小さい程度の大きさはなかったか? どうやって連れて帰ってきた?」

 

「コッペリアの虫に案内させ、迷宮から本拠地の地下室まで掘り抜かせました。迷宮の範囲内は既に修復されているようなので、迷宮から侵入される恐れはないかと。現在は地下室の拡張作業を担当させています」

 

 戦闘班はガラテアを直接のトップとして、ヒガントーナとメリーがそれぞれダンジョンでの活動を進めている。ちなみに攻略には一切興味がないため、現在は日帰りで中層へ繰り出している。

 戦力拡張は完全に後回しになっている。これは他の人員を先に作っているというのもあるが、ピュグマリオンがなかなかいい案を思いつかないというのが大きい。

 

「続いて開発部門ですが、『魔女の指先(バーバ・ヤーガ)』の運用は順調です。《天啓》自体はワシリーサしか使えませんが、その分生産系の発展アビリティを持った『指先』のお陰で生産性は向上していますね。現在は魔石内の魔力を蓄積する魔導具の開発を行っており、主人(マスター)の構想している『魔導師(マジックユーザー)』の素材に使えるかと。既に量を確保できています」

 

 『魔女の指先(バーバ・ヤーガ)』とは、5人存在する開発部門部長ワシリーサの直属団員であり、量産型特化リビングドールと言える。性能は2級品質(ワシリーサ)に劣るが、各団員がそれぞれスキル《補助人形(フィンガーズ)》を持っており、ワシリーサの補佐に特化している。

 ワシリーサがLv2になったことで発展アビリティ《神秘》を発現し、仕事量も増えてきたために増員されていた。

 なお、《補助人形(フィンガーズ)》の効果は以下通りである。

 

補助人形(フィンガーズ)

・発展アビリティ《伝心》《生産》の発現。

・特定対象との発展アビリティの共有。

 対象:ワシリーサ

・特定対象を補助する行動に対する高域補正。

 

「生産部門は湿潤液と保湿液を量産するための魔石設備を作成。薄黄ウーズ*1の加工から各薬剤の調合、瓶詰めまでを行います。先日開発が完了した調味料の量産設備をはじめ、各製品の製造設備も地下に作成済みです。こちらも『職工の指先(ジェッペット)』は順調に運用できているようです」

 

 『職工の指先(ジェッペット)』は『魔女の指先(バーバ・ヤーガ)』と同様、生産部門部長のピノッキオを補佐する部隊となっているが、運用方法は『魔女の指先』とはやや異なる。

 まずピノッキオのステイタスが以下の通り。

 

 

 

ピノッキオ Lv2

 

力 : I0

耐久 : I0

器用 : I0

敏捷 : I0

魔力 : I0

《複製I》

 

魔法

《エメス》

・刻印魔法。

・刻印詠唱。

・発展アビリティ刻印。

・詠唱式【泥の人形、木の偶像。偽りを百重ね真実に至らん】

 

スキル

人形生命(アイボリー・ハート)

・疑似生命。

・疑似恩恵。

・耐久に高域補正。

・同スキル所持者同士での念話解放。

・精神異常、生理的異常の無効。

・神威耐性。

・魔石摂食により経験値獲得。

・一定品質以上の魔石摂食により偉業達成判定。

 

職工人形(ウッデン・スミス)

・発展アビリティ《木工》《鉄工》《細工》《設計》《製図》の発現。

・生産活動時に力と器用に高域補正。

 

 

 

 重要なのはこの魔法《エメス》である。

 これは簡単に言えば、道具に一部の発展アビリティを発現させる効果がある。例えば、《鍛冶》を刻印した道具を使って作成した武具は、《鍛冶》を発現させた鍛冶師が鍛えるのと同じように品質が上がる。

 ただし問題もあり、一定以上の工程をその道具を使って行わなければ効果は発揮されない。つまり最大限力を発揮するには、作業の初めから最後までを一本化した機械に刻印する必要があるのである。

 さらに、刻印する発展アビリティは自身の持っている発展アビリティに限るのだが、この制限を補助するのが『職工の指先』の役割だ。

 彼女らはそれぞれ《調合》《鍛冶》《調理》《魔導》《彫金》の発展アビリティを持っており、それらを《補助人形(フィンガーズ)》の共有能力でピノッキオに共有することで、《エメス》で刻印できる発展アビリティを増やしているのである。

 

「先ほど地下室を拡張していると言っていたが、足りているのか? トンネル・キャタピラーを捕獲したとは言え、最近のことなのだろう」

 

「これまで『羽根妖精たち(エッキスエス)』が拡張していた分があるのでギリギリ間に合っている状態です。しかし、トンネル・キャタピラーが拡張する分で余裕は出るかと」

 

 『羽根妖精たち(エッキスエス)』は5級品質(番犬並)のリビングドールで、20C(セルチ)ほどの小型人形リビングドールである。ピュグマリオン・ファミリアにおける雑用要員で、自我のある他のリビングドールとは違い、疑似魂のレベルが低いため指示された行動をするくらいの薄弱な自我しかない、単純作業要員である。

 

「最後に情報部門ですが、こちらも同じく『蜘蛛の指先(コッペリウス)』の運用は順調。コッペリアのランクアップも加え、オラリオ全域を情報網に組み込むことができました。加えて、いくつか重要そうな情報を報告いたします」

 

 『蜘蛛の指先(コッペリウス)』は先の二班ともまた運用法が異なる。簡単に言ってしまえば、コッペリアの情報処理能力拡張が役割である。彼女たちはコッペリアの《蟲籠人形(ネスト・ビスクドール)》の『神経侵奪』に対応しており、コッペリアの脳として働くことができるのだ。

 これによってコッペリアはついにオラリオをその情報網の下に置いた。

 

「ふむ……『闇派閥(イヴィルス)』の拠点に『ギルド』トップの横領。理性あるモンスターを神ウラノスが把握しており『異端児(ゼノス)』と『愚者(フェルズ)』。『剣姫』の出生にディオニュソスの裏の顔……なんだこれは、メチャクチャじゃないか」

 

「現在、神ヘルメスとフェルズ、イシュタル・ファミリアが我々の情報を探っているようですね。とりあえず直接の接触はワシリーサの作った認識阻害の魔導具を使うことで避けることに成功しています。しかしフェルズ辺りはそろそろ本拠地内にまで偵察を飛ばしてきそうです」

 

「ふむ……魔法部隊の設立を急ごうか。魔石蓄積の魔導具はどのくらいできている?」

 

「1人分の作成には十分かと」

 

「他の材料は?」

 

「コッペリアのモスキート部隊とディアンケヒト・ファミリアの協力によって『高貴なる血』は十分な量。それに、新しく見つかった方も採取は完了しています。ありがたいことに迷宮に通い詰めていたので……」

 

「よし、では作るとしようか……」

 

 アフロディーテの胃に危機が迫る……ッ!!

*1
苛性ソーダもどきを生成するウーズ。仮名。

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