人間の身でファミリアを作るのは間違っているだろうか   作:仙託びゟ

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神会(デナトゥス)

「ほんなら、このピュグマリオンっちゅうんはデメテルの神友やと」

 

「えぇ。私とアフロディーテの共通の神友で、アルテミスも知ってるはずだわ」

 

「ほーん……まぁ、アフロさんはともかく、アルテミスやデメテルが知っとるっちゅうならええんちゃう? 都市外の実力ファミリアが来たっちゅうことやろ。『神会(デナトゥス)』来とらん神も他にもおるしな」

 

 

 

「なわけないやろ怪しいわボケェ!!」

 

 ロキ・ファミリア本拠地『黄昏の館』の自室で、『神会』帰りのロキは荒れていた。

 本来であれば、今回の『神会』はロキの、というよりはロキ・ファミリアの眷属であるアイズ・ヴァレンシュタインの話題で持ちきりだったはずなのである。

 なにせ、ロキのお気に入りでもあるこのアイズは、つい先日僅か8歳という若さでランクアップし、その最短記録と最年少記録を更新したのだから。

 そこに至るまでそれはもう苦節があった。詳しくはソード・オラトリアに譲るが、無事に終わったからこその万感の思いがあったのだ。

 無論、『神会』は盛り上がった。Wレコードホルダーの二つ名を決める機会などそうは訪れることではないから当たり前だ。『剣鬼』だの『人形姫』だの『俺達(神々)の嫁』だの付けようとした神々を片手に持った全身くまなくボコボコの自殺教唆未遂犯(ヘルメス)をチラつかせて脅しつつ、『剣姫』という二つ名をもぎ取ってきた。

 

 そこで終わりならばよかった。しかし、そこでフレイヤが余計な話を話題に出してきたのが問題だった。

 

「あら、まだ3人、『ピュグマリオン・ファミリア』の冒険者がランクアップしたと聞いているけど?」

 

 その言葉の反応は大きく分かれた。ほとんどの神々は「ピュグマリオンって誰だ?」「知らんな」「来てんの?」と言った反応。名前自体に反応した様子なのはガネーシャ、ディアンケヒト、デメテル。

 そして、真っ先に反応したのはガネーシャだった。

 

「ピュグマリオン・ファミリアの団長、及び入ってきた時の団員からは聞き取りをしている。主神はソーマの同類で引きこもっているから『神会』に出る気はない。二つ名にもこだわりはなく、眷属も主神が気にしないならなんでもいいそうだ」

 

 ここで神々の反応は二分する。「なんだ、反応しねーのか。つまんねーの」と適当に無難な二つ名をつけて流そうとする者と、「ん? 今なんでもって言ったよね?」と自分の考えうる限り最高にイタい二つ名を付けようとしている者だ。

 続いて、普段なら前者*1であるディアンケヒトが手を挙げる。

 

「あー……その冒険者は知らん……いや、ひとりは知っとるかもしれんが……とにかく、詳しくは知らんが、ファミリア自体は知っておる。うちのポーションを安くしてやったろう? その理由がピュグマリオン・ファミリアだ。ある珍しい素材の安定供給を条件にな。お前ら探索系ファミリアは散々世話になっとるんだから、手心を加えてやれ」

 

 ディアンケヒトがそう言うと、そんな珍しい出来事に神々がざわめいた。そもそもディアンケヒトがポーションを値下げするのが珍しいのに、その上傘下でもない他ファミリアを庇っているのだから珍しいなんてものではない。

 

「というか、どこで知ったんだ? 儂は取引しててもそんな情報入ってこんかったが?」

 

「あら、私にはそれなりに情報網があるのよ」

 

 フレイヤの言う情報網とは、ギルド職員を『魅了』することで情報漏洩させただけである。

 

「んで二つ名ちゅーても……情報がないんよなぁ。ヘルメス、お前なんか知らんのか?」

 

「あ、あぁ……ピュグマリオン・ファミリアね。うんうん……ない!」

 

「はぁ?」

 

「いや、本当にないんだよ今回ばかりは。なんならどこの神かも知らない。名前もオラリオで初めて知ったんだ。誰か、この神がどこの神か知ってる神はいないのかい?」

 

 普段おちゃらけたヘルメスが真面目な雰囲気を出してそう問うと、スッと、ひとりの女神が手を挙げる。豊穣の女神、デメテルだ。

 

「ピュグマリオンは私とアフロディーテの共通の神友よ。アルテミスとも交友があると思う。癖はあるけど悪い神ではないし『闇派閥(イヴィルス)』との繋がりも考えなくていいと思うわ。ピュグマリオンはそういうことをするくらいなら趣味をやっていたほうがいいってくらいの趣味神だから……」

 

 デメテルがそう名乗り出た瞬間、露骨にフレイヤが退いたのをロキは感じ取った。もっと突っ込んであわよくばいいところを持っていくつもりだったのだろうが、相手が神友(デメテル)の関係者だと知ってやめたのだろう。既に興味をなくしているようだ。

 

「しかし、ただ引きこもってるだけならともかく俺が探っても何も出てこないんだぞ? 何か隠してるのか?」

 

「商才はあるのよ。企業秘密ってやつ、商業系(あなた)ならわかるでしょう? そのうち売り出されるはずだからそれまで待ってなさい。ピュグマリオンの眷属()たちが迷宮に潜るのは資金調達と材料調達が目的だから、ロキやフレイヤのライバルにもならないはずよ」

 

 ヘルメス・ファミリアは探索系と商業系を兼ねたファミリアであり、彼ら自身もかなりの秘密を持っているのは公然の秘密だ。そう言われると弱いのか、ヘルメスは一度黙り、悪あがきをして退いた。

 

「とはいえ、なんの情報もないと二つ名のつけようもないね。なにか出してもいい情報はないのかい?」

 

「そうねぇ……多分、今回ランクアップしたのは団長と副団長、それと幹部の子で、最初にオラリオ入りした3人だと思うのよねぇ……少なくとも、団長はピュグマリオンと付き合ってて、互いに伴侶という認識があるみたいよ」

 

 この発言で恋愛好きの女神たちが沸いて、非モテ男神たちとロキは「引きこもりのクセにぃ!!」と歯噛みした。

 

「え、え、団長たんはどんな感じなん? 美人さん?」

 

「あー、うーん……これ言っていいのかしら……普段顔を隠すくらいには美人よ。正直、私でも勝てるかどうかってくらい……」

 

 今度は女神たちからは戦慄の、男神たちからは怨嗟の声が漏れる。大概の神々は美形である。コンプレックスがあるヘファイストスでさえ、眼帯の下を考慮しなければ美人なのだ。その中でもデメテルは地母神と言われるほどの母性も手伝って、かなり上位の美人さを持っていた。それに匹敵するというのは、外界の子ではハイエルフ並ではないだろうか?

 

「なんか、なんか他に情報ないんかい! おっぱいは!? 顔は!?」

 

「んー、顔は……どっちかと言うと可愛い系? 胸は私より少し小さいくらいかしら……」

 

 ガラテアの胸はアフロディーテよりも大きかった。ピュグマリオンの趣味である。

 

「なんやそれえええええ!! そんな子嫁にして引きこもっとんのかいソイツううううううう!!」

 

「あ、言っておくけど、団長の子が一番美人だけど、他の子もみんな美人揃いよ」

 

 もはや呪詛のような歯ぎしりが響く中、一歩退いていたフレイヤが再び声を上げる。

 

「あら、それならマトモに付けて恩を売っておいたほうがいいんじゃない? ()()()の時に引き取れるかもしれないんでしょ?」

 

 それはさっさと終わらせたかったからなのか、はたまたデメテルへの援護だったのか。とにかく、フレイヤのそんな一言でフレイヤのシンパたちも動き出し、結局出てきた「全員白髪灰眼に白い肌」「ひとりは壁盾使いの巨躯」「ひとりはトリッキーな小人族」という情報からそれぞれ、『隠神の白妃(ハーミッツ・クイーン)』『白壁』『幻白』と名付けられた。

 

 こうして、話題は半分以上ピュグマリオン・ファミリアに持っていかれてしまったのだ。ロキ・ファミリアは歯噛みした。なんとしてもあの邪智暴虐のフレイヤ・ファミリアを倒さねばならないと(ry

 

「んで、『隠神の白妃』らの情報は集まらんのかい」

 

「残念なことにね。こちらから接触しようにもそもそも会うことさえ出来ない。本拠地前で見張っていると出てくることすらないらしいよ」

 

「……いや、それなんかの手段で透明化でもしとるんちゃうの? ヘルメスみたく」

 

 ロキ・ファミリア団長、『勇者(ブレイバー)』フィン・ディムナの言葉にロキが反応する。というか、そのヘルメスが何も知らないという時点で不自然なのだとロキは主張する。なにせ、ヘルメスとそのピュグマリオンの神友であるというデメテル、アフロディーテ、アルテミスは皆同じ天導山(オリンポス)出身の神々だ。であれば、ピュグマリオンも同じく天導山出身であると考えるのが自然。

 いや、同じく3人の共有の知り合いであるフレイヤは自身と同じアースガルドの神だから、そうと決まったわけではないのだが。

 

「『幻白』には僕も興味があったから挨拶しておきたかったんだけどね」

 

「ホンマこいつ……」

 

「しかし……彼女たちはかなり優秀な索敵能力があるようだね……迷宮内でさえ会うことがないとは……」

 

「たしかにそのピュグマリオン・ファミリアは気になるが、書類仕事もちゃんとして欲しいものだな、ロキ……んっ」

 

 パンッ、と。破裂音が部屋に響く。

 副団長の『九魔姫(ナイン・ヘル)』リヴェリア・リヨス・アールヴが自分の首筋を打ち据えた音だった。

 

「まぁた蚊ぁか?」

 

「あぁ……最近多いんだよな」

 

「んー……にしてはリヴェリア以外刺されてはへんのよなぁ……羽音はしてんねんけど」

 

「いや、アイズも刺されているぞ?」

 

「え、マジ? ウチなんも相談されてへんで?」

 

「それにかこつけてセクハラするからだろう」

 

 スパッと切って捨てるリヴェリアに「ぬぐぅぉぉぉぉぉぉ……」と呻くロキ。だがそれも日頃の行いというやつだろう。踏んだり蹴ったりの目に遭っているが自業自得だ。

 一方のリヴェリアは手のひらを見て、蚊が潰されていないことを確認して顔を顰める。先日シンパのエルフたちが「高貴なるリヴェリア様の血を吸う不届き者に死を!」と暴れまくったのを思い出したからだ。

 

「ロキ! リヴェリア! フィン!」

 

 そんな中、部屋の扉を力強く開けて入ってきたのは、ある意味話題の人物だった。

 

「んお、アイズたん! なんや〜? ウチになんかようか〜?」

 

「ん!」

 

 彼女こそ御年8歳。ロキ・ファミリアが誇る『剣姫』アイズ・ヴァレンシュタインである。

 アイズが勢いよく差し出したのは大皿……に盛られたじゃが丸くんだった。アイズの表情は普段の無表情ではなく、いつにない興奮に彩られていた。

 

「んん〜? くれるんか〜?」

 

 ロキはデレデレである。今まで精神的ショックで凹んでいた状態から、飼ってる猫がお気に入りの玩具を持ってきてくれたような気持ち。

 一方同じく差し出されたフィンは、懐紙を使ってじゃが丸くんを受け取ると、それに何やらかかっていることに気がつく。

 

「ん? この茶色いのは……またじゃが丸くんの新味かな?」

 

 フィンの質問にアイズは首を振り、早く食べろと促す。それを目にして訝しみながらもそのじゃが丸くんを食べ、真っ先に声をあげたのは、意外なことにリヴェリアだった。

 

「……美味っ……」

 

 決して「美味い!!」と声を上げるほどでも、「なかなか美味いな」と感心するほどでもない。しかし、なにかひと味足りたくらいの感覚がしっかり残っている。あえて言うなら、癖になる。

 

「……美味いなこれ」

 

「うん、美味い」

 

 どうやら、ロキとフィンも同じようだ。塩味と酸味、フルーティな果実の甘味にスパイスの辛味、そして野菜の旨味が複雑に絡み合ったソース。それがじゃが丸くんの味を一段階引き上げていた。

 そしてロキやフィンとは違い、リヴェリアは少し違う興奮を覚えていた。

 

「この、調味料……か? すごいな、脂の味がしない。すべて植物由来の材料で作られているのか……? いや、流石に塩は海塩か岩塩だろうが……」

 

 そう、それはエルフとしてはありがたいことに、肉や乳が使われていなかった。エルフの里で育てられるヌルデという植物から作られた塩ではないようだが、それでもこの調味料はエルフに人気になることは容易に察せられた。

 

「これ、食堂においてほしい……!」

 

「お、おう……アイズたんがそう言うなら別にええけど……これどこで売っとるん? 今まで見たことないでこんなん」

 

「私も知りたいな。これは個人的にも買っておきたい」

 

 そう言ってロキがアイズに差し出された、茶色の液体が入った()()()()を手に取って、ラベルに書かれた文字を読む。

 

「んーと? ピュレソース(中濃ソース)……ピュグマリオン商会ぃ?」

*1
ミアハ相手は後者





僕がアイズ書くとシロコになりかけるな……

ユ メ 後 輩 そ こ に 座 れ
弟の作品らしいです。宣伝させてください。ブルアカですってよ。
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