人間の身でファミリアを作るのは間違っているだろうか   作:仙託びゟ

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オラリオ入りまでサクサクいきます


常識が死ぬ時、常識もまた死んでいるのだ

 ピュグマリオンが人形を好むようになったことに、理由もドラマもない。物心がついた頃には、村にあった人形を四六時中眺めていた。その感情は、恋愛感情によく似ていた。

 そのうち村で作られる人形では満足できなくなって自身で作るようになった。彼を上回る技術、才能を持つ者がいたならば、あるいはそれを手に入れるための金稼ぎに力を入れていたかもしれない。しかし皮肉なことに、誰よりも人形を求める彼を超える才能を持つ者は、少なくともその村にはいなかった。

 この頃から寝食を忘れるようになったので、この悪癖に両親の死は何ら関係なく、また両親の死にこの悪癖はおろか人形もまるで関係はない。

 ただ裕福でない村のごく一般的な悲劇として獣と病に倒れた両親に対して、人形ほどの感情や愛着を抱けなかったのは吉だったのか凶だったのか。ただ、少なくとも両親から愛されてはいた彼は、両親の死からアフロディーテが村に訪れるまでの3年間、命を散らすことなく村人たちから助けられて生きてこられたのだ。

 

 とはいえ、それはそれとして普通に厄介者扱いはされていたし、彼自身も村を出ることに躊躇いはなかった。アフロディーテの拠点は芸術文化の最盛地、歌劇の国、メイルストラ。彼の技術の価値は村とは比較できない。彼が流行りの歌劇団の歌姫やらアフロディーテやらの人形(フィギュア)を作って売れば、それだけで一財産築くことができた。

 その途中で30日間完徹飲まず食わずでの作業だったり、アフロディーテ自身が自分の美しさに迫ると認めたほぼ完璧な偶像を作り出すといった偉業をこなし、村から出て3年でピュグマリオンはLv5に達したのだった。とはいえ、やはりその戦闘力はスキルのせいでLv2冒険者にも劣るものなのだが。

 

「…………」

 

 そして、魔法もひとつ発現したのだが、それが現在、アフロディーテの頭を悩ませることとなっていた。魔法も含めた現在のピュグマリオンのステイタスが以下の通りだ。

 

 

 

ピュグマリオン・キプロス Lv5

 

力 : I7→I0→I3→I5→I2

耐久 : S999→I0→S999→S999→S999

器用 : D500→B749→SSS1242→SSS1356→SSS1124

敏捷 : I2→I0→I1→I3→I3

魔力 : I0→I0→I0→I0→I0

耐渇A

耐飢餓A

耐眠A

人形S

 

魔法

《ディア・ガラテア》

・創命魔法。

・儀式魔法。

・人形に魂と疑似恩恵を付与する。

・詠唱式【右手には槌、左手に鑿、命宿るまで放さぬことを誓おう。象牙の体、祈りの心、魂降りるまで動かぬことを誓おう。女神の真名に女神の似姿、愛届くまで終わらぬことを誓おう】

・追句【命あれ】

・終句【時よ動け、お前は美しい】

・自作の人形にのみ使用可。

・作成中限定。

・詠唱、追句、終句の順に詠唱完了で発動。

・完成まで追句を詠唱できなければ発動失敗。

・完成後一定時間以内に終句を詠唱できなければ発動失敗。

・追句の詠唱回数により効果向上。

・人形の完成度により効果向上。

 

《》

 

スキル

人形偏愛(キング・オブ・キプロス)

・人形製作時の獲得経験値増加。

・人形製作時以外での経験値獲得不能。

・人形製作時に発展アビリティ《工芸》《彫刻》《裁縫》《細工》の一時発現。

・人形製作時に耐久、器用、魔力を超域補正。

・人形製作時に精神力(マインド)を自動回復。

・ランクアップ時のステイタス向上幅超域減少。基本アビリティの値により軽減。

・人形への愛が続く限り効果持続。

・偏愛の丈により効果向上。

・精神異常完全無効。神威耐性。

 

 

 

「いやホントなんなのよこれ……」

 

 創命魔法なんて聞いたことがない。いや、現実逃避はやめよう。ゴーレムのように命令に従うだけの魔法生命を創り出す魔法ならともかく、()()()()()()()()なんて異常も異常だ。それどころか擬似的な『神の恩恵(ファルナ)』まで与えるなんて。

 この魔法が発現して以来、ピュグマリオンは工房に引きこもって人形を作り続けていた。その時間は既に3ヶ月にも及んでいる。いくら発展アビリティがあり、スキルで耐久が超強化されていたとしても、死ぬ可能性があり得る状態である。

 それでも、アフロディーテはピュグマリオンを止めることができずにいた。それは、彼女が『美の女神』であると同時に『愛の女神』であるがゆえに。

 彼は()()()()()()()()。かつてアフロディーテはピュグマリオンを「アフロディーテの美しさを理解できない可哀想な海豚」と結論付けたがそれは誤りだった。ピュグマリオンは極普遍的な美に関する価値観を持ちながらも、人形ではないというその一点において愛の対象から外してしまうのだ。

 それだけならば、アフロディーテは彼の歪んだ愛を受け入れながらも、この危険な行動を止めに入っただろう。しかし、かつて彼と交わした会話が、アフロディーテにそれを躊躇わせていた。

 

「ピグ。あなたにとって『美しさ』ってなんなのかしら? やはり、人形なの?」

 

「いえ、強いて言うなら『変わり続けること』ですかね」

 

「……は?」

 

 それは、『不変』の存在である女神の美を全否定するものであると同時に、同じく『変わらない美』を持つ人形の否定だった。人形の美しさしか愛せないのに、人形の美しさを否定する。ピュグマリオンに渦巻く価値観の矛盾。

 

「歌姫の歌、炎のゆらぎ、花々の成長。美しさは、変わり続けるものの中にこそある。だから僕は、いつか『変わり続ける人形』を作ってみせる」

 

 『生きている人形』を創り出す、人形に魂を、命を与える魔法。それは間違いなく、彼が求めていた魔法そのものだった。

 今彼は、自身の愛を叶えようとしている。だからこそ、愛の女神であるアフロディーテはそれを止められない。

 

主神(おや)として、死にかけるなら尻拭いくらいはしてあげるわ。だから、あなたの『愛』を見せてちょうだい……!」

 

 

 

 結論から言えば、その日ピュグマリオンはLv6に至った。前代未聞である『人間による魂を持った生命の創造と擬似的な恩恵の付与』という偉業とともに。

 そして、それとともにアフロディーテは新たな胃痛を背負うことになった。

 

 

 

ガラテア Lv1

力 : I0

耐久 : I0

器用 : I0

敏捷 : I0

魔力 : I0

 

魔法

《アイボリー・チゼル》

・召喚魔法。

・武装召喚。

・非生物特攻。

・性能はレベルに依存。

・詠唱式【神ならざる我が造物主よ、愛しき貴方より賜った牙を抜き放とう】

 

スキル

人形生命(アイボリー・ハート)

・疑似生命。

・疑似恩恵。

・耐久に高域補正。

・同スキル所持者同士での念話解放。

・精神異常、生理的異常の無効。

・神威耐性。

・魔石摂食により経験値獲得。

・一定品質以上の魔石摂食により偉業達成判定。

 

人形王妃(クイーン・オブ・キプロス)

・力、耐久、敏捷に高域補正。

・発展アビリティ《指揮》《演算》《戦略》の発現。

・伴侶への思いの丈により効果向上。

・伴侶への想いが続く限り持続。

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